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私たちは勝てるのだろうか


凱旋門賞2016―観戦記―
マカヒキが惨敗しただけではなく馬券も外れたことで、いつもの2倍の悔しさを味わうことのできた、素晴らしい凱旋門賞であった。ヴェデヴァ二が先頭に立ち、外からオーダーオブセントジョージが2番手につけ、馬群はギュッと固まって流れた。こうなるとやはり内を走ることのできた馬に有利で、しかも前が止まらない馬場でもあり、道中のポジションが勝敗を大きく左右した。勝ったファウンドは内ラチ沿いピッタリを追走し、2、3着馬は先行した馬であった。逆に後ろから行った馬や外を回らされた馬たちは厳しい競馬を強いられ、シャンティイ競馬場で行われた今年も凱旋門賞らしいレースとなった。

マカヒキについては、外々を回されてしまったことはあくまでもひとつの敗因であり、それだけであそこまで大きく敗れたとは言い難い。2010年のナカヤマフェスタのようなケースであれば、外を回ったことが最大の敗因と断じることはできるが、今回はそうではない。最終コーナー手前ですでに反応がなくなっていたことから、マカヒキは凱旋門賞自体に万全の体調で臨むことができなかった、ゴールまで走り切ることのできる仕上がりにはなかったということ。日本ダービーを目標に究極の仕上げを施してから、約4か月で馬体と気力を回復させることができなかったということを意味する。陣営は細部に至るまで完璧に馬をつくってきたつもりだが、それでもどうにも抗いがたい、サラブレッドの体調のバイオリズムがあるということだ。

今回は過去の失敗を生かし、できる限りの策を講じてきたが、最後に残った日本ダービーの反動というピースだけが埋められなかった。斤量を考えると、3歳馬のうちに連れてくるほうが有利であるが、日本ダービーを勝った馬にとっては、その秋に凱旋門賞に万全の体調で臨むことは難しい。ディープインパクトやオルフェ―ヴルのような楽に2冠を獲るような馬であれば心配は要らないのだが、そのような10年に1度の名馬が菊花賞(3冠)を捨ててまで凱旋門賞に挑戦するだろうか。逆説的に聞こえるかもしれないが、私は日本ダービーで負けた馬を3歳時に凱旋門賞で連れてくるのがベストだと考える。今年で言えば、日本ダービーには100%の仕上がりで臨むことのできなかったディーマジェスティがそのイメージに近い。そして何としてでも、内枠発走を手に入れることだ。

最後に、ライアン・ムーア騎手のキス、ではなく、直線のコース取りを観ただろうか。前を行く2頭の間の、1頭分もないスペースをこじ開けるようにして抜け出している。外に持ち出す一瞬のロスさえ許さない、特に凱旋門賞のようなレースの厳しさを知り尽くしたジョッキーだからこその騎乗ぶりであった。気を抜いてしまう癖のあるファウンドに気を抜かせないためでもあっただろう。あれが日本であれば、危険すぎるという声ばかりが競馬関係者からもファンからも上がったことだろう。ぶつけられて3着になったデットーリ騎手が日本人騎手であれば、あれがなければ勝っていたとレース後にコメントしたかもしれない。良し悪しの問題ではなく、またやった者勝ちという低レベルの話でもなく、ジョッキーがこういう判断とスピードを持ち合わせていなければ、凱旋門賞は勝てないということを示唆しているのだ。私たちは勝てるのだろうか。私は凱旋門賞を勝ったあとの世界を見ることはできるのだろうか。

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Comments

治郎丸さん こんばんは

2011年ドバイワールドカップ ヴィクトワールピザ優勝
震災直後ということもありミルコのコメントにも泣かされました。
しかし第1回~15回まで計18頭の日本馬が馬群に沈んでいます。出走しなかったのは2回のみ。

これらの馬たちは日本国内で十分な栄誉を受けているにも関わらず高見を見るために挑戦したのです。
大リーグ、オリンピックなども同じですが,だからこそ世界最高峰への挑戦はかくも崇高で美しいのでしょう。

私たち競馬ファンの大半はスタートに心踊らされ結果に暗然とするのですが…
本当に覚えておかなくてはならないのは苦痛に歪む関係者の悔しい表情なのではないでしょうか。
この苦しみが壁を破る血になり肉となっていると思います。

今年はラニが武豊と海外を転戦するという快挙を行い結果も出しました。
それこそ一昔前ならば考えられないことです。

いつの日か日本馬が凱旋門賞を優勝したときは治郎丸さんの長い長い記事を読めることを楽しみにしています。

Posted by: コテツ | October 03, 2016 at 08:24 PM

コテツさん

こんばんは。

凱旋門賞は手が届きそうで届かないですね。

少し昔までは、凱旋門賞はひとつのレースであって、凱旋門賞が頂点ではないと考えていましたが、ここにきて凱旋門賞はやはり私たちにとって、世界最高峰のレースなのではないかと思い直しています。

