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先んずれば馬をも制す


皐月賞2017―観戦記―
外枠からアダムバローズやトラスト、クリンチャーらが飛び出し、先行争いを演じたように見えたが、前半1000mが59秒0、後半が58秒8という平均ペース。芝の状態が絶好で速いタイムが出たが、決してレベルが高いわけではなく、前が止まらない馬場であったということ。先行したスピード馬たちが簡単に止まらず、後ろから行った馬たちにとっては勝つチャンスが少ないレースとなった。全体時計は昨年とほとんど同じだが、レースレベルは昨年の方が圧倒的に高い。それは日本ダービーの結果が出れば分かるはずである。

勝ったアルアインは、レースセンスの良さと持って生まれたスピードの絶対値を生かして皐月賞馬となった。一度だけ敗れたシンザン記念は前が詰まってのものだけに、これまでに力負けしたレースはなく、人気の盲点になっていた。良血のディープインパクト産駒であり、勝たれてみると強かったということになるが、今回は他のどの馬よりもアルアインのスピードが十全に発揮されたことが大きな勝因であった。日本ダービーは脚をためて、爆発力が問われるレースになりやすいため、チャンスがなくはないが、あくまでも挑戦者の1頭として考えるべきである。

松山弘平騎手はこれまで惜しいところでG1勝利を逃してきたが、持ち前の積極的な騎乗で晴れてG1ジョッキーとなった。先んずれば人を制すと言うが、今回のレースはスタートからゴールまでとにかく無心に先行したことが功を奏した。小回りの中山競馬場の芝2000mコース、前が止まらない絶好の馬場、アルアインの先行力とスピード、そして松山騎手の積極的な騎乗の全てが噛み合って、最後のコンマ数秒差の勝負を制してみせた。チャンスを自ら逃した騎手も多くいた中、勝つときは全てが上手く行くものである。

ペルシアンナイトは内から鋭く伸び、あと一歩のところまで勝ち馬を追い詰めた。この2着は騎手の腕で持ってきた2着である。序盤はゴチャつく形になり後方から進んだが、ペースが遅いことを見極めて、内の進路が開いたところを見逃さずにポジションを上げたミルコ・デムーロ騎手の好プレーが光った。目で見るほど簡単ではなく、あのタイミングで馬を動かし、馬場の悪いとされる内側を走って上がってゆく勇気は称賛に値する。さすが連対率4割を誇る、リーディングジョッキーに相応しい見事な騎乗であった。

タンビュライトも武豊騎手の好判断に導かれての3着。速い脚のないこの馬を上位に持ってくるには、思い切って先行するしかないと最初から決め打っていたはず。レースの流れに乗り、一旦は先頭に立つかの勢いであったが、最後は上位2頭の底力に屈してしまった。欲をいえば、もう少し力の要る、時計の掛かる馬場状態であれば、勝ち負けに持ち込めたかもしれない。切れ味勝負になる日本ダービーはこの馬にとっては厳しい。

レイデオロは昨年暮れ以降の休み明けという経緯があったからか、道中はほぼ最後方からレースを進め、最後の直線だけの競馬に徹した。これでは到底勝てないが、最後の直線で見せた鋭い脚は、ひと叩きされて体調が上向けば、日本ダービーでは大きな武器となる。次はもう少し前目のポジションを走れるだろうし、今回の皐月賞から日本ダービー馬が出るとすると、この馬が最も勝利に近いのではないだろうか。

スワーヴリチャードについては、馬券を買っていた私のバイアスが掛かっていると思ってこの先は読んでもらいたい。四位騎手は好スタートを決めて前進気勢のある馬の手綱をなぜか引いて少しずつ下げ、自らポジションを悪くしてしまい、こともあろうか最終コーナーでは大外をぶん回した。一体何のために共同通信杯で前に行く競馬を試してみたのか、道中でペースの遅さに気づなかったのかなど、数々の疑問が湧いてくる。内枠をそのまま生かし、スワ―ヴリチャードの行きっぷりに任せて乗っていれば、アルアインの後ろにつけて、最終コーナーをピッタリと回り、勝ち負けに持ち込めたのではないだろうか。馬に乗るのが上手い(綺麗)、馬のことを良く知っていることとレースで勝てることは違うのだ。結果論ではなく、あまりにも稚拙すぎる騎乗であった。

