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競馬があったから生きてこられた

Takamatumiya2016wt

競馬を始めた頃は、馬券が外れてはふて寝をしていた。悔しくて仕方なく、自分の感情を抑えることができず、ただ眠りに落ちるのを待つしかなかった。ときには胃液が逆流しそうになるほどの苦しみを味わうこともあったし、しばらくの間、言葉が発せなくなるほど動揺することもあった。ちょうど全能感に溢れていた年頃でもあり、こちらが激しく思えば思うほど、馬券が外れたときの反動もそれだけ激しかった。たまに馬券が当たって有頂天になることもあるが、ほとんどはそうではなく、世の中と自分との間にある溝の大きさに絶望していた。競馬を始めて以来、週末になると、私は奈落の底に突き落とされ、一週間かけて再びはい上がる。そんなことを繰り返して、すでに20年以上が経ってしまった。

良かったと思えることは、自分が傷つけられることにたいそう慣れたことだ。毎週末、自分の考えが間違っていることを知らされ、思い込みを指摘され、現実は自分の思っているとおりにはならないことを叩きこまれる。本気で想えば思うほど、傷つけられるのだ。傷つけられるという表現では生やさしく、私の実感としては、ときに殺される。傷つけられ、自分を殺され、もうそんなことさっさとやめてしまえば良いのに、やめるという選択肢はなかった。やめるのは生きるのをやめることに近いから。何度傷つけられ、何度殺されても、何度でも立ち上がって、とにかく生きる。20年もこんなことをしていると、慣れるのだ。

競馬以外のことで、多少の苦しいことや辛いことがあって、傷つけられ、殺されそうになっても、耐えられるようになった。私は氷河期世代の真っ只中に社会に出たが、世の中で思い通りに行かないことが多くても、そんなものだと受け取れるようになった。どれだけ激しい苦難が襲ってきても、しばらく静かに眠っていたら悲しい感情は少しずつ薄れていくと悟れるようになった。自分の負の感情をある程度はコントロールできるようになった。そして同時に、いつかは上手く行くチャンスが巡ってくるかもしれないと微かな希望を心のどこかで抱くことができるようになった。こんなときは競馬をやっていて良かったと思えた。競馬がひ弱な私を鍛えてくれたのだ。競馬があったから生きてこられた。

ところが最近は、傷つけられることに慣れ過ぎてしまっている気もする。昔であれば寝込んでも不思議ではないようなことでも、深く私の身体には入り込んでこない。あの頃のような感情の起伏がないのだ。いい歳をして傷つけられるなんてみっともないと思っているからなのか、激しく傷つけられないように期待値をあらかじめ下げているのかもしれない。競馬に鍛えられた私は、麻痺して鈍感になってしまったのか。それはそれで悲しい。もしかすると今の私に必要なのは、激しく思い、激しく負けることなのかもしれない。高松宮記念の日、久しぶりに人生において激しく傷つけられ、あとからレースを見てみるとアルビアーノが敗れていた。それでも私は負けないで生きていこうと思う。

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産経大阪杯を当てるために知っておくべき3つのこと

Sankeioosakahai

■1■4歳馬が圧倒
過去10年の勝ち馬の年齢を見ると、4歳馬が5頭、5歳馬が4頭、6歳馬が1頭と、4歳馬と5歳馬が他馬を圧倒している。年齢を重ねるごとに勝ち馬が少なくなっているように、実績や格ではなく、勢いが求められる舞台となる。クラシックで活躍した馬が充電を経てターフに戻ってきたり、また古馬になってから急激に力を付けてきた馬たちにとっては、実力を存分に発揮できるレースである。まずはサラブレッドとして充実著しい4歳馬を中心に考えてみたい。

■2■1番人気が強い
過去10年間における、人気別の着順を見てみたい。

1番人気 【4・3・2・1】 勝率50% 連対率70%
2番人気 【1・2・1・6】 勝率10%  連対率30%
3番人気 【2・0・1・7】 勝率20% 連対率20%

かつてマイルCSは1番人気が最も堅いレースとして有名であったが、今では産経大阪杯がそれに取って代わろうとしている。勝率50%、連対率70%という数字は驚異的である。ひとつの理由としては、超A級の馬たちが、別定戦であるこのレースを狙って出走してくるからである。その傾向は、日本の競馬がスピード化するにしたがって強くなってきている。一昔前まで超A級の馬は阪神大賞典に出走していたが、今は距離適性も含めて産経大阪杯に出てくることが多くなっているということだ。たとえ休み明けであっても、強い馬であれば十分勝ち負けになる。

■3■内を回って先行できる馬
過去10年のラップタイムを見てみたい。

12.8-11.6-12.5-12.6-12.5-12.4-12.3-12.2-12.3-13.3(62.0-62.5)M
12.8-11.5-13.1-12.6-12.2-12.2-11.9-11.7-11.4-12.0(62.2-59.2)S
12.5-10.8-12.2-12.1-12.0-12.3-12.0-11.5-11.6-11.7(59.6-59.1)M
12.6-11.5-11.9-11.9-12.1-12.8-12.1-11.9-11.2-11.7(60.0-59.7)M
12.1-11.1-12.8-12.3-12.0-12.2-11.6-11.5-11.7-12.2(60.3-59.2)S
12.5-11.0-12.3-12.1-11.4-11.6-11.6-11.3-11.8-12.2(59.3-58.5)M
13.2-12.2-13.7-13.2-12.9-12.7-12.3-11.9-11.2-12.2(65.2-60.3)S
12.6-11.4-12.7-12.2-12.6-12.2-11.6-11.3-10.9-11.5(61.5-57.5)S
12.8-11.3-12.5-12.0-11.9-11.8-11.7-11.5-12.4-12.4(60.5-59.8)M
12.8-11.1-12.7-12.2-12.3-12.4-12.3-12.2-12.1-12.8(61.1-61.8)M

どのレースも速くともミドルペース、遅ければスローに流れる傾向がある。阪神競馬場の内回りということで、4つコーナーを回る小回りの直線が短いコースで行われるとイメージしてよい。ペースが落ち着きやすいことも考慮に入れると、どうしても内枠の先行馬が有利になる。

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王として君臨せよ


高松宮記念2016―観戦記―
内枠から好スタートを切ったミッキーアイルが先頭に立つかと思いきや、外から手綱を激しくしごきながらローレルベローチェとハクサンムーンが強引にハナを奪い返す形で、レースの火ぶたは切って落とされた。こうなるとペースが速くなるのは必至で、前半600mが32秒7、後半が34秒0というスプリントG1らしい激しい流れ。硬い馬場でレコード決着となったように、後ろから行った馬たちは伸びても差し込みにくく、先行馬にやや有利な、スピードの絶対値がものをいうレースであった。

勝ったビッグアーサーはスタートからゴールまで、何から何まで、最高に上手く運んだ。まずはスタートしてから両隣の馬が外に膨れたことで、広いスペースができ、そこを突いて福永騎手は無理なく先行しつつ、馬を馬場の良い外に導けた。そこからは前を行く3頭を見ながら、ビッグアーサーは周りに馬がいないスペースを確保しつつ、脚を溜めることができた。あとは直線に向いて追い出すのみ。ここ2戦は極端な枠順を引いてしまい、裏目裏目に出てしまって力を出し切れていなかったが、本番で全ての流れがガラリと変わったのだ。もともとスプリンターらしい雄大かつパワフルな馬体を誇っており、デビュー戦以外はここまで全て1番人気にも推されてきたほどで、重賞で揉まれながらもレースに慣れ、成長し、果たして完成された。この先はスプリント王として、さらに高みを目指してもらいたい。

