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最強はエルコンドルパサー


宝塚記念2016―観戦記―
大方の予想どおり、内枠からキタサンブラックが敢然と先頭に立ち、それを内からワンアンドオンリー、外からトーホウジャッカルが追いかけ、さらにアンビシャスも続いた。武豊騎手がスローに落としてくることを見越し、それに乗っかる形であわよくば漁夫の利を得ようと前に行こうとする騎手たちの意識の総和が、前半1000mが59秒1というハイペースをつくり出した。こうなることもジョッキーたちの頭にはあったはずだが、それでも前に行く方に大多数が賭け、逃げ・先行馬の脚色は最後の直線で崩壊した。

勝ったマリアライトは、ハイペースを中団外目の後方から追走し、外から捲るようにポジションを押し上げ、最後はキタサンブラックを捉え、ドゥラメンテを抑えての完勝であった。今期はG1レースを使わずに3戦目で宝塚記念に臨んできたように、フレッシュな状態であり、ここに狙いを定めてきたということでもある。展開やポジションに恵まれただけではなく、力がなければできない芸当であり、かつて牝馬で宝塚記念を勝ったスイープトウショウという名牝に匹敵するだけの強い勝ち方であった。430kg台の身体のどこにそれほどの力があるのかと驚かされるが、母の父にある名前を見て腑に落ちた。エルコンドルパサーこそがやはり最強なのだろう。最後のひと伸びはエルコンドルパサーが後押ししたのだ。早世が惜しまれるが、母の父として無尽蔵のスタミナとパワーを伝え、その血は永遠に残っていくはずである。

蛯名正義騎手にとっても快心の騎乗であったに違いない。昨年のエリザベス女王杯もそうであったが、道中のポジションからゴーサインを出すタイミングまで、全てがドンピシャであり、完璧としか言いようがない。道中のポジションが少しでも前後左右していたり、仕掛けるタイミングが少しでもずれていたら、勝っていたかどうか分からない。もう1度同じ騎乗を求められてもできない。それを1回きりの本番で成してしまうのは、これまでに蛯名騎手が培ってきた、あらゆる失敗や苦い経験が込められた、ベテランの腕があってこそである。

かつて蛯名騎手がエルコンドルパサーを背に凱旋門賞に挑み、惜しくもモンジュ―にゴール前で差し切られてしまったとき、ミスター競馬こと野平祐二氏は「蛯名騎手の追い方(体の使い方)に硬さがあった」と苦言を呈した。蛯名騎手は残念会で悔しさを隠すことなく男泣きした。あれから17年の時が流れた。もし野平祐二氏が生きていて、今回の宝塚記念における蛯名騎手の騎乗を見たら、言葉の限りを尽くして称賛するに違いない。武豊を差し切り、ミルコ・デムーロを凌いだのだ。もはやこれ以上の騎乗はない。蛯名騎手が凱旋門賞を勝つ準備はできている。来年、ディーマジェスティに乗って、日本人ジョッキーとして初の凱旋門を制してもらいたい。

惜しくも2着に敗れたドゥラメンテは力を出し切っている。レースの流れにも乗り、前がバテる展開を後方から追走し、勝ちパターンではあったが、わずかに届かなかった。最後の坂で少しモタモタしたように、ドバイ遠征帰りで目に見えない疲れがあったのかもしれない。それでも馬体はきっちりとできており、80%の出来にはあっただけに、今回は勝った馬の強さを認めるべきだ。デムーロ騎手のハイペースを読み切り、終いの脚に賭けた判断は見事であった。

最も強い競馬をしたのはキタサンブラックである。1000mが59秒1のラップを自ら刻み、マークされながら、先行馬が早めに動き出す流れの中でも、最後まで脚は止まらなかった。スピードとスタミナが高い次元で融合されており、しかもレースの主導権を握れる気性の素直さと前向きさがある。馬体重もさらに増えているように、雄大かつ、付くべきところに筋肉がついて成長著しい。秋以降はドゥラメンテの良きライバルとしてしのぎを削ってゆくことになるはずである。

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Comments

> ハイペースを読み切り、終いの脚に賭けた判断は見事であった。

出遅れて後方になっただけのように見えました。

> ドゥラメンテは力を出し切っている。

直線入り口で包まれてしまい、外に持ち出すまでに時間がかかっていて、脚を余したように思えてなりません。

Posted by: 通りすがり | June 28, 2016 at 03:26 PM

治郎丸さん、こんばんは。

祐一は春の天皇賞につづいて消化不良な一戦になりましたね。
たぶん強いアンビシャスの真後ろ取れて本人も直線まで進路が確保できる・・・という目論見だったんでしょうが・・アテにした馬が初体験のGⅠペースでバテてしまい、おまけにワンアンドオンリーの斜行(故意ではない)で挟まれてジ・エンド。