私が生きている間に、日本馬が凱旋門賞を勝つことはできるのか、それぐらいに思わせる素晴らしいレースなのだと思います。

勝とうとして挑戦した関係者たちのスピリットを私たちは覚えておかなければいけませんね。

Posted by: 治郎丸敬之 | October 03, 2016 at 09:08 PM

治郎丸さん、こんばんは。

う~ん・・・熱い思いが伝わって来ていろいろ考えさせられました。
とりあえず展開が向かなかったのは確かですよね?
例年の凱旋門賞はスローの4Fロングスパート戦が多いのですが、今年は2F目から淀みない流れで明白な時計勝負。
例年以上にペース耐性とスタミナが要求されてしまいました。

通常、日本の高速馬場で時計勝負というと昔から欧州の重い血統馬は不利、日本に根付いた軽い血統の馬が有利とされてきました。
実は昔から日本は英愛ダービー勝ち馬の種牡馬を導入してきた(成功例ヒンドスタンなど)のですが、向こうでは軽快な早熟のマイラー扱いだったテスコボーイの方が大規模な成功を収めました。
ならば、トータルの時計勝負ならディープ産駒を頂点とする日本馬に向くのでは?と以前から淡い期待をしててその通りになったのですが、現実はスタミナ切れ。そしてガリレオ産駒の上位独占・・・

思うにトップスピードだとか身のこなしだとかギアチェンジの速さなどは先天的な素質だが、後天的な資質である「ペース耐性」=苦しいペースで踏ん張って末脚を持続させて耐える能力は後天的に獲得可能なもので、日本では馬場がずいぶん速くなってるのにスローペースの上り2F勝負ばかりやりすぎて、そういう能力が獲得しにくい環境なのではないか?と思うのですがどうでしょうか?

短距離馬でも逃げてスタミナ勝負に持ち込んで他馬の脚を削るねじ伏せるような勝ち方にケチがつけられるような環境(ビッグアーサーのことです、これは言いたいことが山ほどあります、祐一が不憫でならない)は異常ですよ。


デットーリ騎手のキス・祝福については、日本の騎手と比べるのはどうかな?と思いました。
もともと同じオブライエン陣営ですし、最後は脚色に優る同じ厩舎の馬に進路を譲るか、強引に入って来られても容認して当たり前だと思うし、暗黙の了解はあったはず。
現時点ではまだ自分の方が数多く大レースを勝ってるさ、という精神的余裕もあるでしょうし。

Posted by: シンプル | October 04, 2016 at 12:17 AM

治郎丸さん お疲れ様です。

今回も凱旋門の扉を開けることは出来ませんでした。
欧州の底力と言うか、執念と言うか、まざまざと見せつけられた思いです。
ロンシャンでは決して良い結果を出している厩舎ではありませんが、
今回はチームオブライエンの確信犯だと捉えています。
グリーンベルトを通す騎手の手綱捌きもそうですが、
持ち馬の特性を理解し100パーセントの力を発揮させる。
加えて相手の力は出させない。歴史が違うと言わんばかりに、、、
しかし、歴史的見れば短期間で底上げして来たとも言える、
関係者の情熱は決して屈することはないでしょう。
近く斤量の見直しがあると聞いております。
3歳で勝ちに行かずとも、古馬の挑戦に希望が膨らみます。
出来ればその瞬間を現地で見届けたいものです。

追伸、余計な話しですが馬券は馬単で少々頂きました。
勿論マカヒキの単勝も買いました。潔くないですね。(笑)

Posted by: 愛知のポルンガ | October 04, 2016 at 12:37 AM

シンプルさん

こんにちは。

熱い心と冷静な頭で書いたつもりです(笑)

もちろん私の見解なので、考える材料にしていただけると幸いです。

今回はペースが速かったという向きもありますが、馬群の密集具合や上位を占めた馬たちのポジションなどから判断すると、それほど速いペースではなかったのではないでしょうか。

ただ単に時計が速かったのと、馬場が良かったのだと思います。

ペースが速ければ、マカヒキのポジションは問題ありませんし、引っ掛かることもなかったでしょう。

馬場にしてはペースがそれほど速くなかったので、外を回されたことがロスになり、馬も行きたがったのだと思います。

それでもあそこまで負けているので、馬が苦しがって引っ掛かったことも考えると、マカヒキ自身が万全の体調ではなかったということだと思います。

日々たずさわっている関係者にも分からない目に見えない疲れがあったのでしょう。ここが競馬の難しいところですね。

おっしゃるように、日本の競馬は特殊な馬場で軽いレースをしているので、本当にスピードとスタミナを問われる競馬になると厳しいのかもしれません。

スピードとスタミナは相反する要素ではなく、似たようなものですから、今回のようなレースを観ると、本当の強さって何だろうって考えさせられます。

福永騎手の件については、皮肉なことですが、前走で逃げたことによって、陣営から逃げるなという指示が出ていたのか、それを忠実に守ってしまったことが裏目に出たということだと思います。

