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それでもデムーロ騎手が好きだ

Demuro

ミルコ・デムーロ騎手が皐月賞のレース後、勝った松山弘平騎手に向けて中指を立てていたシーンが話題になった。その中指に対し、どのような意味を読み取るかは競馬ファンそれぞれであり、様々な解釈があって良いと思う。私自身もそのシーンを見た瞬間は、非道徳的であり、相手を意図的に侮辱している、競馬には相応しくない風景だと感じた。なぜそこまでデムーロ騎手が怒りをあらわにするのか不思議に思い、もしかすると松山騎手のラフプレーによって勝機を失ったのかもしれないとパトロール映像を繰り返し観てみたが、たしかに進路をめぐる争いはあったものの、常軌を逸するような不利や妨害があったようには見えなかった。

その事実を確認したとき、デムーロ騎手の中指は私が最初に思ったのと違うメッセージが込められているのでは、と考えが一変した。デムーロ騎手は松山騎手を侮辱したり、悪態をついているわけではなく、「やられたよ、こんちくしょー!」という裏返しの称賛や祝福を、あの状況や場所において、彼らの間で最も伝わりやすい方法で伝えたのではないか。そう考えると、まるでだまし絵のトリックに気づき、老婆が美女に見えたときのように、デムーロ騎手の中指のシーンが微笑ましく思えてきた。

そういえば、デムーロ騎手の行動が物議をかもしたのは、2003年の皐月賞をネオユニヴァースで勝った瞬間、隣で最後まで競り合ったサクラプレジデントの田中勝春騎手のヘルメットを思いっきり引っぱたいたのが最初ではなかったか。あのシーンもいろいろな解釈があったが、「ひやっとしたぜ、やるじゃねえか!」という感情の爆発であったと私は思っている。有名なヒコーキポーズについては、絶妙なボディーバランスがあるからこそできると書いた(「競馬はいつでも血の滾る」)こともあり、危険という意見はその通りだとして、私は日本の競馬に対するデムーロ騎手なりのアンチテーゼではないかと拡大解釈している。

デムーロ騎手は競馬のレースに乗ることを心から楽しんでいる。勝ったときには全身で喜びを爆発させ、馬や関係者に最大限の感謝や愛情を示し、負けたときには全力で悔しがり、頑張って走った馬を労う。それは私たち競馬ファンがジョッキーに求めている姿ではないのか。彼が馬に乗って速さを競い始めたときから、根底に流れているジョッキーとしての感情は変わらない。それはものすごく稀有なことなのではないか。日本の(良い意味でも悪い意味でも)管理された競馬社会で生きてきた騎手たちに足りない部分でもあり、それゆえにデムーロ騎手の存在は際立っているのである。こんなことを書くと、反論や不快に思われる方もいるかもしれないが、それでも私はデムーロ騎手が好きなのだ。

Photo by 三浦晃一

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Comments

僕は共感派です(笑)
というか普段の二人の関係もわからない人たちが、どうして叩いてるのかわかりませんでした。

正直、騎手としての好き嫌いで言えば若駒を潰しかねない無茶もしたり、あまり好きなスタイルの騎手ではないですし、応援してるユーイチに対してよく美味しいところを持ってくのは嫌ですが、人間性は憎めないと思ってます。

先日の名古屋大賞典を観戦に行ったとき、パドックで戸崎ー!とかルメールさ~ん!とかユーイチ!とか声援が飛び交ってました。
ひときわ声援が多かったルメール騎手や福永騎手は無視(悪い意味ではなく、以前、テレビで「公正の意味で声援やヤジに反応するなと競馬学校で言われる」と言ってました)してましたが、ただ一人デムーロ騎手だけは声援を送ったファンの方を向いてニヤけてました。可笑しくて吹き出しそうになりましたよ(笑)

Posted by: シンプル | April 22, 2017 at 12:51 AM

治郎丸さんの解釈で胸のつかえが取れた感じがしました。
もちろん治郎丸さんの意見が正しいと決まったわけではないのですが、それでも『それだ!!』と思えたことに感謝しています。日刊スポーツのコラム『ミルコ魂』で松山騎手を祝福していたことも裏付けの1つになると思います。
僕もミルコ・デムーロ騎手が大好きなので、今回の件ではずっとモヤモヤしておりました。
僕自身でそういう解釈ができれば良かったのですが、本当にありがとうございました。


Posted by: ダイコウサク | April 22, 2017 at 11:31 PM

シンプルさん

ありがとうございます。

私は最初からデムーロ騎手のことは好きですし、あの野平祐二氏も技術を評価していました。

ルメール騎手はある意味において優等生的な外国人ジョッキーですが、デムーロ騎手のような人間を受け入れてこそ、日本の競馬(騎手やレース)のレベルは上がると思います。

何と言っても愛嬌がありますし、ドバイワールドカップをヴィクトワールピサで勝って日の丸を掲げたときは、誰よりも日本人でしたよね。

Posted by: 治郎丸敬之 | April 22, 2017 at 11:44 PM

ダイコウサクさん

そう言っていただけると嬉しいです。

同じ事実でも、違った角度から見ると、異なる解釈が生まれるのですよね。私にできることは、できるだけ公平な見かたをして、その上で自分の思いを書くことぐらいです。

Posted by: 治郎丸敬之 | April 22, 2017 at 11:47 PM

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