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上がりが掛かれば掛かるほど


菊花賞2017―観戦記―
内枠からウインガナドルが飛び出して先頭に立ち、流れが落ち着くかと思いきや、外から抑え切れずに上がってきたマイスタイルがハナを奪い返した。これだけの不良馬場になってしまうと、時計だけではペースの速い遅いを定めるのも難しいが、道中で折り合いを欠いてしまった馬やハミを噛んでしまった馬は、必要以上にスタミナを消耗してしまい、最後まで走り切ることができなかった。そして、ほとんどの馬が先行しようと前のめりになった分、折り合いをつけて序盤をゆっくり走らせた人馬に軍配が上がった。

勝ったキセキは上がりの掛かるレースに強い、典型的なルーラーシップ産駒である。これまで速い上がりタイムで走ってきたのは能力の高さゆえであって、本質的にはピュッと切れるのではなく、ジワジワと伸びるタイプ。前走の神戸新聞杯であれだけの上がりタイム(33秒9)で上がっておきながら、ミルコ・デムーロ騎手が「ジワジワとしか伸びなかった」とコメントしたのも頷ける。雄大な馬体と新馬戦の勝ちっぷりを見て、「Gallop」誌上でクラシック番付の小結に推した馬だけに、日本ダービーに出走できなかったのは残念だが、まさか菊花賞を勝つことになるとは驚きと共に喜びでもある。

デムーロ騎手は前半馬とのリズムを大事にして乗り、勝負どころからはキセキの深く大きなフットワークを崩さないように、しかし豪快に追って馬を推進していた。騎座がしっかりとしているので、特に今回のような不安定な馬場でこそ、他のジョッキーとの安定感の差が如実に現れるし、だからこそデムーロ騎手が乗る馬は重馬場の中をグイグイ伸びてくる。ゴール前でキセキがバランスを崩した瞬間はヒヤッとしたが、大舞台でのジョッキーとしての度胸と腹の括り方が図抜けていて、静と動の使い分けが実に素晴らしい。

クリンチャーは血統的にも道悪馬場を苦にしないタイプであろう。パワーで乗り切るというよりは、馬体全体のバランスが良いことによって、無駄に体力を消耗しない。前半はゆったりと構え、向こう正面の直線を利用してポジションを上げてゆく藤岡祐介騎手の見事な騎乗と、騎手の指示に応えて動けるクリンチャーの素直さと操縦性の高さがあったことも事実である。ポポカテペトルはパワーを生かして、3着に粘り込んだ。この馬は道悪馬場を苦にしないタイプであろう。

勝ち馬と同じルーラーシップ産駒のダンビュライトは、上がりの掛かるレースが功を奏して好走したが、母父サンデーサイレンスという血統ゆえに、最後はスタミナが尽きてしまったのではないだろうか。人気馬の一角を占めたミッキースワローは、道中でエキサイトして、頭を上げて引っ掛かっていた。前走ではごまかせたが、大一番で気性の難しさが出てしまった。2番人気のアルアインは、道中もきっちり乗られて、力は出し切っている。今年の皐月賞のようなスピードレースを制した馬にとって、今回の菊花賞の不良馬場は応えたはず。それでも大きく崩れないのは、この馬の競走能力の高さの証明である。

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