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馬場が変われば勝ち馬も変わるのが競馬


高松宮記念2017―観戦記―
さすがスプリンターという好スタートを各馬が切り、その中でもラインスピリットが先頭に立ち、シュウジがそれに続く形でレースを引っ張った。前半600mが33秒8、後半が34秒9という、やや重馬場で終いの時計が掛かったと考えると、スプリントG1としては平均から少し遅いペース。直線に向いたときにある程度のポジションにいなければ、勝ち負けには加われない、差し追い込み馬には厳しい展開となった。

勝ったセイウンコウセイは、終始抜群の手応えで先団を追走し、直線に向いてからも追い出しをひと呼吸待てるほどの余裕があった。この馬自身がぬかるんだ馬場を苦にしない馬力タイプであることに加え、馬場の良いところを選んで走ることができたおかげで、着差以上の完勝。初勝利を挙げるまでに時間が掛かったが、芝の短距離路線に照準を絞ってからは、一気に頂点まで駆け上がった。前走のシルクロードSでは切れ負けし、人気の盲点にもなっていたが、今回は雨が降ってパワー勝負で台頭したように、馬場が変われば勝ち馬も変わるところが競馬は面白い。

牝馬のレッツゴードンキにとっては、力の要る馬場のさらに悪いところを走らされたことが誤算であった。この馬自身、決して非力なタイプではないが、並み居る筋骨隆々の牡馬を相手に回しているだけに、純粋なスピードで勝負したかったというのが本音だろう。それでも、レースの流れに乗り、直線では内を突いて33秒台の脚で連対を確保したのだから、ここに来て再び力をつけていることは間違いない。馬場状態を考慮に入れ、直線では内が開くことに賭けていた岩田康誠騎手の作戦も功を奏した。

レッドファルクスは好スタートから好位を追走し、伸びを欠いて3着に敗れたが、新たな境地を切り開いてみせた。末脚のしっかりとしている馬だけに、こういう競馬がコンスタントにできるようになると成績は安定するだろう。今回は休み明けでぶっつけ本番だっただけに、ひと叩きされた次走は最後まで伸び切れるはずである。スウェプトオーバーボード産駒にしては体が大きい方だが、上位2頭に比べると馬体重が軽いことからも分かるように、パワー勝負においてはやや分が悪かった。

メラグラ―ナは初めてのG1挑戦であり、得意の末脚は不発に終わった。前走で減った馬体が回復してはいたが、決して体調が上向きとは言えなかったところに、今回の渋った馬場がマイナスの影響を与えた。一流のスプリンターに混じってどこまで戦えるか、という試金石の一戦であっただけに、残念な結果に終わってしまった。


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G1レースでは距離延長馬ではなく短縮馬を狙え

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競馬を始めたばかりの頃は、1200mと1600mの距離のレースの間には、それほど大きな違いがないと思っていた。同じように、1600mだろうが2400mだろうが、距離がレースの勝敗に与える影響はごくわずかだと感じていた。なぜかというと、オグリキャップがマイルチャンピオンシップや安田記念で他馬を圧倒しながらも、有馬記念を勝ち、ジャパンカップでは激闘を演じていたからだ。バンブーメモリーが安田記念を勝ち、マイルCSではそのオグリキャップとハナ差の勝負を演じながらも、スプリンターズSを突き抜けるのを目の当たりにした。走る馬は走るし、そうではない馬はそうではない。いわば距離不問の時代があった。

しかし、競走馬の距離体系が少しずつ整い始め、私も馬券と深くかかわるようになるにつれ、わずかな距離の違いが勝敗に大きな影響を及ぼすことを知ることになった。1ハロン(約200m)の違いはもちろんのこと、地方の競馬場に行けばその半分の100mでさえ、天国と地獄を隔ててしまう壁になるということを学んだのである。特にレースのレベルや格が高くなればなるほど、わずかな距離の差が勝ち負けを左右することになる。

距離延長について考えてみると、たとえば1200m→1400mと少しずつ距離を延ばしてレースを使われてきた馬は、実は距離に不安のある短距離馬であることが多い。私にこのことを教えてくれたのはリトルオードリーという牝馬であった。1996年の牝馬クラシック戦線にて、新馬戦(1200m)→紅梅賞(1200m)→4歳牝馬特別(1400m)と距離を延ばしつつ連勝し、本番の桜花賞では1番人気に推された。私は迷いなく本命を打っていたが、彼女は人気を裏切る形で9着と凡走した。このとき私は、馬券が外れた悲しみに暮れつつも、1400mとマイルの間にある壁は、1200mと1400mのそれ以上に厚い。たとえ1400mまではスピードだけで押し切れても、マイル戦は豊富なスタミナがなければ克服することができないと知った。

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鍛え上げられているシュウジ:5つ☆

シュウジ →馬体を見る
各パーツが太く大きく、まさに典型的なスプリンター体型を誇る。
前駆も鍛え上げられて、トモの肉付きも素晴らしく、仕上がりも万全。
Pad5star

フィエロ →馬体を見る
高齢馬らしく腹回りに余裕が見られ、背が垂れているように映ってきた。
それでも毛艶は若々しく、絶好調ではないが、衰えは感じさせない。
Pad3star

ヒルノデイバロー →馬体を見る
走るともう少し手脚の長い馬に見えるが、立ち写真を見ると短距離馬らしい。
前駆が勝っていてもトモが弱いからこそ、前半で少し置かれてしまうのだろう。
Pad3star

レッツゴードンキ →馬体を見る
2歳時から完成された馬体を誇示していたように、今回も大きくは変わらない。
全体的な馬体のバランスが良く、精神面での強さも顔つきから伝わってくる。
Pad3star

ソルヴェイグ →馬体を見る
胴部に長さがあって、短距離馬のそれではないが、気持ちが勝っているのだろう。
他のメンバーと比べると、やや線の細さが残っていて、パワー不足は否めない。
Pad3star