最初は外を狙ってたように見えましたが、1角をタイトに回りたいラブリーデイが譲らずインに押し込められちゃいました。
ただ、そこでは「ならアンビシャスの後ろでエエわ」と固執しなかったように見えました。

今度はさすがに佐々木オーナーもガッカリされたようです。
傍から見たら「同じ失敗を繰り返した」と思う人もいるでしょうね。
天皇賞と枠が逆ならどっちか勝ててたような気もしますが・・・しかしこの騎手ツイてないなあ。

Posted by: シンプル | June 28, 2016 at 07:37 PM

通りすがりさん

こんばんは。

出遅れというよりは、立ち上がるようにスタートを切って、行き脚がつかなかったので、後ろから行く選択をしたということだと解釈しました。

無理をして押して行けば、前に行くことはできたと思います。

最終コーナーでも、皐月賞のように無理に外に張り出すのではなく、待って外に出しているので、その分、脚がたまっていたと考えることもでき、脚を余したというよりも、ドゥラメンテにしては伸び切れなかったと言えるのではないでしょうか。

そのあたりは解釈の違いなので、あくまでも(ドゥラメンテを買っていなかった)私の解釈であり、正解はありませんよね。

Posted by: 治郎丸敬之 | June 28, 2016 at 11:08 PM

シンプルさん

こんばんは。

福永騎手はシュヴァルグランに関しては運がないですね。

今回もスローならば、アンビシャスの後ろのあの位置で良かったのですが、これだけのハイペースだと、どうしても前に行った馬がバテて下がってくるので内枠は進路が塞がりがちですね。

>天皇賞と枠が逆ならどっちか勝ててたような気もしますが・・

その通りだと思います。地脚の強さとスタミナを生かしたいのに、なぜか本番では内枠を引いてしまい、瞬発力不足に泣かされるという2戦でした。

天皇賞春はもちろん、今回の宝塚記念も外からマリアライトのように進めれば、シュヴァルグランの力なら大いにチャンスはあったと思います。

佐々木オーナーが嘆くのも無理はありません。でもこれも競馬なのですよね。

Posted by: 治郎丸敬之 | June 28, 2016 at 11:15 PM

治郎丸さん、返信ありがとうございます。

祐一が周囲からの「上手いんだけど、線が細くてイマイチ頼りない」という評価を変えるには、本人も常々言ってるように牡馬の大レースを勝たないといけないんですよね。
クラシックはシルバーステートの故障、自分自身の落馬負傷もあって今年は伏兵サイドでの参戦でしたが、天皇賞と宝塚記念は十分手が届く位置にいる馬でしたから本人も無念でしょうが、私も非常に落胆してます。

けっこう個性の強いオーナーさんに見えます(まあ野球選手時代の報道を見てての主観的な印象ですが 笑)ので、今後も乗せていただけるか非常に心配してます・・・今は非常に信頼してくださってるそうですが。
シュヴァルグラン自身は吉田勝巳さんと半持ちのはずなので吉田氏の意向も入ってくるとは思います。

伝え聞くところによると、佐々木オーナーもまだ阪神大賞典を勝った直後は半信半疑で、強い日本馬を相手に日本で中距離GⅠを戦うよりはメルボルンカップなど豪州遠征で一発を狙ってたそうですが、春天の好走で自信を持って秋は京都大賞典~JC~有馬という予定だそうです。
京都大賞典を勝たないと祐一の評価が変わる可能性もありますね。
まだ強くなる馬だと思うので何とか結果を出してほしいところです。
何よりも、この馬で絶対に結果を出すんだという強い気迫を見たいです。

Posted by: シンプル | June 29, 2016 at 10:18 PM

シンプルさん

お返事が遅くなりましてすいません。

コメントいただいていたの見落としていました…

福永祐一騎手は安定して騎乗馬の力を出すことも、レースの流れに乗るのも上手いのですが、その分、自ら勝ちにいく競馬をしなければならない局面で弱いところがありますね。

相反するスタイルを両立させるのは難しいことですが、G1レースにもなると、100%の力ではなく120%を出し切らないと勝てないことがありますから、そこは大きな課題ですね。

シュヴァルグランはまだまだ成長の余地を残していますので、個人的には有馬記念あたりでひと捲りを見せてもらいたいと思っています。

Posted by: 治郎丸敬之 | July 07, 2016 at 01:53 PM

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