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集中連載:現代のコアな競馬ファンがすなる一口馬主というものを(第26回)

Hitokuti26

初めて出資した馬が初勝利を挙げた喜びは、何とも表現しがたい。現地(競馬場)にてリアルタイムで観ていなかったからかもしれないが、それは決して馬券が当たったときのような爆発的で刹那的な喜びではなかった。あえて表現するならば、持続的な喜びと言うべきか。これからも競走馬として走り続けることができる能力を持っていることが分かった安心感と(私の立場としては)馬を観る目がなかったわけではないという安堵感だろうか。もしかすると、これから先も一口馬主を続けていけそうだと思える、小さな成功体験を得た喜びもあるかもしれない。初勝利から1ヶ月以上の歳月が流れた今でも、その静かな喜びは胸の内にある。

高野友和調教師
「トレセンに戻って状態を確認しましたが、特に疲れた様子もなく、穏やかに過ごしていますが、これまでの疲れを取る為に放牧に出す方向で考えています。まだまだ伸びしろの大きな馬だと思いますし、一つ勝ってくれたことで、馬の状態に合わせて進めていけますね。明日軽く跨って状態を確認して、週末あたりにノーザンファームしがらきへ放牧に出す予定です」

クインアマランサスはレース後の様子を見て、ノーザンファームしがらきに放牧に出されることになった。高野調教師のコメントの中にある、「まだまだ伸びしろの大きな馬だと思いますし」という言葉には、人知れず心躍ってしまう。

騎乗スタッフ
「周回コースだともうひとつトモを上手く使って走れない感じですが、坂路だととてもいいフォームで登坂してくれますね。前後のバランスが伴っていけば、もっと走ってきそうな雰囲気がある馬なので、この休養期間にじっくり乗り込んで成長を促していきたいと思います。馬体重は489kgです」

厩舎長
「レースの疲れから硬さが窺えましたが、日に日に柔らか味が戻ってきましたし、活気も出てきました。まだ成長途上の馬ですから、この休養期間にしっかり鍛えて力を付けてくれると良いですね。まだ背・腰を上手に使って走れていないところがあるので、バランスを保てるようにしてあげたいと思います。馬体重は481kgです」

幼少期からの課題であった、特に前躯のさばきの硬さと背中や腰を上手く使って走れていない点はまだ解消されていない。坂路コースでは良いフォームで走れるにもかかわらず、周回コースでは上手く走れないのは、トモの筋力が弱いため、外に流れてしまっているからであろう。さすがに上のクラスに行くと、コーナーごとに失速してしまっていては勝つのは難しくなるので、この充電期間に後躯が成長してバランスが良化することを願う。それにしても、1頭1頭のサラブレッドにそれぞれのウィークポイントや悩みがあり、これだけ長い時間を掛けても簡単には解消できないものなのだなと改めて思い知る。馬券を買うときにはすっ飛ばしてしまいがちだが、これだけ幾多の個性がひとつのレースには詰まっているのである。

ところで、馬券を買うということで思い出したが、クインアマランサスが勝利したにもかかわらず、私は馬券を買っていない。クインアマランサスの馬券は一度も買ったことがない。正直に言うと、今回は前日の段階では勝つチャンスがあると思っていたので、馬券を買おうか買うまいか迷った。迷った挙句、私はひとつの結論を出して、心に決めた。それは自分が出資している馬の馬券は買わない、ということだ。

私の知っている限りにおいて、自分の馬が出走しているレースで自分の馬がらみの馬券を買っている馬主さんは多い。目が飛び出るほど(当たったら1着賞金よりも大きいんじゃないと思わせるほど)に買う馬主さんもいるし、心ばかり(といっても私からすればかなり高額だが)の馬券をたしなむ馬主さんもいる。勝てば喜びは2倍になるし、負ければ悲しみは2倍になる。自分の馬が勝てそうなときにだけ馬券を買っているのではなく、常に買っているのである。つまり、馬主さんたちは、いつも自分の馬が勝つかもしれないと思っているということだ。

私が自分の馬の馬券(単勝)を買わないと心に決めた理由は、自分の馬が勝つかどうか自信がないということではなく、買う必要がないと考えたからである。馬券を買わなくても大いに楽しめる、喜べると思うからである。私たちの競馬の楽しみ方は変わってきている。つまり、馬券を買う楽しみから、自分で馬に出資し(もしくは馬を購入して)、走るのを応援する楽しみへと、舵は切られつつある。それは時代的な変化であり、私や私の周りにいるコアな競馬ファンの個人的な変化でもある。そうした背景がある以上、馬券を買わずに愛馬が走るのを応援するが正しい(一口)馬主の楽しみ方ではないかと思う。馬券は馬券で楽しめば良い。自分の馬が走っているレースぐらいは、ただ1頭だけの好走や無事を願い、手を合わせて祈りたい。

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Comments

こんにちは。
一口をやりだしてからは確かに馬券を買う機会が減りました。
これは私だけではないようです。
一時期一日36レース買っていたという一口仲間もその傾向があります。

私も自分の一口馬の馬券はほとんど買いません。
もっとも私の場合は「一口で損して、馬券でも損させられたらたまらない」という消極的な理由ですが・・・。

もう1頭のジャスパーゲランは順調でしょうか?
そろそろ入厩の話が出てくるころだと思いますが・・・。
一度牧場見学に行かれてはいかがでしょうか?

Posted by: アダチ@おかやま | July 17, 2017 at 01:42 PM

僕の出資馬は2戦を消化して10頭中9着、9頭中7着と惨憺たる結果に。でも両レースとも負けるだけの理由があって、2回の敗戦を通して対策すべき事が見えてきたようなので、これからどんな成長を見せてくれるのか楽しみです。

成績が振るわない馬にいきなり好走され、こんなの買えないよ~。とこぼすことがままありますが、それも背景があってのことなんだな~としみじみ感じています。その背景を知ることの出来るのは一口馬主の魅力ですし、馬券にも生かしたいですね。

人気は着実に落ちてきてますし、初勝利をあげるまでは馬券は買い続けようかなと考えています。

Posted by: やだとこ | July 18, 2017 at 03:05 AM

アダチ@おかやまさん

こんばんは。

消極的な理由もありますよね(笑)

ジャスパーゲランのことまで覚えていてくれて、ありがとうございます。

順調に来ているようですが、もう少しトモに実が入ってくるのを待つそうです。

たしかに牧場見学も行ってみたいのですよね。

実は近々、ノーザンホースパークには行ってみようと思っていますが、ノルマンディーファームは少し遠くて時間がなさそうです…。

Posted by: 治郎丸敬之 | July 19, 2017 at 08:37 PM

やだとこさん

そうなんですよ。

1頭の馬を追いかけることで、背景を知ることができるのですよね。

馬券を買うときもそのようにしてきたつもりでしたが、一口馬馬主はもっと深く知ることができることが分かりました。

ただどの馬も同じように背景がある以上、なかなか馬券に活かすのは難しいのではと感じてもいます。

僕は馬券を買わないと決めましたが、買うならば買い続けたいですよね。

Posted by: 治郎丸敬之 | July 19, 2017 at 08:40 PM

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