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もし本気で凱旋門賞を勝ちたいなら

凱旋門賞への前哨戦フォア賞にて、サトノダイヤモンドが4着と惨敗した。そのこと自体は大きな問題ではないし、特に何も思わない。サトノダイヤモンドが肉体的にも精神的にも仕上がっていなかったことに加え、ただでさえ深い洋芝に、雨が降ったことで馬場が極端に重くなったことが影響しての凡走である。フォア賞で仕上げすぎても凱旋門賞に向けての上積みはなくなるし、馬場に関しては、本番前に良い経験ができた、また本番が今回のような重馬場でなくて良かったと考えることもできる。前哨戦はあくまでも前哨戦であり、凱旋門賞でサトノダイヤモンドの走りができればそれで良いのだ。

とはいえ、私は今年に入ってから、凱旋門賞を勝つのは私たちが考えている以上に難しいのではないかと思うようになった。そんなことはずっと昔から分かっている、と言われるかもしれない。古くは野平祐二氏がスピードシンボリで凱旋門賞に臨んだ時代から、エルコンドルパサーやディープインパクト、オルフェ―ヴルを経て、昨年のマカヒキまで、日本馬がヨーロッパ競馬の頂点に立つことの困難は十分に承知の上で、だからこそ高い壁を乗り越えようとして挑戦し続けてきた。その間に日本の競馬は大きくレベルアップし、すぐそこの手の届くところに凱旋門賞の栄冠があるように感じられるようになった。気がつかぬうちに、日本の馬はすでに世界レベルまで達してしまったのだ。ただし、そのことと日本馬が凱旋門賞を勝つことは全く別の話なのではないか。

私は小さい頃から野球が大好きで、今でもWBC(ワールドベースボールクラシック)だけは毎回欠かさず楽しみに観ている。今年の日本チームの準決勝における敗戦に対する桑田真澄氏の見解を読み、はっと驚かされた。私がずっと不思議に思いつつ、モヤモヤと心にかかっていた霧が一気に晴れたような気がした。日本馬の凱旋門賞への挑戦にもまさに同じことが当てはまるのである。

小久保裕紀監督が言うように、日本の選手はみんなよくやっていたと思います。課題として挙げるとしたら、選手のプレーを取り巻く環境面についてですね。

WBCの決勝トーナメントはアメリカで行われます。それが事前にわかっているにも関わらず、日本球界は環境の違いに適応する準備が至らなかった。準決勝のエラーも、野手の経験不足が誘発したものだと思います。
 
大一番を落とさないためには、たとえば広島のマツダスタジアムのように内野を天然芝にするとか、土も黒土ではなく硬いアンツーカーを採用するとか、できるだけアメリカと同じ環境を整えないといけません。現状では各球団、球場で考え方に任せているのでしょうが、日本球界が本気になって世界一奪還を掲げるのであれば、選手に頑張れと言うだけではなく、関係者が一丸となってプレー環境を整備することも大事ではないでしょうか。

国際大会のたびにマウンドの硬さやボール、グランドの違いに慣れないといけないのは選手にとっても酷ですし、そういう作業は正直ムダです。国際試合を通じて日本の競技力を高めるというより、アメリカを中心とした海外の環境に適応するだけで大会が終わってしまう。そんなムダを省く努力が、日本球界では急務だと僕は思っています。
(Sportsnavi「桑田真澄氏が見たWBC」より)


札幌記念を使って、日本である程度まで仕上げてから、ぶっつけ本番で凱旋門賞に臨むのと、現地にできるだけ長く滞在して、フォア賞などのステップレースを叩いてから本番に臨むのと、勝つためにはどちらが良いのかというレベルの議論ではないということだ。個人的には後者がより勝つチャンスは広がると考えているが、2013年に完璧な準備をして挑んだ最強馬オルフェ―ヴルが2着に敗れたとき、それだけでは足りないのだと知らされた。

その答えはつまり、できるだけ凱旋門賞が行われるヨーロッパ競馬と同じ環境に日本の競馬を近づけるということだ。ぶっつけ本番かステップレースを使うかという小手先の議論ではなく、芝の種類から丈、コースの起伏など、普段行っている日本の競馬の環境自体をつくり変えるぐらいの転換をしなければ、凱旋門賞は勝てないということだ。気候や風土が違うと言ってしまえばそれまでだが、もし本気で凱旋門賞を勝ちたいならば、遠征する馬や騎手、調教師に頑張れと言うだけではなく、日本競馬界の関係者が一丸となって環境整備をしなければならないのである。

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Comments

野球の話は実現可能な気がしますが、競馬の方はなんだか途方もない話のように思えてしまいますね。日本競馬の歴史的転換!みたいな。

もし実現したとすると、もっと交流が盛んになって、世界の競馬が近くなるんですかね?だとしたらぜひその方向に進んでほしいものですが、抵抗もハンパなさそう。

Posted by: やっとこや | September 12, 2017 at 01:08 PM

凱旋門賞を勝つためにもう一つ足りない事はレースにおけるチームプレーだと思います。
外国競馬、特に重賞ではラピッドは当然の事として受け入れられています。
そういう意味では同じオーナーの2頭出しの今回はチャンスだと思っています。
ダイヤモンドの出来もそうですが、本番ではノブレスの役割がカギを握っているような気がします。

Posted by: アダチ@おかやま | September 12, 2017 at 03:58 PM

とても荒唐無稽な話に思えますが、もしそんなことが可能だとしても少し考えてしまうのです。
そんなことまでして毎年凱旋門賞に行かねばならないのだろうか?と。

もちろん凱旋門賞を日本の馬が勝てば天地がひっくり返るほど嬉しいし、競馬関係の皆様にとってはどれだけのものか、私ごときでは計り知れないものがあるのは勿論わかります。