メラグラ―ナ →馬体を見る
全体的にゆったりとした造りで、距離はマイル戦までなら克服できそう。
とはいえ、牝馬らしい線の細さがあって、スプリント戦のパワー勝負がどう出るか。
Pad3star

レッドファルクス →馬体を見る
香港遠征の疲れは見られず、芦毛の馬体ということもあるが、ふっくらと映る。
胴部にもさらに伸びが出てきたので、もう少し長めの距離でも守備範囲。
Pad3star

スノードラゴン →馬体を見る
同じ芦毛のレッドファルクスと比べると、脂肪分が多く、腹回りに余裕がある。
この年齢にしては、筋肉に柔らかみがあり、走る力は衰えていないはず。
Pad3star

トーキングドラム →馬体を見る
毛艶は素晴らしく、ここに照準を合わせて、パーフェクトな仕上がり。
キングカメハメハ産駒にしては、重心が低いが、だからこその短距離馬か。
Pad4star

セイウンコウセイ →馬体を見る
この馬も馬体の長さに比べると手脚が短く、その分、重心が低く映るのは仕方ない。
前駆の盛り上がりは特に素晴らしく、トモにも実が入って、力は出し切れる出来。
Pad3star

ナックビーナス →馬体を見る
立ち姿にアンバランスさが感じられるように、腹が巻き上がって、完調には遠い。
もう少し馬体が回復してきたら、線が太くなって、力強さが加わってきそうな馬体。
Pad3star

ワンインナムーン →馬体を見る
牝馬にしては、馬体がふっくらとして、全体的な筋肉のボリュームは素晴らしい。
顔つきを見ると、気性の素直さが伝わってきて、安定して力を出し切れるタイプ。
Pad3star


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中京芝1200m

Chukyo1200turf

スタート時点は、向こう正面の緩やかな上り坂の途中にある。およそ120m走っただけで、すぐに下り坂へと入っていき、そこから200mもしないうちに3コーナーへと差し掛かる。さらにずっと下りながら3コーナー~4コーナーを回り、最後の直線に向くと一転して2mの急坂が待っている。そのあと240mのほぼ平坦な直線がゴール板まで続く。

第1コーナーまでの距離はおよそ300mと短くも長くもなく、極端に速いペースにはならないだろうが、それでも3~4コーナーまで下り坂が続くため、知らず知らずのうちにペースが速くなってしまうはず。時計的にどうこうではなく、直線に向くまで自分のペースで走れた先行馬にとっては、412mに延長された直線もそれほど長くは感じないだろうが、前半が速いラップになり、上がりが掛かる展開になるので、基本的には差し馬が脚を余すことなく十分に届く舞台である。

改修前の高松宮記念は小回りを意識する余り、ペースが全体的に速くなり、その結果として先行した馬がバテていたが、改修後は直線が長くなったことで、差し馬が十分に末脚を発揮できることになった。いずれにしても、差し馬にとって有利なレースになることに違いはない。

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高松宮記念を当てるために知っておくべき3つのこと

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■1■先行馬有利へ
中京競馬場は小回り、直線に坂がなく平坦であり、本来は圧倒的に先行馬が有利なコースであったが、高松宮記念に限っては、最後の1ハロンでスピード自慢の先行馬の脚が止まり、スタミナを備えた差し馬がゴール前で逆転するという展開のレースになりやすかった。しかし、その傾向は中京競馬場が新装されて以来、変わりつつある。

「先行馬有利」の状況は、ラップタイムからも一目瞭然である。阪神競馬場で行なわれた平成23年を除く、過去10年間の前半後半3ハロンのラップタイムは以下のとおりである。
 前半 ― 後半
平成16年 32.9―35.0 (前後半の落差2.1)
平成17年 33.3―35.1 (前後半の落差1.8) 
平成18年 33.7-34.3 (前後半の落差0.6)
平成19年 33.8-35.1 (前後半の落差1.3)
平成20年 33.4-33.7 (前後半の落差0.3)
平成21年 33.1-34.9 (前後半の落差1.8)
平成22年 33.5-35.1 (前後半の落差1.6)
平成24年 34.5-35.8 (前後半の落差1.3)
平成25年 34.3-33.8 (前後半の落差0.5)
平成26年 34.5-37.7 (前後半の落差3.2)
平成27年 34.0-34.5 (前後半の落差0.5)
平成28年 32.7-34.1(前後半の落差1.4)

平成25年までは、前半が速くて後半が掛かるという、典型的な前傾ラップであった。「短距離の差し馬」という格言があるように、基本的にスプリント戦は差し馬有利な前傾ラップになることが多い。特にG1のスプリント戦となると、スピードのある馬が揃い、前半のポジション争いが厳しくなるため、どうしても上がりの掛かる展開となるのは避けられない。

しかし、直線が長くなり、坂ができたことにより、道中のペースには落ち着きが出て、かえって差し馬が届きづらくなった。スピードとスタミナの両方が要求されることには変わりがないが、ある程度先行できて、パワーで押し切れる馬にとっては最も向いている舞台となる。

■2■馬場の不利、枠順の不利はなくなる
かつて開幕最終週に高松宮記念が行なわれていた頃は、馬場の傷みによってコースの内外における有利不利を生み出してしまうことがあった。平成12年のキングヘイロー、13年のトロットスター、17年のアドマイヤマックスと、大外を回った馬が勝利したように、内側が傷んで走りにくいという馬場設定になってしまう可能性があった。しかし、2012年からは改修後ということもあって、馬場は絶好の状態を保っているため、馬場による有利不利はない。

さらに、これまでの中京競馬場はコース幅が狭くカーブもきついため、枠順の内外も考慮に入れるべきであった。テンのダッシュが速くない馬が内枠に入ると、外から速い馬に来られ、包まれてしまい何も出来ずに終わったり、外枠を引いた馬が内に入れるヒマもなく、終始外々を回されて終わってしまうことがあった。どの枠順を引いたかによって、勝利の行方が大きく左右されたのだが、改修後は枠順における有利不利もほとんどなくなるだろう。