福永祐一騎手にとっても渾身の騎乗であった。これだけ全てが完璧に回るレースも、1年間騎乗して数回あるぐらいだろう。もちろん、そういうレースに組み立てられたのは福永騎手の経験と技術ゆえである。最大の勝因は、スタート直後に、スムーズに外に出せたことに尽きる。周りに馬がいなかったこともあり、内の馬場が荒れているところを避けつつ、最小限の距離ロスで道中を回ってこられた。長期の戦線離脱からカムバックして、外から見た目では分からないぐらいまで、その騎乗ぶりは全盛期に戻ってきつつある。前夜にお手馬のリアルスティールがR・ムーア騎手の手綱によってドバイで勝利して悔しかっただろうが、翌日にこうして自らの手でG1勝利を得て、健在ぶりを示してみせたのだからさすがである。

ミッキーアイルはこれが限界の結果だろう。1200mと1400の違いとも言える。1400では先頭に立てたとしても、1200mだとハナを叩かれてしまう。スプリントG1を勝つほどの圧倒的なスピードはなく、マイルG1を勝つにはムキになって走りすぎる。重賞を6勝もしているにもかかわらず、G1勝利がNHKマイルCのみというのは、このあたりに理由がある。それでも、無理に抑える競馬を強いるのではなく、ミッキーアイルのリズムで走らせてあげる方が良い結果が出ることを陣営が悟ったことは大きな収穫だろう。

アルビアーノはどうしたのだろう。スタートこそ良かったが、道中はずっと馬群の狭いスペースに押し込められるように走らされて、苦しいレースを強いられた。それぐらいのことでめげる馬ではないはずだが、前走オーシャンSの最後の直線で他馬と接触し、怪我を負ったことが、少なからず精神的に影響を及ぼしているのかもしれない。馬は記憶力の良い動物だけに、アクシデントに直接巻き込まれた馬やその周りでその光景を見ていた馬が、その後さっぱり走らなくなってしまうことはよくあることだ。最終コーナーのコーナーリングや彼女のぎこちない走りを見て、そんな心配をせざるをえない。

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出遅れという不運の中に眠っている幸運を見逃すな

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出遅れにはどうしても悪いイメージがつきまとう。出遅れてしまって逃げられない、または出遅れてしまい最後に伸びてはいるが届かない等々。特にわずか1分そこそこのタイムで決着してしまうスプリント戦において、出遅れは致命的である。ただし、ごく稀なケースではあるが、例外的に出遅れがプラスに働くこともある。出遅れたことによって、馬の走るリズムが変わるのだ。

キンシャサノキセキは2010年の春、4連勝で高松宮記念を制し、届きそうで届かなかったG1タイトルを手にした。この快進撃のきっかけとなったのは、09年の暮れに行われた阪神カップ。このレースで彼はスタートで大きく出遅れた。しかし、鞍上にいたM・デムーロ騎手は慌てることなく、キンシャサノキセキを最後方からゆっくりと走らせた。それまでの彼は行きたがる気持ちが前に出すぎて、いつも力んで先行し、最後の1ハロンだけ止まってしまうというレース振りであった。だからこそ、G1レースを勝つことができなかった。

デムーロ騎手に導かれたキンシャサノキセキは、馬群の外々を伸びやかに走り、最終コーナーでは先頭に踊り出るほどの手応えの良さで上がってゆき、最後の直線では他馬を突き放した。あれだけ手脚を伸ばして走るキンシャサノキセキを久し振りに見たと私は感じた。最も驚いたのは、彼自身だったのではないだろうか。こんなにゆっくりと走っていいのだ。競馬っていつも一生懸命に走らなくてもいいのだ。そう思ったに違いない。7歳にして力を抜いて走ることを覚えたキンシャサノキセキは、遂に覚醒したのだ。

キンシャサノキセキは偶然の出遅れであったが、意図的に出遅れさせ、後方をゆっくり走らせることで馬のリズムを変えてしまったケースもある。

・・・
(続きはこちらでお読みいただけます)
*高松宮記念の予想と馬券を公開中。

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群を抜いているアルビアーノ:5つ☆

ミッキーアイル →馬体を見る
典型的な幼い体型であったが、昨年あたりからようやくドッシリしてきた。
手脚がスラリと伸びて、距離はマイルまでこなせそうだが、気性的に短い方がいい。
Pad4star

ハクサンムーン →馬体を見る
全体的にバランスの良い馬体を誇るが、さすがに皮膚の張りは年齢を物語っている。
とはいえ、前後の筋肉は鍛え上げられて、さすがにG1戦線で活躍してきた馬。
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エイシンブルズアイ →馬体を見る
手脚が長く、胴部にも長さがあって、マイル戦でも十分に走れる体型。
毛艶も素晴らしく、若さと勢いが伝わってくるようで、仕上がりは上々といえる。
Pad4star

ビッグアーサー →馬体を見る
筋肉量が豊富な馬体で、典型的なパワータイプのスプリンター体型。
絶好調時に比べるとややモッサリした感はあるが、表情は闘争心に溢れている。
Pad3star

ローレルベローチェ →馬体を見る
頭の位置が高い点が気になるが、前後のバランスも良く、筋肉のメリハリも素晴らしい。
柔らかい筋肉に覆われていて、顔つきから気性の素直さも伝わってくる。
Pad4star

レッツゴードンキ →馬体を見る
2歳時から完成度の高い馬であったが、ここに来てかつての筋肉のメリハリに欠ける。
このメンバーに入ると、パワーという点では、どうしても見劣りしてしまう。
Pad3star

ウリウリ →馬体を見る
腹回りに余裕がある馬体だが、前駆に力強さが増して、スプリント色が強くなった。
母系の力強さが出てきたのか、さすが藤原厩舎と言おうか、舞台と馬体は合っている。
Pad3star

アルビアーノ →馬体を見る
他の有力馬と比べると、馬体全体のシルエットに長さがあり、スプリンターらしくない。
それでも理知的な顔つきや、筋肉と皮膚の柔らかみは群を抜いている。
Pad5star

スノードラゴン →馬体を見る
一昨年に高松宮記念を勝ったときに比べて、さらに馬体が詰まって力強さが増した。
芦毛にもかかわらず、皮膚の薄さが伝わってくるように、年齢を感じさせない。
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ウキヨノカゼ →馬体を見る
この馬も頭の位置が高くて、まだ気持ちの面ではレースに集中できていない。
腹回りにも余裕があるように、もうひと絞りほしい仕上がりで、あと一歩か。
Pad3star

サクラゴスペル →馬体を見る
さすが実績馬といった馬体で、前後のバランスも良く、安定して力は出し切れる。
付けている馬具を見ると、ハミ受けに問題があるはずで、騎手の腕が問われる馬。
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高松宮記念を当てるために知っておくべき3つのこと

Takamatsu1

■1■先行馬有利へ
中京競馬場は小回り、直線に坂がなく平坦であり、本来は圧倒的に先行馬が有利なコースであったが、高松宮記念に限っては、最後の1ハロンでスピード自慢の先行馬の脚が止まり、スタミナを備えた差し馬がゴール前で逆転するという展開のレースになりやすかった。しかし、その傾向は中京競馬場が新装されて以来、変わりつつある。

「先行馬有利」の状況は、ラップタイムからも一目瞭然である。阪神競馬場で行なわれた平成23年を除く、過去10年間の前半後半3ハロンのラップタイムは以下のとおりである。
 前半 ― 後半
平成16年 32.9―35.0 (前後半の落差2.1)
平成17年 33.3―35.1 (前後半の落差1.8) 
平成18年 33.7-34.3 (前後半の落差0.6)
平成19年 33.8-35.1 (前後半の落差1.3)
平成20年 33.4-33.7 (前後半の落差0.3)
平成21年 33.1-34.9 (前後半の落差1.8)
平成22年 33.5-35.1 (前後半の落差1.6)
平成24年 34.5-35.8 (前後半の落差1.3)
平成25年 34.3-33.8 (前後半の落差0.5)
平成26年 34.5-37.7 (前後半の落差3.2)
平成27年 34.0-34.5 (前後半の落差0.5)