日本の競馬場がフランス仕様でない今勝つためには、三冠を楽にとれる馬でないとだめだと思います。斥量の差などでちょっと見どころのある若い馬や牝馬を連れて行ってはいけないんだと思います。

競馬場の整備の話からそれてしまいましたが、海外で負けてかえってくると「なんだ、たいしたことないな」みたいに言われがちな馬がかわいそうですね。
今年のダイヤモンドさんにも勿論頑張ってほしいですが・・・

Posted by: 抹茶大福 | September 12, 2017 at 04:12 PM

今まで不思議に思うのは、凱旋門賞は斤量の軽い3歳馬が
有利なのは分かりますが、何故ダービー馬だけが遠征
するのかが?です。

泥んこの重馬場や洋芝が得意なスタミナたっぷりな
馬の方が良い結果を出すような気がするのですが・・・

Posted by: Spunky | September 12, 2017 at 10:24 PM

やっとこやさん

おっしゃる通り、競馬に関しては途方もない話ですよね。

そこまでしないと凱旋門賞を勝てないとすれば、それでも凱旋門賞を勝ちたいですか?という話でもあります。

自分たちの競馬を守るとすれば、攻めるときはどうしても小手先になってしまうのかもしれませんね。

世界が近くなるならば、そうあるべきですし、とはいえ、一概にヨーロッパに合わせるべきかというと私には分からないのです。

Posted by: 治郎丸敬之 | September 13, 2017 at 12:06 AM

アダチ@おかやまさん

チームプレーもたしかに必要ですね。

ラピッドもそうですし、今回は後ろから乗っかられたみたいですから、壁をつくる馬も必要かもしれませんね。

昨年、オブライエン勢が見事なチームプレーで勝ちましたが、あれはそれぞれの馬に力があればの話にも映りました。

今回のサトノノブレスぐらいのリードでは、他馬の良い目標になって終わりのような気がします。

そう考えると、キタサンブラックが出走していたらと思ってしまいますね。

Posted by: 治郎丸敬之 | September 13, 2017 at 12:11 AM

抹茶大福さん

そうなんです。

荒唐無稽な話なのですが、それぐらいの発想の転換ができないと、いつまで経っても勝てないのではないかと思うのです。

マスコミもいつまで経っても、前哨戦を使うかぶっつけ本番か、帯同馬はいるのか、当日の馬場はどうなるのか、といった議論を繰り返すだけで、馬は消費されてしまいます。

そしてもしそうしなければ凱旋門賞を勝てないとすれば、それでも勝ちたいのかと問い直すこともできます。

そうすることなしに、小手先だけで勝とうとするから、夢は夢のまま地平線のように去ってしまうのかもしれません。

Posted by: 治郎丸敬之 | September 13, 2017 at 12:16 AM

Spunkyさん

おっしゃるように、適材適所であり、もしかすると日本の競馬よりもヨーロッパの馬場でこそ力を発揮できる馬がいるかもしれません。

そういう馬を連れていくのが難しいのは、そもそも能力が足りるのか不明な点と日本の道悪や重馬場が得意なぐらいの馬ではヨーロッパのアップダウンの激しい、芝の深い馬場はこなせないからです。

そして何よりも、1ヶ月に滞在費だけで1000~2000万円ぐらい掛かってしまう以上、実績のない馬を連れていくのは経済的にも馬主さんの賛成が得られないからです。

Posted by: 治郎丸敬之 | September 13, 2017 at 12:20 AM

ちなみにこれは元記事(http://ookii01t.jugem.jp/)があって、まさにその通りと賛同できる考え方だったのでここに書き込みした次第です。

私にとってこの方の競馬観はちょっとしたカルチャーショックでした。

Posted by: アダチ@おかやま | September 13, 2017 at 12:44 AM

次郎丸さん
こんにちは。
凱旋門賞はそこまでして勝たなければいけないレースか?と問われるとどう答えるべきなのか迷いますが私にとって凱旋門賞はレースがというより凱旋門賞という響きが何より魅力的です。加えて凱旋門賞馬という称号も「おーっ」と目が輝きそうです。
一昔前だとジャパンカップに凱旋門賞馬が参戦してくるとレースも華やかになっていのではないのでしょうか。
競馬と同じくらい映画が好きだったのですがアカデミー受賞作品と聞くと無性に見たくなる時期がありました。映画祭としてはカンヌやベルリンのほうが価値の高いものだと思っていますが アカデミー賞という響きは別格のように聞こえてしまうんです。
私にとっての凱旋門賞はそれと同じことなんですよね。
死ぬまでにはどうか日本馬が凱旋門賞馬になるのを目にしたいものです。

Posted by: 通りすがりの皇帝ペンギン | September 13, 2017 at 11:20 AM

アダチ@おかやまさん

面白いですね。

競馬以外のジャンルの考え方や見方を取り入れてみると、新しい競馬が見えてきますし、今までの常識を疑うこともできますよね。

Posted by: 治郎丸敬之 | September 14, 2017 at 10:38 AM

通りすがりの皇帝ペンギンさん

凱旋門賞はブランドというか響きが素晴らしいのでしょうね。

そういうものを込みで、ホースマンたちは凱旋門賞を目指すのです。

別に僕もそこまでして凱旋門賞を勝つべきかというとそうではないと考えていて、それでも毎年挑戦するならば、これまでのような小手先の議論ではなく、大きな発想の転換が必要なのではないかと思ったのです。

凱旋門賞を日本馬が勝つところを生で観てみるのが私の夢でもありますから。

Posted by: 治郎丸敬之 | September 14, 2017 at 10:41 AM

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