全体的に見ると、よほど極端な枠順を引かない限り、スピードとスタミナを兼ね備えた強いスプリンターが勝つことのできる舞台が整ったといえる。

■3■5歳馬が有利
過去10年間における、年齢別の成績は以下のとおり。

4歳   【1・0・4・28】 連対率3%
5歳   【6・4・2・33】 連対率22%
6歳   【0・5・1・32】 連対率13%
7歳以上【2・0・2・41】 連対率4%

勝ち鞍、連対率だけを見ても、5歳馬が圧倒していることが分かる。勢いのある4歳馬が、充実の5歳馬にねじ伏せられてしまうという形になりやすい。キンシャサノキセキは例外的存在と考えて、6歳以上の馬になってくると、スピード不足を露呈してしまうのか、年齢と共に勝率は下がっていくことになる。スピードとスタミナを兼ね備えたスプリント能力を問われるということだ。

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かつてのインサイダー情報が身近に溢れている時代には

Cover

インサイダー情報を頼りに馬券の予想をしていたのは、もはや戦前の話である。現在と比べると限られた情報しか与えられていなかった競馬ファンが、どこからともなく流れてくる風の噂を大きな根拠として、馬券を買わざるを得ない時代が確かにあった。「あの調教師が絶対に勝てると言っている」とか、「あの馬はエビ(屈腱炎)が出ているらしい」等々、聞き捨てならない情報がまことしやかに人口に膾炙したのである。予想する上での拠り所が、嘘か本当かわからないはずのインサイダー情報にしかなかったのである。

しかし、戦後、私たち競馬ファンは、自分たちのイマジネーションを用いて馬券を買うことができる、ということを知ることになる。故大川慶次郎氏による「展開」の発見である。「展開」という概念は、今となっては当たり前のように用いられているが、当時は画期的な予想法であった。それぞれの脚質を分析し、実際のレースが行われる前に、仮想上のレースを想定するのである。競馬ファンひとりひとりが、自分の頭の中で、あらゆるイマジネーションを活用して、レースを予想する。競馬予想の民主化の走りである。

とはいえ、やはりインサイダー情報という響きは魅力的で、私もその罠にハマリそうになったことがある。少し昔の話になるが、キングカメハメハのダービー祝勝会に行った時のこと。宴もたけなわ、私は席を外し、男性用のトイレで用を足していた。すると、若者二人が何やら楽しそうに話しながら一緒に入ってきて、私の隣でこんな会話をしながら用を足した。

「菊花賞はハーツクライで間違いないですよ。」

「確かにネ。」

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トモの肉付きも充実しているアウトライアーズ:5つ☆

★スプリングS
サトノアレス →馬体を見る
休み明けとは思えない筋肉のメリハリがついて、力を出し切れる仕上がり。
やや周りを気にしているような耳の形だが、心配するほどではないだろう。
Pad4star

アウトライアーズ 馬体を見る
立ち姿は3歳馬とは思えないほど堂々として、筋肉の量もあって申し分ない。
前後のバランスが良く映るということは、トモの肉付きも充実している。
Pad5star

エトルディーニュ 馬体を見る
全身に筋肉が付ききっておらず、馬体全体から幼さが伝わってくる。
胴部には長さがあるのは母父オペラハウスの影響か、距離は問題ないはず。
Pad3star

モンドキャンノ 馬体を見る
筋肉量は豊富だが、胴部が詰まって、中山の1800mは距離的には長い。
前駆の盛り上がりは素晴らしく、朝日杯以来でも仕上がりは良好といえる。
Pad3star

プラチナヴォイス 馬体を見る
全体的に馬体が薄く、スラリと立つ姿は、母の父マンハッタンカフェの影響か。
距離は延びても問題なく、スタミナを問われる中山1800mコースも大丈夫。
Pad3star

トリコロールブルー 馬体を見る
コロンと映るように、腹袋がしっかりとして、カイ葉食いの良さが伝わってくる。
毛艶も素晴らしく、筋肉にも柔らかみがあって、ここに来て調子が上がっている。
Pad4star

★阪神大賞典
シュヴァルグラン 馬体を見る
昨年時よりもさらにがっしりと馬体が充実し、今ならパワー勝負でも他馬に負けない。
胴部には長さが十分にあって、距離は延びれば延びるほど力が発揮できる。
Pad3star

タマモベストプレイ 馬体を見る
ごく平凡な馬体で、なぜこの身体で長距離レースを得意としているのか分からない。
首の使い方が上手いからか、それとも気持ちの面で落ち着いているのか。
Pad3star

トーセンバジル馬体を見る
実にバランスの良い立ち姿であり、さすが藤原厩舎と思わせてくれる馬体を誇る。
後に比べるとやや前が勝っている印象を受けるが、トモが物足りないほどではない。
Pad3star

サトノダイヤモンド 馬体を見る
昨年の春までは、手脚が短く、重心の低い馬体であったが、背が伸びてから強くなった。
前後にバランス良く実が入って、休み明けとしては申し分のない仕上がりにある。
Pad45star

レーヴミストラル 馬体を見る
賢そうな顔つきをしており、前駆が強く、首の長さや太さは絶好のバランスで伸びている。
やや重心は低く映るが、この馬も前後にバランス良く筋肉がついて文句なしの出来。
Pad4star

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阪神大賞典を当てるために知っておくべき3つのこと

Hansindaisyouten

■1■瞬発力勝負に
過去11年間、勝ち馬の上がり3ハロン時計は以下のとおり。

平成18年 ディープインパクト  36秒8
平成19年 アイポッパー      34秒3
平成20年 アドマイヤジュピタ  34秒7
平成21年 アサクサキングス  40秒6
平成22年 トウカイトリック    36秒0
平成23年 ナムラクレセント   35秒3
平成24年 ギュスターヴクライ 37秒1
平成25年 ゴールドシップ    36秒8
平成26年 ゴールドシップ 34秒5
平成27年 ゴールドシップ 35秒5
平成28年 シュヴァルグラン 34秒9

