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神の領域


天皇賞春2017―観戦記―
ヤマカツライデンが大逃げを打ち、前半1000mが58秒3、後半が60秒2というハイペースをつくり出した。8ハロン目に1度だけ13秒台が刻まれたものの、中盤もほとんど緩みのない流れとなった。レコード決着となったのは馬場が硬かったからであるが、昨年と大きく違うのはレースの厳しさであり、スピードとスタミナを問われる天皇賞・春となった。このような極めてレベルの高い競走が観られると、(天皇賞・春こそが最強馬決定戦であると私は今でも考えているが)菊花賞や天皇賞・春といった長距離レース不要論を一蹴できるようで嬉しい。ほとんど全てのレースがスピード・瞬発力勝負に特化している日本の競馬においてこそ、3000m以上の距離をあえて設けてでも、本物のスタミナを問うべきなのである。

天皇賞・春を連覇したキタサンブラックは最強馬の称号に相応しい。昨年とはまるで違う流れを2番手で受けてそのまま押し切ったのだから、今年の勝利は価値が高い。しかも昨年よりも強くなっていることに素直に驚かされる。4歳時に天皇賞・春を勝って以降、さらに成長する馬などほとんど見たことがない。メジロマックイーンぐらいだろうか。他馬よりも明らかに大きなフットワークで、どこまでも駆けてゆく姿は真のステイヤーである。そのキタサンブラックでさえも、ラスト1ハロンは止まりかけていたと言うほどだから、いかに激しいレースだったか分かるだろう。そして、最後のひと踏ん張りが利いたのは、厩舎が王者の地位に甘んじることなく、キタサンブラックを鍛え上げてきたからである。どう考えても反動の出る内容のレースであるから、このあとは宝塚記念に参戦させることなく休養を取って、早目にフランスへ渡ってもらいたい。

武豊騎手はまたしても隙のない騎乗であった。スタートしてからゴールまで、ひとつとして無理をさせることなく、キタサンブラックの強さを引き出しつつ、他馬の良さを封じ込めた。今年で48歳となり、さすがに往年の武豊騎手ではないことは確かだが、そのことでかえって今はキタサンブラックのような先行して押し切る(逃げ切る)タイプの馬が合っているとも言える。若いときの筋力や柔らかさを生かして追い込んでくる競馬ではなく、行きたがる馬をなだめつつ絶妙なペース判断と仕掛けのタイミングで勝負するということだ。年齢や経験に応じた、それぞれのステージでの名馬との出会い。最高のコンビで凱旋門賞を逃げ切る姿を見てみたい。

シュヴァルグランは好スタートから好位につけ、道中はリラックスして走り、最後までキタサンブラックに食らいついた。昨年とはレースの流れが違ったこともあり、今年は自然とシュヴァルグランのスタミナが引き出された。今回は相手が悪かったが、この馬の力は出し切っている。福永祐一騎手は一点の曇りもない攻めの気持ちを持ち、勝つつもりで乗っているのが伝わってきた。昨年は酷評したが、今年は負けたものの完璧な騎乗であった。

サトノダイヤモンドはキタサンブラックらを見ながら進み、折り合いもついて、最高の形で最後の直線を迎えたが、この馬としては伸びを欠いてしまった。今回のペースを考えると外を回ったことは誤差の範囲であり、単純に先着を許した1、2着馬の方がスタミナの面で上手であったということだ。ディープインパクト産駒は天皇賞・春を勝ったことがないように、3200mという距離はサトノダイヤモンドにとって決してプラスにはならなかった。3000mと3200mは違うということ、今回はスタミナを問われるレースになったことで、スタミナ不足が明確化してしまったのである。その文脈において、宝塚記念に出てくればこの馬を負かすことは難しいが、凱旋門賞にはキタサンブラックの方が向いている。

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Comments

サトノの切れ味を徐々に削ぎ落として行くような絶妙なペース配分、武騎手の凄みを感じたレースでした。

Posted by: アダチ@おかやま | May 01, 2017 at 10:54 PM

治郎丸さんいつもお疲れ様なんです(^^;キタサンブラックは前にいけて最後も後ろから行く馬と同じ脚をつかえるのだから他の馬は手も足も出ませんよね。ほんとにこの馬にはまだまだ底知れぬチカラあるような衝撃もパドックで受けましたね。馬体は確かにおおきいんですがいつもおおきく見せず気合いを表にも出さないんですが内に秘める闘志が怖ろしいぐらいこちらにも感じられるんですよね。陣営は宝塚記念をとゆってましたが自分も治郎丸さんと同じ意見でこのあとは大事をとり早目にフランスに入りフランス仕様に調教して欲しいんですが…。これだけの馬だからこそ馬優先で調整して欲しいですよね。