平成25年までは、前半が速くて後半が掛かるという、典型的な前傾ラップであった。「短距離の差し馬」という格言があるように、基本的にスプリント戦は差し馬有利な前傾ラップになることが多い。特にG1のスプリント戦となると、スピードのある馬が揃い、前半のポジション争いが厳しくなるため、どうしても上がりの掛かる展開となるのは避けられない。

しかし、直線が長くなり、坂ができたことにより、道中のペースには落ち着きが出て、かえって差し馬が届きづらくなった。スピードとスタミナの両方が要求されることには変わりがないが、ある程度先行できて、パワーで押し切れる馬にとっては最も向いている舞台となる。

■2■馬場の不利、枠順の不利はなくなる
かつて開幕最終週に高松宮記念が行なわれていた頃は、馬場の傷みによってコースの内外における有利不利を生み出してしまうことがあった。平成12年のキングヘイロー、13年のトロットスター、17年のアドマイヤマックスと、大外を回った馬が勝利したように、内側が傷んで走りにくいという馬場設定になってしまう可能性があった。しかし、2012年からは改修後ということもあって、馬場は絶好の状態を保っているため、馬場による有利不利はない。

さらに、これまでの中京競馬場はコース幅が狭くカーブもきついため、枠順の内外も考慮に入れるべきであった。テンのダッシュが速くない馬が内枠に入ると、外から速い馬に来られ、包まれてしまい何も出来ずに終わったり、外枠を引いた馬が内に入れるヒマもなく、終始外々を回されて終わってしまうことがあった。どの枠順を引いたかによって、勝利の行方が大きく左右されたのだが、改修後は枠順における有利不利もほとんどなくなるだろう。

全体的に見ると、よほど極端な枠順を引かない限り、スピードとスタミナを兼ね備えた強いスプリンターが勝つことのできる舞台が整ったといえる。

■3■5歳馬が有利
過去10年間における、年齢別の成績は以下のとおり。

4歳   【1・1・3・38】 連対率6%
5歳   【5・3・2・31】 連対率20%
6歳   【1・5・2・33】 連対率15%
7歳以上【2・0・3・42】 連対率4%

勝ち鞍、連対率だけを見ても、5歳馬が圧倒していることが分かる。勢いのある4歳馬が、充実の5歳馬にねじ伏せられてしまうという形になりやすい。キンシャサノキセキは例外的存在と考えて、6歳以上の馬になってくると、スピード不足を露呈してしまうのか、年齢と共に勝率は下がっていくことになる。スピードとスタミナを兼ね備えたスプリント能力を問われるということだ。

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「一口馬主DB」にて「馬体の見かた講座」を連載中

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「一口馬主DB」にて「馬体の見かた講座」という読み物を連載中です。一口馬主のための募集時の馬体の見かたにテーマを絞りつつ、サラブレッドの馬体について基礎から体系的に書いています。現在は第7回まで連載が終了していますが、いつ読んでいただいても参考になると思います。今後は各パーツ(前躯やつなぎ、蹄、肢勢など)について学術的に解説をし、さらに種牡馬ごとの特徴や関係者からのインタビューを加えていきます。書き進めていくうちに私自身も学ぶところが多く、この手応えだと、WEB上に残る馬体の見方の教科書としては、最長かつ最上のものになる予感がします。

ちなみに、第7回までの連載の内容は以下のとおりです。

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「馬体の見かた講座」
の第2回以降を読むにはプレミアム会員に登録していることが必要ですが、ご興味がある方はぜひ読んでみてください。

「一口馬主DB」は一口馬主のための国内唯一の総合情報サイトです。「一口ライフをもっと楽しく、もっと便利に」をテーマに、出資馬の成績管理機能を軸として、豊富なコンテンツと多彩な情報が提供されています。私は一口馬主になることになって初めて知ったのですが、現在会員数が1万8000人以上を誇り、一口への出資から愛馬の情報管理まで、とにかくすごい量のデータを保有しています。

私自身、一口馬主を始めたこともあって、プレミアム会員に登録させてもらい、活用しています。愛馬のデビューはまだこれからですので、そのあたりの利用状況や使い勝手は追って紹介させていただきますが、今は名馬の募集カタログを見たり、他の読み物のひとつである「一口データ研究室」や「税金教室」などを読んで楽しんでいます。特に、データ研究室の「早生まれ、遅生まれは良い悪い?」はデータで見ると、私たちの思い込みを知らされるようです。また、出資馬検討リサーチの厩舎分析や馬体チェッカーは馬券の予想をする上でのデータとしても使えますね。


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調教で動かないのはステイヤーの証【超・馬券のヒント第52回】

Cover

競馬を始めたばかりのころ、予想をするにあたって、この言葉が関係者から出てきたら買わないという自分の中でのNGワードがあった。たとえば、「前走は度外視」、「気性が難しい」などの言葉が出てくると、その馬は馬券の対象から外した。今思えば笑ってしまうぐらい初心者らしい予想法ではあるが、その中にもひとつだけ真実が含まれていた。それは「調教は動かない」というNGワードである。なぜかというと、それは調教において「動き」が悪かったことを示唆しているからである。レースに臨むにあたっての調教で、陣営から「動かない」という主旨のコメントが出てきた馬は走らないのである。

実は、日経新春杯のシュヴァルグランがそうであった。栗東のCWコースにおける最終追い切りのタイムは、7ハロン99秒7―13秒6という、オープン馬とは思えない平凡な時計であった。この追い切りを受け、友道康夫調教師は「調教でそんなに動く馬じゃないから」とコメントした。この連載上でシュヴァルグランに本命を打っていた私は、この言葉を見て青ざめた。私の心配は見事に的中し、シュヴァルグランは断然の1番人気に応えることができず、レーヴミストラルの鬼脚の前に屈してしまった。連対を確保したものの、やや物足りない走りであったことは否めない。

調教で「動かない」ことには、いくつかの理由が存在する。
・・・


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*阪神大賞典の予想と馬券を公開中。

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完成度が高いマイネルハニー:5つ☆

★スプリングS
ロードクエスト →馬体を見る
まだ子供っぽさが抜けきらない馬体ではあるが、全体のバランスは良い。
素直な気性が伝わってくる表情も良く、きっちりと能力を出し切るはず。
Pad4star

マイネルハニー →馬体を見る
この時期にしては、馬体の完成度が高く、前後にきっちり実が入っている。
尾離れもよく、顔つきからは闘争心が伝わってきて、仕上がりは良い。
Pad5star

アドマイヤモラール →馬体を見る
いつも良く見せる馬ではあるが、今回も毛艶が冴えて、筋肉に柔らかみがある。
やや腹回りに余裕があるため、もうひと絞りできれば仕上がりは完璧になる。
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ドレッドノータス →馬体を見る
この馬も馬体全体に幼さが残っていて、まだこの先にかけて成長する馬だろう。
それでもこれだけ走っているのは良血ゆえだろうか、素質の高さは間違いない。
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ハレルヤボーイ →馬体を見る
やや首が高い位置にあるのが気がかりだが、馬体はすっきりとして仕上がった。
顔つきや筋肉のメリハリは平均的であり、これと言った強調材料はない。
Pad3star

★阪神大賞典
シュヴァルグラン →馬体を見る
ふっくらとして馬体に生気が満ちているのは確かだが、やや太め残りの感も。
3000mの距離を考えると、天皇賞春に向けても、もうひと絞り必要になる。
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トーホウジャッカル →馬体を見る
絶好調時の凛とした立ち姿にはまだないが、皮膚は柔らかく美しい馬体を誇る。
ひと叩きされて筋肉のメリハリが出てくれば最高だが、走れない仕上がりではない。
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カレンミロティック →馬体を見る
胴部が長く、肩のラインが急であるため、どうにも長距離向きには見えない。
それでもスタミナがあるのは父の影響だろうか、先行してどこまで粘れるか。
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アドマイヤデウス →馬体を見る
一時期は馬体的にも低迷していたが、トモにしっかりと実が入り、回復してきた。
距離的には3000mが限界だろうから、今回はきっちりと仕上げてくるはず。
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タンタアレグリア →馬体を見る
古馬になって胴部にさらに長さが出て、いかにも長いところが合いそうな馬体。
筋肉のメリハリという点では物足りないが、ステイヤーはこれぐらいで問題なし。
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マイネルメダリスト →馬体を見る
胴部にある程度の長さはあるが、手脚が短いため、重心が低くパワータイプに映る。
馬体の仕上がり自体は良く、気性的にも素直そうなので、この馬の力は出し切れる。
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スプリングSを当てるために知っておくべき3つのこと