上がりが遅いレースと速いレースの差が激しいように見えるが、実はディープインパクトが勝った年は、馬場が重く、異常なほど強い風が吹いていた。また、平成22年はそのディープインパクトの2着したトウカイトリックが4年越しで勝利したように、上がりが掛かる競馬であった。平成21年は不良馬場であったため時計が掛かった。そして、平成24年はやや重馬場に加え、オルフェーヴルのまさかの逸走があり、上がりの掛かる展開に。

しかし、それ以外のほとんどの年は上がりが34秒台となっていて、基本は瞬発力勝負になりやすい舞台と考えてよい。3000mを走って34秒台で上がってくるのだから、道中がいかに遅いペースで流れ、ラスト3ハロンの瞬発力勝負になっているかが分かる。これが阪神大賞典と天皇賞春の結びつきが強い理由のひとつでもある。長距離戦だからといって、決してスタミナ豊富な馬が有利なのではなく、まずは瞬発力が求められることを知っておきたい。

■2■内枠で先行出来る馬が有利
スローペースの瞬発力勝負になりやすい以上、当然のことながら、内枠を引いて内々の経済コースを進んだ馬が有利となる。ただし、長距離戦では各馬もコースロスを意識して外々を回らないように運んでくるため、たとえスローペースであっても、馬群は縦長になることが多い。そのため、内外という枠順でそれほど大きな差は生じない。内枠から発走して、前にポジショニングできて、ラスト3ハロンの瞬発力勝負に強ければ、勝ち負け必至のレースである。

■3■1番人気馬が圧倒的に強い
過去10年間の人気ごとの成績は以下のとおり。

1番人気【4・3・2・1】 連対率70%
2番人気【2・0・1・7】 連対率20%
3番人気【2・1・3・4】 連対率30%

1番人気馬の連対率が7割と、圧倒的な安定感を誇っていることが分かる。これは人気馬が強いということではなく、長距離戦では各馬の実力や仕上がり具合が如実に現れてしまうということである。たとえ展開やレースの綾があったとしても、力のない馬や仕上がりの良くない馬が好走してしまう確率は極めて低い。実力と仕上がり状態をそのまま信頼してよいレースである。

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スプリングSを当てるために知っておくべき3つのこと

Springs

■1■皐月賞と結びつきやすい
本番と距離が同じ弥生賞が皐月賞に結びつきにくいのに対し、1800mで行われるスプリングSからは過去17頭の皐月賞の勝ち馬が出ている。理由として考えられるのは、以下の2つ。

1、 中3週というレース間隔が調整しやすい
2、 皐月賞に似た底力勝負のレースになりやすい

1については、皐月賞に向けてという意味では、スプリングSで勝った時の体調を引き続きキープしやすいということである。弥生賞から皐月賞だと中5週となってしまい、レース間隔が開いていることでかえって調整が難しくなってしまうのだ。中3週だと体調を維持することに気をつければよいが、中5週だと一旦僅かに緩めてもう一度仕上げ直すことになる。

2については、弥生賞がスローの瞬発力勝負になりやすいのに対し、スプリングSは平均ペースの耐久勝負になる傾向がある。わずか200mの距離の違い(コース設定)が、レースの質にも影響を与えるからである。そして、本番の皐月賞は後者に近いペース(平均~ハイペース)になるからこそ、スプリングSの勝ち馬や好走馬が皐月賞につながりやすいということになる。

■2■パワーとスタミナが問われる
上記のように、中山2000mで行われる弥生賞に比べ、1800mで行われるスプリングSは道中で緩むところが少なく、耐久戦になりやすい。軽さと瞬発力ではなく、パワーとスタミナを問われるレースになるのだ。血統的には、ダートを得意とする血やヨーロッパのスタミナ血統の馬が走っているのが目立つ。また、4つコーナーを回る小回りのレースだけに、どうしても前に行ける馬にとって有利になる。速い脚を持続できる地脚の強い馬を狙うべきだということだ。

■3■前走連対馬と1番人気が強い
前走1着   【5・6・5・42】
前走2着   【1・1・4・11】
前走3着   【3・0・0・3】
前走4着以下【0・2・0・43】

過去10年のスプリングS連対馬20頭のうち、13頭が前走で連対している。クラシック開幕まで残り4週間という時期であり、素質馬が本番へ向けて集結してくる以上、前走で負けている(最低2着は確保)馬では苦しいということだろう。もちろん、重賞以外のレースで負けているような馬では勝負にならない。

1番人気   【3・3・3・0】
2番人気   【1・0・2・6】
3番人気   【2・2・0・5】
4番人気以下【3・4・3・81】

さらに、その素質馬たちの中でも1番人気に推された馬は、過去10年で3勝を挙げ、連対率にしても67%と圧倒的な数字を出している。前走の内容が良かったということであり、底力が試されるレースだけに実力がそのまま反映されやすい。

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新しい種牡馬たち

Newsires2017年度の種付け料が発表され、今年から来年にかけて、日本の種牡馬界や生産界が変動期を迎えると直感した。まずはディープインパクトによる独占化である。種付け料ランキング1位のディープインパクトの種付け料は3000万円であり、続くキングカメハメハのそれは1000万円と、1位と2位の間でなんと3倍もの差が生まれている。種付け料とは、単に種付けをするために掛かる費用ということだけではなく、それだけの種付け料を払っても受胎させたい、(血統)レベルの高い繁殖牝馬が集まるということを意味する。つまり、これからも世界トップクラスの繁殖牝馬を肌に持つディープインパクト産駒が続々と誕生するということ。しかもディープインパクトは母系の良さを引き出すタイプの種牡馬だけに、より好循環に拍車をかけることができる。

