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何も変わらない


マイルCS2016―観戦記―
外枠をものともせず、ミッキーアイルが敢然と先頭に立った。スタートを決めたネオリアリズムがそれに続き、前半マイルが46秒1、後半が47秒ジャストという平均ペースで流れた。これぐらいのペースだと、前に行った馬たちに比較的有利になるが、力があれば差せない展開ではない。しかし、逃げたミッキーアイルが最後の直線で外によれたことで、後ろから差して来た馬たちの進路が閉ざされてしまったことが、勝敗を分けた感は否めない。あの不利がなければ、後続の馬たち(特にサトノアラジンとディサイファ)と先行集団が入れ替わっていた可能性は十分にある。馬券を買っていたファンからすると、さすがにこれはないという結末であり、これが降着にならない判断は首をかしげざるを得ない。

今回の問題を目の当たりにして、2012年のマイルCSを思い出した方もいるかもしれない。あのレースも今回と同じく、内の馬が外へ張り出す形で玉突きが起きた。私はあのアクシデントは武豊騎手がもうひと呼吸待っていれば避けられたと今でも考えているし、不利がなければグランプリボスが勝っていた可能性は十分にあった。JRAは主因を特定しない形でお咎めなしと判断を避けたが、被害の程度は今回よりも甚大であった。旧制度でも新制度でも、2012年も今年も降着が妥当であろう。声の大きさに影響されてか、2012年のようなケースをお咎めなしにしてきた積み重ねがあるからこそ、今年のようなケースもアウトにできない。結局のところ、JRAもマスコミも私たち競馬ファンも、誰が言ったかや誰が行ったかではなく、何がどうしてどのように起こったかを見なければ、降着制度が変わっても何も変わらないのだ。

ミッキーアイルは2年半ぶりのG1勝利となった。もともとNHKマイルCを勝っているようにマイル戦における実績があり、血統的にも距離延長は望むところでもあり、距離が決して長いわけではなかった。若駒の頃は、腰が高くて幼さの残る馬体で走っていたが、ここにきてバランスが良くなり、大きく成長を遂げている。休み明けのスプリンターズSを叩いて、浜中俊騎手にスイッチして、実は今年の秋はこちらが大目標だったのだろう。

8日間の騎乗停止と引き換えにG1勝利を手に入れた浜中騎手は、どういう思いで年を越すのだろうか。何とかしてミッキーアイルを勝たせたいという気持ちと、ライアン・ムーア騎手との追い比べに負けたくないという闘争心が合わさって、つい頭に血が上ってしまったのだろう。一度だけではなく2度も外によれており、さらに一度も左手にムチを持ち替えることはなかった。京都のフルゲートのマイル戦は、どの馬も直線に向いて手応えが残っているためごちゃつきやすい。そのあたりも熟知しているはずなのに、大舞台を台無しにしてしまったのは惜しい。

イスラボニータは惜しくも届かなかったが、クリスストフ・ルメール騎手の好騎乗で持ち味を生かし切った。早めに先頭に立つと気を抜くところがあるため、ゴール前でハナか首だけ前に出るイメージでルメール騎手は乗っていたはず。スタートからゴールまで、外に出すタイミングも申し分なく、あの不利にも巻き込まれることもなく、この馬が最もパーフェクトな走りであった。昨年の不甲斐ない負け方に比べると、たとえ負けはしたものの、イスラボニータのマイル適性を証明し、陣営にとっても胸のすくようなレースであったはずである。

ネオリアリズムのマイル適性のなさを隠すように、ムーア騎手はやや強引に乗った。これだけ迷いなく先行できるのは、多少バテたとしても、ゴールまでなんとか持たせることができるという自信があるから。ミッキーアイルに差し返され、イスラボニータには切れで負ける形になったが、初めてのマイル戦で3着に粘り込んだのだから大したもの。この馬の地脚の強さを生かすには、もう少し距離があった方が良い。

