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集中連載:現代のコアな競馬ファンがすなる一口馬主というものを(第14回)

Hitokuti14

夏競馬に入り、他の2歳馬たちが続々と入厩し、デビューを飾っている中、牧場でのんびりと英気を養っている愛馬を見守っていると、クラブからのメールが届いた。

在厩場所:北海道・ノーザンファーム空港 調教内容:週2回屋内坂路コースでハロン15秒のキャンター2本、週1回周回コースでハロン22~24秒のキャンター3,000m、残りの日は軽めの調整

担当者「引き続きハロン15秒のペースで乗り込んでいます。馬体重はそれほど変わらないものの、付くべきところに筋肉が付いてきており、とてもいい体付きに変わってきましたね。休まず乗り込んでいますが、カイバ食いは良好ですし、脚元も問題ありません。非常に順調に調教を進められていますので、秋口あたりの入厩を考えて進めていきたいです」馬体重462㎏

あまり馬体重が増えていないことを憂慮しつつも、最後の1文に心を奪われてしまった。秋にデビュー!いや、よく読めば、「秋口(あたり)の(入厩)を(考えて)(進めていきたい)です」と書いてあるのだが、私には秋にデビュー!と変換されてしまうのだ。自分の思い込みの激しさをなだめつつ、それでも秋の京都開催の芝1600m新馬戦で走っているクインアマランサスの姿が脳裏に浮かんでくるのを止める術を私は知らないのだ。新馬戦はさすがに現地に観戦に行った方がいいかな。G1レースが開催される週とぶつかると、その時期の京都はえらい混むからなあ、などとさらに妄想は広がってゆく。

そうこうしていると、またクラブからメールが届いた。もしかすると、入厩が決定しましたという旨かと思い、期待を込めてクリックした。

在厩場所:北海道・ノーザンファーム空港 調教内容:週1回屋内坂路コースでハロン15秒のキャンター2本、週1回周回コースでハロン22~24秒のキャンター3,000m、残りの日は軽めの調整

担当者「この中間も順調に乗り込みを進めています。段々とトモに力が付いてきて、自分でバランスを取って走れるようになってきています。走ることに対しては前向きですが、基本的に人に反抗したりすることなく素直な性格ですから、精神的にも持っている資質を活かしながらいい方に成長を促していきたいですね」馬体重472㎏

「トモに力が付いてきて」、「走ることに対しては前向き」、「素直な性格」など、担当者によるポジティブな言葉が並ぶのは嬉しいが、入厩の入の字も、デビューのデの字もなく、しかも秋口という言葉も消えている。調教のペースは変わることなく、強いていえば、馬体重が10kg増加したのが大きな変化である。もしかすると、秋のデビューは延期になったのではないか、そんな不安も湧いてくる。レポートの一言一句に一喜一憂しても仕方ないと頭では分かっていても、文中の微妙な言い回しや“~が”などの逆説の接続詞が妙に気になってしまうのである。

一口馬主のクラブに入ってみて思ったのは、(特にシルクホースクラブの)情報発信に対する熱意には素晴らしいものがあるが、私たちが本当に知りたい情報には手が届きそうで届かない部分があるということである。調教のペースや仕上がり具合や馬の気性はもちろん知りたいが、それだけではない。馬主のはしくれとして、私たちが知りたいのは、愛馬の具体的な行動なのである。そこまでを一口馬主クラブに求めるのは求めすぎなのは分かっているが、敢えて言うならば、一口馬主クラブに足りない点だと思う。

たとえば、「今日は調教に行く途中にいたカラスに興味津々で、しばらく動こうとはしなかった」とか、「最近よく調教を一緒にする○○○○という馬と仲良くなり、2頭でいると安心するようです。お互いのゆったりとした気持ちのリズムが合うのかもしれません」、「今週から15-15を週2本に増やしました。負荷が増えたので、調教後は息が苦しそうでしたが、カイバを一気に食べ終わると、すぐに元気になったようで、隣の馬房の○○○○にちょっかいを出していました」など。その馬のエピソードや馬となりを表す行動などを知りたいのだ。

なぜかというと、私たち一口馬主はあまりに愛馬と離れているからだ。もしかすると、一度も愛馬に会ったことがないという人もいるだろう(私がそうだ)。見学ツアーなどに行ければ良いが、それもなかなか難しい。カタログやスクリーンや文字情報だけでしか知らない愛馬だからこそ、もっと知りたいと思ってしまう。私が大好きな写真家でアラスカの冒険家である星野道夫さんは、「寒さが人の気持ちを暖かくする。遠く離れていることが、人と人の心を近づけるんだ」と語っていた。遠く離れているからこそ、心が近づきたいと思うこともあるのではないだろうか。

Photo by 三浦晃一

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Comments

秋口ですか~。デビューが待ち遠しいですね!何だか読んででこっちまでワクワクしてしまいます。今年度募集がそろそろ始まりますが、デビューは来年、その気持ちを味わうのは早くて一年後ですね。

デビューを見逃さないようにとJRA-VANのマイ注目馬に登録しようと検索したのですが、「 該当する情報がありません」となりました。まだJRAに登録はされてないんですかね?

Posted by: やっとこ | August 08, 2016 at 04:27 PM

やっとこさん

早くても秋口になるみたいですね。

まあこちらが焦っても仕方ありませんので、楽しみは後にとっておきたいと思います(笑)

JRA-VANの仕組みは分かりませんが、もう馬名(クインアマランサス)は登録されていると思いますよ。

デビューを楽しみにしてくださってありがとうございます!

Posted by: 治郎丸敬之 | August 08, 2016 at 09:14 PM

> 私たちが本当に知りたい情報には手が届きそうで届かない部分がある

私もそんなことを感じています。
病院のカルテの書き方に喩えれば、「膝に鋭い疼痛がある」ではなく、患者さん自身の言葉で「たまにだけど、歩こうとすると膝あたりがビクッと痛んで怖くなる」と書いてほしい感じです。

Posted by: Masaki Yoshio | August 09, 2016 at 07:36 PM

Masaki Yoshioさん

こんばんは。

カルテのたとえは分かりやすいですね。

難しいことは分かっているのですが、事実だけではなく、想像を膨らませられるような情報もほしいですね。

もう少し少人数で馬を所有し、そのような密接な情報を発信するクラブがあっても良いかもしれません。

Posted by: 治郎丸敬之 | August 09, 2016 at 09:22 PM

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