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ルメール騎手とデムーロ騎手の対談を読んで

Taidan01

「クリストフ・ルメール×ミルコ・デムーロ 外国人JRAジョッキー対談」を先々週号の週刊『Gallop』にて読んだ。この2人の対談は、つい最近、雑誌『Number』でも読んだことがあり、それはそれで興味深かったが、今回はホスト役を合田直弘氏が務めていることもあってか、より奥深く、多岐にわたった内容となっており、とても読み応えがあった。海外の競馬だけではなく、日本の競馬をも知り尽くした2人による語りの中には、世界から見た日本、日本から見た世界の競馬という視点が交錯している。そのダイナミックさこそが、ルメール騎手が対談中で言う、「競馬はインターナショナルビジネス」ということなのだろう。

まず2人の昨年の成績が素晴らしい。ルメール騎手は昨年、年間112勝を挙げて、勝率0.195という数字で最高勝率騎手に輝いた。2002年の武豊騎手の勝率0.291と比べると大きな違いはあるが(当時の武豊騎手の独占ぶりが良く分かる)、これだけジョッキー間の競争が激化している中でおよそ2割に近い勝率、3割5分の連対率を叩き出したことは驚異的である。ルメール騎手の巧さは、騎乗馬の能力がそのレースや展開の中で最も発揮されやすいポイントにはまり込むことができること。勝つか負けるかという競馬ではなく、その馬にとって100%の競馬をする。その結果がたとえ2着であったとしても(勝てなかったとしても)、関係者は納得し満足するし、それもジョッキーの巧さのひとつなのである。

デムーロ騎手は年間で28億円を超える賞金を獲得し、最多賞金獲得騎手になった。欧州では勝利数よりも賞金のランキングが最も評価される傾向にあるため、デムーロ騎手としては最高の栄誉と感じているのではないだろうか。競馬がG1レースを頂点としたピラミッド型の競走体型になっている以上、最も数多く勝った騎手よりも、大きなレースを勝つ馬に乗って勝利したジョッキーが評価されるのは当然のことだろう。調教師のランキングにも同じことが言えるが、獲得賞金順に並びを替えることで、本当の勝者が見えてくるし、また勝ち星を稼ぐための出走ラッシュも少なくなるかもしれない。デムーロ騎手の凄さは言うまでもなく、勝ちに行く競馬をして勝利できること。その勝利は彼の騎乗技術や知識、経験や感性に支えられている。

そのデムーロ騎手が「ボクはクリストフと一緒に競馬に乗るのが怖い」と語るのは本音だろう。なぜなら、勝ちに行ったデムーロ騎手の足下をすくえるのは、我慢したルメール騎手だからである。勝ちに行く競馬は、もちろんいつも成功するわけではなく、裏目に出てしまうこともある。そんなときに虎視眈々とチャンスを狙って、生かせるのはルメール騎手なのである。今年も勝ちに行くデムーロ騎手、その力を利用して足下をすくうルメール騎手というレースは数多く見られるのではないだろうか。

最後に、日本の若い騎手にはチャンスが多いという話には、私たちの認識を改めざるを得ないと感じた。JRAの若手騎手は、海外や地方から有力なジョッキーたちが参入する中で、土曜日と日曜日にしか競馬が開催されておらず、チャンスのある馬に乗る機会が少ないと考えていたが、そうではないのだ。欧州の方が日本よりも乗るチャンスは少ないという。たしかに言われてみれば、1レースの頭数は6、7頭と少ないため、リーディング上位のジョッキーたちが乗ってしまえば、若手は1日1鞍がやっとになる。若手がそこからはい上がっていくのは、日本人の騎手以上に欧州の方が難しい。それは騎乗機会が増えれば若手が伸びるという話でもないということである。技術を磨くのであれば調教を頑張るべきだし、何よりも2人が強調するのは海外に出ていくということ。

「なかなか海外に出ても競馬に乗るチャンスは少ないかもしれないですけど、そこで見たこと、聞いたことは、必ず自分の中に吸収されます。それを持って帰って日本で乗れば、全然違ってきますよ」(ルメール騎手)

「ボクは17歳のときに米国に行きました。レースにも乗せてもらえましたし、その経験を持ってイタリアに帰ると、乗り方も全然違ってきましたね。3年前に英国に行ったときも凄く勉強になったし、2年前にフランスに行ったときも、香港に行ったときもそうです」(デムーロ騎手)

簡単に言ってしまえば、広い視野を持って、学んで、経験し、吸収するということ。分かっていても、日常に埋没してしまい、半径5メートルぐらいのことしか知らない私たちには耳の痛い話である。そういう視点でいうと、欧州だけではなく世界中の国々から、トップジョッキーたちが来日して騎乗する機会が多くなった現在の日本の競馬は、パイが減ったとかそういうケチ臭い話ではなく、若手ジョッキーからベテランにとっても学ぶ機会が増えてというとであろう。世界は広いのである。それは物理的な世界という意味でもあるし、私たちが極めたいと願う世界もまた広いのだ。

Taidan02


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