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涙が出るほど

Arima15
有馬記念2015―観戦記―
誰も逃げないのを見越していたかのように横山典弘騎手とキタサンブラックがハナに立ち、前半1200mが75秒2、後半1200mが71秒5という有馬記念らしいスローな流れをつくりだした。中山競馬場の2500m戦のような6つのコーナーを回るコースにおいて、これだけペースが落ち着いてしまうと、後ろから行った馬は前との差を詰めるタイミングも場所もない。道中で無理に動いていけば脚を失ってしまうし、かといって待って直線に向いてからでは間に合わない。ほとんどの馬や騎手たちは、そうしたジレンマを抱えたまま今年の有馬記念を終えたはず。昨年と同じく、勝ったのは内の2、3番手を走った馬であった。

ゴールドアクターは今年に入って負けなしの4連勝で有馬記念を制した。菊花賞で3着に敗れたあと、十分な休養をはさんだことで馬体が成長し、この馬本来のスタミナを十全に発揮できるようになった。とはいえ、まだトモに甘さを残していることは確かであり、オールカマーを回避したことも、ジャパンカップを見送って有馬記念1本に照準を絞ったことも功を奏している。あそこで我慢することができずに使ってしまっていたら、トモに疲れが出て、今回の好走はなかったであろう。陣営とオーナーが待つことができたからこそ、あらゆる運と勝利を手にすることができたのだ。

ゴールドアクターの父スクリーンヒーローは、安田記念やマイルCS、香港マイルを勝ったモーリスに続き、またしてもG1ホースを誕生させたことになる。煌びやかな母系に配合されているわけではない中で、これだけの活躍馬を出すとは関係者も夢にも思っていなかったのではないか。グラスワンダーからこのような形で血がつながるとは思いもよらず、グラスワンダーの異能を見直すとともに、母系に流れる社台のゆかりの血の素晴らしさにも改めて想いを馳せる。トモに実が入ってくれば、ゴールドアクターにはさらに大きな期待ができるはず。ゴールドシップに代わる、新たな日高の星として来年は駆けてもらいたい。

吉田隼人騎手はG1初勝利となった。スタートを決め、一旦先頭に立つほどの勢いで馬を出して内に潜り込む、という攻めの騎乗が大一番の有馬記念でできたことが素晴らしい。道中のポジションといい、追い出しのタイミングといい、全てにおいて完璧であった。これだけの騎乗技術があり、昔から向上心も高く、今までG1レースを勝ったことがないのが不思議なぐらいだが、それだけ日本人の若手騎手たちにとって厳しい時代だということだ。勝利ジョッキーインタビューでは吉田隼人騎手の目に光るものがあり、こちらまで嬉しくなったし、彼が勝って良かったとさえ思えたのだから不思議である。

私が本命に推していたサウンズオブアースは、ほぼ勝ちに等しい内容の走りであった。勝ち馬との違いは、道中でごちゃついてしまったこと、そしてマークしていたリアファルが下がってきたことで勝負所の最終コーナーでポジションを下げてしまったこと。ゴールからスタートまで巻き戻してみると、やはり9番という枠番に行き着く。勝ち馬とのたった2つの枠番の違いが、道中の違いを生み、ゴール前での半馬身差の違いとなる。さすがのミルコ・デムーロ騎手もまさかリアファルが下がってくるとは思わなかったようで、どのレースもパーフェクトに乗ることは難しい。

キタサンブラックは楽に逃げられたことで3着に粘ることができた。スラリとした体型的に見ても、この馬は生粋のステイヤーだろう。ラブリーデイは良いポジションで走ることができたわりには、最後は伸びあぐねてしまった。年頭から使い詰めで走り、宝塚記念を勝利したあとも馬を緩めることなく、天皇賞秋をピークにそこから下降線を辿ってしまった。外見上は分からないが、気持ちの面で最後に踏ん張りが利かなくなっていた。同じことはゴールドシップにも当てはまり、3歳時から一線級で走り続け、ときには力を振り絞って勝利を重ねてきた勤続疲労がこの秋に噴出してしまった。宝塚記念で見せたゴールドシップの走りが、彼の心の叫びであったことに気づいた人はどれぐらいいたのだろうか。

個人的には、今年は「週刊Gallop」でも連載を書かせていただき、楽しみつつもそれなりの重圧は感じていた。当てなければならないというよりは、当てたいという気持ちが強かった。2週間前に予想を出すことの難しさが分かり、週刊誌の編集部や競馬記者の方々の大変さを知った。本命に推した馬のパドック写真を見て、目を覆ったことも数多くあった。それでも今回の有馬記念は、枠番がもう少し内であればということ以外は、サウンズオブアースの仕上がりも何もかも思っていたとおりに運んでいたので、かなりの期待を持って観戦していた。レースが終わって、リプレイを何度観てみても、勝てなかった事実には変わりがない。涙が出るほど悔しくて、涙が出るほど嬉しい。それが競馬。