これに輪を掛けるのが、種付け頭数の増加である。ディープインパクトの昨年時の種付け頭数は230頭とゆうに200頭超えを果たしており、あのサンデーサイレンスでさえ、初年度は77頭であり、200頭を超えたのは2001年のみ。種付け管理技術の発達により、20年前に比べると、安定して多くの頭数に種付けができるようになっている。とはいえ、サラブレッドの生産頭数が増えているわけではないのだから、一部の人気種牡馬たちに集中しているということであり、その頂点にいるディープインパクトに質量ともに一極集中していると言っても過言ではない。話はそんなに単純ではないのは確かだが、それでもディープインパクトの仔が日本ダービーの出走馬の大半を占めたり、掲示板を独占したりする日がいつ来ても不思議ではない。

それから、サンデーサイレンスの孫にあたる種牡馬と海をわたって結果を出した新種牡馬たちによる世代交代である。ステイゴールドやフジキセキ、マンハッタンカフェ、ゴールドアリュールなど、一世を風靡したサンデー直仔の種牡馬たちが亡くなり、その子どもたちに活躍馬が出ることで、血のバトンタッチが行われつつある。オルフェ―ヴルを筆頭にして、ゴールドシップやキンシャサノキセキなど、サンデーサイレンスの孫が種牡馬として台頭する時代が来ている。

またスクリーンヒーローのように、母の父にサンデーサイレンスを持つ種牡馬にも同じことが当てはまる。ドゥラメンテがそうである。それとは対極にあるのが、サンデーサイレンスの血を3代以内に持たない種牡馬たちである。ルーラーシップを筆頭に、ロードカナロアやモーリスなども、種牡馬としての未知の魅力があり、大きく成功する者とそうでない者にこの先分かれてゆくだろう。

ディープインパクトによる独占は避けられないだろうが、どれだけ他の種牡馬たちが太刀打ちできるのか、そして新種牡馬たちの中からどの馬がディープインパクトの牙城を脅かす存在になるのか、興味は尽きない。おそらく2020年ごろには、今の私たちが想像していたのとは少し違った種牡馬の産駒が、新馬戦を悠々と勝ち上がり、大きなレースを続々と制したりしているのではないだろうか。

Photo by 三浦晃一

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馬優先主義でデビュー戦から見る

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作曲家の坂本龍一氏は、「自分のやっていることの98%は10代に吸収したことでできている」と娘に宛てた手紙に書いたそうだ。98%とまではいかないが、私の競馬に対する考え方や知識なども、実は十代の頃に身につけたものがほとんどであり、その多くをミスター競馬と呼ばれた野平祐二氏、日本を代表するトップジョッキーであった岡部幸雄元騎手、そしてタイキシャトルなどの名馬を育てた藤沢和雄調教師という人物たちに大きく影響されている。彼らが語った言葉やその著作を通し、私は競馬を学んだのである。

岡部幸雄元騎手が提唱した「馬優先主義」は、私の心を大きく揺り動かしただけではなく、競馬関係者や競馬ファンの間にも深く広く浸透していった。今となっては当たりまえの考え方ではあるが、当時は馬や競馬に対する見方が180度変わったような気がした。馬を中心にすべてを考えてよいのだ、馬を尊敬・尊重すべきなのだと。世界中の競馬場に行って騎乗し、またシンボリルドルフなど数々の名馬の背に跨り、育てた岡部幸雄元騎手の言葉には重みがあった。

その後も長く現役生活を送り、ジョッキーを引退してからも競馬を語り続けてきた岡部幸雄元騎手の言葉には、今でもハッと気づかされることがある。もう20年以上も競馬を見続けている私にとっても、また新たな学びを与えてくれるのである。2月26日号の週刊Gallopにおける戸崎圭太騎手との対談記事がそうであった。少し長くなるが、引用させてもらいたい。

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ステファノスとレーヌミノルが仕上がっている:5つ☆

★金鯱賞
ステファノス →馬体を見る
年齢を重ねるごとに、母父クロフネの血が濃く出て力強い馬体になっている。
香港遠征明けになるが、仕上がりも素晴らしく、力を発揮できる出来にある。
Pad5star

ヤマカツエース →馬体を見る
馬体はすっきりして、肉体的にも精神的にも余計なところが削がれた印象。
リラックスした表情と立ち姿からは、現在の好調さが伝わってくる。
Pad45star

サトノノブレス →馬体を見る
さすが池江厩舎の馬といった馬体で、7歳馬にして筋骨隆々の体つきを誇る。
やや脂肪がついている箇所があり、ひと叩きされたら完璧になるのでは。
Pad4star

プロディガルサン →馬体を見る
このメンバーに入ってしまうと、どうしても馬体の線の細さが目立つ。
胴部や手脚には長さがあって、将来的には理想的なシルエットを描くはず。
Pad3star

ルージュバック →馬体を見る
古馬になってからは大きく馬体の変化はなく、現状維持といったところか。
決して走れない身体つきではないが、かといって仕上がり切ってもいない。
Pad3star

ルミナスウォーリア― →馬体を見る
いかにもメイショウサムソン産駒らしい、ずんぐりむっくりの体型。
前駆には力強さがあるが、欲をいえば、トモの肉付きがもう少しほしい。
Pad3star

★フィリーズレビュー
レーヌミノル →馬体を見る
2歳時は線の細さが目立ったが、ここにきてダイワメジャー産駒らしくなった。
前後のバランスも良く、筋肉量も豊富で、大崩れするイメージが湧かない。
Pad5star

ジェーヌエコール →馬体を見る
前駆にしっかりと筋肉がついているが、トモの実の入りが寂しい。
腹が巻き上がっているように、線が細く、馬体の成長が感じられない。
Pad3star

ゴールドケープ →馬体を見る
牝馬らしい線の細さと馬体の薄さがあり、現時点での幼さは否めない。
このメンバーに入ってしまうと、バネは感じても、力強さは物足りない。
Pad3star

アズールムーン →馬体を見る
胴部と手脚に長さがあって、この先、筋肉がついてくれば好馬体になる。
現時点では、つくべきところに筋肉がついておらず、線の細さが目立つ。
Pad3star

カラクレナイ →馬体を見る
毛艶は物足りないが、前進気勢を感じさせる表情と立ち姿は光るところがある。
腹回りが寂しいため、胴部が長く見えるが、距離は2000mまでは持ちそう。
Pad45star

