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負けるべきときには負けるべき


宝塚記念2017―観戦記―
積極的に前に行こうとしたシュヴァルグランが押し出されるようにしてハナに立ち、それに並ぶようにしてシャケトラとキタサンブラックらの人気馬が続いた。前半1000mが60秒6、後半1000mが59秒1だから、タイム的にはスローペースにもかかわらず、直線入り口では先行勢が軒並み力尽き、後方に控えていた馬たちが突き抜けるという展開となった。これが少頭数のレースの難しさであり、他馬を必要以上に意識してマークを強めたことにより、自分も消耗してしまい、後ろから自分のペースで走った馬たちに足元をすくわれてしまうという現象が起こった。

勝ったサトノクラウンは、唯一、キタサンブラックの動きを見ながらレースを進められ、最適なコースとポジション取りができたことが勝利につながった。産経大阪杯は絶好の馬場で行わるスピードレースに良さを出せずに終わってしまったが、宝塚記念は馬場も重くなり、この馬のパワーとスタミナを生かすことができた。ラスト3ハロン33秒台のレースを制したこともあるように、つかみどころのない馬ではあるが、香港で初のG1レースを勝利したように、本質的には力を要する馬場で行われる時計の掛かるレースを最も得意とするのだ。そして、最大の勝因は体調の良さにある。前走時は暮れの香港遠征から今年の早い時期に京都記念を勝利したことによる疲労が出てしまっていた。阪神の出張馬房で入れ込んで消耗してしまったのも、そもそもは調子の悪さがベースにあったはず。産経大阪杯からひと息入れて、立て直し、出張馬房にも最善の手を打った堀調教師の判断と手腕には脱帽する。

ミルコ・デムーロ騎手は相変わらず絶好調であり、その勢いを宝塚記念でも生かしてみせた。特に、先行した有力馬3頭に息が入りそうになったところで、自ら一気に上がって行き、息を入れさせなかったことで、シュヴァルグランとシャケトラ、キタサンブラックは苦しくなった。道中のレースの組み立てから、勝負所での馬の動かし方まで、もはや今の中央競馬では騎手としての力が一枚抜けている。もちろん、馬の力があってこその勝ちもあるが、デムーロ騎手が乗ったからこそ勝っているケースも少なくない。今回は馬と騎手の両方の力が合わさっての会心の勝利であった。

ゴールドアクターは、横山典弘騎手に導かれて2着に突っ込んだ。馬自身の精神状態が良くなってきたことに加え、先行争いに巻き込まれることなく、ゴールドアクターのリズムで走ったことが最後の伸びにつながった。絶好調時に比べて力は落ちているのは間違いないが、有力馬が自滅してくれる展開になれば、連対できるだけの力はまだ残っている。牝馬ミッキークイーンは先行勢について行けなかったことが功を奏して、3着に入ることができた。前走のヴィクトリアマイルは、久しぶりに勝利した阪神牝馬Sの反動で走らなかったが、今回はこの馬の力を発揮できたと言える。

シャケトラはシュヴァルグランに馬体を併せすぎたし、さらに外からキタサンブラックに来られて引くに引けなくなってしまった。キタサンブラックも中途半端な形で先行することになり、相手の力だけではなく、自らの力も奪われてしまい、直線半ばで力尽きてしまった。少頭数であればあるほど、ジョッキーたちは様々な作戦やレースの組み立てを考えるのだが、今回のレースは考えすぎた騎手ほど自分の馬の型で走らせることに失敗している。その中でもシャケトラは良く最後まで踏ん張っている。これぐらいの距離がベストであり、秋の芝中距離路線では楽しみが膨らむ馬の1頭である。

圧倒的な1番人気に推されたキタサンブラックの敗因は、単純に前走の天皇賞・春をレコードタイムで勝ったことによる反動である。武豊騎手も陣営も良く分かっているはず。それほどに前走は厳しいレースであったし、さすがのキタサンブラックも春のG1レースを3連勝することはできなかった。この春は産経大阪杯と天皇賞・春と苛酷な調教にも耐え、最高の状態を維持してき。今回も肉体的に崩れたというよりは、最後まで踏ん張るだけの気力が残っていなかったということである。

サラブレッドは負けるべきときには負けるべきであり、関係者も競馬ファンもそれを理解してもらいたい。今回の敗北を受け、北島オーナーは凱旋門賞行きを断念したようだが、それは間違った判断である。凱旋門賞を勝てるぐらいのピークの出来に持っていくとすれば、宝塚記念は本来スキップすべきだし、仮に出走したとしても負けるべきレースである。ここを勝てるだけの仕上げを施して、勝ってしまうと、そこから下降線を辿った体調は10月までには戻らないからである。それを負けたから凱旋門賞に出ないとは本末転倒であり、宝塚記念を勝ったら凱旋門賞に出るという発想自体が根本的におかしい。むしろ凱旋門賞を本気で考えるのであれば、宝塚記念で負けたことを喜ぶべきなのである。

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Comments

次郎丸さん
こんにちは。
なによりキタサンブラックが故障もなく元気にいてくれていることにホッとしています。
嫌な予感というのでしょうか。出走すると知った時からこうなることがわかっていたような、いなかったような気がしています。元々オーナーが凱旋門賞は乗り気でなかったようなので判断も早かったようですね。レース直後にそく『凱旋門賞行かない』の記事見た時には「なんじゃそれ」と思ってしまいました。グランプリレースですしキタサンブラックが出るのと出ないのでは売上も大きくかわるし ファンも投票1位に支持されてるし 期待に応えたいというのもあるかもしれませんが それでもやっぱりキタサンブラックが凱旋門賞で走る姿が見たかったです。

Posted by: 通りすがりの皇帝ペンギン | June 26, 2017 at 01:37 PM

凱旋門賞に行くと言いながら、宝塚記念に出走するというのがそもそも不可解でした。また、一口馬主をしていて、清水久嗣厩舎は馬の疲労やコンディションがよくわからないか、ケアの仕方がわからないのだろうと感じていました。今回は強靭なキタサンブラックと言えども気力がプチっと切れたように見えました。

Posted by: Masaki Yoshio | June 27, 2017 at 12:32 AM

次郎丸さん
観戦記ありがとうございます。「サラブレッドは負けるべきときには負けるべきで」とても深い言葉です。絶対的な一番人気のキタサンブラックでしたが、レコードの反動、下降線(ピーク過ぎ)、外枠(少数頭でも)と相対的に負けるべきレースであったんですね。予想に活かしたいと思います。

Posted by: hagi | June 27, 2017 at 01:01 AM

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