Springs

■1■皐月賞と結びつきやすい
本番と距離が同じ弥生賞が皐月賞に結びつきにくいのに対し、1800mで行われるスプリングSからは過去17頭の皐月賞の勝ち馬が出ている。理由として考えられるのは、以下の2つ。

1、 中3週というレース間隔が調整しやすい
2、 皐月賞に似た底力勝負のレースになりやすい

1については、皐月賞に向けてという意味では、スプリングSで勝った時の体調を引き続きキープしやすいということである。弥生賞から皐月賞だと中5週となってしまい、レース間隔が開いていることでかえって調整が難しくなってしまうのだ。中3週だと体調を維持することに気をつければよいが、中5週だと一旦僅かに緩めてもう一度仕上げ直すことになる。

2については、弥生賞がスローの瞬発力勝負になりやすいのに対し、スプリングSは平均ペースの耐久勝負になる傾向がある。わずか200mの距離の違い(コース設定)が、レースの質にも影響を与えるからである。そして、本番の皐月賞は後者に近いペース(平均~ハイペース)になるからこそ、スプリングSの勝ち馬や好走馬が皐月賞につながりやすいということになる。

■2■パワーとスタミナが問われる
上記のように、中山2000mで行われる弥生賞に比べ、1800mで行われるスプリングSは道中で緩むところが少なく、耐久戦になりやすい。軽さと瞬発力ではなく、パワーとスタミナを問われるレースになるのだ。血統的には、ダートを得意とする血やヨーロッパのスタミナ血統の馬が走っているのが目立つ。また、4つコーナーを回る小回りのレースだけに、どうしても前に行ける馬にとって有利になる。速い脚を持続できる地脚の強い馬を狙うべきだということだ。

■3■前走連対馬と1番人気が強い
前走1着   【4・5・6・45】
前走2着   【2・2・3・11】
前走3着   【3・0・0・3】
前走4着以下【0・2・0・45】

過去10年のスプリングS連対馬20頭のうち、13頭が前走で連対している。クラシック開幕まで残り4週間という時期であり、素質馬が本番へ向けて集結してくる以上、前走で負けている(最低2着は確保)馬では苦しいということだろう。もちろん、重賞以外のレースで負けているような馬では勝負にならない。

1番人気   【3・4・2・0】
2番人気   【1・0・3・5】
3番人気   【2・2・0・5】
4番人気以下【2・0・1・15】

さらに、その素質馬たちの中でも1番人気に推された馬は、過去10年で3勝を挙げ、連対率にしても67%と圧倒的な数字を出している。前走の内容が良かったということであり、底力が試されるレースだけに実力がそのまま反映されやすい。

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阪神大賞典を当てるために知っておくべき3つのこと

Hansindaisyouten

■1■瞬発力勝負に
過去10年間、勝ち馬の上がり3ハロン時計は以下のとおり。

平成18年 ディープインパクト  36秒8
平成19年 アイポッパー      34秒3
平成20年 アドマイヤジュピタ  34秒7
平成21年 アサクサキングス  40秒6
平成22年 トウカイトリック    36秒0
平成23年 ナムラクレセント   35秒3
平成24年 ギュスターヴクライ 37秒1
平成25年 ゴールドシップ    36秒8
平成26年 ゴールドシップ 34秒5
平成27年 ゴールドシップ 35秒5

上がりが遅いレースと速いレースの差が激しいように見えるが、実はディープインパクトが勝った年は、馬場が重く、異常なほど強い風が吹いていた。また、平成22年はそのディープインパクトの2着したトウカイトリックが4年越しで勝利したように、上がりが掛かる競馬であった。平成21年は不良馬場であったため時計が掛かった。そして、平成24年はやや重馬場に加え、オルフェーヴルのまさかの逸走があり、上がりの掛かる展開に。

しかし、それ以外のほとんどの年は上がりが34秒台となっていて、基本は瞬発力勝負になりやすい舞台と考えてよい。3000mを走って34秒台で上がってくるのだから、道中がいかに遅いペースで流れ、ラスト3ハロンの瞬発力勝負になっているかが分かる。これが阪神大賞典と天皇賞春の結びつきが強い理由のひとつでもある。長距離戦だからといって、決してスタミナ豊富な馬が有利なのではなく、まずは瞬発力が求められることを知っておきたい。

■2■内枠で先行出来る馬が有利
スローペースの瞬発力勝負になりやすい以上、当然のことながら、内枠を引いて内々の経済コースを進んだ馬が有利となる。ただし、長距離戦では各馬もコースロスを意識して外々を回らないように運んでくるため、たとえスローペースであっても、馬群は縦長になることが多い。そのため、内外という枠順でそれほど大きな差は生じない。内枠から発走して、前にポジショニングできて、ラスト3ハロンの瞬発力勝負に強ければ、勝ち負け必至のレースである。

■3■1番人気馬が圧倒的に強い
過去10年間の人気ごとの成績は以下のとおり。

1番人気【4・3・2・1】 連対率70%
2番人気【2・0・2・6】 連対率20%
3番人気【2・1・2・5】 連対率30%

1番人気馬の連対率が7割と、圧倒的な安定感を誇っていることが分かる。これは人気馬が強いということではなく、長距離戦では各馬の実力や仕上がり具合が如実に現れてしまうということである。たとえ展開やレースの綾があったとしても、力のない馬や仕上がりの良くない馬が好走してしまう確率は極めて低い。実力と仕上がり状態をそのまま信頼してよいレースである。

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集中連載:現代のコアな競馬ファンがすなる一口馬主というものを(第9回)

Hitokuti09


シルクホースクラブから馬名が決まったとの知らせが入った。私が初めて出資する馬の名は、クインアマランサス。女王+母の馬名の一部という、穏当な名前に落ち着いた。まあ、このあたりは一口馬主だけに仕方ない。個人的な思い入れの入ったエキセントリックな名前をつけるわけにはいかず、どうしても最大公約数的な名前になる。とはいえ、昔から名は体を表すとも言われ、これまでの競馬の歴史を鑑みても、名馬にはやはりそれなりの名前が付けられている。セントライト、テンポイント、シンザン、ミスターシービー、シンボリルドルフ、ディープインパクト、キングカメハメハ、オルフェーヴル、ウオッカなどなど、挙げていけばキリがない。その強さに後から名前が符号してくることは確かだろうが、どの名馬も立派な名前を有している。

立派な名前をつければ馬が強くなるなんて言うつもりはない。それでも、大切なことは、人間がその1頭の馬に対して思い入れを持つことである。生産から育成、調教から身の周りの世話に至るまで、人間が思い入れを持って馬に接することが、その馬が強くなり成功するかどうかを大きく左右する。これは決して非科学的な話ではなく、どれだけの時間と労力が費やされ、その馬のことを考え、様々なアプローチを試みて、時間をかけて育てられ、心身のコンディションを整えてもらったかにサラブレッドの競走生命は委ねられている。飛び抜けた才能を持つ馬はそうではないかもしれないが、ほとんどの馬にとっては、関わる人間の情熱の量が運命を決めると言っても過言ではない。

