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競馬は時々難しく、そして素晴らしい

Arima2016

宣言どおりマルターズアポジーがハナを切り、番手を武豊キタサンブラックが取り、その後ろにゴールドアクターがつける形で隊列は決まった。最初の1ハロンを除く前半1200mが73秒5、後半が72秒3だから、先頭が離して逃げているようにみえても遅いペースで、後続集団はさらにスローに流れた。昨年同様に前に行った馬と馬群の内で脚を溜めることのできた馬たちに有利なレースとなり、そこを中団から外を回りつつも差し切ったサトノダイヤモンドの強さだけが光った。

サトノダイヤモンドは枠順に恵まれず、道中は外を回らされてしまう形になったにもかかわらず、最後の直線ではしっかりと伸び、道中は楽に進めていたジャパンカップ馬のキタサンブラックと昨年の覇者ゴールドアクターをねじ伏せたのだから文句はない。今から思えば日本ダービーで負けてしまったのが不思議だが、夏を越し、手脚を含めた馬体全体に伸びが出て、馬体が完成されたことが大きい。ヨーロッパの馬に近い体型をしているだけに、パワーとスタミナが豊富にあって、来年の凱旋門賞が楽しみである。

クリストフ・ルメール騎手は道中でずっと外を回されるのを嫌い、途中から動いてキタサンブラックの外につけた。サトノダイヤモンドの賢さを信頼していたのと、動いてもそこからもう一度止めて脚を溜められるという自信があったからこそ。あそこで動けるジョッキーと動けないジョッキーの違いは、馬を御す技術の有無である。ルメール騎手にとって、日本の騎手免許を取得してフルに騎乗した年の最後を、このような形で締めくくれたことには感慨深いものがあるのだろう。異国の競馬場でリーディング争いをすることがどれだけ苦しいか、ルメール騎手がここまで来るのにどれだけの涙を飲んできたのか、私には想像もつかない。しかし「競馬は時々難しいけど、素晴らしい」という言葉には、彼の熱い想いが凝縮されているようで、私まで胸が詰まってしまった。

キタサンブラックは道中、自分のリズムで走ることができ、大きなストライドで2500mを最後まで走り切った。勝負所でサトノノブレスに突っつかれたこともあるが(武豊騎手も言い訳のつもりで言ったのではないはずだが、同馬主の馬に突かれるぐらいのことは世界の競馬では当たり前である。日本を一歩出れば、人気馬に乗って誰にも突かれずに逃げられるなんてことはない)、最後のクビ差はジャパンカップの反動だろう。前走は極限の仕上げであり、そこから体調はやや下降線を辿っている中での粘りであったのだから、たとえ勝てなかったとしても最大級の賛辞を送るべきである。サトノダイヤモンドとは互角か現時点ではそれ以上の実力であることは間違いない。

ゴールドアクターは昨年同様に理想的な競馬ができ、この馬の力は出し切っているが、今年は前記2頭の力が上であった。パドック等では入れ込んでいて心配したが、馬体がマイナス6kgとギリギリまで仕上がっていたからこそ。この馬は2400mや3200mではなく、2500mといった非根幹距離のレースが合う。

惜しかったのは4着に突っ込んだヤマカツエースである。スタートしてから前半のポジションが悪かったことで、最後は脚を余してしまった。1頭前のサムソンズプライドが走ったポジションを取ることができていれば、上位3頭に肉薄していたはずである。今年に入ってから徐々に力をつけ、ここに来て2500mをこなせるほどに馬体にも伸びが出てきた。キングカメハメハ産駒は馬体が完成されると続けて好走する傾向があり、4歳秋を迎えたこの馬にもそれは当てはまる。

Photo by 三浦晃一

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Comments

治郎丸さんの馬体評価、とても参考になります。
私も勝利ジョッキーインタビューの「競馬は時々難しいけど、素晴らしい」でジーンときました。
期待していたヤマカツエースが4着だったので3連単トリガミでしたが、サトノダイヤモンドとルメールが勝ち切ってくれて、納得のレースでした。

Posted by: Masaki Yoshio | December 26, 2016 at 11:26 PM

Masaki Yoshioさん

ありがとうございます。

僕も馬体評価だけで馬券が買えれば、もう少し収支も改善するんですけどね(笑)

ルメール騎手は最後の土日で勝ち切れなかったことを言ったのかもしれませんが、私には彼のこれまでのジョッキー人生について言っているように聞こえました。

ヤマカツエースは強くなりましたし、もったいない競馬でしたね。

Posted by: 治郎丸敬之 | December 27, 2016 at 09:59 PM

冶郎丸さん こんばんは。

今年最後のG1有馬記念でこんな名勝負を見れることは競馬冥利に尽きます。

最後の直線の攻防を何回も見直していたのですがサトノダイヤモンドはまだ脚を残しているように見えました。
ルメール騎手の腕の振りを見ていると本気で追ったのは坂を駆け上がってゴール前5完歩です。
たぶん後ろからの馬にも注意を払いギリギリまで待ったのでしょう。
向こう正面の進出といい人馬一体を再現する最高の騎乗でした。

「競馬は時々難しいけど、素晴らしい」
外国人は他方面でもそうですが誰もが傷つかず
いろいろな人の身の丈に合ったコメントで
深く考えさせられる素晴らしいものです。


Posted by: コテツ | December 28, 2016 at 12:20 AM

コテツさん

こんにちは。

有馬記念は素晴らしいレースでしたね。

強い馬が強いレースをしての結果だったと思います。

サトノダイヤモンドはたしかに追えば追うほど、もっと伸びていきそうな手応えでフィニッシュしていますね。

ルメール騎手もデビュー戦からこの馬の手綱を取り、この馬を信じて乗り続けてきていますので、喜びもひとしおだったのでしょう。

私たち競馬ファンから見れば、ジョッキーにも国籍はあまり関係ないのですよね。

Posted by: 治郎丸敬之 | December 28, 2016 at 11:30 AM

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