« 衰えを全く感じさせないエキストラエンド:5つ☆ | Main | 共同通信杯を当てるために知っておくべき3つのこと »

遅すぎてはいけない。

東京新聞杯の最後の直線にて、浜中俊騎手が乗ったダッシングブレイズが内ラチに接触し、人馬ともにターフに放り出された。浜中騎手は内柵を乗り越える形になり、4箇所の骨折と脳震とうで戦線離脱となってしまった。今回の落馬事故の直接の原因は、浜中騎手が狭いスペースにダッシングブレイズを通そうとしたことだが、なぜ前が詰まったのかと遠因を辿っていくと、岩田康誠騎手が待ちすぎて渋滞を引き起こしてしまったこと、さらにスマートレイアーが直線で左右にふらついたことに行き着く。

スマートレイアーについては、吉田隼人騎手が初騎乗であり、馬の癖を掴み切れていなかったためか、もしくは逃げる形になり、先頭で府中の長い直線に向いたことに馬が戸惑ったのか分からないが、直線に向いたところでまず右に大きくよれた。それを修正するために、吉田騎手が右ムチを入れると、それに敏感に反応し今度は左によれた。直後にいた騎手たちから見ると、どちらが開くのか(安全なのか)、次の予測が難しい動きであったように見える。

すぐ後ろにいたのが岩田騎手であった。彼はあの事故以来、ずいぶんと周りに気を遣いながら、目に見えるぐらいに慎重に馬込みを捌くようになった。今回も騎乗馬エキストラエンドの手応えが抜群で、いつでも抜け出せる勢いであったにもかかわらず、ひと呼吸置いて、左後ろを確認する作業までしている。本当は、今回に限っては、スマートレイアーが外(右)によれた瞬間に、迷うことなくその内を抜ければ、安全に勝つことができたはずなのである。かつての岩田騎手ならば、そうしていただろうし、そういった瞬時の判断と行動に極めて優れていた。

そうすることなく、周りの状況を見渡した上で、慎重に後方の確認までしている間に、スマートレイアーが内(左)にササってきて、今度はエキストラエンド自身の抜け出すスペースがなくなってしまった。外の馬たちからも圧力を受けて、エキストラエンドがやや内に押し込められたタイミングと浜中騎手が狭いスペースを突いたそれが運悪く重なったことで、アクシデントは起こった。今回に限っては、岩田騎手が先に抜け出さなかったことが渋滞を巻き起こしてしまったとも言える。

みだりに進路を変えたり、狭いスペースに突っ込んだりすることは確かに危険だが、それ以上に、実は動きや判断が遅いことの方が危ないのである。脚がある馬よりも、脚がない馬の方が危ない。上がっていく馬よりも、下がってくる馬や遅い馬の方が危ない。危険をギリギリで避けてスパッと動く騎手よりも、慎重すぎて何もできずにチンタラしている騎手の方が実は危ないのである。

たとえば、人ごみの中を歩くと分かるだろう。私は歩くのが速い方なので、人と人の間を縫うように抜けていくが、その中で危ないと感じるのは、流れに沿わずにゆっくりと歩いている人もしくは突然立ち止まる人である。良い悪いの問題ではなく、危ないか危なくないかの問題。ものすごく渋滞が起こっていて、誰もが前の人にぶつかりそうに、歩きにくそうに歩いているその先を見ると、そこには必ずものすごく遅く歩いている2人か3人組がいる。街中を歩くことと競馬のレースは違うところもあるが、つまり行くときにはスパッと行くことも大切だし、脚がなくなった馬をきれいに下げていくのもまた技術なのである。