シグルーン →馬体を見る
この馬も前駆の力強さに比べて、後躯の肉付きが物足りなく、パワー不足。
胴部にアバラが見えているように、きっちりと仕上がって走れる出来にある。
Pad3star

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中山牝馬Sを当てるために知っておくべき3つのこと

Nakayamahinnbas

■1■京都牝馬Sで負けていた馬
過去10年の連対馬を見渡すと、20頭中、7頭は京都牝馬S組である。牝馬限定の重賞同士だけに、結びつきがあって当然であるが、着順がリンクしているとは言い難い結果となっている。京都牝馬S→中山牝馬Sという連勝は一度もなく、京都牝馬Sで惨敗していた馬の中山牝馬Sでの巻き返しが多いことが特徴である。

考えうる理由は2つ。ひとつは、古馬牝馬が重賞を連続で勝つということが、体調維持の面で難しいということ。もうひとつは、京都1600m(外回り)で行われる京都牝馬Sと、中山1800mで行われる中山牝馬Sでは、勝ち馬に求められる資質が全く違ってくるからである。京都牝馬Sが一瞬の切れ味が問われるヨーイドンの競馬になるのに対し、中山牝馬Sはスピードの持続力が要求されるレースになりやすいのである。

つまり、京都牝馬Sを切れ味不足で負けていたような、スピードの持続力を武器とする、地脚の強い馬を中山牝馬Sでは狙うべきということだ。

■2■基本的には内枠の先行馬有利
中山1800mコースは、スタンド前の上り坂の途中からスタートする。スタートから第1コーナーまでの距離は205mしかなく、上りスタートのため、テンが極端に速くなることはない。よって、スロー~ミドルに流れるのが必然といえる。ただし、過去10年のラップ(以下)を見ると、意外とそうでもなく、ニシノブルームーン、レディアルバローザが勝った年はハイペースで流れている。

12.7-12.3-12.7-12.5-12.1-12.2-11.8-11.5-11.9(50.2-47.4)S
12.4-11.4-12.1-12.0-12.2-12.5-11.8-11.8-11.6(47.9-47.7)M
12.7-11.7-12.6-12.0-11.8-12.2-12.2-12.2-12.8(49.0-49.4)M
12.2-11.6-12.4-12.3-12.3-11.8-11.8-11.5-12.5(48.5-47.6)M
12.4-11.4-12.1-12.2-12.4-12.5-12.1-11.5-12.5(48.1-48.6)M
12.3-11.2-11.5-11.7-11.9-12.3-12.5-11.8-12.4(46.7-49.0)H
12.1-10.6-11.5-11.6-12.1-11.8-11.2-12.1-12.4(45.8-47.5)H
12.8-11.4-11.9-12.7-12.7-12.8-12.0-11.8-12.5(48.8-49.1)M
13.1-12.0-12.2-12.3-11.7-11.9-11.9-11.5-11.9(49.6-47.2)S
12.7-11.4-11.8-12.3-12.2-12.0-12.0-11.7-12.4(48.2-48.1)M
12.8-12.7-12.9-13.1-12.2-11.5-11.8-11.6-11.7(51.5-46.6)S

これはコースの形態上、どうしてもスロー~ミドルに流れやすいレースを各ジョッキーが意識するあまり、いつの間にかテンが速くなり、逃げ・先行馬が厳しいペースに巻き込まれてしまうからである。その競り合いに巻き込まれず、自分のペースで走ることが出来た馬の差しが決まることもある。各馬の出方次第でペースが極端に変わってしまう難しいレースではあるが、基本的には先行馬に有利なコースであることは間違いがない。

また、第1コーナーまでの距離が短いため、内枠を引いた馬がかなり有利になることも覚えておきたい。外枠からの発走であれば、ペースが速くなったケースにのみ、差し馬にとってはレースがしやすい。ただ、基本的には内枠の馬に有利なコースである。

■3■勝ち馬は2着馬よりもハンデが重い
過去10年の勝ち馬のハンデの平均は約55kg、2着馬のハンデの平均は約54kgと勝ち馬のハンデの方が2着馬よりも重い。実際に、勝ち馬のハンデより2着馬のハンデが重かったのは僅か2010年のみ。イメージとしては、勝ち馬は実力のある重ハンデ馬で、2着には比較的軽量のハンデ馬が突っ込んでくるというところか。

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フィリーズレビューを当てるために知っておくべき3つのこと

Filiesreview

■1■本番・桜花賞との結びつきが弱い
過去10年間で、フィリーズレビューを使って本番・桜花賞を制した馬はレジネッタのみ。1週間前に行われたチューリップ賞からは7頭の桜花賞馬(ダイワスカーレット、ブエナビスタ、アパパネ、ジェンティルドンナ、アユサン、ハープスター、レッツゴードンキ)が出ており、その差は歴然としている。

その理由はひとつ。チューリップ賞とフィリーズレビューを天秤にかけた場合、本番へのつながりを意識すれば前者をステップにする方が望ましいのは明らかで、にもかかわらずフィリーズレビューを選択するのは、陣営が距離(もしくは折り合い)に不安を抱えているからである。僅かでも距離に不安を感じている馬が、さらに厳しい流れになるG1レースのマイル戦を勝つのは難しい。

■2■最後にもうひと伸びできるパワー
スプリント色の濃いメンバーが集まるからこそ、かえってレースの流れは厳しくなることが多い。過去10年間のラップタイムを見てみると(下参照)、スローに流れてしまいがちなチューリップ賞よりも、ミドルからハイペースに流れやすいレースの傾向が浮かび上がってくる。そのため、結局、スピード一辺倒のスプリンターでは勝ち切れず、ハイペースを好位で追走して最後にもうひと伸びできるパワーも要求される。