Photo by 三浦晃一

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Comments

こんばんは。

ゴールドシップ本当にお疲れ様でした。
競走馬は生き物ということを知らしめてくれた馬でした。
そして『無事これ名馬』を地でいく馬でした。


ゴールドアクターがスタートを決め、一旦先頭に立つが押しとどめるようにキタサンブラックがハナに立った瞬間後藤騎手を見たような気がしました。
鞍上は横山騎手なんですが後藤騎手に見えてきてしまうのです。
彼がキタサンブラックでゴールドアクターの露払いをしてるように…
キタサンブラックの新馬戦の鞍上は後藤騎手でした。
それに彼は生前、吉田隼人騎手をとても可愛がっていましたから…
先行得意の彼でしたからダブってしまったのかもしれません。
きっと彼も吉田隼人騎手を祝福していると思います。

Posted by: コナツ(=^・^=) | December 29, 2015 at 01:16 AM

コナツ(=^・^=) さん

こんにちは。

ゴールドシップは本当に力を出し切って走ったのだと思います。

お疲れさまでしたと声を掛けてあげたいですね。

今年の宝塚記念で引退していれば伝説になったのでしょうけど(笑)

たしかに後藤騎手なら、ああゆう競馬をしそうですね。
後藤騎手も喜んでいることでしょう。
たしかバンド活動かなんかでも、一緒に遊んだりしていましたもんね。
日本人ジョッキーにとっては、これからも厳しい時代であることに違いはありませんが、こうして一矢報いることができたことに意味があると思います。

Posted by: 治郎丸敬之 | December 29, 2015 at 09:37 AM

次郎丸さん
こんにちは。
毎週ギャロップは買えてないですがギャロップ重賞年鑑は2009年から欠かさず買ってます。
今年も楽しみにコンビニに行きましたが いつもと何か違うと違和感ありました。
重みがなくて薄く感じたので 去年までのと比べたらやっぱり薄くなってました(>___<)

有馬記念のゴールドシップは結果は8着でしたが最後にゴールドシップ″らしさ″を見れた満足なラストランでした。
横山騎手も岩田騎手もゴールドシップを上手く走らせ勝利へと導きましたが やっぱり私が好きなゴールドシップは皐月賞であり、菊花賞であり 3歳の時の有馬記念なんですよね。
ゴールドシップの尽きることのないスタミナに惚れ惚れします。
引退式も白くなった馬体にライトが当たり かわいいゴールドシップが見れました。
内田騎手が涙で言葉がでなくなり もらい泣きしてしまいました。
競馬っていいなぁと改めて感じた良い有馬記念でした。
来年の一番の楽しみはハープスターの初仔の誕生です。
過去の名馬と呼ばれる馬たちが好きな私ですが 未来へと繋がる競馬を見るのも悪くないですね。

Posted by: 通りすがりの皇帝ペンギン | December 30, 2015 at 02:20 PM

通りすがりの皇帝ペンギンさん

こんばんは。

今年はたくさんのコメントありがとうございました。

ギャロップの重賞年鑑は私も毎年買って、参考資料にしていますが、今年はまだ買えていません。

そうですか、薄くなっていたんですか(笑)

今年の有馬記念は売り上げも入場者もアップしたとのことですが、それでもまだまだ競馬界は厳しいですね。

ゴールドシップは最後まで良く走ったと思います。

私も内田騎手のまくりが一番ゴールドシップには合っていたと思います。

凱旋門賞に行って帰ってきて、そこからもうひと花咲かせて、人間のエゴに精一杯応えてきた馬だと思います。

僕は皆がイメージしているような馬ではないんじゃないかなと思うのです。

ゴールドシップの仔もハープスターの仔も楽しみですね。

また来年も競馬を楽しみましょう!

Posted by: 治郎丸敬之 | December 31, 2015 at 12:03 AM

治郎丸さんご無沙汰しております(^^;)そしてあけましておめでとうございます( *・ω・)ノいつもブログは覗かせて頂いて大変参考にとゆうより馬体考察にいたってはまるまる治郎丸さんに乗っかることもあるので大変お世話になっております。これからもいろいろな考察や見解を参考にさせて頂きます。治郎丸さんもお忙しいと思いますがご自愛下さいね( ・∇・)

Posted by: ユビキタス | January 02, 2016 at 12:35 PM

ユビキタスさん

あけましておめでとうございます。

昨年はいろいろとコメントいただき、ありがとうございました。

昨年はあまりお役に立てなかったかもしれませんが(笑)、今年はその分、頑張りたいと思いますので、たまには覗いてみてくださいね。

これからも競馬を共に楽しみましょうね!

どうぞよろしくお願いいたします。

Posted by: 治郎丸敬之 | January 03, 2016 at 12:02 AM

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