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集中連載:現代のコアな競馬ファンがすなる一口馬主というものを(第7回)

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思っていたよりもこの時期の北海道は暖かく、セーターとダウンを着こんで臨んだ私をあざ笑うように、力強い日差しが車のフロントガラスを通して射し込んでくる。この数日、ほとんど寝ていなかった私は、長谷川さんの運転の隣でついウトウトしてしまった。広大な海を右手に見ながら、直線だけで構成されたような道を飛ばして行くと、2時間ほどでオータムセールが行われている静内の会場に到着した。

いよいよこれからセリが始まろうとしていた。最後の最後まで馬を見ている馬主や調教師もいて、馬を買おうという気持ちと売ろうという気持ちがぶつかり合って、静かな緊張感の中にも競馬関係者たちの熱気がひしひしと伝わってくる。私はオータムセールが初めてなので分からないが、何度も来ている方の話を聞くと、今年はこれまでにないほどの活気だという。そう言われてみれば、行き交う人々の間に笑顔が絶えない。向こうから馬を引いてやってきた長谷川慈明さんも笑顔だ。1年ぶりの再会となる。今日はいつもお世話になっている他牧場の馬の出場を手伝いに来ているという。

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実は1頭気になっている馬がいた。ちょうど1年前、長谷川慈明さんから碧雲牧場生産の当歳馬の写真や血統表を見せてもらった中で、個人的に目を付けていた馬がいたのだ。トトノオナリ―の14(父ジャングルポケット)である。私がその馬に興味を抱いたのは、母父にスペシャルウィークを持っていたという点。母父にスペシャルウィークがいることでスタミナが補強されるはず。スピード化した現代の競馬において、もちろんスピードがあることは前提ではあるが、逆説的には最後に問われるのはスタミナである。父ステイゴールドで母父メジロマックイーンが黄金配合とされているように、近い将来、いずれかの種牡馬×母父スペシャルウィークという黄金配合が誕生するのではないかと考えている。

トトノオナリ―の14について私が言及すると、「売れました。良かったです」と長谷川慈明さんは破顔一笑。ドリームジャパンホースレーシングにより280万円で落札されたそう。今回のオータムセールに臨むにあたって、この馬だけではなく他の上場馬についても、コンサイナーに依頼し、馬の歩き方から僅かな動作に至るまで調教してもらい、準備をしてきたという。長谷川慈明さんいわく、「全然違う」。馬がしっかり歩けるようになるし、正しく振る舞えるようになる。だからといって、走るかどうかはまた別物であるが、とにかく馬を買いたいと思ってもらえるような動きができるように躾をするのがコンサイナーの仕事である。そこには特別な技術やノウハウが存在する。驚くべきは、どこどこの誰々が見たら買いたくなるような動きができるようにさえ調教できるという。セリ市は売る側と買う側の公平な場における真剣勝負であるのだ。

ひと昔前のセリ市では、そんなことをしてまで準備をするという考えすらなくて、牧場で走っている馬をそのまま連れて来ていた。毛は伸び放題でも、馬体が汚れていようが、馬が多少暴れてもお構いなし。それでも馬が売れた時代が確かにあった。大げさに言うと、馬であれば売れた時代があったが、今はそういう時代ではない。

たとえば、脚(球節から繋の部分)にソックスを履いているように白い毛が生えている馬がいる。左後一白(さこういっぱく)といって、左後ろ肢だけ白い馬は名馬の証なんて言われたこともあった。この白い部分が汚れやすいのである。糞や土を踏んだ蹄が擦れて、汚れてしまうというという具合に。どれだけ馬体の手入れをしていても、見る人が見たときに、汚れていると、見た目が悪く、印象が下がってしまうのだ。そんなとき、すぐに汚れを落とすスプレーのようなものがある。海外からの輸入品であり、高価なものなので、こういうセリのときぐらいしか使わないが、それでもそこまでするのだ。「そこまでするの?」ではなく、「そうするのが当然でしょ」と関係者の誰もが認識している時代なのである。今年こそ好況であったが、これまでの不況が競馬関係者を鍛えたのであろう。

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