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集中連載:現代のコアな競馬ファンがすなる一口馬主というものを(第22回)

Hitokuti22

一口馬主の持ち馬が2頭に増えると、移り気になる自分がいる。あの馬は今どうしているのか、この馬の調整は進んでいるのかと、あちらもこちらも気になるのだ。私には子どもが一人しかいないが、もしかすると2人以上のお子さんを育てている方はこのような気持ちなのだろうか。今までは1頭だけを見ていれば良かったところが、複眼的になり、それぞれの馬に対する注目も、半減とまではいかないにしても、やや少なくなってしまうのは否めない。複数の馬を持つことを否定しているわけではなく、あまり多くの馬を持ってしまうのは良くない、一口を持つことに慣れてしまってはいけないと直感したということだ。

クインアマランサスの方は依然として調整が進んでいない。年末に新馬戦に出走したのち、ノーザンファームしがらきに放牧に出されてから、硬くなっていた体をほぐし、トモの疲労を癒し、後ろ向きになっていた気持ちを前に向けるために、ほんとうにゆっくりと腫れ物に触るような調教が施された。ようやく3月になって、栗東トレセンに帰厩し、坂路を中心に時計を出しつつあったが、CWコースに移したところ、やはり動き切れていないという。

高野友和調教師 「帰厩してから坂路主体で時計を出していましたが、どれだけ動けるか確認する意味で、23日の追い切りはCWコースで4ハロンから時計を出しました。道中の感触からもう少し動いてくれるだろうなと思って見ていましたが、追い出しにかかると、もう一つ動き切れませんでした。同じ3歳未勝利馬でしたから、良い併せ馬になると思っていましたが、今回の動きを見る限り、もう少し時間を掛ける方が良いかもしれません。状態面に関しては、飼い葉食いも良いですし、体調も安定しているので、調教の動きを見ながら復帰の予定を考えていきたいと思います」

もう少し時間を掛ける方が良いという言葉を、これまで何度聞いてきたことだろうか。無理に調教のピッチを上げても、馬を壊してしまっては元も子もないし、高野調教師の述べていることが嘘でも詭弁でもないことも分かっている。それでも、ここまで遅々として調教が進まないのは、もっと本質的なところに問題があるのではないかと思ってしまう。そう、クインアマランサスは、肉体的にも精神的にも、競走馬としての資質に恵まれていないということだ。馬主や関係者がそう思ってしまったらお終いだが、そういう思いが頭をよぎってしまうのも仕方ないことだろう。

それでも私たちは待つことしかできないのである。ふと、リン・スクーラー氏が冒険家であり写真家である星野道夫について書いた「待つこと、できるだけ長く」という文章が頭に浮かんできた。

撮影した直後に結果が出るデジタル写真以前、およそ40年前に写真家としてミチオは仕事をはじめた。ミチオの文章や写真を知った若い人たちにとって、高度に洗練された測光システムを持たず、また瞬時のオートフォーカスもなく、カメラにフィルムを入れて使うという彼の古い撮影スタイルを考えてみるのは面白いことだと思う。

まず、彼はフィルムを現場に持ち込まねばならず、不用意な露光によってフィルムが台無しにならないように注意深くカメラに装填しなければならない。そして、ふたたび待つ、おそらくは何時間も何日も、行動と光がもたらすその一瞬のために。そして、その瞬間の状況にふさわしい露光とシャッタースピードとその他の調整を決めてシャッターを切る。フィルムを使い切った後は、それを現像するためのラボに送るまで、何日も何週間も安全に保管しなければならない。さらに撮影した写真を見るために、現像されたフィルムが戻ってくるまで待たなければならなかった。時には、彼が心に描いたイメージがその努力の最終的な結果と整合していたかどうかを知るまでに、何ヶ月も待たなければならなかった。もし、結果が彼の望んだものではなかったなら、彼はそのイメージを追うためにまた別の機会を計画し、待たなければならなかった。もう1度トライするまでに1年、あるいは2年が過ぎただろう。どんなに時間がかかろうとも、アラスカの原野や動物たちへの彼の理解と好奇心を分かち合うイメージを、ひとたび心に描いた彼は、待つために何度も挑戦し続け、戻り続けたことだろう。そしてどんなに時間がかかろうとも、その忍耐強さで、完璧な瞬間を写真に捉え、私たちとそれを分かち合う時が到来するのである。

私たちの人生は待つことに満ちている。私たちは大人になるまで待たなければならないし、傷が癒えるのを待たなければならない。あの人と会える日まで待たなければならないし、辛い日々が過ぎ去るのを待たなければならない。何もかも最初から準備が整っていることなどほとんどなく、運よく何かを始めることができたとしても、それがひとつの形になるまでに、ひたすら待たなければならないことの方が多い。しかし私たちは、ただ待つだけではなく、見ているのである。いや、待つことを通して見えてくるのである。それは一口馬主も同じであろう。できるだけ長く待つことで、できるだけ多くのことが見えてくるのだ。

Photo by 三浦晃一

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Comments

もう4月ですもんね。タイムリミットもありますし、改めてチャンスって少ないんだなと感じます。治郎丸さんは1年先を行ってくれているので心構えも出来るし有難いです!2頭目ですか~。それも待ち遠しいですね。
僕の方はすこぶる順調で、7日にノーザンファームしがらきに移るそうです。いよいよ入厩も間近!「正直、不安がないのが不安」という報告から、今のところ楽しみでしょうがないところです。

Posted by: やっとこ | April 06, 2017 at 09:57 PM

熱発で移動延期・・。一寸先は闇ということでしょうか。昨日、天栄に移ってきたので、環境の変化が影響したのかも知れません。もしかして、輸送の弱さが露呈してしまったとか。そうだとしても、レース当日に露呈するより手が打てる分だけいいですよね。

電車内で報告メールを受けて、お思わず「えっ!」と声をあげてしまいました。

Posted by: やっとこ | April 07, 2017 at 10:30 PM

やっとこさん

こんばんは。

もう4月なんですねえ。

たしかに長いように見えて、サラブレッドにとってはあっと言う間に過ぎ去ってしまう期間なのでしょう。

この大切な時期にデビューして、勝ち星を積み重ねて大きなレースに出走する馬の凄さを思い知りますね。

一口をやっていると一寸先は闇だとも分かります。

メールで報告を受けてというところが一口らしくてまたいいですね(笑)。

無事であることが何よりです。

そうこうしているうちにクインアマランサスは土曜日の福島1Rに出走が決まりました。

Posted by: 治郎丸敬之 | April 07, 2017 at 11:29 PM

今回はダート替わりでいいいレースをしてくれましたね!!
ダートが合ったというより、今回は馬が変わっていたように思います。
完全に勝ち上がりが見えてきて僕も嬉しいです。

Posted by: ダイコウサク | April 08, 2017 at 09:55 AM

クインアマランサスはダートで一変しましたね。
良い感じでやる気スイッチが入ったと思います。
次が試金石ですね。

Posted by: アダチ@おかやま | April 08, 2017 at 12:41 PM

アダチ@おかやまさん

見てくださって、ありがとうございます。

この連載にも書いたように、もともとダート馬として期待していたのですが、さすがに今回は調教でも動けておらず出走したのも驚きでした。

もう少し動けるようになってくると、ダート戦線では面白いかもしれませんね。

やる気スイッチが入ってくれているといいなあ(笑)

Posted by: 治郎丸敬之 | April 09, 2017 at 10:30 PM

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