「だからこそ、できるだけ高い値段で馬を売りたいんです」とある生産者は言っていた。もちろんビジネスとして高く馬を売りたいと思うのは当然のこととして、実はそれだけではなく、高く売れた馬はそれだけ大事にしてもらえる確率が高いという意味である。すべての馬がそうであるとは言わないが、安く買われて行った馬はそれほど期待されずに、それなりの扱いしか受けない。高値で買われた馬は、それだけの育成場に預けられ、それだけの調教師のもとに入厩する。どの馬にも可能性があって、公平に接するべきと頭では分かっていても、無意識のうちに、いや、自然な感情として、ある一定水準以下の値段で買われた馬には期待が掛けられない。同じ馬であっても、髙値で買われた方が周りの人間の意識が違うため、成功の可能性が広がる。

どんな名前をつけられたかは、人間がその馬に対してどれだけの愛情や情熱を持って関わっているかの一端を表しているのではないか。だから私は冠名のつく馬があまり好きではない。たとえ高値の馬であっても、その馬に対する思い入れが感じられないからだ。そう考えると、穏当な名前の馬は最大公約数的な成績しか残せないのかもしれない。それは共同馬主という制度の限界を示している。それでも、と私は考えを改める。ヒカルアマランサスにとっては初めての仔だし、生産者にとっても、育成のスタッフにとっても、調教師にとっても、1頭の良血馬であることは確かである。値段が高くなかろうが、名前が凡庸だろうが、目の前にいる1頭のサラブレッドに情熱を注ぎこめるのが真のホースマンであろう。そのように信じていれば、クインアマランサスが、その名の意味どおり、枯れることのない女王という名前を立派に体現してくれるかもしれない。

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本番につながらないステップレースの狙い方

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本番であるG1レースにつながるステップレースと、そうでないステップレースがある。たとえば今週行われるフィリーズレビューは、過去10年間において、ここを使って本番・桜花賞を制した馬はレジネッタのみ。1週間前に行われるチューリップ賞からは7頭の桜花賞馬(ダイワスカーレット、ブエナビスタ、アパパネ、ジェンティルドンナ、アユサン、ハープスター、レッツゴードンキ)が出ており、その差は歴然としている。チューリップ賞とフィリーズレビューを天秤にかけた場合、桜花賞へのつながりを意識すれば前者をステップにする方が望ましいのは明らかである。

にもかかわらず、フィリーズレビューを選択する馬がいるのは、距離(または折り合い)に不安を抱えている、もしくはフィリーズレビューの方に適性がある(勝つ可能性が高い)と陣営が考えているからである。いずれにしても、桜花賞につながりにくいステップレースであることは確かであり、フィリーズレビューはフィリーズレビューとして、つまり桜花賞へのステップレースではなく、芝1400mの競走に狙いを定めてきた短距離馬たちによるひとつの重賞として予想しなければならないのである。

フィリーズレビューというレースの特性が如実に現れたレースとして、アストンマーチャンが勝った2007年のそれが挙げられる。この年はアストンマーチャンだけではなく、ウオッカ、ダイワスカーレットという名牝が揃った、史上最強といっても過言ではない世代であり、牝馬たちによる極めてハイレベルの争いが繰り広げられた。この3頭は桜花賞に向けて、アストンマーチャンはフィリーズレビュー、ウオッカとダイワスカーレットはチューリップ賞に枝分かれすることになった。レースラップを見比べてみると、この2つのレースの違いが分かる。


☆続きはこちら(フィリーズレビューの予想&馬券を公開中です)

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シルエットが実に美しいシュンドルボン:5つ☆

★フィリーズレビュー
アットザシーサイド →馬体を見る
いかにも3歳牝馬らしい線の細さはあるが、馬体全体のシルエットは美しい。
この時期にしては毛艶が良くなっておらず、ひと叩きされて良くなるタイプか。
Pad4star

キャンディバローズ →馬体を見る
ディープインパクト産駒らしからぬ力強さが前駆に宿っており、パワータイプ。
母系の血が濃く出ているのだろう、ジュベナイルFの舞台はこの馬に合っている。
Pad4star

メイショウスイズキ →馬体を見る
前後にしっかりと実が入って、パイロ産駒らしいパワーとスピードに溢れている。
腹回りにはまだ余裕があり、もうひと絞りされてこそ粘りが増すのではないか。
Pad3star

クードラパン →馬体を見る
筋肉のメリハリという点では今一歩であり、トモの肉付きが物足りない。
前駆が勝っている馬体のつくりで、最後のひと踏ん張りのパワーがほしい。
Pad3star

ワンダフルラッシュ →馬体を見る
首が細くて線の細さは否めないが、それだけ先々の成長が望める馬体ともいえる。
このメンバーに入るとパワー不足で、筋肉のメリハリにも乏しい。
Pad3star

ボーダレス →馬体を見る
前駆は力強いが、その分、トモのつくりが物足りなく、パワー不足は否めない。
顔つきからは素直そうな気性が伝わってくるようで、安定して力は出せる。
Pad3star

★中山牝馬S
ルージュバック →馬体を見る
古馬になってやや胴部が伸びたように映るが、その分、重心が低く映る独特の体型。
幼さが目立っていた馬体も力強さが増して、天性のバネにパワーが加わってきた。
Pad4star

シュンドルボン →馬体を見る
各パーツに十分な長さがあり、胴部も長く、全体のシルエットは実に美しい。
毛艶も素晴らしく、血統的にも馬体的にもスタミナの豊富さが見て取れる。
Pad5star

レイヌドネージュ →馬体を見る
毛艶もそれほど良くなく、腹回りにも余裕があり、どう見ても完調には及ばない。
表情にも闘争心が見られず、レースまでにどこまで気持ちが向かっていくか。
Pad3star

アースライズ →馬体を見る
馬体全体のシルエットは牝馬らしくスマートだが、パワーという点で物足りない。
バランスは良いので、どんなレースでも安定して力が出せるのが良い点か。
Pad3star

ノボリディア―ナ →馬体を見る
前後躯にバランス良く実が入ってはいるが、胴部にはまだ余裕が残っている。
毛艶も冴えず、完調にはほど遠く、この馬が強くなるのはもう少し先か。
Pad3star

シングウィズジョイ →馬体を見る
3歳時に比べて、馬体が大きく成長し、全体に力が付きつつ皮膚は柔らかい。
重心が低く映る馬体であり、その分、距離は2000mぐらいまでがベストか。
Pad4star

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ゴールドシップは本当にゴールドシップだったのか?

Goldship02

ゴールドシップが引退式を行った昨年暮れの有馬記念から、もうすでに2か月以上が経ったにもかかわらず、競馬関連の雑誌やインターネットには彼の名前や姿に溢れている。アーティストが亡くなってから讃えられるのとはまた違って、ゴールドシップという存在が競馬ファンからどれだけ純粋に愛されていたかを物語っている。私にとってゴールドシップは現役時代に応援する馬の1頭でしかなかったが、なぜか今になって、彼の偉大さが分かり、そしてその血に秘めたドラマを知ったことで、彼のことが頭から離れなくなってしまった。もうゴールドシップの勇姿をターフで見ることはできないが、彼の血やこれから彼が残すであろう後継者たちを通し、彼のことを改めて好きになりたいと思う。

血に秘めたドラマとは、今月号の「優駿」で語られていたスイートフラッグのことである。下総御料牧場が生産した同馬を和田共弘氏が購入し、野平祐二騎手が騎乗した。野平祐二騎手のファンであった小林英一氏は、彼の乗るスイートフラッグに心を奪われ、将来馬主になったときにはこの馬の系統を持ちたいと心に誓ったそうである。


「野平の祐ちゃんの騎乗に、これから競馬は変わるのではないか、と可能性を感じたわけですよ。競馬から離れられなくなったのは、あの人のせいじゃないかと思うんですよね。だから63年も続けてきたわけです」

小林英一オーナーが野平祐二騎手のファンであったことに驚き、スイートフラッグの系統を探して見つけたパストラリズムにメジロマックイーンを配合し、そこにステイゴールドの血が入ったことで飛び出してきたのがゴールドシップだったことにまた驚愕した。もとを辿ってゆくと、ゴールドシップは野平祐二騎手から生まれた馬であったのだ。名馬は生産者の第6感のひらめきから誕生するものだが、まさか野平祐二騎手がそのきっかけとなっていたとは思いも寄らなかった。それを知ってからは、ゴールドシップがまた違ったゴールドシップに見えるようになった。