1番人気のサトノアラジンは悔しいレースであった。結果から振り返ってみると、2番枠を引いてしまったのが運の尽きだったのかもしれない。本来であれば、最後の直線では外に出したかったが、実際は内ラチ沿いを進まざるをえず、馬群をどう捌くかがポイントとなってしまった。たしかにエンジンのかかりが遅いタイプであり、スパッと抜け出すことができずに致命的な不利を受けてしまった(ダメ押しの2度目も)。

ヤングマンパワーはマイル適性うんぬんよりも、夏を越して使われてきた疲れが出てしまったのではないか。久しぶりの関西への長距離輸送も引き金になったのかもしれない。フィエロは不利なく回ってきたが、G1レースを勝ち切るのはワンパンチ足りない。3歳馬のロードクエストは序盤から推進力に欠けていたし、この流れではさすがに届かない。道中でハミを噛んでいた場面もあったように、気性面に若さが残っていて、乗り方が難しい馬である。


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Comments

冶郎丸さん こんにちは

浜中騎手はやってしまいましたね。私はレースが行われる限りこの問題はついてまわることだと思っています。騎手にとっては命を賭けたやり取りであってルールはありますがどこまで踏み込めるものかは腹をくくって挑んでいる彼らが決めるものだと思っています。
ちょっと前に岩田騎手が叩かれましたが現在の彼の白髪を見るとそれほどのプレッシャーのなかで戦っていたのだと思うと安易な気持ちで口を挟むことはできません。

Posted by: コテツ | November 21, 2016 at 12:33 PM

コテツさん

最高の形で直線に向いたのに、最後の最後でよれてしまいましたね。

今回の件は、浜中騎手にとっても、降着になった方が気が楽だったのではないかとさえ思います。

ジョッキーたちはあらゆるものを背負って賭けて勝負に挑んでいますので、私たちは個人的な批判ではなく、起こったことをしっかりと見極めるべきだと思うのです。

Posted by: 治郎丸敬之 | November 21, 2016 at 02:56 PM

治郎丸さん、こんばんは。

浜中騎手の前半のレース運びは完璧でした。
決して逃げありきの出だしではなく、無理なく内を冷静に見ながらハナに立ち、変にスローに落とし過ぎることなく、平均からややハイペースにすることで瞬発力にかけた後続の馬たちの脚を削ぎました(やや力のいる馬場になったことも幸いしましたね)

それだけに余計に最後の斜行が残念です。
追い出す前にビジョンをチラ見してることや、しつこく右ムチを連打してることから、個人的には確信犯じゃないかと疑ってますがどうでしょうね?
もうバテてしまった(実際、ラスト1Fは異例なほど失速してて公式12.3)のでネオリアリズムの想定進路の芝の良い場所を横取りしに行ったんじゃないか?という疑惑がぬぐえません・・・

ロードカナロアの斜行の時は浜中騎手が被害者で、ショウナンマティへの熱い思いを秘めていた彼は人目もはばからず号泣した、と伝えられました。
自分がされて嫌なことをなぜ他人にするのか?
あの号泣から学んだものが「やり得」の精神なら何のための学習か?と問いたいところです。

音無師の、まるでムーア騎手のせい(彼は身を守るために不本意ながら右ムチで回避行動をしてただけ)でこうなったかのような物言いにもガッカリしました。

Posted by: シンプル | November 22, 2016 at 01:20 AM

シンプルさん

こんにちは。

ミッキーアイルはすんなりとハナを切れて、ムーア騎手が外から蓋をしてくれたことで、緩いペースで最後の直線に向くことができましたね。展開にも恵まれました。

私は確信犯だとは思っていませんが、勝てるかもと思った瞬間に、馬を隣にいるネオリアリズムよりも前に進ませることに意識が行ってしまい、真っ直ぐ走らせることが飛んでしまったのだと思います。