フィリーズレビュー過去10年ラップタイム
12.5-10.9-11.4-11.7-11.4-11.7-12.2(34.8-35.3)M
12.1-11.0-11.7-11.9-11.6-11.8-12.4(34.8-35.8)H
12.3-10.5-11.5-12.0-12.2-12.0-11.9(34.3-36.1)H
12.2-11.0-11.8-12.1-11.8-12.0-11.9(35.0-35.7)M
12.3-10.5-11.3-11.8-12.0-11.8-12.6(34.1-36.4)H
12.2-10.7-11.4-11.8-11.9-11.9-12.9(34.3-36.7)H
12.3-10.9-11.7-11.8-11.3-11.9-12.2(34.9-35.4)M
11.9-10.9-11.8-12.1-11.7-11.4-12.5(34.6-35.6)H
12.2-11.0-11.5-12.0-11.7-11.8-12.3(34.7-35.8)H
12.2-11.2-11.6-12.2-11.7-11.5-11.7(35.0-34.9)M

3■阪神1400m
スタート後、3コーナー過ぎまでの距離はおよそ440mと十分にあり、テンはそれなりに速くなる。そして、3~4コーナーが複合カーブであるため、スピードが落ちない。そのため、緩急のない全体的に速いペースで道中は流れる。しかし、3コーナーからゴール前に至るまで下りが続くため、そのまま流れ込むことの出来る先行馬が有利。

とはいえ、3~4コーナーの間に偽直線を挟んでいるため、差し馬もペースに応じて先行集団との差を詰めることが出来る。先行馬が有利なコースではあるが、決して差し馬に不利なコースではない。むしろ道中のペースが速くなりすぎると、直線の急坂で先行馬が総崩れということも十分にあり得るので注意。

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名牝エアグルーヴの血を継ぐルーラシップ産駒の特徴とは

Cover

90年台に競馬を始めた私の周りの競馬ファン世代は、今でもエアグルーヴを最強牝馬に挙げる人が圧倒的に多い。実は私もその一人である。エアグルーヴの強さは、「古馬になってから牡馬と真っ向勝負をして、互角以上に渡り合った」ということに集約される。牝馬にとって、古馬の牡馬と戦うことは非常にツラいことである。牝馬と牡馬では威圧感がまるで違うため、ほとんどの牝馬は古馬の牡馬と戦うともみくちゃにされてしまい、3歳時の輝きは色褪せ、古馬になって全く走らなくなってしまう。苛酷な戦いによって、心臓発作や心不全を起こしてしまうことさえある。それほど、古馬の牡馬と戦うこと自体が、牝馬にとっては厳しいことなのだ。

エアグルーヴが4歳時に勝利した天皇賞秋は、サイレンススズカが速く厳しいペースで引っ張り、長い直線でのバブルガムフェローとの叩き合いを制した激しいレース。充実期にあったバブルガムフェローを競り落としたことが衝撃的であった。しかも、牝馬特有の切れ味で差し切ったのではなく、スピードに任せて逃げ切ったのでもなく、最後まで牡馬の超一流とビッシリと叩き合い、競り落としての勝利であった。

写真家の藤原新也さんは、かつて標高4000mのチベットのこれ以上青くしようのない、真っ青な空の下で暮らして以来、下界に降りて、いかなる土地に行っても空が濁って見えるという宿病を背負ったという。私たちもエアグルーヴという牝馬と出会い、その走りを目の当たりにして以来、他の牝馬のいかなる走りを見せられても霞んで見えてしまうという宿病を背負った。私たちの名牝の時計は、エアグルーヴから止まったままなのである。

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弥生賞は勝ってほしくないレース

Yayoisyohakattehosikunai

弥生賞は勝って欲しくないレースである。このレースを勝つということは、素質や能力、そして完成度が高いということの証明ではある。しかし、今後のクラシック戦線を考えると、敢えて勝たなくても(勝とうとしなくても)良いレースなのではないだろうか。

弥生賞は皐月賞と同じ中山2000mという舞台で行われるが、弥生賞を勝って、そのまま皐月賞をも制する馬は思いのほか少ない。その世代の素質馬が集結するハイレベルの弥生賞を制した馬は、普通に考えて、弥生賞と同じ走りができれば皐月賞はほぼ当確である。それでも、過去10年で弥生賞と皐月賞を連勝した馬はヴィクトワールピサしかいない。

なぜこのような現象が起こるかというと、以下の2つの理由が考えられる。

1、 弥生賞はかなりの状態に仕上がっていないと勝てない
2、 弥生賞と皐月賞では馬場状態が異なる

クラシックを狙う有力馬が一堂に会する弥生賞は、当然のことながら、中途半端な仕上がりでは勝つことはできない。弥生賞を勝つためにはかなりの仕上げを施さなければならず、本番前に仕上げられた(仕上がってしまった)馬は、本番に向けて下降線を辿ってしまう。サラブレッドのピークはそれほど長くない。つまり、弥生賞を勝つために仕上げてしまうと、そのあとが続かないということである。また、それまでは楽な相手と楽な競馬しか経験してこなかった馬が、弥生賞で初めて厳しいレースを強いられるので、その肉体的、精神的な反動が次のレースで噴出してしまう。

その典型的な例は、平成12年の弥生賞を制したフサイチゼノンではないか。田原成貴元調教師と関口オーナーの間で一悶着あった馬であるが、フサイチゼノンは弥生賞の時点で既に仕上がってしまっていた。田原調教師はフサイチゼノンにかなりの素質を感じていただろうし、初年度である厩舎を盛り上げるためにも、弥生賞も勝って本番に臨みたかったに違いない。

しかし、その勝ちを焦る気持ちが、フサイチゼノンを追い詰めてしまったのだ。肉体的にも精神的にもピークを過ぎてしまったフサイチゼノンは、もはや皐月賞に出走する状態にはなかった。関口オーナーに相談をしなかったのは田原元調教師の落ち度だが、出走を取りやめたのは英断であったと思う。