Posted by: ユビキタス | May 01, 2017 at 11:56 PM

治郎丸さん。お疲れ様です。
今更ですがキタサンブラック&武騎手&清水調教師&北島オーナー、本当におめでとうございます。
これ程噛み合ったチームと言うか、まとまりの良さ、久しくなかったように感じます。
馬体は筋肉が盛り上がり、そのせいか?追い切りでは前捌きが硬く、頭の高さが目立ち、厳しい調教の反動が出ているのではないか?淀の3200でどうだろうか?少し斜めから観察していましたが、、、全て杞憂に終わりました。
昨年のJCでは柔らかい捌きでゴール板を派手なアクションで駆け抜けていましたが、今回はバテてなお我慢強く、一定のリズムで走り切りました。またしてもですが想像を超えており頭が下がる思いです。
サトノは今回ペースが早いこともありましたが、ほとんど掛かっておらず、こちらも調整が狙い通りに行ったのだと推察します。素晴らしく均整の取れた馬体ではありますが、首差し等に物足りなさも感じ、本質的にステイヤーではないと思います。この条件での逆転は厳しそうです。
シュヴァルも完璧に仕上がり、完璧なレースをしましたが力(スケール)負けの格好かと思います。この馬も馬体に物足りなさを感じますが、本質的なスタミナは見せつけました。相手が悪かったとしか言えませんね。
私も凱旋門賞を狙う陣営には宝塚をパスして備えて欲しいと願うばかりです。
長文、乱文失礼しました。

Posted by: 愛知のポルンガ | May 02, 2017 at 12:12 AM

次郎丸さん
こんにちは。
JRAのヒーロー列伝ポスターに新たにキタサンブラックが加わったのですが
「そしてみんなの愛馬になった。」がコピーとなっています。
オグリやゴルシはアイドルホースというフレーズが似合いますが、キタサンブラックには愛馬という言葉が似合います。
皆が自然に応援したくなる馬
そんな雰囲気が漂っています。
それにキタサンブラックかなりのイケメンです。
私の中ではルーラーシップ以来のイケメンです。
レース回顧は詳しく説明出来ないので苦手なんですがこのレース サトノダイヤモンドの上がり35、0が最速でキタサンブラックは35、3でした。タイムは0,2秒差でした。
かなりスタミナのいったレースだったのかなと思いましたが先行してこの上がりだったのかと思うとキタサンブラック半端ないなぁとつくづく思いました。今回はハードに調教もこなしていたようですし、馬と陣営の努力の賜物でしょうか。たとえ能力があっても それを信じるものと引き出そうとする努力なくして競走馬は育たないと思います。いまとなっては「母の父がバクシンオーじゃあ3200は持たないだろう」なんてことを口にする人はいませんからね。正論な判断だと思いますがキタサンブラックに関して言うと「あんたばかじゃないの」と言われそうです。
凱旋門賞楽しみです。
武豊騎手が以前からディープの子どもで凱旋門賞を勝ちたいと言っていましたが それをディープの兄の子どもで叶えてしまった‼ってオチもいーですよね。

Posted by: 通りすがりの皇帝ペンギン | May 02, 2017 at 11:26 AM

アダチ@おかやまさん

こんばんは。

ヤマカツが逃げてくれたこともありますが、肉を切らせて骨を断つような見事な競馬でした。

スタミナのある2頭のワンツーでしたね。

Posted by: 治郎丸敬之 | May 03, 2017 at 12:02 AM

ユビキタスさん

キタサンブラックは規格外の馬体とスタミナを誇る馬ですね。

3歳春時点では、この馬の強さが分かりませんでしたが、晩成のステイヤーがあの時点であれだけ走ったことが今となっては驚きです。

まだ底を見せていないのかもしれず、私も宝塚記念をパスして、早目にフランス入りしてもらいたいと思います。

それぐらいする価値のある馬ですね。

Posted by: 治郎丸敬之 | May 03, 2017 at 12:04 AM

愛知のポルンガさん

キタサンブラックは首の高いところがありますが、サクラローレルがそうであったように、この手のステイヤーの特徴なのかもしれません。

たしかにジャパンカップの時が最も仕上がりが良かったような気もしますし、今回は筋肉が付きすぎていたのでバテるのではないかと思っていたのですが、さすがに最後まで粘りましたね。

