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ヴィクトリアマイルはスピードレース


ヴィクトリアマイル2016―観戦記―
内枠を利してスマートレイヤーがそのまま先頭に立つかと思いきや、レッドリヴェールが思い切ってハナを奪い、前半マイルが45秒7、後半が45秒8という平均ペースをつくった。4コーナー手前でカフェブリリアントが抑えきれずに先頭に立つシーンもあり、先行馬たちにとってはやや出入りの激しい展開。11秒台が連続する緩みのないラップに加え、府中の長い直線での追い比べとなり、各馬の実力が正直に反映されるレースとなった。勝ったのは出走馬中、最もスピードに優るストレイトガールであった。

ストレイトガールは昨年に続く勝利で、ヴィルシーナに次ぐ2頭目のヴィクトリアマイル連覇となった。しかも7歳牝馬のG1勝利は史上初の快挙。最後の直線に向いてからは追い出しを我慢するほどに手応えが良く、ゴーサインが出るや、あっと言う間に馬群から抜け出した。着差以上の完勝と言ってよいだろう。ピークが短い短距離馬、しかも牝馬であるにもかかわらず、7歳にしてこれだけの走りができることに驚かざるをえない。こんなにも長くトップレベルの能力を維持できるのは、ストレイトガールが短距離馬にしては珍しく気持ちのゆったりとした、オンとオフのはっきりした馬だからであろう。その証拠に、負けるときにはあっさり負け(特に前哨戦では)、本番では全能力を発揮できている。気性的にピリピリしているような馬であれば、このような戦績は辿れない。

戸崎圭太騎手は、これ以上ない見事な騎乗でストレイトガールを連覇に導いた。どのようにして内に潜り込んだのだろうと、何度もパトロール映像を見てしまうほど、馬群の間隙を縫って、いつの間にか最高のポジションを走らせていた。レース前の綿密なシミュレーションと内を走らせようという明確な意思があるからこそ、わずかなチャンスを掴むことができるのだ。直線に向いた瞬間、一気に前が開いたが、あそこで慌てず騒がず、ひと呼吸置いて、ドンピシャのタイミングで追い出したのもさすがである。

ミッキークイーンは休み明けをひと叩きされ、パドックでの見た目は腹回りが寂しく映ったほどに、きっちりと仕上がっていた。それでも勝ち切れなかったのは、力負けというよりは、勝った馬の方がヴィクトリアマイルへの適性が高かったということである。同じマイル戦でも、もう少しスタミナを問われるような馬場やレースで走れば、ミッキークイーンに軍配が上がるはず。あえて欲を言えば、もう少し馬体を増やして、パワーアップされるとさらに強くなる。怪我から復帰した浜中俊騎手も、スタートからゴールまで勝ち馬のほぼ後ろを走らせていたように、非の打ちどころのない騎乗であった。

ショウナンパンドラにもミッキークイーンと同じことが当てはまる。勝ち馬とはヴィクトリアマイル適性において劣っていただけで、決して力負けではない。スピードの絶対値では勝ち馬が一枚上であった。スタートが決まらず、レースの流れに乗るまでにバタバタしてしまったこと、そして4コーナーで外を回してしまったことが2着と3着の違いとなった。池添謙一騎手は、ギリギリまで追い出しを待った方がこの馬の末脚を発揮できることをジャパンカップで学んだはずだが、どうしたのだろう、今回はやや勝ちに焦ったのかもしれない。

スマートレイヤーはもう少しスローで行きたかったが、そうは問屋が卸さなかった。それでも、これだけの平均ペースを先行し、最後は上位3頭のG1馬たちの次に来ているのだから、この馬も間違いなく力をつけている。5着のルージュバックもよく走ったが、このメンバーに入ると、力を出し切っても5着というのが順当な力関係であろう。

最後に、今年の結果を受け、ヴィクトリアマイルはスピードレースなのだということがはっきりと分かった。フジキセキ産駒が多く勝っているのは、スローに流れることが多いため、距離がもってしまうのだと考えていたが、そうではなくヴィクトリアマイルはスピードの絶対値が問われるレースなのである。府中のマイル戦は、スタミナがないとこなせないコースだが、馬場が絶好の時期に行われるヴィクトリアマイルを勝つには、まずスピードが必要なのだ。つまり、マイルをこなせる中距離馬ではなく、マイルをこなせるスプリンターを狙うべきレースなのである。他の競馬ファンにとっては自明のことかもしれないが、ヴィクトリアマイルはスピードレースであると私はストレイトガールに教えてもらった。

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Comments

去年の覇者があの人気なら黙って買い!のレースだったと思います。前走の成績から年齢的な衰えが嫌われたんでしょうけど、調教師が「前走は忙しくて?調整失敗した~」と言ってましたし、衰えてない方にかける価値はあったかと。抜け出した時の脚には痺れました。「マイルをこなせるスプリンターを狙う。」その通りですね!来年が楽しみです。

ところで、浜中騎手は土日とも1鞍ずつの騎乗でしたが、体調が万全ではなかったということでしょうか。完敗だったからよかったものの、これがクビ差とか2、3着が逆だったりしたら馬券持ってる人は「これも競馬」では納得出来ないと思います。

Posted by: やっとこ | May 17, 2016 at 10:10 AM

やっとこさん

そうですね。「馬券のヒント」にもある昨年の覇者が人気薄ならば買い、人気ならば消しのパターンでした。

それにしても、ストレイトガールのヴィクトリアマイル適性はすごいですね。

浜中騎手については、ヴィクトリアマイルの最後の直線のパフォーマンスを見ると、体調が万全ではなかったということはないのではないでしょうか。

以前と同じようにびっしりと追えていますからね。
ヴィクトリアマイルに向けて、もちろん無理をしないようにという意味もあったかもしれませんが、騎乗数を絞ったのだと思います。

Posted by: 治郎丸敬之 | May 17, 2016 at 11:07 AM

こんばんは。
VM、見ごたえのあるレースでした。
本当にこの10数年で、調教技術が素晴らしく向上したことを改めて感じました。
7歳馬、昔で言えば8歳馬がG1を勝つようになるとは驚き以外ありません。有馬記念でヒシアマゾンの牝馬初制覇を信じて、貴女でも勝てないのかと落胆したのを思い出しました。
観戦記、一言ひとことに頷きながら拝読しました。
競馬を再開してよかったなあと、VMを見て、観戦記を読んでつくづく思った次第です。

Posted by: ブライア | May 18, 2016 at 09:53 PM

ブライアさん

こんばんは。

直線でのストレイトガールの速さには驚きましたし、2、3着争いも見ごたえがありましたね。

8歳馬がG1レースを勝つなんて、信じられませんよ。
しかも圧倒的な強さですから。

ヒシアマゾンが今の時代に生まれていたら、また別の戦績になっていただろうと思いますし、またヒシアマゾンのような馬が私たちの前に登場してくれないかなと願っています。

ウオッカともダイワスカーレットやブエナビスタともまた少し違うのですよね。

Posted by: 治郎丸敬之 | May 18, 2016 at 11:58 PM

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