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譲り合いは観たくない。

東京新聞杯の落馬事故について、先日、「遅すぎてはいけない」というエントリーを書いた。何でもかんでも、慎重に安全を期して乗ってしまうと、かえって危険になるという主旨である。どこまでが危険で、どこからがそうではないのか、外から見ただけでは分かり得ないことは多く、当事者たちにしか察することのできないこともあるとは百も承知である。それでも私たち競馬ファンは、ある程度の知識や見解を持っていることで、競馬のレースにおいて騎手と馬たちが鎬を削る、ギリギリの闘いの凄さを深く知ることができる。今は誰もがパトロール映像を見ることができ、立体的に競馬の醍醐味を楽しむことができるのだ。

エントリーを書いたあとに、さらに何度もパトロール映像を見返してみると(ほとんど趣味に近い)、私の中に新たな見解が浮かび上がってきた。なぜ勝ち馬の直後にいて、手応えが抜群だった岩田康誠騎手が、抜け出すスペースがあったにもかかわらず、待ってしまったのか。私は岩田騎手の動作を表面的に見て、周囲の状況を鑑みて安全を期することに意識が行ってしまい、躊躇してしまったと考えた。結果的には、その一瞬の判断の遅れが渋滞を呼び起こし、浜中騎手が落馬をするという大事故につながってしまった。だから遅すぎるといけないと書いたのである。

しかし、そうではなかったのかもしれない。直線に向いてから、1度目の左後方確認をしたとき、それは岩田騎手による安全確認のためではなく、後ろから浜中騎手の声が聞こえたからであろう。「岩田さん、内を開けてください!」といった内容の大きな声が左後ろから聞こえ、岩田騎手はその声が浜中騎手のものであることを知り、しかも1番人気の馬に乗っていることも知っているからこそ、内を譲ろうとしたのではないだろうか。そう考えるとしっくりくる。あれだけのスローペースを内で追走し、2番手で直線を向いて、隊列的にもあそこで抜け出せば勝てる。先に抜けた者勝ちであり、普通に考えれば、抜け出さない理由はない。つまり、抜け出さなかったのではなく、抜け出せなかったのでもなく、譲ろうとしたのである。

自身は浜中騎手が抜けた後を追う形で抜け出せば、連対は確保できる。6番人気で2着ならば上々であろう。ところが、ダッシングブレイズが思いの外、スパッと切れずに抜け出すのに時間が掛かっていたところを、外から寄られたことにより、エキストラエンドが少し内に押し込められ、内の進路が狭くなってしまったということである。かつての岩田騎手であれば、自分がどれだけ人気のない馬に乗っていても、がむしゃらに勝ちに行っていたし、今回のように譲ってしまって、みすみす勝ちを逃すこともなかったはずだ。

私は安全や危険という観点で見てしまっていたが、実は勝ちを可愛い後輩に譲ろうとしたということであれば、それはそれでつまらない。M・デムーロ騎手やC・スミヨン騎手ならば、迷うことなく抜けていたであろう。人馬が無事に回ってくることを何よりも願うが、安全がいつの間にか勝ち星の譲り合いにすり替わり、エキサイティングな競馬が観られなくなってしまうことを私は願わない。

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Comments

前回の記事でもコメントした者です。
ひとつ疑問があるのですが、「岩田が抜け出すスペースがあったのに待ってしまった場面」っていうのが私にはわかりません。

スマートレイアーが外に寄れた瞬間なら、最内ダッシングブレイズとスマートレイアーの間に1頭分のスペースはありますが、岩田騎手は後ろを振り返っているので、物理的にそのスペースを突くのは無理ですね。

岩田騎手が前を向いたときは、吉田隼人騎手の右ムチでスマートレイアーが内に寄って来ているので、もうスペースはありません。あそこに突っ込むのは危険に思えます。

どちらかといえば、
「後ろを振り返ったばかりに、一瞬空いたスペースを逃してしまった」
という表現の方がしっくり来る気がします。

自分の馬が何番人気だろうが、浜中の馬が何番人気だろうが、譲り合い云々ではなく、タイミングの問題に思えてしまうのです。

Posted by: 火曜日 | February 11, 2016 at 11:49 PM

火曜日さん

こんばんは。

乗っている人たちにしか分からない部分だというのは百も承知ですが、スマートレイヤーが寄れて、岩田騎手が後ろを振り返って、前を向いた瞬間にまだ1秒ぐらい内が開いていたので、そこを抜けることができたのではと思えます。

あそこに馬を入れていたとしたら、そのまま抜けられていたかもしれませんし、スマートレイアーと接触したかもしれませんし、スマートレイアーはあそこまでヨレずに止まっていたかもしれません。

すべてはタラレバですが、あの一瞬はもったいなかったなあと私には思えます。

ですので、「後ろを振り返ったばかりに、一瞬空いたスペースを逃してしまった」という解釈もよく分かりますよ。

譲り合いについては、浜中騎手があれだけ勢いをつけて内を突っ込めるということは、内が開くという確信があったからではないかと思います。

あの隊列で、どう考えても後ろの馬を先に抜けさせようとする挙動は不可解なので譲ったのではと思いました。

まあそんなことは良くある話だと思うのですが、まさかこのような大参事につながるとは思いも寄りませんでしたね。

Posted by: 治郎丸敬之 | February 12, 2016 at 12:25 AM

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