« 強い逃げ馬が2頭いるとき、“行った行った”は起こる | Main | 菊花賞を当てるために知っておくべき3つのこと »

意識の違い


秋華賞2017―観戦記―
雨が降りしきる中、かなりの力を要する重馬場でレースは行われた。大方の予想どおり、カワキタエンカが先頭に立ち、内枠からアエロリットが続く。そこにファンディーナが外から被せるように併走したことで、序盤のペースが落ちず、前半1000mが59秒1、後半が61秒1というハイペースとなった。差し馬にとっては差しやすい、逃げ先行馬にとっては最も残りにくい展開であった。もし逃げ先行馬にとって勝機があったとすれば、さらにペースを上げて、後続の馬たちの脚をなし崩し的に使わせ、極端に上がりが掛かる展開をつくり出したときだろうか。そのようなレースをつくるには、1番人気に推されたアエロリットは前半から力んで走り、最後の手応えが余りにも悪すぎた。

勝ったディアドラは、スタートダッシュこそ決まらず後方からレースを進めたものの、勝負所で内をスルスルと上がっていき、直線に向いたときには先に抜けた馬たちを射程圏に捕らえていた。序盤が思い通りに行かなかったことで、かえって腹を括れたのだろうが、クリストフ・ルメール騎手のあのコース取りがあってこその勝利であったことは間違いない。ディアドラ自身はオークスを好走したのち、夏を越してからめきめきと強さを増し、実に力強く堅実な末脚を発揮できる馬になった。重馬場を苦にしなかったこともあるが、極端な瞬発力勝負にならない限りはたとえ良馬場で行われていたとしても、勝っていたはず。ハービンジャー産駒にしては、馬体全体に軽さがあり、その点ではペルシアンナイトと似ており、これからは軽さのあるハービンジャー産駒が出世してくることを覚えておきたい。

リスグラシューはレースの流れに乗り、自身の末脚を最大限に発揮したが、勝ち馬の爆発力には一歩及ばなかった。前走をひと叩きされたことで、この馬も筋肉にメリハリが出てピリッとしてきたが、それでも成長力という点ではG1レースを勝つには物足りなかった。それでも着差だけを見ると、もし勝ち馬と通ったコースが逆であれば着順も逆であったかもしれないとも思える。それは最終コーナーにおけるコース取りだけの問題ではなく、騎手間の技量の差でもない。スタートしてから武豊騎手がずっと外に進路を探しているのに対し、ルメール騎手は内に入れる機会をうかがっている、その意識の違いである。なぜこれほどまでに2人の外国人騎手が勝ち星を挙げているのか、その違いはどこにあるのか、日本人騎手たちはもう1度見つめ直してみた方が良い。

積極的な騎乗で一旦は先頭に躍り出たモズカッチャンは、ゴール前で止まって惜しくも3着に敗れた。道中は内で脚をためていたが、結果論としては、少し仕掛けのタイミングが早かった。動いて負けたなら仕方ないと割り切れるのがミルコ・デムーロ騎手の良さであり、今回はたまたま負けてしまっただけで、攻めの騎乗でこれまで星の数ほどの馬を勝たせてきた。モズカッチャンは勝ち馬と同じハービンジャー産駒であるが、どちらかというとパワータイプなので今回のような馬場はプラスに働いたと言える。休み明けの前走をひと叩きされ、きっちりと変わり身を見せてくれた。

今年の秋華賞は重馬場で行われ、しかもハイペースに流れたので、もしエリザベス女王杯が良馬場で行われ、例年のようなスローの瞬発力勝負になった場合、秋華賞の結果がそのままエリザベス女王杯に結びつかない可能性も十分にありえる。その時に秋華賞から巻き返すとすれば、ディープインパクト産駒のファンディーナかカワキタエンカとなるだろうか。それとも、距離が延びて今度こそ勝ちたいリスグラシューだろうか。ヴィブロスやアドマイヤリード、スマートレイヤーなどの古馬と争う、エリザベス女王杯が実に楽しみである。

|

Comments

治郎丸さんいつもお疲れ様です(^^;今回のレースは混戦の上に馬場悪化も重なり難しい1戦になりましたね。しかしこうして考えるとやはり最後は騎手がカギになりますね。治郎丸さんの本にも書いてある大レースこそ重馬場や不良馬場でこそ騎手でとゆう言葉ではないですが大レースじゃないにしてもやはり難しいレースではレースの勘が良く馬を上手く導くことの出来る騎手でしたね。結果がすべてとゆう結果でしたね。自分は内枠で前にイケるという点でアエロリットからで馬券的にはダメだったのですが同時に馬券を買う前に京都競馬場が初めて重馬場が初めてという一抹の不安が頭をよぎったのですが…。悪い予感とゆう的中率は高いものですね(笑)自分の場合は中央&南関東&地方のとくに高知競馬をしているのですが日々勉強になりますし治郎丸さんのパドックの見方はとくに今も中央&地方関わらず大変役に立っています。改めていつも本当にありがとうございます。

Posted by: ユビキタス | October 16, 2017 at 02:22 PM

ルメール騎手と武豊騎手の意識の違い、もっと言うと外国人騎手と日本人騎手の意識の違いの指摘は、とても頷けます。
ただ一方で脚質や器用さの観点から、内に入れにくい馬というのも存在するのではないでしょうか?
内に潜り、前が空いたらパッと反応出来る馬もいれば、エンジンがかかるまでに時間がかかってしまう馬もいるでしょう。
ディアドラとリスグラシューの両馬に関して、そのような馬の特性の違いという点はどうお考えでしょうか?

Posted by: コロンビア | October 16, 2017 at 08:43 PM

ユビキタスさん

こんばんは。

アエロリットは前走逃げたのが裏目に出ましたね。

今回は逃げられなかった上に、ファンディーナに絡まれて、前半でスタミナを失っていました。

パドックの見かたは参考にしていただき嬉しいです。

どこの競馬場に行っても通用する見方なので、海外の競馬場でも有効ですよ。

こちらこそいつも読んでくださって、ありがとうございます!

Posted by: 治郎丸敬之 | October 17, 2017 at 12:03 AM

コロンビアさん

コメントしてくださって、ありがとうございます。

おっしゃる通り、馬はそれぞれに違いますから、ギアチェンジがスムーズではなかったり、伸び伸び走らせた方が良かったりする馬もいて、外を回すのが正しいケースもあると思います。

そういう点では、勝ったディアドラがスパッと反応できるタイプの馬で、リスグラシューがそうではないとは思いません。

もし武豊騎手とルメール騎手が今回、互いに逆の馬に乗っていたとしたら、それでもルメール騎手は内、武豊騎手は外に進路を取っていたと思います。そして結果は…、どうなっていたでしょうか。

思いの外、違う騎手が乗れば内からスパッと切れたりするもので、個人的には外を回した方が良い馬という理由は、外を回してしまった言い訳にしか聞こえないことがほとんどです。

内を通る感覚が身体に染みついているジョッキーと、気がつくと外を回してしまう騎手との差は、長い目で見るとさらに大きいのではないでしょうか。

確かにルメール騎手とデムーロ騎手には良い馬が回ってきていますが、その前に彼らが馬を最短距離で誘導して、1つでも上の着順を取ってくる事実があるからこそですね。

Posted by: 治郎丸敬之 | October 17, 2017 at 12:13 AM

Post a comment