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職人たちよ


NHKマイルC2017―観戦記―
アエロリットがフライング気味にゲートを飛び出したが、内からボンセルヴィーソがハナを奪い、モンドキャンノがそれに続いた。前半マイルが46秒1、後半が46秒2というイーブンペースであり、このレベルのレースにおいては遅い流れと言っても過言ではない。しかもこれだけ馬場が良いと、前に行った馬は止まらない。後から行った馬にとっては追い込みづらく、内を進んだ馬がなぜか伸びない、3週目にしては珍しくトラックバイアスの掛かった不思議なレースとなった。

勝ったアエロリットはずいぶんと乱暴な競馬をしたが、最後まで止まらず伸び切ったのだから強い。G1レースにおいて、これだけ力んで道中を走りながら、そのまま押し切ってしまう馬を久しぶりに見た。トラックバイアスが大きかったということでもあるが、それを生かせたのは、アエロリットの仕上がりが良かったから。このレースに照準を合わせ、菊沢隆徳調教師によって渾身の仕上げが施されたことによる勝利であった。一流ジョッキーたちも一目置く、馬を知る職人が調教師となってから初めてのG1勝利。この先、菊沢厩舎からは続々と活躍馬が出るだろうし、その背には横山典弘騎手がいるはずである。

横山騎手はスタートから積極的な騎乗をしようと考えていたはず。馬場を読みつつ、極限まで仕上げられている馬を感じて、無理に抑えるよりも、思い切って行かせてしまうぐらいの気持ちを持って乗っていたからこそ、今回のレースにおけるベストポジションを走ることができた。馬をリラックスさせるために、内の2頭から少し離し、少しでも馬場の良いところを選んで最終コーナーを回ったのもファインプレー。また、引っ掛かっているように映って、実はそれほど馬と喧嘩していない、アクセルをふかしつつもブレーキを踏む騎乗は、まるで往年の岡部幸雄騎手を見ているようであった。

デビューからダートで4連勝したリエノテソーロが2着に突っ込んだように、極端に速いタイムが出る馬場で行われたことで、スピードだけではなく、パワーを要求されるレースでもあった。言葉で説明するのは難しいが、瞬発力や切れ味に変換される一瞬のスピードではなく、持続してスピードを維持するためにはパワーが必要になる。同じ牝馬でも、1番人気に推されたカラクレナイやミスエルテといった切れ味勝負のスピードタイプの牝馬が揃って凡走し、クロフネ産駒のアエロリットやダート実績のあるリエノテソーロが好走したのはそういう理由である。

牡馬で最先着となったボンセルヴィーソも、持ち前のスピードとパワーを活かして粘り込んだ。どんなレースでも安定して先行できるタイプだけに、今回のようなレースは型にはまった。モンドキャンノはスタートが良く、絶好のポジションを進んだかのように映ったが、直線に向いて全く伸びず。距離が1ハロン長かったということだろう。レッドアンシェルは極限の仕上がりにあり、その分、入れ込んでいたが、福永祐一騎手が上手くなだめながら乗って外から伸びた。この馬の気性面を考えると、これが最善の乗り方であり結果であろう。アウトライアーズはやや積極性に欠ける騎乗で、位置取りが悪くなり、今回の前残りの競馬を差し切るほどの力はなかった。

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Comments

治郎丸さん、こんばんは。

僕は競馬歴15年弱くらいなので、本当に全盛期の頃の岡部さんのことはよく知らないのですが、亀谷さんとアンカツさんの古い共著で、アンカツさんが岡部さんと武騎手の技術を語る企画があり、それがすごくしっくり来ました。まだ正式にJRA移籍が決定してないころのインタビューでした。

アンカツさんが言うには、岡部さんは「競馬ファンの目には岡部さんの馬はいつもかかってるように映るかもしれないが、あれはわざとやってることで、ギアをいつでも上げれる状態に保ってるから空いたらいつでも動ける。その技術が凄い」ということだそうです。

ノリさんの直線おいでおいではきっと岡部さんからエキスをもらったんだろうな、と想像してニヤケてしまいました(笑)
祐一も2年くらい前好調だった時は、常にかかり気味に先行させてポケットに入れておいでおいでしてましたよね。

Posted by: シンプル | May 10, 2017 at 11:33 PM

シンプルさん

おはようございます。

僕たちの目には、馬に持って行かれているのをなんとか我慢しているように映りますが、あれはアクセルをふかしつつブレーキを同時にかけている状態なのですね。

それで馬に負担を与えないのですから、すごい技術なのだと思います。横山騎手は間違いなく岡部騎手から多くの影響を受けていますよね。

Posted by: 治郎丸敬之 | May 11, 2017 at 08:25 AM

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