こういう話をすると、必ずと言ってよいほど、人や馬の命がかかっているんですよと批判を受けることもあるが、絶対的な安全などあり得ないと私は思う。その考えを突き詰めていくと、競馬などやらない方が良いという結論になってしまうし、やるとしてもセパレートコースで行う方が安全ということになる。そうではない競走をしているのだから、危険と安全は常に隣り合わせであり、何が安全で何が危険か、どのようにすればより危険で、より安全なのかを知った上で、私たちは競馬やジョッキーたちを盛り上げていくべきなのだ。

|

Comments

初めて投稿させて頂きます。本項の御見解に違和感を感じたためです。スマートレイアーが外によれた瞬間と、岩田騎手が左後方を確認した瞬間は、ほぼ同時であり、JRA公式映像では1:09-1:10の間です。この時点で、ダッシングブレイズは既にエキストラエンドと接触するかの勢いで迫っており、もし岩田騎手が即時に内を突けば、岩田騎手が加害者になっていたものと推測します。また、岩田騎手が左後方を確認したのは慎重に安全確認をしたというよりは、迫っているダッシングブレイズの状況を確認したように見えます。以上。

Posted by: 競馬歴16年 | February 08, 2016 at 11:22 PM

岩田騎手の冷静な判断が、被害を最小限に留めたと思います。

吉田隼騎手スマートレイアーが外に膨れた瞬間、岩田騎手エキストラエンドは後方(グランシルクあたり)を確認。
この時点で浜中騎手ダッシングブレイズは、岩田騎手よりやや前に(ほぼ横並びに)出ています。

つまり岩田騎手は、外に膨れたスマートと、ラチ沿いギリギリを走るダッシングの間を突きたいので、進路妨害にならないかどうか、後方の馬との距離を確認したのではないでしょうか。

その直後、今度はスマートが内にモタれて、その動きによって岩田騎手が僅かに内に振られ、接触、落馬となったように思えます。

調子の良い時の岩田騎手なら、スマートが外に膨れた瞬間に、後ろのことなど考えずすぐさまインを突いて、浜中騎手に負けじと追いまくるのでは。そして内にモタれたスマートの後ろ脚とエキストラエンドの前脚が接触し、ダッシングを巻き込んで落馬。大惨事になっていた可能性もあります。

昨秋からなかなか調子の出ない岩田騎手ですが、今はクリーンな騎乗を会得するための我慢の時間なんだと思います。昨年の菊花賞で、田辺騎手ブライトエンブレムを殺さんばかりの斜行を見せた時には呆れ果てましたが、今回の騎乗を見ると応援したい気持ちにもなります。

Posted by: 火曜日 | February 09, 2016 at 07:03 PM

競馬歴16年さん

はじめまして。

コメントありがとうございます。

岩田騎手が1度目に左後方を確認したのは、浜中騎手が声を上げたからかもしれませんね。

あの時点ではまだ多少のスペースがありましたので、本来は先に岩田騎手が抜けるべきスペースに浜中騎手が突っ込みすぎたということだと思います。

私は待てなかった浜中騎手と待ちすぎた岩田騎手という見解です。

おっしゃるように、スマートレイヤーが右によれた瞬間に左後方を確認したことで、タイミングが遅れた部分はありますが、その後、一瞬だけ抜けられるタイミングがあったのではないかと思います(このあたりは外からの見た目と騎手の感覚は違うかもしれませんが)。

難しいですね。

Posted by: 治郎丸敬之 | February 09, 2016 at 07:19 PM

火曜日さん

こんにちは。

私も岩田騎手は今回も含めて、最近は努めて冷静に騎乗していると思います。

今回は1度目に左後方を確認したとき、おそらく浜中騎手が大きな声を出したから振り返っただと思いますが、まだエキストラエンドの方がだいぶ前にいたはずです(この時点のパトロール映像はないのですが)。

岩田騎手の馬に脚がなければ、浜中騎手に道を譲るのもありですが、そうではなかった以上、前にいる岩田騎手が内のスペースを先に抜けるのが定石です。

でも今回は安全を重視したのか、抜けなかったことで、中途半端な形となり、外から圧力を掛けられて内に押し込められたところを、無理やり突っ込んできた浜中騎手と接触してしまったというところではないでしょうか。

私には抜けるスペースがあったと見えるのですが、そのあたりに解釈の違いはあると思いますし、乗っているジョッキーの実感も違うかもしれません。

もしかすると、岩田騎手が浜中騎手にゆずったという面もあるかもしれませんね。

Posted by: 治郎丸敬之 | February 09, 2016 at 07:29 PM

Post a comment