福永騎手ほどのトップジョッキーならば、勝つためには調教師の指示も聞き流す自信も時には必要なのではないでしょうかね。

Posted by: 治郎丸敬之 | October 04, 2016 at 11:14 AM

愛知のポルンガさん

こんにちは。

まさにチームプレイでしたね。

それだけマカヒキはマークされていたということでもあります。

それにしても、馬の強さだけではなく、レースの激しさがさすが凱旋門賞という感じで、馬も騎手もこれだけのパフォーマンスができなければ勝てないと思うと、日本人騎手が日本馬に乗って勝つのはいつのことやらと考えてしまいます。

でも凱旋門賞があるおかげで、私たちはここまで来れたわけですし、諦めずに挑戦していくことで私たちの力は目に見えないところで引き上がっているのだと信じています。

Posted by: 治郎丸敬之 | October 04, 2016 at 11:19 AM

治郎丸さん、こんばんは。

大昔ですが、ラグビーのNZ代表オールブラックスの当時世界最高のトライゲッターだったジョン・カーワン氏が全く同じことを言ってましたよ。
「肝(ハート)には火を、頭には氷を」という格言がラグビー王国には伝わってるそうです(笑)

なるほど、馬場にしてはあれでもペースが速くなかった(あるいは本当にハイペースだったなら全体タイムももっと速くなる?)という見方もあるのですね。
個人的には全体時計の割に上りがかかってたようなので、やっぱりハイペースだったのかな?と軽く考えてました。

確かにハイペースとするとマカヒキが折り合いをやや欠いたのは腑に落ちないですよね。
ユタカも祐一も「故障が心配」と言ってましたし、ちょっと走らなさ過ぎたという感想はあったようですね。

ビッグアーサーですが、馬の個性の上では大跳びで瞬時に加速する能力では他にもっと優れた馬がいるので、時計勝負に持ち込んでねじ伏せるスタイルが一番合ってると思っていました。
実際、去年重賞で勝ち切れなかった時はスローでギアチェンジにもたついてる間に他馬に出し抜かれるパターンばかりでしたから。

また、細江純子さんの批判も的外れだと思うのです。そもそも32秒台後半が当たり前の中山のスプリント戦で折り合いがどれだけ問われるのでしょうか?
トータルで見れば、かかってもハイペースにして他の馬の追走力を削ぐことプラスの方が、折り合ってスローにして1400寄りの差し馬の追走を楽にして差し馬勢の台頭を許すことのマイナスの方が大きい馬のはずです。

味方と信じてたはずの藤岡調教師が逃げを批判したことで祐一はガックリしてしまったのではないでしょうか?
そういう個性の馬に直線までじっとしてて、空いたら瞬時に抜け出す(皮肉にも平場で祐一がよく勝ってるようなレース)ような教科書的な競馬を無理強いする形になってしまったと思います。

指示を無視できない。
ネットで叩かれてることをつい気にしてしまう。
それは祐一の弱さかもしれませんが、ちょっと今回は背負う荷物が多すぎたのでは?と同情してしまいます。

Posted by: シンプル | October 04, 2016 at 09:36 PM


治郎丸さん

かなり久しぶりのコメントで
失礼します。

日本馬の凱旋門賞制覇!
必ず見れますよ♪

仮に、見れなくても…
それを期待するだけで
十分楽しいのが
日本の競馬ファンにとっての
凱旋門賞の存在ではないかと。

夢を掴むのが幸せなのか?
夢を見るのが幸せなのか?

ただ一つの歯車さえ
味方につければ、
日本馬の凱旋門賞制覇は
すぐそこに♪

抽象的なコメントで
すみません。(汗)

Posted by: | October 06, 2016 at 02:43 AM

シンプルさん

こんにちは。

ラグビー王国の精神だったのですね(笑)

凱旋門賞は時計だけを見るとハイペースなのかもしれませんが、レース自体はそのような形になっていませんね。

そのあたりが、別もののレースなのか、それとも計測時計自体が間違っているのか、日本の競馬だけを見ていると違和感を感じるところです。

ビッグアーサーについては、調教師からの指示があったにせよ、福永祐一騎手は中途半端な騎乗をしてしまいましたね。

本人も分かっているので、もうどうこう言っても仕方ありませんし、シンプルさんのおっしゃるように、スタートからこの馬のスピードとパワーを前面に押し出すレースをした上で、逃げるのか番手なのかが決まってくるべきだったのだと思います。

最初から控えていくつもりだったからこそ、ポジションが悪くなってしまったのですね。

でも福永騎手はたくさんこういう失敗をして、また成長してゆくのだと思います。G1レースで断然の1番人気に乗って負ける経験は騎手を育てるのかもしれません。

Posted by: 治郎丸敬之 | October 06, 2016 at 09:56 AM

風さん

こんにちは。

私も勝つところを見てみたいと思っていますよ。

そのためにも少しでも長生きしたいです(笑)

とはいえ、勝つためにこうして試行錯誤しながら、日本のトップホースが海をわたって挑戦しつづけることで日本の競馬のレベルは上がってきたのです。

そこが最も重要なポイントなのだと思います。

Posted by: 治郎丸敬之 | October 06, 2016 at 09:58 AM

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