ゴールドシップは本当に私たちが思うゴールドシップだったのだろうか。引退後の彼の黒い瞳や愛らしい仕草を見るにつけ、私たちが彼に抱いていた凶暴で気難しくて、人間の言うことを聞こうとしない我がままな馬というイメージとは対極にある、頭が良くて、大人しくてユーモアに溢れる優しい馬ではなかったのかと思えてならない。ゲートでいきなり立ち上がったり、全く本気で走ろうとしなかったり、ジョッキーを振り落そうとしたりと、横暴に映った行動にも彼なりの意味や理由があって、それを私たちが理解できなかったのだろう。おそらく彼は、これから私たちの期待を超えた子どもたちをターフに送り込んでくるはず。なぜなら、ゴールドシップは本当は私たちの知っているゴールドシップではなかったからである。

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「ゴールドシップはなぜ立ち上がったのか?」

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藤田菜七子という原石

Nanako_2藤田菜七子騎手が中央競馬でデビューした3月5日(土)の第2レース、直線で馬群に沈んだかと思わせて、最後に伸びてきて2着を確保したシーンを見て、なぜか目頭が熱くなった。たとえば女子マラソンのゴールシーンで泣けてきたり、(なぜか男性ではなく)女性がひたむきに何かに取り組んでいる姿を見ると、胸が熱くなってしまう。正直に言って、今の彼女は騎乗技術云々を言うレベルにはない。しかし、長い目で見てサポートしていけば必ず洗練されていくはず、と思わせる何かを持っている。それは今まで中央競馬でデビューした女性騎手にはなかった何かである。

女性だからといって祭り上げるのは愚の骨頂だが、藤田七菜子騎手には、かつての武豊騎手がそうであったように、人気は追い風にしつつ、その裏では騎手としての自分を高めていってもらいたい。最後に評価されるのは、騎手としての技量であり、その在りようである。そこを求める気持ちがあれば、これから先、大きなスキャンダルが待ち受けているとしても、世間から見放されたとしても、騎手として生きていけるだろう。巧ければ何をやってもいいということではないが、騎手として立つことができていれば、過去はすべて笑い話になる。

こんなことを書くと怒られるだろうが、潰される人、潰れてしまう人はもともとその世界に向いていなかったのだ。私もいろいろな世界を見て来たけど、結局、トップに立ち続けている人はそうあるべき人であった。才能はあったけど運や環境が悪かったよね、なんていう人は実は才能しかなかったのだ。才能なんてものは、多かれ少なかれ、誰しも持っている。それを最後まであきらめることなく、磨き続けることができるかどうかが、最後には問われる。自分がこうと決めた好きなことをやり続ける。もしそういう野心や情熱を持ち続けられないならば、華のように散っていくしかない。

藤田菜七子騎手の「週刊Gallop」におけるインタビューや競馬場での立ち振る舞いを見ていると、本能的にそれが分かっているのではないかと感じた。彼女は馬に乗ることが好きなのだろう。馬に乗ることを楽しんでいる。騎乗技術はあとからついてくる。周りの関係者たちは、この先何があっても、彼女がずぶとく明るく騎手生活を送れるようにサポートしてもらいたいし、そのためにも藤田菜七子騎手にはひたむきに騎手としての己を磨きあげていってもらいたい。ひさしぶりに楽しみな女性騎手が中央競馬に誕生した。その笑顔を見続けるためにも、大きな期待を込めつつ温かい心で見守りたい。

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フィリーズレビューを当てるために知っておくべき3つのこと

Filiesreview

■1■本番・桜花賞との結びつきが弱い
過去10年間で、フィリーズレビューを使って本番・桜花賞を制した馬はレジネッタのみ。1週間前に行われたチューリップ賞からは7頭の桜花賞馬(ダイワスカーレット、ブエナビスタ、アパパネ、ジェンティルドンナ、アユサン、ハープスター、レッツゴードンキ)が出ており、その差は歴然としている。

その理由はひとつ。チューリップ賞とフィリーズレビューを天秤にかけた場合、本番へのつながりを意識すれば前者をステップにする方が望ましいのは明らかで、にもかかわらずフィリーズレビューを選択するのは、陣営が距離(もしくは折り合い)に不安を抱えているからである。僅かでも距離に不安を感じている馬が、さらに厳しい流れになるG1レースのマイル戦を勝つのは難しい。

■2■最後にもうひと伸びできるパワー
スプリント色の濃いメンバーが集まるからこそ、かえってレースの流れは厳しくなることが多い。過去10年間のラップタイムを見てみると(下参照)、スローに流れてしまいがちなチューリップ賞よりも、ミドルからハイペースに流れやすいレースの傾向が浮かび上がってくる。そのため、結局、スピード一辺倒のスプリンターでは勝ち切れず、ハイペースを好位で追走して最後にもうひと伸びできるパワーも要求される。

フィリーズレビュー過去10年ラップタイム
12.1-11.0-11.3-11.7-11.5-11.3-12.3(34.4-35.1)M
12.6-10.9-11.3-11.7-11.8-12.2-12.6(34.8-36.6)H
12.5-10.9-11.4-11.7-11.4-11.7-12.2(34.8-35.3)M
12.1-11.0-11.7-11.9-11.6-11.8-12.4(34.8-35.8)H
12.3-10.5-11.5-12.0-12.2-12.0-11.9(34.3-36.1)H
12.2-11.0-11.8-12.1-11.8-12.0-11.9(35.0-35.7)M
12.3-10.5-11.3-11.8-12.0-11.8-12.6(34.1-36.4)H
12.2-10.7-11.4-11.8-11.9-11.9-12.9(34.3-36.7)H
12.3-10.9-11.7-11.8-11.3-11.9-12.2(34.9-35.4)M
11.9-10.9-11.8-12.1-11.7-11.4-12.5(34.6-35.6)H
12.2-11.0-11.5-12.0-11.7-11.8-12.3(34.7-35.8)H

3■阪神1400m
スタート後、3コーナー過ぎまでの距離はおよそ440mと十分にあり、テンはそれなりに速くなる。そして、3~4コーナーが複合カーブであるため、スピードが落ちない。そのため、緩急のない全体的に速いペースで道中は流れる。しかし、3コーナーからゴール前に至るまで下りが続くため、そのまま流れ込むことの出来る先行馬が有利。

とはいえ、3~4コーナーの間に偽直線を挟んでいるため、差し馬もペースに応じて先行集団との差を詰めることが出来る。先行馬が有利なコースではあるが、決して差し馬に不利なコースではない。むしろ道中のペースが速くなりすぎると、直線の急坂で先行馬が総崩れということも十分にあり得るので注意。

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トライアルレースの狙い方ー各陣営の試みや思惑まで込みで予想する【超・馬券のヒント第50回】

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クラシック戦線に向けたトライアルレースが行わる季節になると胸が高鳴る。有力馬たちはどのようなレースを見せてくれるのか、果たして伏兵馬は現れるのか。私たち競馬ファンだけではなく、それぞれの関係者の想いが交錯し、織り成されるドラマの伏線となるのがトライアルレース。そして、その名のとおり、本番であるG1レースへ向けて、いろいろなことを試してみることができるのも、トライアルレースなのである。

たとえば新しい馬具を装着してみたり、調教のスタイルを変更してみたりという細かい試みから、騎手を交代してみたり、脚質を転換してみたりという大胆な試みまで。さすがに本番ではできないようなことを試してみる最後のチャンスとなる。やってみて失敗したら改めれば良いし、成功したらそのまま本番に向かう。

そのような試みの中で、“脚を測る”ということがある。前半ゆっくりと走らせたら、最後にどれぐらいの脚を使ってくれるのか。スタートから出して行き、これまでよりも前のポジションで追走させたら、直線に向いたときにどれほどの脚が残っているのか。さらに他のライバル馬たちは、どのような走りをして、どれほどの脚を持っているのか。自分の馬の脚はもちろん、本番でも対決することになるであろう他馬の脚もトライアルレースで測るのだ。

かつて武豊騎手は
・・・

★新しい予想型コラム「超・馬券のヒント」の続きはこちら
弥生賞の予想と馬券も公開中です!