個人的にはシュヴァルグランが昨年の雪辱を晴らしてくれて、良いレースだったと思います。

Posted by: 治郎丸敬之 | May 03, 2017 at 12:06 AM

通りすがりの皇帝ペンギンさん

そしてみんなの愛馬になった、とはなかなかですね。

北島オーナーの人柄というか、競馬が心から好きなことが伝わってくるイメージも一致して、みんなの愛馬になったのでしょうか。

まさかディープインパクトではなく、ブラックタイドからこれだけの名馬が出るとは想像しませんでしたが、それも競馬の面白さですね。

お兄さんの子どもで凱旋門賞雪辱なんてドラマですね~。

Posted by: 治郎丸敬之 | May 03, 2017 at 12:09 AM

いつも楽しく拝見しています。
天皇賞後の騎手によるレース回顧イベント内で福永騎手がアドマイヤデウスは逃げてキタサンを潰しに行く予定だったと聞いていたと話されてました。岩田騎手も3コーナーで絡んで行こうとしたら武騎手にチラ見されて(行くな的なプレッシャー)絡むのを避けたとコメントしてました。もし潰しに来られてたらキタサン勝てなかったと思われますか?絡まなかった岩田騎手に問題は在りますでしょ

Posted by: ミラクルヤン | May 04, 2017 at 12:28 AM

ミラクルヤンさん

いつも読んでくださって、ありがとうございます。

回顧イベントで話していたことは、アドマイヤデウスは積極的に前に行こうとしていたけど、キタサンブラックを潰しに行くまではできなかったということでしょうか。

武豊騎手にチラ見されてというよりは、キタサンブラックに絡んでも自滅するというニュアンスで控えたのだと思います。

結果的には、その序盤の積極性のおかげで良いポジションが取れて、最高の結果にもつながったのですから、自ら逃げるぐらいの気持ちで攻めることは大切ですね。

Posted by: 治郎丸敬之 | May 04, 2017 at 11:02 AM

次郎丸さん
こんにちは。
ブラックタイドやオンファイアはディープの代替種牡馬のイメージがあったのでここまで強い馬が出るとは思ってもいなかったです。
かといってキタサンブラックと同じ配合の馬を作っても 同じように走るかと言えばそうではないのが競馬の難しさであり、血の魅力でしょうか。
今年から大阪杯 天皇賞・春 宝塚記念を全勝した馬に褒賞金2億が贈られるみたいです。
おそらくファン投票1位になると思いますがキタサンブラックには是非とも宝塚記念を回避して凱旋門賞に向けて体を休めて欲しいです。
もうサブちゃんだけでなく、みんなの愛馬ですから夢はやはり宝塚記念ではなく凱旋門賞にあると思います。

Posted by: 通りすがりの皇帝ペンギン | May 04, 2017 at 03:35 PM

通りすがりの皇帝ペンギンさん

おはようございます。

ブラックタイドから、これだけスタミナのある馬が生まれるとは想像ができません。

馬の得た資質や育成、調教など、全てが重なってこれだけの名馬になったのだと思いますが、同じことを2度繰り返せないのも競馬の奥深さですよね。

ボーナスが出るのはたしかに良いことですが、かなり難しいことでしょうし、その後のことを考えると、あまり無理をさせない方が良いと思います。

キタサンブラックも生身の馬ですから。

Posted by: 治郎丸敬之 | May 05, 2017 at 08:27 AM

武豊騎手が「普通の馬ならバタバタになる仕掛けだったが、今のキタサンブラックの状態なら自信があった」と話していました。そこが鍵なんでしょうね。前々回?の超・馬券のヒントでも触れられてましたが、「気力溢れる走り」が宝塚、凱旋門賞でも出来るのかどうか、いつも通り4角先頭の勢いで回って案外のびず・・のシーンもあるのかもしれません。

スペシャルウィークの宝塚2着、秋初戦の敗戦はショックでした。武豊騎手も覚えてるでしょうか。

Posted by: やっとこ | May 06, 2017 at 09:57 PM

やっとこさん

今のキタサンブラックの能力と仕上がりの万全さがあったからこそ、あれだけの競馬ができたのだと思いますし、武豊騎手も見事に引き出しました。

とはいえ、同じことが次もできるわけではないところが、サラブレッドが生き物であり、競馬の面白いところでもあります。

スペシャルウィークは宝塚記念で疲労残りでした。目に見えないので、陣営は気づかないレベルだと思いますが。

Posted by: 治郎丸敬之 | May 07, 2017 at 12:28 AM

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