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ゴールドシップは本当にゴールドシップだったのか?

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ゴールドシップが引退式を行った昨年暮れの有馬記念から、もうすでに2か月以上が経ったにもかかわらず、競馬関連の雑誌やインターネットには彼の名前や姿に溢れている。アーティストが亡くなってから讃えられるのとはまた違って、ゴールドシップという存在が競馬ファンからどれだけ純粋に愛されていたかを物語っている。私にとってゴールドシップは現役時代に応援する馬の1頭でしかなかったが、なぜか今になって、彼の偉大さが分かり、そしてその血に秘めたドラマを知ったことで、彼のことが頭から離れなくなってしまった。もうゴールドシップの勇姿をターフで見ることはできないが、彼の血やこれから彼が残すであろう後継者たちを通し、彼のことを改めて好きになりたいと思う。

血に秘めたドラマとは、今月号の「優駿」で語られていたスイートフラッグのことである。下総御料牧場が生産した同馬を和田共弘氏が購入し、野平祐二騎手が騎乗した。野平祐二騎手のファンであった小林英一氏は、彼の乗るスイートフラッグに心を奪われ、将来馬主になったときにはこの馬の系統を持ちたいと心に誓ったそうである。


「野平の祐ちゃんの騎乗に、これから競馬は変わるのではないか、と可能性を感じたわけですよ。競馬から離れられなくなったのは、あの人のせいじゃないかと思うんですよね。だから63年も続けてきたわけです」

小林英一オーナーが野平祐二騎手のファンであったことに驚き、スイートフラッグの系統を探して見つけたパストラリズムにメジロマックイーンを配合し、そこにステイゴールドの血が入ったことで飛び出してきたのがゴールドシップだったことにまた驚愕した。もとを辿ってゆくと、ゴールドシップは野平祐二騎手から生まれた馬であったのだ。名馬は生産者の第6感のひらめきから誕生するものだが、まさか野平祐二騎手がそのきっかけとなっていたとは思いも寄らなかった。それを知ってからは、ゴールドシップがまた違ったゴールドシップに見えるようになった。

ゴールドシップは本当に私たちが思うゴールドシップだったのだろうか。引退後の彼の黒い瞳や愛らしい仕草を見るにつけ、私たちが彼に抱いていた凶暴で気難しくて、人間の言うことを聞こうとしない我がままな馬というイメージとは対極にある、頭が良くて、大人しくてユーモアに溢れる優しい馬ではなかったのかと思えてならない。ゲートでいきなり立ち上がったり、全く本気で走ろうとしなかったり、ジョッキーを振り落そうとしたりと、横暴に映った行動にも彼なりの意味や理由があって、それを私たちが理解できなかったのだろう。おそらく彼は、これから私たちの期待を超えた子どもたちをターフに送り込んでくるはず。なぜなら、ゴールドシップは本当は私たちの知っているゴールドシップではなかったからである。

関連エントリ
「ゴールドシップはなぜ立ち上がったのか?」

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Comments

次郎丸さん
こんばんは。私も優駿でゴールドシップの記事を見て買わずにはいられませんでした。
表紙もよかったですしね。
私がゴールドシップに思う一番のことは
「この馬がもしも牝馬だったらなぁ」ということです。下総御料牧場に星のつく牝馬たちが輸入された話を知った時、 ふるえるほどの衝撃でした。栄枯盛衰の激しい競馬の世界で 星旗から繋がる1頭1頭が 細く だけどけして途切れることなく命を繋ぎ その結果 ゴールドシップへとたどり着いたと思うと 涙が出ました。馬たちがそうであるように 私たち人間もそうやって命は繋がれているんだと実感しました。自分という人間は誰かが必死に生きた証であること。そして自分にも その役目があることを教えられました。競馬の楽しみは人それぞれですが 私は最近はファミリーラインを見ることが好きで それを重点的に見るようにしてます。ゴールドシップが愛されたのは ゴールドシップだったからではないかなぁと思います。ゴールドシップのこんな所がとか、ゴールドシップがこうだったからとかでなく その存在じたいが特別なんです。
私はずっと過去の競馬を見るのが好きで惹かれるのは私が競馬を始める前の馬ばかりでした。それを変えてくれたのがゴールドシップとハープスターです。過去を見るのではなく この馬たちが繋ぐ未来を見てみたい。そう思わせてくれた唯一無二の(2頭ですが)の馬たちです。頭の中ではもうハープは牝馬を出産することになっています(o^-^o)出産まで あと1か月無事に過ごして欲しいです。

Posted by: 通りすがりの皇帝ペンギン | March 11, 2016 at 12:14 AM

通りすがりの皇帝ペンギンさん

ゴールドシップは実に愛嬌のある可愛らしい馬ですね。

オーナーの小林さんの話を優駿で読んで、現役の頃から知っていたらもっと応援できたのになと悔しく思いました(笑)。

もうこうれだけ世界中の名血が輸入されている時代に下総御料牧場とか小岩井牧場とか言っているのは古い気もしますが、サンデーサイレンスの血がそういった古い血を覚醒させる時代が来ていると思います。

ゴールドシップはその1頭です。彼を見る時は、彼の表面的な行動だけではなく、その紡がれてきた血をも見る必要があるのですね。

どんな産駒を出してくるのか、私たちの期待を超えてもらいたいという想いで一杯です。

Posted by: 治郎丸敬之 | March 12, 2016 at 10:36 AM

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