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面目躍如

Tennosyoaki2016wt
天皇賞秋2016―観戦記―
最内枠からエイシンヒカリが先頭に立ったものの、スピードに乗り切れず、前半1000mが60秒8という、昨年(60秒6)に続いてスローペースに流れた。道中はひと固まりの馬群となって進み、内で脚を溜められた馬、または前々のポジションを取った馬にとって有利になるはずが、結果的には、外を回った馬、後ろから末脚勝負に賭けた馬が上位を占めることになったという魔訶不思議なレースであった。ディープインパクト産駒が2、3、4着していることからは、一瞬の速い脚が問われる馬場と流れであったと考えられる。

勝ったモーリスは、ディープインパクト産駒を従えて、瞬発力勝負を堂々と制してみせた。前走で2000mを走っていたことで、行きたがる面も全くなく、きっちりと折り合っていた。最後の直線では外によれる素振りを見せたが、坂を駆け上がって手前を変えてからはもうひと伸びして、他馬を寄せ付けない強さを示しての完勝。そもそも2000mの距離には心配はなかった。ここ2戦の敗戦は、激戦を勝ち続けてきたことや海外遠征の疲労が抜けていなかったことによるものであり、決して力負けではない。ゴールドアクター同様に、一度崩れてから、再び立ち直ったように、スクリーンヒーロー産駒は筋肉が硬くなりにくいという長所がある。立て直された今回は力を出せる仕上がりで、陣営にとっては順当勝ちであろう。

ライアン・ムーア騎手はきっちりと仕事をこなした。今回のレースに限っては、ムーア騎手だから勝てたというよりも、誰が乗っても勝っていただろうが、そういう馬が回ってくるのが世界のトップジョッキーであることも証明である。考えうる限りのベストな手を尽くしたモーリス関係者たちの期待に、ソツのない騎乗で応えてみせた。派手なガッツポーズもなく、涼しい表情をして検量室に戻ってくる姿からは、彼にとっての天皇賞秋は世界の大きなレースのひとつであり、その勝利も数ある勲章の中のひとつにすぎないということなのだということが伝わってきた。

2着に入ったリアルスティールは最後の直線でぐいぐい伸びて、こちらも海外G1馬としての面目躍如であった。もともと鉄砲使いでも走るタイプだけに、毎日王冠を回避して、ここ1本に絞ったことも功を奏したのだろう。安田記念はマイル戦が向かなかったということもあるが、それ以上にドバイ遠征の疲労が抜けていなかった。体調が整ってさえいれば、どのような距離でも脚を使える馬である。レース後のケアをしっかりと行えれば、もちろん次走は(たとえマイルCSでも)さらにこの馬の力を出せるチャンスである。

ステファノスは前走の悔しさを生かし、今回は直線では外に出そうと決めていたのだろう。外枠を引いてしまったことで後ろから行かざるを得ず、外を回るロスもあったが、この馬の持てる力を出し切ったことは確かである。もう少し器用なレースができるようになれば、G1の勲章にも手が届く能力を秘めている馬であり、この先は末脚一辺倒の競馬から、どのようにして脱却するかがポイントになる。

エイシンヒカリは力を出し切れずに終わったというよりも、この馬らしいスピードを発揮することができる体調になかった。武豊騎手としては、この馬の良さを引き出すためには速いラップを刻んで逃げたかったはずだが、馬自身が行けなかった。海外遠征の疲労は特に関係者の目にも見えないことが多いのだ。ルージュバックは末脚が不発に終わった。このようなタイプの牝馬は、馬群から離す(他馬との間に十分なスペースを取る)ことで、一瞬の切れ味を引き出すことができるが、今回は終始馬群に包まれてしまい、気を遣ってしまった分、脚も失ってしまった。精神と末脚はつながっているのである。

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Photo by 三浦晃一

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