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競馬の神様も舞い降りてくる


有馬記念2017―観戦記―
好スタートを決めたキタサンブラックが、好枠を生かして先頭に立ち、レースの主導権を握った。前半1000mが61秒4、後半1000mが59秒5という超スローペースに落とされると、コーナーを6つ回る中山競馬場の芝2500mというコースの構造上、後続の馬たちは手も足も出ない。2008年にダイワスカーレットが逃げ切った有馬記念とラップを比べると、前半3ハロン目とラスト5ハロン目に大きな違いが現れている。

2008年 ダイワスカーレット
6.9 - 11.2 - 11.9 - 11.2 - 11.9 - 13.0 - 13.2 - 12.4 - 11.5 - 11.9 - 12.0 - 11.7 - 12.7
2017年 キタサンブラック
6.8 - 11.6 - 11.9 - 12.2 - 12.3 - 13.3 - 13.2 - 12.8 - 12.2 - 12.1 - 11.7 - 11.2 - 12.3

スタートしてからコーナリングしながら息を入れられることができ、スタンド前では脚をためられ、最終コーナーに向かうまで誰も動いて来ることなく、キタサンブラックに逃げ切ってくださいと言わんばかりのレースであった。枠順からレース展開に至るまで、まるでドラマのようなラストラン。筋書きとしては素晴らしく感動的だが、最近は毎年書いているように、枠順だけで勝ち負けや着順が決まってしまうようなグランプリはもううんざりである。舞台を阪神か京都に移す、もしくは選ばれた10頭のみの少頭数精鋭にするなど、そろそろ見直した方が良いのではないだろうか。

キタサンブラックの強さは無尽蔵のスタミナとそれを支える気持ちの強さである。今年の秋のG1シーズンに限っても、天皇賞・秋であれだけの道悪馬場を走り切った反動があったはずのジャパンカップでも3着と好走し、決して完調とは言い難い有馬記念では有終の美を飾った。全てのレースで常に力を出し尽くせるからこそ、競馬の神様も舞い降りてくる。肉体的には手脚が長く、胴部にも伸びがあって、それらを最大限に生かした雄大フットワークで前向きに逃げられる(もしくは先行される)と、他馬は敵わないと鈴をつけにいくのを恐れてしまう。安定した肉体と気持ちに、大きな運が見事に噛み合って、キタサンブラックという名馬は誕生したのである。

「スタートで決めに行こうと思っていた」とコメントしたように、武豊騎手の迷いない決断が先手必勝となり、レースを制した。先頭に立ってからは乗っていただけに思えるが、当たり前のことを当たり前に行うのが、これだけの大舞台で圧倒的な1番人気に推された馬に乗ると難しい。武豊騎手であったからこそ、これだけの重圧をはね返し、キタサンブラックの力を最後まで引き出すことができた。先頭に立ってしまえば馬群の外を回されるコースロスのない逃げ馬は、武豊騎手の騎乗スタイルと現代の日本競馬に合っている。武豊騎手に乗り替わってからのキタサンブラックは水を得た魚のようで、これぞ名コンビである。

クイーンズリングは内枠を生かして、好ポジションからレースを有利に進めていた。クリストフ・ルメール騎手の好騎乗によるところも大きいが、何よりもこの馬自身の持っているポテンシャルの高さに最後まで驚かされた。1400mのフィリーズレビューを勝った馬が、エリザベス女王杯を制しただけではなく、有馬記念で2着に入って引退するのだから、競馬は分からないし難しい。

3着に入ったシュヴァルグランも4着のスワ―ヴリチャードも、馬群の外々を回されてしまった分、最後は脚が上ってしまっていた。勝ち馬との1馬身半差は、内を走ることができていれば十分に逆転可能であり、決して力負けではない。3着と4着の違いも、道中のポジションが後ろであったスワ―ヴリチャードがより外を回さざるを得なかった分であり、それだけ有馬記念における枠順やポジションの影響は大きい。そう考えると、3歳馬のスワ―ヴリチャードは古馬になってから楽しみであり、同世代のレイデオロと名勝負を繰り広げてもらいたい。

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