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ここぞでこれしかない


エリザベス女王杯2017―観戦記―
逃げると思われていたクロスコミアのハナを叩き、クインズミラーグロが果敢に先頭に立った。やや行きたがったクロスコミアを和田竜二騎手が抑えると、ペースもあっと言う間に落ち着いて、前半1000mが62秒ジャスト、後半1000mが59秒5という究極のスローペースとなった。素晴らしいメンバーが揃ったものの、これだけペースが緩くなってしまうと、先行できなかった馬や外を回らされてしまった馬にとっては実に厳しく、枠順や脚質による有利不利が大きく出てしまうレースとなった。

3歳馬モズカッチャンは、前目のポジションを確保し、かつ内枠で上手く立ち回ることができたという両方の条件が揃ったことで、待望のG1制覇となった。スタートしてからダッシュが良く、スッと折り合いがつき、動きたいときに反応できる器用さがあるからこそ、展開やポジションの利を味方につけることができたとも言える。前走は道中で落鉄をしてしまい、しかも仕掛けがやや早かったにもかかわらず見せ場をつくった。今回はあらゆることが見事に噛み合って、他の有力馬が力を出し切れない中、モズカッチャンだけは力を十全に発揮したからこその勝利であった。力が抜けているわけではないが、コンスタントに力を出せることがモズカッチャンの強みである。

ミルコ・デムーロ騎手は、これしかないという騎乗でモズカッチャンをG1制覇に導いた。今秋になって和田騎手から手綱を受け継ぎ、ここ2戦は結果を出せていなかったが、ここぞという大舞台で完璧なエスコートをしてみせた。昨年のクイーンズリングもそうであったように、距離的に持つかどうかギリギリの馬をレースの勝ちポジにはめることでなんとか勝たせてしまう技術は驚異的である。できるだけ前目を攻める、内ラチ沿いの経済コースを回ってスタミナのロスを最小限に抑えるという、シンプルな原則を忠実に守っているからこそでもある。日本の競馬の勝ち方を最も良く知っているジョッキーである。

4歳馬のクロスコミアは粘りに粘ったが、あわやの2着に甘んじてしまった。最後はデムーロ騎手の手腕に屈したが、和田騎手としては2番手で進め、レースの流れも味方につけ、この馬の力をしっかりと出し切った。古馬になって馬体がしっかりとして、安定して力を出せるように成長した。クイーンSでアエロリットにハナを奪われ、逃げない形での我慢の競馬を強いられたことも、この馬にとってはプラスに働いたのだろう。

5歳馬ミッキークイーンは仕上がり途上であったにもかかわらず、中団から鋭く伸びて、最も強い競馬をした。順調に使えなかったりしてG1勝ちからは遠ざかっているが、地力という点では牝馬限定レースでは圧倒的に上位である。1番人気に推された4歳馬ヴィブロスは、前半にかなりハミを噛んでしまった分、最後の直線で伸びあぐねてしまった。前に行かなければ勝ち目がないと馬を出して行ったルメール騎手の判断は正しいが、馬が敏感すぎてコントロールできなかった。ヴィブロスのリズムを重視して後から行っていても届かず負けていただろうから、同じ負けるにしても勝ちに行って負けたのだから価値がある。

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