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惚れ惚れしてしまうエアスピネル:5つ☆

★チューリップ賞
シンハライト →馬体を見る
牝馬特有の線の細さはあるが、ギスギスした感じはなく、ふっくらとしている。
全体のシルエットは美しく、気性面でも難しさではなく鋭さを感じさせる顔つき。
Pad4star

ブランボヌール →馬体を見る
ディープインパクト産駒にしては重心が低いように、典型的な短距離馬の体型。
前駆には力強さを感じさせるが、阪神の芝1600mはやや距離に不安がある。
Pad3star

デンコウアンジュ →馬体を見る
休み明けということもあってふっくらとして、昨年の疲労はほぼ回復している。
前後躯にしっかりと実が入って、尾離れも良く、このメンバーでも引けを取らない。
Pad4star

ジュエラー →馬体を見る
この馬も馬体が薄く、牝馬らしい線の細さを感じさせるが、毛艶は良く好調は間違いない。
表情を見ると、気持ちの強さと難しさが同居しているようで、好走も凡走もあり得る。
Pad3star

レッドアヴァンセ →馬体を見る
スタミナ寄りの母系から血を受け継いでいるのか、全体的に長さのあるシルエット。
力強さという点では物足りないが、手脚に伸びがあって、距離延びて良いはず。
Pad3star

ウィンファビラス →馬体を見る
コロンとして映るように、母父アドマイヤコジーンの体型が強く出ているのか。
表情も柔和で、馬体もふっくらと、ステイゴールド産駒の弱さが表に出ていない。
Pad3star

★弥生賞
リオンディーズ →馬体を見る
牡馬にしては線の細い馬体は相変わらずだが、手脚と胴部には伸びがある。
毛艶も素晴らしく、2歳時に比べると前後躯にも実が入ってきている。
Pad4star

エアスピネル →馬体を見る
惚れ惚れしてしまうような、筋肉量とメリハリのある馬体で仕上がりも良い。
顔つきからも聡明さが伝わってきて、3歳春とは思えない完成度の高さを誇る。
Pad5star

マカヒキ →馬体を見る
首に長さがあるが、頭の位置が高く映るように、首回りの発達がこれからの課題か。
馬体全体のシルエットは素晴らしいため、各パーツに実が入ってくれば楽しみ。
Pad4star

タイセイサミット →馬体を見る
他の馬たちと比べると、首の位置が水平に近く、まだ馬体に力が付き切っていない。
とはいえ、皮膚の薄さは特筆ものだけに、どんなレースでも柔軟に対応できそう。
Pad3star

ヴィガ―エッジ →馬体を見る
胴部には十分な長さがあって、馬体全体のシルエットは素晴らしく、将来性は高い。
顔つきからは素直そうな気性が伝わってきて、現時点での力は出し切れるはず。
Pad4star


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弥生賞を当てるために知っておくべき2つのこと

Yayoi

■1■弥生賞と皐月賞は連動しない
皐月賞と同じ舞台で行われるものの、過去10年間で弥生賞と皐月賞を連勝したのはディープインパクト、そしてヴィクトワールピサという2頭の名馬のみ。その理由について、ラップタイプから考察してみたい。

弥生賞の過去10年間のラップタイムは以下のとおりである。

13.0-11.9-12.5-12.3-12.5-12.6-12.5-11.6-11.4-11.9(62.2-60.0)S
12.4-11.3-12.5-12.6-12.4-12.0-12.7-12.3-11.7-11.6(61.2-60.3)S
12.3-10.6-11.6-12.8-12.5-12.6-12.9-11.8-11.7-11.7(59.8-60.7)M
12.2-11.5-12.4-12.8-12.9-12.5-12.3-11.7-11.3-12.2(61.8-60.0)S
12.4-11.3-12.2-13.0-13.1-13.0-12.7-12.2-11.5-12.1(62.0-61.5)M
12.8-11.3-12.2-12.8-12.6-12.4-12.2-11.8-11.2-11.7(61.7-59.3)S
12.5-11.0-12.7-13.5-13.4-13.1-12.3-11.9-11.5-12.0(63.1-60.8)S
12.9-11.4-12.2-12.4-12.7-12.5-11.7-11.6-11.4-12.2(61.6-59.4)S
12.4-11.0-12.2-12.8-12.8-11.9-11.9-12.3-11.9-12.2(61.2-60.2)S
12.5-11.4-12.3-12.4-12.7-12.0-12.1-12.1-11.9-12.4(61.3-60.5)M

前半3ハロンとラスト3ハロンを除いた中盤のラップに焦点を当ててみると、軒並み12秒台が続いていることが分かる。以前、中山金杯の分析をした際、皐月賞は中盤が緩むという指摘をしたが、それに輪をかけるように弥生賞はその傾向が顕著である。

そこで、今度は、過去10年間の皐月賞のレースラップを見てみたい(東京競馬場で行なわれた2011年は除く)。

12.5-11.3-12.4-12.9-12.6-12.6-12.2-11.4-11.5-11.8(61.7-59.5)S
12.5-11.3-12.4-12.9-12.6-12.6-12.2-11.4-11.5-11.8(59.7-58.9)M
12.1-11.0-11.9-12.2-12.4-12.6-12.5-11.8-11.4-11.3(59.6-59.6)M
12.3-11.3-12.0-12.1-12.3-12.0-12.2-11.8-11.7-12.2(60.0-59.9)M
12.2-11.2-12.1-11.6-12.3-12.3-12.3-11.6-12.0-12.3(59.4-60.5)H
12.2-11.5-12.5-12.6-12.6-12.8-12.3-11.2-11.5-12.5(61.4-60.3)S
12.1-10.8-11.9-12.1-12.2-12.1-11.9-11.8-11.7-12.1(59.1-59.6)M
12.1-10.9-12.4-12.1-12.6-12.5-12.3-12.1-11.8-12.0(60.1-60.7)M
12.4-11.1-12.3-11.9-11.4-11.6-12.2-12.7-13.6-12.1(59.162.2)H
12.0-10.6-11.5-11.6-12.3-12.1-12.0-11.9-12.0-12.0(58.0-60.0)H
12.3-11.4-11.9-11.9-12.7-12.1-12.0-11.6-11.7-12.0(60.2-59.4)M
12.5-10.7-12.0-11.8-12.2-12.2-12.1-11.7-11.4-11.6(59.2-59.0)M

中盤が緩む傾向は同じだが、ひとつだけ弥生賞との相違点がある。それはレース全体のペースである。どちらかというとミドル~ハイペースになる皐月賞に比べ、弥生賞はどちらかというとスローに流れやすい。つまり、弥生賞はスタミナの裏づけがないマイラーでも乗り方次第ではこなせてしまう可能性があり、ラスト3ハロンの瞬発力勝負に強い馬に圧倒的に有利なレースになるということである。過去、サンデーサイレンス産駒の活躍が目立ったのもこれゆえである。

結論としては、弥生賞の勝ち馬を見つけるためには、皐月賞を占うレースであるにもかかわらず、皐月賞では勝てそうにないタイプの馬を探すべきということである。どういう馬かというと、サンデーサイレンスの血を受け継いだ、スピードタイプの瞬発力に優った馬である。

■2■勝ってほしくないレース
弥生賞は勝って欲しくないレースである。このレースを勝つということは、素質や能力、そして完成度が高いということの証明ではある。しかし、今後のクラシック戦線を考えると、敢えて勝たなくても(勝とうとしなくても)良いレースなのではないだろうか。