1番人気に推された牝馬ファンディーナは、最後まで牡馬に抵抗したが力尽きた。大きなフットワークの馬だけに、小回りコースで馬群の内を窮屈そうに走っていたが、最終コーナーでは馬群の外に持ち出せて、決してチャンスのないレースではなかった。それでも競馬ファンの期待に応えられなかったのは、この馬自身の体調が完全ではなく、1週間でも出走を遅らせて皐月賞を選んだほど未完成な状態であったからこそ。今年に入ってからデビューした馬であり、将来性の極めて高い馬であるからこそ、陣営としては桜花賞や皐月賞はスキップして、オークスを目指して調整したかったというのが本音のはず。皐月賞を使ったことが、ファンディーナにとって良い経験となるか、それとも大きな傷となってしまうのか、前者となることを心から願う。

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Comments

昨日の皐月賞は前が止まらないと言う馬場のバイアスがかなり影響していた……のですね。朝から芝のレースは前のこりでしたもんね。馬同士のガチンコ勝負を期待してたいちファンとしては大変ガッカリしました。
なぜJRAはそのような芝コンディションにしたのでしょうか?狙ったわけではなく、たまたまなのでしょうか。
もう一つ質問があります。治郎丸さんは今年の皐月賞より昨年のほうがレベルが高かったとおっしゃっています。しかし、前評判は考慮せず、単純にレースを比較すると今年のほうが決着タイムは速い。なぜ今年のほうがレベルが低いと言えるのですか?これも、馬場状態が違うから、ですか?他に何か理由はありますか?

Posted by: ゆとり世代 | April 17, 2017 at 12:45 PM

治郎丸さん こんにちは。

レースレベル云々はありますが松山、ミルコ、武豊、岩田騎手の騎乗はコース取りも含め見ごたえがありました。

松山騎手は毎日杯をテン乗りで先行、厩舎の指示かもしれませんが見事1着。
お互い相性の良さを感じとっていたのではないでしょうか。
ミルコは向こう正面の位置取りがすべてでは?
上がれること自体凄いのですがあれがなければ万事休すでした。

しかしこのレースのハイライトは武豊騎手でしょう。
ファンディーナを徹底マークで馬群を走らせて岩田Jにすればこれほど嫌なことはなかったのでは?
12人気のダンビュライトで勝ちにいく競馬を見てあらためて彼の凄さを実感しました。
大阪杯、桜花賞、皐月賞と競馬の素晴らしさを見せてくれる武豊Jはレジェントです。

Posted by: コテツ | April 17, 2017 at 04:46 PM

Gallopの特集では本気度MAXと書かれてたり、他のメディアでも盛り上がりまくってましたが、何で前哨戦がフラワーCだったんだろ?という違和感がずっと拭えませんでした(本気で皐月賞を狙うのなら前哨戦は弥生賞かスプリングSを使うんじゃ?と)。

でも陣営は未完成な状態でどこを使っていくのか探りながらの参戦だったんですね(もちろん、オーナーの意向が1番何でしょうが)。そう考えると、フラワーC参戦自体、陣営の自信のなさの現れと捉えることもできたのかも知れません。結果、圧勝だったので期待値がドーンと上がっちゃっただけで。

今回の経験+馬体の成長が加味されればウォッカ以来の牝馬のダービー馬誕生があるかもしれませんね!

Posted by: やっとこ | April 18, 2017 at 01:04 AM

何しろ異常にアンチを抱えてる騎手なのでいろいろ文句(まあ初めから2着以下ならどんな内容でも叩く気で見てたんでしょうが)は言われてますが、福永騎手が向こう正面で押し上げた、それも外ではなく内ラチ沿いを使ったのは勇気ある前向きな騎乗だったと思います。

当日は中山競馬場にいましたが、昨年と同じように向こう正面は逆風、直線は追い風でした。向こう正面で外を押し上げたウインブライトはけっこう負担がかかったことでしょう。もっともラップが速かった4角付近をインで回ったのも良かったと思います。全体が速い時のコーナーで外を回すとスワーヴリチャードのようにやはり負担がかかります。

高速馬場のハイペースのレースで後ろでじっとしてたら、レイデオロのように掲示板がやっとでしょうからね。

今年は騎手ごとのレース観や戦略性で違いが見れて面白かったです。四位騎手は、最速コーナーを外から回り、かつ逆風をまともに受けるという、やや無謀なベテランらしからぬ工夫のないコース取りで、批判を受けても仕方ない内容だったかと思います。

しかし、速い時計の決着が続き、マイラー寄りのローテーションを組んだ馬が、ペース耐性の違いで上位に来る流れが続きますね。かえって早くから中長距離の王道ローテを歩んだ馬はここが初めてのハイペースになってついていけないケースが続き、調教師にも迷いが出てくるでしょうね。

