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集中連載:現代のコアな競馬ファンがすなる一口馬主というものを(第17回)

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オータムセールの時期がやってきた。昨年、初めて見学させてもらってからというもの、この季節が来るのを心待ちにするようになった。あの仔は、無事にセールまでこぎ着けられるのだろうか、買い手が現れるだろうか、いくらの値がつくのだろうか。競走馬たちの最終セールともいえるオータムセールには数々のドラマがある。私がこれほどに楽しみにしているのだから、関係者たちのこのセールに賭ける想いの強さは、想像して余りある。「仔馬の肢を引っ張ってから、サラブレッドとしてデビューするまで。これほど結果が出るまでに時間が掛かる仕事もそうはないですよ」とある生産者がつぶやいていたように、馬の世界にたずさわる人間は、長い目で気長に待ち続けなければならないのである。

今年もオータムセールに行こうと思っていたところ、急遽、取材が決まったこともあり、オータムセールの前に北海道を訪れることになった。さすがにセール期間中は、関係者は忙しくて、ゆっくりと話すことなどできないだろうから。とはいえ、私も何日も東京を離れるわけにはいかないため、今回の滞在もわずか2日間しか取れなかった。1日目は岡田スタッドやノルマンディファームの岡田牧雄氏、2日目は北島牧場の北島佳和氏にインタビュー、そして初日の晩には、日高地方の競馬関係者たちが10名ほど集まってくださって、話を聞かせてもらうことになった。

岡田牧雄さんと北島佳和さんのインタビューは別の機会に譲るとして、日高の生産者や装蹄師、獣医師さんたちとの飲み会(?)は非常に面白かった。その場にいた全員の生産者が自分で牧場を持って馬を生産し、馬を売ったり、走らせたりしている、いわば牧場主であり社長である。雇われではないため、生産馬の良し悪しが自分たちの生活や人生に直結する。獣医師や装蹄師も同じく、自分の腕ひとつで生きてゆく職業である。しかも、年齢も私と近く、ちょうど父親から牧場を受け継いで、古き良き時代の名残を残しつつ、これから自分たちの世代が大きく変わって、社台グループらの巨大資本に立ち向かっていかなければならないという立場にいる。

こうした人々の生の声を聞ける機会は貴重であり、彼らが日々どのようなことを考えて、馬と向き合っているのかを垣間見ることができた。生産に対する考え方やスタンスはそれぞれに違っていたが、そこにいた全員から伝わってきたのは、馬や競馬が大好きだということ。とにかく1日中、馬のことばかりを考え、悩み、喜び、そして楽しんでいる。馬が走るためなら何でもするという人たち。夢があるなあ、私はそう思った。私も夢を持って仕事をしているから良く分かる。そんな仲間たちと飲むお酒はいつになく美味しかった(私はほとんど飲めないが)。夜遅くまで宴は続き、また話したいと思いながらも彼らと別れた。その日は昨年と同じく、碧雲牧場に泊まらせてもらった。

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翌朝、気がつくと9時を回っていた。部屋の窓からは放牧地を悠々と駆けまわっている馬たちの姿が見える。普段は7時には目が覚めてしまうのだが、深く眠りに落ちていたようだ。夜の牧場は静かである。たしか昨年もそうだったと思いつつ、朝早くから起きて馬の仕事をしている、碧雲牧場の長谷川家の皆さまには申し訳ない気持ちで顔を洗った。昨日の岡田牧雄さんのインタビュー取材や夜の生産者たちとの飲み会を思い出しつつ、ふとしたきっかけや縁がもとになって、なんだか少しずつ馬の生産に近づいてきたという思いが湧き上がってきて嬉しかった。20年前はただの競馬ファンだった私が、あの岡田牧雄さんの豪邸を訪れ、獣医師や生産者たちの生の声を聞き、牧場に寝泊まりしている。手を伸ばせは本物のサラブレッドに触ることができる距離まで、ついに来たのだ。

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Comments

はじめまして、岡山在住のアダチと申します。
競馬好きが高じて一口馬主を始めて10年以上になります。
毎年毎年生れてくる馬もいれば引退してゆく馬もいます。
そして引退後の競走馬の触れてはいけないダークな部分に対して一抹の後ろめたさを感じています。
その後ろめたさを少しでもつぐなう意味で、こちらにふるさと納税をしました。
http://www.furusato-tax.jp/gcf/89
こういう活動が普及してこそ日本の競馬が真の文化として根付くと思うのですがいかがなものでしょうか?

Posted by: アダチ@おかやま | October 11, 2016 at 08:58 PM

アダチ@おかやまさん

はじめまして。

一口馬主歴10年以上なのですね!

馬券だけ買っていたら分からない、競走馬の末路を知ると、私たちにできることはないかと考えますよね。

昨年の夏にこんな記事(http://www.glassracetrack.com/blog/2015/08/post-35ef.html)を書いてから、サンクスホースプロジェクトには興味がありましたので、いつか紹介しようと考えていました。

なにせ私も実家は岡山の津山にありますので、取材に行こうかとさえ思っていたところです(笑)。

でも、ふるさと納税の仕組みがあるとは知りませんでしたよ。貴重な情報ありがとうございます。

これで寄付もしやすくなりますね。

Posted by: 治郎丸敬之 | October 11, 2016 at 10:32 PM

早速のレスありがとうございます。
このプロジェクトを主催されている西崎さんは乗馬クラブを経営されていたり、ホースセラピーをされていたりと馬を通じての社会貢献を色々と考えておられる立派なホースマンです。
ぜひとも取材をお願いします。

ついでに少し足をのばして真庭市久世の栄進牧場の取材もいかがでしょうか?

Posted by: アダチ@おかやま | October 11, 2016 at 11:40 PM

アダチ@おかやまさん

こちらこそありがとうございます。

「ROUNDERS」の先の号での取材になるので、だいぶ先のことになると思いますが、ぜひ行ってみたいですね。

その前にまずはふるさと納税したいと思います。

栄進牧場も行ったことないんですよね。意外と地元は遠出しなかったりします(笑)

Posted by: 治郎丸敬之 | October 12, 2016 at 09:59 AM

お疲れ様です。
ところでノルマンディーで一口馬主はされないのですか?
クインアマランサスに対する思いはあるでしょうが、それは「この馬と一緒に競馬をしたい」という思いだと推察いたします。
ノルマンディーで一口をするという事は岡田牧雄氏に対する思いであり「この人と一緒に競馬をしたい」という、また違った意味での競馬の楽しみ方だと考えます。
同じ一口と言ってもクラブ毎に様々なスタイルがあるので複数かけもちでも良いのではないでしょうか?

ちなみに私はラフィアン・ウインと社台・サンデーのかけもちです。

Posted by: アダチ@おかやま | October 13, 2016 at 01:42 PM

アダチ@おかやまさん

良いところを突いてきましたね!

今回、お話をさせていただき、ノルマンディの馬を買おうと思っています。

この馬と決めていたのですが、いろいろありまして、別の馬の募集を待っているところです。

そのあたりはこの連載にも書いていきますので、お楽しみに。

Posted by: 治郎丸敬之 | October 14, 2016 at 10:58 AM

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