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ルメール騎手は目が良い


ヴィクトリアマイル2017―観戦記―
内枠を利してソルヴェイグが先頭に踊り出て、その後ろにスッと武豊騎手のスマートレイヤーが付けた。前日から降り続いた雨で悪くなった内ラチから4、5頭分の馬場を避けるように、各馬揃って第1コーナーから第2コーナーへと回ってゆく。前半マイルが47秒9、後半が46秒0という超スローペースに加え、いつもよりさらに外を回されてしまった馬たちは直線に向いて脚を失った。隊列(馬群)の内を走れた馬たちにとって極めて有利な、道中のポジション取りが勝敗を分けたレースとなった。

勝ったアドマイヤリードは、道中は内々で脚を溜め、最後の直線で馬の間を割って突き抜けた。420kg台の小柄な牝馬とは思えない、闘志あふれるレース。もともと全身でバネの利いた走りをする、高い素質を秘めた馬であったが、ここに来てようやく精神面が追いついてきた。ステイゴールド産駒の牝馬特有の飼葉食いの細さはあるのだろうが、ステイゴールド産駒だけにこうした力を要する馬場が合っていた。須貝尚介調教師はゴールドシップの天皇賞春以来、2年ぶりのG1レース勝利となり、これでステイゴールド産駒との相性の良さが浮き彫りになった。

クリストフ・ルメール騎手の騎乗に関しては、お見事としか言いようがない。レース全体を俯瞰しつつ、各馬の細かな動きを見逃さない。ひと言で表すと、目が良いということになる。アドマイヤリードは決して乗りやすい馬ではなく、むしろ繊細な手綱さばきを求められるにもかかわらず、何ごともなかったかのようにきっちりと折り合いをつけ、道中は最高のポジションを走らせ、完璧な形で最後の直線に向いた。道中できっちりと抑えられるからこそ、ラストはしっかりと伸びる。一瞬の脚しか使えないアドマイヤリードを追い出すタイミングも文句なし。馬を動かす技術と瞬時の冷静なヘッドワークが融合した結果の勝利である。

あっと言わせたのは、11番人気ながらも2着に突っ込んだデンコウアンジュ。道中は中団を進み、決してベストポジションを走れたわけではないが、メンバー中最速の33秒2の脚を使って追い込んできた。最終コーナーを回るところで外の馬が壁になり、仕掛けのタイミングが遅れた分、脚が溜まったのだろう。ラスト100m地点で他馬を飲み込んで、蛯名正義騎手もやったと思った瞬間、馬群からアドマイヤリードがグッと抜け出した。ひとつだけ、この馬が激走した理由を挙げるとすれば、父メイショウサムソン譲りのパワーが生きる馬場であったということだ。

ジュールポレールは持ち前の瞬発力を生かせたが、良馬場であればなおさら切れたはず。もはやG1級の能力を秘めていることを証明したことになり、牝馬同士の重賞レースであれば、この先、常に勝ち負けに加わることができるだろう。スマートレイヤーは持ち前の渋太さを生かせる流れにはならなかったが、レースの流れに乗り、7歳牝馬としては良く走っている。逃げたソルヴェイグは、すんなり先行した川田将雅騎手の好判断のおかげで掲示板に載ることができた。

1番人気のミッキークイーンはどうしたのだろう。隊列の外を回らされた(人気を背負っているだけに安全に外を回った)ことだけが敗因ではない。脚の怪我をして復帰した馬だけに、前走で重馬場を目いっぱい走らされた激走の反動が出てしまったのかもしれない。レッツゴードンキについては、馬場が重くなり、スピードレースにならなかったことに加え、終始馬群の外々を回らされて引っ掛かってしまったことが痛かった。

今年のヴィクトリアマイルを観て思ったことは(以前から指摘してきたことではあるが)、日本の騎手たちは馬場の良し悪しを気にしすぎる。どこが伸びて、どこが走りにくいのか、気にするのは良いことだが、気にしすぎる余り、レース全体におけるポジションを悪くしてしまっては元も子もない。今回も内ラチ沿いを思い切って攻めたのはデムーロ騎手であり、ルメール騎手であったように、多少馬場の悪いところを走ったとしても、(特にスローに流れるレースにおいては)内を走って距離ロスを避けるメリットの方が大きいのだ。日本人騎手には自分の頭と感覚で判断して馬を走らせてもらいたい。

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