速い馬が勝つという格言通りの皐月賞と言われればそれまでですが・・・

Posted by: シンプル | April 18, 2017 at 10:55 PM

ゆとり世代さん

こんばんは。

返信が遅くなりましてすいません。

今年は馬場が良くて、スピードレースになりましたね。

その年の気候や開催日に雨が降ったかどうか、また造園課の仕事ぶりによっても変わってきますので、JRAが狙ったわけではないと思います。

昨年とタイム的には同じですが、前後半の落差を見てみると、今年は前後半の落差が少なく、今年タイムが速かったのはただ単に馬場が良かったからということになります。

また実際のレースを観てみても、今年は前残りに対して、昨年は前が潰れるハイペースでした。どちらの方がスタミナを含めた総合力が問われたかというと、昨年ということです。

Posted by: 治郎丸敬之 | April 19, 2017 at 07:58 PM

コテツさん

こんばんは。

武豊騎手は素晴らしい騎乗をしましたね。

もう少し上がりが掛かるレースになれば、勝っていたかもしれないぐらいダンビュライトの状態も良かったです。

たしかに勝ち馬も2着馬も4コーナーに向くまでの攻防やポジショニングは見応えがありました。

アルアインは前が詰まって負けた以外は負けていませんので、とにかく不利のないレースをしようとしたら、前走であり今回の結果がついてきたということでしょうね。

日本ダービーがどうなるのか楽しみです。

Posted by: 治郎丸敬之 | April 19, 2017 at 08:04 PM

やっとこさん

そうですね。

ずいぶん周りが盛り上がっていましたが、陣営はギリギリの状態で出走させていたと思います。

たしかに素晴らしい馬体をしていますし、間違いなく将来性は高いだけに、私は無理に皐月賞を使う必要はなかったと思います。

そもそも最初から牡馬にぶつけようなんて思っていないでしょうし、フラワーCもやっとこ出走したはずです。

馬主(共有ですが)の意向をくむことも必要ですが、素質の芽をつんでしまうことは避けてもらいたいですね。

今回の出走がマイナスにならないほどの生命力があるとしたら、ウオッカのような名牝になるかもしれません。

Posted by: 治郎丸敬之 | April 19, 2017 at 08:09 PM

シンプルさん

こんばんは。

デムーロ騎手の後ろを狙って上がっていった判断は素晴らしかったと思いますし、あそこしか上がっていけるスペースはありませんでした。

そもそも今回のようなレースでは、切れ味を生かすカデナを普通に乗っていたら届きようがありませんからね。

レイデオロもスワ―ヴリチャードも日本ダービーを見据えていたとはいえ、勝ち目のないレースをしたと思います。その点では、いち競馬ファンとして不甲斐ないレースでした。

Posted by: 治郎丸敬之 | April 19, 2017 at 08:16 PM

治郎丸さん、こんばんは。

カデナの押し上げについてはざっと見た感じ賛同1割、批判9割といったネット世論に見えたのでお叱りを受けるかとヒヤヒヤしてましたが、褒めていただけてホッとしました(笑)

レイデオロは脚部不安で当初は予定していた前哨戦を叩けなかったので、ある種「公開調教」みたいな無理をさせないレースぶりも仕方ないかと思いますが、スワーヴリチャードの場合は出遅れ癖に苦労しながら4角では先頭集団であえて追い出しを遅らせたレースぶりが、ここに線でつながってなかった気がしてならないですね。個人的には過去走のラップからそれほど評価してなくて馬券的には軽視してましたが、ある程度勝ちに来ると思って馬券を買ったファンはたまらないですよね・・・

大目標がダービーという意見は非常にわかるのですが、皐月賞だって勝てば種牡馬価値の高いGⅠのはずです。ダービーに向けてかかり癖をつけたくないだとか、末脚を鈍らせるレースをしたくないだとかで消極的なレースをすることの言い訳としてもいいものなのか?ということを考えます。
アクシデントで出走出来なかったりしたらいくら皐月賞でガマンの競馬をしても、収穫を刈り取る場が保証されてるわけでもないですし。馬場が自馬向きじゃなくなる可能性もありますし、別路線から怪物級の馬が出てくる可能性もゼロではないのですし。

Posted by: シンプル | April 19, 2017 at 11:05 PM

シンプルさん

こんにちは。

あそこで待っていても届かないので押し上げたのですし、内を回って押し上げたなんて好プレーだと思います。

レイデオロは脚部不安が出ていたのですね。知りませんでした…。休み明けにしても、ずいぶんのんびり乗っているなと思いましたが。

私もシンプルさんと同じ考え方で、日本ダービーを目指してというのは言い訳にしか聞こえず、だからと言って日本ダービーを勝てるという保証はどこにもないですから、1千戦を全力で勝ちにいき、負けたら全力で悔しがってもらいたいと思うのです。

Posted by: 治郎丸敬之 | April 21, 2017 at 10:21 AM

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