ミッキーアイルがバテて、あれだけ急激によれ始めてからではなかなか修正できず、そのままゴールまで行ってしまったのでしょうね。

ただこれぐらいの斜行は普通にあることで、今回はあまりにも(後続の馬たち)とのタイミングが悪く(ミッキーアイルにとっては絶妙)、何とも言えない結末になったのだと思います。

僕は日本でずっと乗っていくトップジョッキーであるほど、長い目で見ても、やり得という考え方は持っていないと考えていまして、それでもこういうことが起こるのは、誰もがその瞬間は勝ちたいからなのだと思います。

誰もが加害者になることもあれば、被害者になることもあるのです。

馬を真っすぐ走らせることも重要ですが、勝つことも大切なのです。そこに馬を走らせる騎手の難しさや苦悩や葛藤があるのではないでしょうか。

音無調教師のコメントは、どういうニュアンスなのか分かりませんし、論理的ではありませんが、浜中騎手をかばおうとしたのかもしれませんね。

Posted by: 治郎丸敬之 | November 22, 2016 at 10:35 AM

こういう結果は馬券買ってる人間からすると萎えますよね。

1競馬ファンとしては悶々とするしかないのですが、この記事のようにレースで何が起きたのか、何が問題なのかを噛み砕いて伝えていただけるのはホントにありがたいです。もっとそれぞれの立場の方に本音で語ってもらえないものでしょうか。

そもそも「降着」って何なんですかね?「失格」だけで十分な気がします。他馬の邪魔をしたら失格。故意かどうかは問わない。とか。

僕も競馬を始めて20年超。だんだん馬券の購買意欲が削がれてくのを感じる今日この頃です。
まあ、JCは現地観戦しにいきますけどね!

Posted by: やっとこ | November 22, 2016 at 10:57 AM

やっとこさん

こんにちは。

着順が入れ替わっていた可能性が高いことは、競馬を知っている人ならはっきりと分かっているはずですが、様々な事情が複雑に絡んでいるから難しいのでしょうね。

決して故意ではないと思いますし、誰が悪いということではないのですが、起こったことに対して、ある程度正確なジャッジをできる(する)意思を見せないと、何もかもが曖昧に理不尽になっていきますよね。

それぞれが本音を語るのも大切ですが、そうすると声の大きい人たちの意見が通ってしまいがちになるので、私は当事者(騎手たち)への事情聴衆も行きすぎると無意味だと思います。まずは起こったことをフェアに見る事がから始めてもらいたいと願います。

ジャパンカップ共に楽しみましょう!

Posted by: 治郎丸敬之 | November 22, 2016 at 11:04 AM

こんにちは!
2012年のマイルCSの最後の直線部分、武豊自身が被害馬だったことをご存知ですか?TVで解説されていたのをグリーンチャンネルで見ましたが、武豊が加害馬だという批判が多かったらしく心外だと。そして解説を見ると確かに被害を受けているんです。結局乗り手ではないと分からないということですよね。

Posted by: momo | November 23, 2016 at 02:08 PM

momoさん

こんばんは!

明日は雪になるそうで、寒いですね。

さて、2012年のマイルCSについては、武豊騎手ご自身がTVで解説されていたのも知っていますし、多くの方々が擁護する記事を書いているのも知っています。

それでも公平に見て、あそこで武豊騎手がもうワンテンポ待てていれば、他にも抜け出すチャンスはあったし、あそこまで被害が大きくならずに済んだと思いました。

あのときは武豊騎手自身にも焦りがあったと思いますし、もちろん意図的であったわけでもありません(それは今回の浜中騎手も同じです)。

声が大きい(影響力が強い)人だけの意見は尊重しすぎるのも良くないと私は思うのです。

たとえ武豊騎手がそう言ったとしても、それでもこういう見方の方がフェアではないかと考えられる(反論できる)ことが大切で、日本の競馬界はそれができないのが情けないところです。

乗り手にしか分からないところもあると思いますし、逆に乗り手(当事者)では公平な判断ができないところもあると私は思うのです。

Posted by: 治郎丸敬之 | November 23, 2016 at 06:04 PM

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