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集中連載:現代のコアな競馬ファンがすなる一口馬主というものを(第6回)

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あれほど馬主に憧れ、憑りつかれていたにもかかわらず、結局のところ、私が今まで一口馬主にすらならずにいたのは、ひとつは前述したように、これという馬がいなかったことがあるが、もうひとつの理由としては、一口馬主ではどこか物足りなさを感じていたからでもある。実は2つの理由はつながっていて、どちらもなぜ私がその馬を所有しなければならないのかという理由が思いつかない、ということだ。それはパンフレットやDVDを観て、付き合う(もしくは結婚する)異性を決めるような違和感というべきか。もちろん実際に会ったりして(馬の場合は見学ツアーに行ったりして)から決める人もいるのだろうが、それでも商品化されたものを買っているような気がしてならない。

そんな違和感を乗り越えて、今回は一口馬主をやってみようと思ったのだが、と同時に、1頭の馬の馬主になるという想いも捨てたわけではない。1頭の馬を自ら所有することで、より近い距離で、馬の生産や育成、調教やレースというものに関わることができる。生産者や育成に携わる人々、厩舎に入れば調教師やジョッキーというプロフェッショナルたちと直接に話をし、育成や調教の報告を受け、レースに出走するタイミングを見計らい、ローテーションも考える。そうしてようやくデビューした馬がレースを走ったときの喜びや勝利したときの興奮は、何ものにも代えがたいはず。もちろん、愛馬が怪我をしたり、いつまで経ってもデビューできなかったり、レースに行っても走らなかったりしたときの落胆も大きいだろう。それでも、そういう全てを含めて味わうことによってはじめて、競馬の世界の仲間に入れてもらうことができるのではないか、と思ったりする。

そこで、知り合いの生産者の招きもあり、馬を買うことが目的ではなく情報収集のために、セリ市に行ってみることにした。毎年秋、北海道市場(静内)にて開催されるオータムセールである。サラブレッドの競り市場は毎年各地で行われ、当歳や1歳馬のセリ市としては、セレクトセールやセレクションセール、サマーセールなどがある。毎年7月にノーザンホースパークで行われるセレクトセールは、1億円を超えるような高額で取引される馬も数多く出るように、あらゆる意味において、日本最大規模のセリ市である。その中でも、オータムセールは年内最後のセリ市として位置づけられている。過去に取引された馬では、アスカクリチャン、クリノスターオーやマイネイザベルらが活躍馬として挙げられる。

朝6時台の飛行機に飛び乗り、9時前には新千歳空港に到着した。今回の遠征を仲介してくださった福永さんと落ち合い、碧雲牧場の創業者である長谷川敏さんの車に乗せていただき、静内へと向かった。実は長谷川敏さんとは初対面であり、噂で聞いていたとおりの、精悍な顔立ちとインテリジェントな雰囲気をまとっている。長谷川敏さんは、学生時代に映画を撮るために牧場に泊まり込んで働いたことがきっかけで、生産の仕事をすることになった。柏﨑牧場時代にはあのスーパークリークを生産し、碧雲牧場から誕生したグラスポジションは重賞こそ勝てなかったが私の記憶には深く残っている。ちなみに、彼がつくった「青春のたてがみ」という映画は、吉永小百合さんがナレーションを手掛け、今観ても秀逸な作品である。

オータムセールは本日2日目。初日は売れ行きが好調だったそうで、碧雲牧場から上場させた3頭のサラブレッドたちも完売したという。手塩にかけて育ててきた馬たちであり、もちろん経済的な意味も含めて、生産者は自らの生産馬に値段が付くことほど嬉しいものはない。買い手がつかなかったときの悲しさと、売れたときの喜びは表裏一体の感情として密接に結びついている。「いい時に来たね」と福永さんが言ったように、長谷川さんからは抑えきれない喜びがポロポロと溢れ出ているように見えた。生産者冥利に尽きる瞬間ということなのだろう。私はすぐにこの人が好きになった。そして、長谷川敏さんの長男であり、碧雲牧場の後を継いだ長谷川慈明さんの顔が早く見たくなった。

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Comments

こんにちは。おひさしぶりです。

スーパークリークの生家、柏台牧場じゃないかな? 柏﨑ってなってる。
マイネルの岡田さんとつながりのある相馬氏がオーナーだったような。 昔、ラフィアンの事務所の隣が柏台牧場(相馬オーナー)の事務所でした 笑

このコメント非表示でかまいませんです。
後藤騎手のことがあってからもうすぐ一年で、なぜかこちらを思い出して来てみました。。。

Posted by: ビンゴカンタ | February 12, 2016 at 07:49 AM

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