もうひとつの理由としては、弥生賞は中山開催が始まってすぐの比較的良い馬場で行なわれる(それでもやや重い)のに対し、皐月賞は見た目こそ悪くなくとも、かなり芝が重くなってきている馬場状態でのレースとなるからである。極端にいうと、弥生賞は軽いスピードと瞬発力を生かした馬が勝ちやすいのに対し、皐月賞はパワーとスタミナが求められるということだ。この1ヶ月間で、勝馬に問われる適性が180度違ってくるのだから、勝ち馬が同じでないことにも納得がいく。

本番のクラシックで力を出し切ってほしいという思いを込めて、弥生賞は勝ってほしくないレースなのである。2009年はロジユニヴァースが弥生賞を勝ち、本番の皐月賞で惨敗をしてしまった。ロジユニヴァースの弥生賞は決して厳しいレースではなかったが、陣営の思いとは裏腹に仕上がってしまっていたのだろう。皐月賞惨敗後、奇跡的なV字回復を遂げてダービーを制したので結果として良かったが、本番のクラシックにおける体調は万全とは言えなかった。

2010年のヴィクトワールピサは弥生賞を勝ち、皐月賞をも制したが、本番の日本ダービーでは不思議な凡走をしてしまった。これも1の理由とつながってくる。弥生賞でかなりの仕上がりにあって、しかも皐月賞も勝つということは、体調のピークが皐月賞にあったということ。たとえ皐月賞を勝つことができても、あくまでも目標が日本ダービーということであれば、弥生賞は勝ってほしくないレースということに変わりはない。

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弥生賞と皐月賞は連動しない

Yayoi

皐月賞と同じ舞台で行われるものの、過去10年間で弥生賞と皐月賞を連勝したのはディープインパクト、そしてヴィクトワールピサという2頭の名馬のみ。その理由について、ラップタイプから考察してみたい。

弥生賞の過去11年間のラップタイムは以下のとおりである。

13.0-11.9-12.5-12.3-12.5-12.6-12.5-11.6-11.4-11.9(62.2-60.0)S
12.4-11.3-12.5-12.6-12.4-12.0-12.7-12.3-11.7-11.6(61.2-60.3)S
12.3-10.6-11.6-12.8-12.5-12.6-12.9-11.8-11.7-11.7(59.8-60.7)M
12.2-11.5-12.4-12.8-12.9-12.5-12.3-11.7-11.3-12.2(61.8-60.0)S
12.4-11.3-12.2-13.0-13.1-13.0-12.7-12.2-11.5-12.1(62.0-61.5)M
12.8-11.3-12.2-12.8-12.6-12.4-12.2-11.8-11.2-11.7(61.7-59.3)S
12.5-11.0-12.7-13.5-13.4-13.1-12.3-11.9-11.5-12.0(63.1-60.8)S
12.9-11.4-12.2-12.4-12.7-12.5-11.7-11.6-11.4-12.2(61.6-59.4)S
12.4-11.0-12.2-12.8-12.8-11.9-11.9-12.3-11.9-12.2(61.2-60.2)S
12.5-11.4-12.3-12.4-12.7-12.0-12.1-12.1-11.9-12.4(61.3-60.5)M
12.5-10.5-11.3-12.2-13.0-12.8-12.5-12.5-11.3-11.3(59.5-60.4)M

前半3ハロンとラスト3ハロンを除いた中盤のラップに焦点を当ててみると、軒並み12秒台が続いていることが分かる。以前、中山金杯の分析をした際、皐月賞は中盤が緩むという指摘をしたが、それに輪をかけるように弥生賞はその傾向が顕著である。

そこで、今度は、過去11年間の皐月賞のレースラップを見てみたい(東京競馬場で行なわれた2011年は除く)。

12.5-11.3-12.4-12.9-12.6-12.6-12.2-11.4-11.5-11.8(61.7-59.5)S
12.5-11.3-12.4-12.9-12.6-12.6-12.2-11.4-11.5-11.8(59.7-58.9)M
12.1-11.0-11.9-12.2-12.4-12.6-12.5-11.8-11.4-11.3(59.6-59.6)M
12.3-11.3-12.0-12.1-12.3-12.0-12.2-11.8-11.7-12.2(60.0-59.9)M
12.2-11.2-12.1-11.6-12.3-12.3-12.3-11.6-12.0-12.3(59.4-60.5)H
12.2-11.5-12.5-12.6-12.6-12.8-12.3-11.2-11.5-12.5(61.4-60.3)S
12.1-10.8-11.9-12.1-12.2-12.1-11.9-11.8-11.7-12.1(59.1-59.6)M
12.1-10.9-12.4-12.1-12.6-12.5-12.3-12.1-11.8-12.0(60.1-60.7)M
12.4-11.1-12.3-11.9-11.4-11.6-12.2-12.7-13.6-12.1(59.162.2)H
12.0-10.6-11.5-11.6-12.3-12.1-12.0-11.9-12.0-12.0(58.0-60.0)H
12.3-11.4-11.9-11.9-12.7-12.1-12.0-11.6-11.7-12.0(60.2-59.4)M
12.5-10.7-12.0-11.8-12.2-12.2-12.1-11.7-11.4-11.6(59.2-59.0)M
12.0-10.7-11.5-11.7-12.5-11.5-12.4-12.2-11.6-11.8(58.4-59.5)H

中盤が緩む傾向は同じだが、ひとつだけ弥生賞との相違点がある。それはレース全体のペースである。どちらかというとミドル~ハイペースになる皐月賞に比べ、弥生賞はどちらかというとスローに流れやすい。つまり、弥生賞はスタミナの裏づけがないマイラーでも乗り方次第ではこなせてしまう可能性があり、ラスト3ハロンの瞬発力勝負に強い馬に圧倒的に有利なレースになるということである。過去、サンデーサイレンス産駒の活躍が目立ったのもこれゆえである。

結論としては、弥生賞の勝ち馬を見つけるためには、皐月賞を占うレースであるにもかかわらず、皐月賞では勝てそうにないタイプの馬を探すべきということである。どういう馬かというと、サンデーサイレンスの血を受け継いだ、スピードタイプの瞬発力に優った馬である。


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