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馬が好きなんだ


マイルCS2017―観戦記―
マルターズアポジーが果敢に先頭に立ち、前半マイルが46秒7、後半マイルが47秒1という平均ペースでレースを引っ張った。馬場も適度に柔らかさを保っており、ペースもイーブンであっただけに、コースの内外もしくはポジションの前後ろにかかわらず、全馬が力を出し切りやすい、実力が素直に反映されたレースとなった。それほど大きな実力差のないメンバーであっただけに、騎手の技量や道中のコース取りの違いによって最後の勝ち負けが分かれた。久しぶりにG1レースらしい拮抗したマイラー同士の争いが見られた。

勝った3歳馬ペルシアンナイトは、前走を休み明けの不良馬場で惨敗したことで、古馬との力差や夏を越しての成長が見えにくい、盲点の馬となっていた。外枠からスタートして行き脚がつかず、ミルコ・デムーロ騎手は道中で早々にコースロスをせずに脚をためることに専念していた。鋭角にコーナーリングをして、先に手応え良く抜け出したエアスピネルの後ろの進路を通り、ゴール前ではハナの差だけ他馬に先んじて見せた。馬体的には成長途上にあり、この先、2000m以上でも走りそうなスタミナを持っている。皐月賞2着、日本ダービーは早めに動いての7着の実力は伊達ではなかった。

言うまでもなく、ミルコ・デムーロ騎手の手綱さばきは申し分なかった。これで今年のG1レースは6勝目となり、しかも全て違う馬に乗ってのものだけに、より価値は高い。もちろん、それぞれのレース(特にG1などの上級レース)において勝てる可能性の高い馬を選び抜いているからこそでもあるが、たとえば今回のレースも馬が良かったから勝てたという単純な話ではない。ひとつでも乗り間違えていれば、掲示板がやっという走りであったかもしれず、それは負けてしまった他馬にも当てはまり、もっと上手く乗れていれば勝つチャンスはあった馬も多かった。最後は世界の名手ライアン・ムーア騎手を競り落としたのだから、今のミルコ・デムーロ騎手の右に出る者は世界を探しても見当たらないと言っても過言ではない。

デムーロ騎手と他のジョッキーは何が違うのだろうか。馬乗りとしての技術が卓越しているのは当然のことであり、日本の競馬に精通していて、ライオンのような勇敢さも秘めているのも分かる。それならば日本の騎手の中にも高い技術を持っている騎手はたくさんいるし、日本の競馬場で何十年も乗ってきて全てを知っている騎手もいる。デムーロ騎手と同じぐらい勇敢な騎手もいなくはない。しかし、他の騎手になくてデムーロ騎手にあるもの、誤解を招くかもしれないが、それは馬に対する愛情ではないだろうか。彼は馬と共に走り、共に生きている。心の底から馬が好きなのだ。馬に対する愛情こそが、彼の馬乗りとしての技術の高さや知識や勇敢さへとつながり、それらを高い次元に昇華させている。そんなことまでを考えさせられてしまう、デムーロ騎手の素晴らしい騎乗であった。

もちろんライアン・ムーア騎手も、馬への愛情という点においては負けていない。スタートからゴールまで、エアスピネルが勝てるように完璧に導いていた。最後の直線もムーア騎手らしい芯のブレない追い方で、エアスピネルの力を100%出し切らせていた。末脚の切れ味という点で少しだけ勝ち馬に及ばなかった。今回は勝てなかったにしても、ムーア騎手にとっては悔いのない騎乗であったに違いない。それでも勝てないのが競馬であり、トップジョッキーとしては何かが自分たちには足りなかったと考えるのだろうか。

3歳馬のサングレーザーも実に惜しい3着であった。勝ち馬とは僅かな差だけに、道中のポジションや最後の直線のコース取りによっては、勝てるチャンスは十分にあった。ここに来て馬(体)はグングンと良くなってきているので、来年が楽しみである。4連勝してきて、G1レースで惜敗するまで激走した疲れは必ず出るはずなので、今後は十分な休養を入れて、体力と気力の充電をし直してからターフに戻ってきてもらいたい。

1番人気のイスラボニータは、道中のポジションも理想的であったが、最後は伸びあぐねてしまった。この馬なりに力は出し切っており、自身の能力的な衰えはほとんどないが、今回は上位馬たちの力が上であったということだ。クリストフ・ルメール騎手も、イスラボニータにG1を勝たせたいという想いが強いのは分かるが、この馬の騎乗にこだわりすぎてしまっている感は否めない。スプリンターズS馬であるレッドファルクスは、距離が少し長いということもあるだろうが、それよりも最後の直線に坂がないことで他馬が止まらず、自身のパワーを生かすことができなかった。この馬にとっては、最後の直線に急坂がある中山競馬場がベストである。

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