弥生賞は皐月賞と同じ中山2000mという舞台で行われるが、弥生賞を勝って、そのまま皐月賞をも制する馬は思いのほか少ない。その世代の素質馬が集結するハイレベルの弥生賞を制した馬は、普通に考えて、弥生賞と同じ走りができれば皐月賞はほぼ当確である。それでも、過去10年で弥生賞と皐月賞を連勝した馬は、ディープインパクトとヴィクトワールピサの2頭しかいない。

なぜこのような現象が起こるかというと、以下の2つの理由が考えられる。

1、弥生賞はかなりの状態に仕上がっていないと勝てない
2、弥生賞と皐月賞では馬場状態が異なる

クラシックを狙う有力馬が一堂に会する弥生賞は、当然のことながら、中途半端な仕上がりでは勝つことはできない。弥生賞を勝つためにはかなりの仕上げを施さなければならず、本番前に仕上げられた(仕上がってしまった)馬は、本番に向けて下降線を辿ってしまう。サラブレッドのピークはそれほど長くない。つまり、弥生賞を勝つために仕上げてしまうと、そのあとが続かないということである。また、それまでは楽な相手と楽な競馬しか経験してこなかった馬が、弥生賞で初めて厳しいレースを強いられるので、その肉体的、精神的な反動が次のレースで噴出してしまう。

その典型的な例は、平成12年の弥生賞を制したフサイチゼノンではないか。田原成貴元調教師と関口オーナーの間で一悶着あった馬であるが、フサイチゼノンは弥生賞の時点で既に仕上がってしまっていた。田原調教師はフサイチゼノンにかなりの素質を感じていただろうし、初年度である厩舎を盛り上げるためにも、弥生賞も勝って本番に臨みたかったに違いない。

しかし、その勝ちを焦る気持ちが、フサイチゼノンを追い詰めてしまったのだ。肉体的にも精神的にもピークを過ぎてしまったフサイチゼノンは、もはや皐月賞に出走する状態にはなかった。関口オーナーに相談をしなかったのは田原元調教師の落ち度だが、出走を取りやめたのは英断であったと思う。

もうひとつの理由としては、弥生賞は中山開催が始まってすぐの比較的良い馬場で行なわれる(それでもやや重い)のに対し、皐月賞は見た目こそ悪くなくとも、かなり芝が重くなってきている馬場状態でのレースとなるからである。極端にいうと、弥生賞は軽いスピードと瞬発力を生かした馬が勝ちやすいのに対し、皐月賞はパワーとスタミナが求められるということだ。この1ヶ月間で、勝馬に問われる適性が180度違ってくるのだから、勝ち馬が同じでないことにも納得がいく。

本番のクラシックで力を出し切ってほしいという思いを込めて、弥生賞は勝ってほしくないレースなのである。2009年はロジユニヴァースが弥生賞を勝ち、本番の皐月賞で惨敗をしてしまった。ロジユニヴァースの弥生賞は決して厳しいレースではなかったが、陣営の思いとは裏腹に仕上がってしまっていたのだろう。皐月賞惨敗後、奇跡的なV字回復を遂げてダービーを制したので結果として良かったが、本番のクラシックにおける体調は万全とは言えなかった。

2010年のヴィクトワールピサは弥生賞を勝ち、皐月賞をも制したが、本番の日本ダービーでは不思議な凡走をしてしまった。これも1の理由とつながってくる。弥生賞でかなりの仕上がりにあって、しかも皐月賞も勝つということは、体調のピークが皐月賞にあったということ。たとえ皐月賞を勝つことができても、あくまでも目標が日本ダービーということであれば、弥生賞は勝ってほしくないレースということに変わりはない。

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集中連載:現代のコアな競馬ファンがすなる一口馬主というものを(第8回)

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第1部が終わり、お昼休みに入った。この間に軽い軽食として食べたラーメンが美味しかった。馬主しか食べられないコーナーがあり、いつか私もここで食事をしてみたいと感じた。ふと周りを見回すと、休憩にもかかわらず、馬を見ている関係者たちがあちこちにいる。彼らは気になった馬は1頭でも多く見ようと、食事を取る間も惜しんで、馬を出してもらい、つぶさに馬体を観察している。その中に、石橋守調教師や河内洋調教師もいた。セレクトセールなどに比べると、それほど高額馬が上場されるセールではないにもかかわらず、掘り出し物を探しに、馬のいるところならばどこでも行くという雰囲気が漂っている。

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そうこうしていると、セリが始まったのか、必然的に場全体の雰囲気もピリッとしたものに変わる。セリ場に入る前に、順番待ちをしながら引かれている馬もいるし、そのさらに前に屋外で周回している馬もいる。ここではどの馬も多くの人間の視線にさらされる。これだけたくさんの人間に一度に見られることは初めてという馬もいるかもしれない。自分が商品として観察される気持ちはいかようなものだろう。それでも、ほとんどの馬たちは、人間が見ていることなどお構いなしという仕草で堂々と歩いている。むしろ引いている人間の方が緊張しているかもしれない。

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私はセリの会場に入った。満席とまではいかなかったが、空席がちらほら目立つ程度で、人の入りも多い。安田隆之調教師の姿も見えた。主催者から金額が提示されると、それ以上の声が上がり、さらにそれを上回らんと値段が次第に吊り上がっていく。ほとんど主取り(買い手がつかない)になってしまう年もあるが、今年のオータムセールはまさに競り合いという様相を呈しており、人々の馬を買おうという気持ちが高まっていることが手に取るように伝わってきた。今回は馬を買うつもりで来たわけではないにもかかわらず、こうした雰囲気の中にいると、心が躍り、競りに加わってしまいそうになる自分を抑えるので精いっぱい。もしここで私が、「500万!」と声を上げたらどうなるのだろうかと、おかしな妄想で頭の中が一杯になった。

社台グループの創始者であり、ノーザンテーストやサンデーサイレンスを日本に輸入した吉田善哉さんは、名生産者は名バイアーでなくてはならないとして、セリで良い馬を買うためのコツを以下のように指南している。

吉田さんに、こうした良馬を買う方法をたずねると、「まあとにかく、たくさんのセリに出かけて、とことん良い馬を探すことです」という。吉田さんは子供の頃から父親に連れられて各国の馬を観てまわっている。年をとるにつれて、吉田さんは更に多くのセリに出かけていくことになる。キーランド、サラトガ、ニューマーケット、カラ、ドーヴィル、浦河、静内、むろん地元の千葉や胆振はいうにおよばず、セリのあるところ吉田善哉さんの顔があるといっても過言ではないだろう。だが、吉田さんが本当に欲しい馬を買えるようになったのは最近である。「長い間指をくわえて観ていたのですよ。しかし、それがとても重要なことです」と吉田さんはいう。セリで成功する方法の第一は、指をくわえて観ること!セリに出かけていくと、何頭かはどうしても欲しい馬に出合うものだ。何度もセリに出かけて行って、欲しい馬に出合わないのなら、馬産家としての才能がないとあきらめた方がよいだろう。もし、サラブレッドに対する何らかの見識があるならば、絶対に欲しくってたまらない馬に出合うはずである。そして、その馬を他人がセリ合っているのを、じっとがまんの子で観ている。やがて、もうどうしようもなく買わなければならない馬に出合うはずだ。そんな時、お金がなくても何らかの手段を講じて、買いにまわるのである。 (「新しい競馬のビジョン」山野浩一著 より)

それにしてもサラブレッドは美しい。セリ場でスポットライトに光り輝く馬を見ていると、その馬を走らせて賞金を稼がせたいという野心などはちっぽけなものであって、この人間がつくりだした芸術品を手に入れたいという崇高な気持ちが湧いてくるから不思議である。それは所有欲にまみれた、コレクション趣味の男の性なのかもしれないが、競馬が好きな人、馬を愛する人ならば私のこの気持ちを分かってくれるかもしれない。近いうちにまた来てみたい、いつか自分もこの場で競りに参加してみたい、そんな青白い小さい炎が私の心に灯った気がした。私はオータムセールをあとにして、門別競馬場に向かった。

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