« 天皇賞・春では長距離適性と多様性のある馬を狙え | Main | NHKマイルCを当てるために知っておくべき2つのこと »

沈黙するしかない


天皇賞春2018―観戦記―
ヤマカツライデンが果敢に逃げ、ガンコは行きたがるも控えて、前半1000mが60秒1、中盤1200mが75秒5、後半1000mが60秒6という、特に中盤が緩むペースとなった。昨年とはレースの性質が全く異なり、全体時計も4秒近く違う、長距離戦らしいといえば長距離戦らしい流れ。スピードの持続力が問われた昨年と違い、豊富なスタミアとタフさを有する馬たちが上位に来た、ステイヤーのためのレースであった。早めに先頭に立ってレースをつくった2着馬も、最後までバテなかった3着馬も、そしてゴールまで死力を尽くして伸び切った勝ち馬も、それぞれに力を出し切った素晴らしい争いとなった。

勝ったレインボーラインは、スタートから後方に控え、コースを選びながら走っていた。道中は内ラチ沿いを進み、勝負所では外にも内にも行けるポジションを確保しつつ、最後の直線では各馬の間隙を縫う形で内から強襲した。昨年までは馬体に実が入り切っておらず、G1クラスのメンバーに入ってしまうとあと一歩足りないレースが続いていたが、ここに来て馬体が充実して、気持ちにも落ち着きが出てきたことが最大の勝因である。完成されるまでに時間がかかるのはステイヤーの特徴であり、一度完成されると、その強さを長きにわたって持続できるのも同じである。

岩田康誠騎手は久しぶりのG1勝利となった。このクラスの騎手が、歯車がかみ合わなくなると、3年も勝てなくなるのだから競馬は恐ろしい。今回は岩田騎手らしいファイティングスピリット溢れる勝利であり、馬群を縫うような騎乗を乱暴という人もいるかもしれないが、レインボーラインをその腕で勝たせたのは間違いない。道中のコース取りも見事であったし、動くに動けないポジションから最後に内に切り替えた咄嗟の判断も素晴らしかった。一瞬たりとも迷いがあれば、どこかで詰まって抜け出してこられなかったはず。

ゴール後にレインボーラインに跛行が確認されたのは、急激な進路変更によるものかもしれないし、小さな身体で58kgを背負って3200mという距離を走ったことによるものかもしれない。勝てば官軍ではなく、無事に厩舎に戻れなかったことを悔やむ気持ちは岩田騎手も陣営もファンも同じである。だからもう外からとやかく言う必要はない。黙ってレインボーラインの回復を願い、再びターフで走る姿を見られることを祈ればいいのだ。哲学者ヴィドゲンシュタインが言っていたように、分からないことについては、私たちは沈黙するしかないのだ。

シュヴァルグランはヒュー・ボウマン騎手に導かれて、これまでにないほど積極的な走りを見せてくれた。勝ち馬とは年齢による勢いの差だけであった。道中はこの馬のリズムで走れていたし、脚を余すこともなく、持てる力を100%出し切った。馬を信頼して乗るということはこういうこと。この騎乗を見て、これまでシュヴァルグランに騎乗してきた日本人騎手はどう感じただろうか。

クリンチャーは勝負所で少しごちゃつく場面があったが、ヒルまずに最後まで伸びて、ステイヤーとしての強さを証明してみせた。代打騎乗となった三浦皇成騎手は、惜しくもチャンスを生かすことができなかった。勝ちたいという気持ちが強いのは伝わってくるが、それが前面に出てしまっている。自分が主ではなく、肩の力を抜いて馬を主にすることができれば、そのうち念願のG1勝利に手が届くはず。関係者は三浦騎手の腕を評価しているのだから。

|

Comments

治郎丸さん、こんばんは。
レインボーラインはその後の診察で生命を左右されるほどの重大な故障ではないことが判明してほっとしましたね。

シュヴァルグランについてですが、正直「以前乗ってた日本人騎手」(主戦)がスタミナを鍛えた面も相当あると思うので、その個所については共感できません(笑)
もともと治郎丸さんもおっしゃってたように4歳秋くらいまではトモが緩くてスタートダッシュが効かないところがありました。体が出来て来たこともあるんでしょうが、4歳有馬では1200mのきついロングスパート(当該レースを勝つためには好騎乗とは言えないものの、馬に心肺的負荷を賭ける観点では良かったかと)を経験させ、5歳の阪神大賞典や天皇賞ではサトノダイヤモンドより前で先に仕掛けるという意識が徹底してたと思います。

また、この馬の主戦を降ろされた契機が宝塚記念で逃げたことでもあるように、先行してのスタミナを鍛えたのはむしろ福永騎手で、ボウマン騎手はJC春天と「美味しいところを持ってった」と言えなくもないかと。

ラップ・ピッチ分析で有名な方がいますが、その方もシュヴァルグランは祐一が鍛えて強くした・・・という内容の発言をされてますしね。

Posted by: シンプル | May 15, 2018 at 09:12 PM

シンプルさん

こんにちは。

レインボーラインは無事で何よりでしたね。

岩田騎手の判断が早かったのも良かったのかもしれません。

こればかりは、誰もが勝つために全力で戦っていますので、犯人探しをしても仕方ありません。

シュヴァルグランの見解は、もちろん相違があって当然ですし、共感できなくても良いと思います(笑)。

ボウマン騎手が美味しいところを持っていった(特にJCは枠順がはまった)のは異論がありません。

とはいえ、それだけで終わってしまうと、藤田騎手の言う「良い馬に乗れば誰でも勝てる」と同じ論理で、なぜ自分は勝てなかったのか考えることを放棄してしまえます。

おっしゃるように、シュヴァルグランはトモに実が入ってきて、無理をしなくてもある程度前の位置につけられるようになってきました。

そのタイミングでもっと積極的に乗っていれば、勝てたレースを落としたりして、上手く乗っても強い馬がいたりもして、歯車がかみ合いませんでした。

騎手がスタミナを鍛えるということは、あってもそれほどではありません。レースで負荷の掛かるレースをしたという程度で、シュヴァルグランのスタミナを鍛えたのは日々の調教であり、血統的な背景が現れてきたのが要因ではないでしょうか。

レースは調教よりも大きな負荷が掛かりますが、それでもたったの数分であり、その数千倍の時間を掛けて、厩舎の人々は馬を鍛えています。ジョッキーにできることは、最後のスパイスを加えることぐらいですね。そのスパイスが大切でもあるのですが(笑)

Posted by: 治郎丸敬之 | May 16, 2018 at 12:21 PM

治郎丸さん、こんばんは。

祐一のシュヴァルグランの一連の騎乗はハッキリしてて、4歳JCまでは待機策(策なのか、身体的に不本意ながら出来なかったのかは不明ですが)で、4歳有馬以降は序盤待機してても早仕掛けでロンスパさせたり、逃げ先行(春天と宝塚)と徐々に負荷のかかる積極的な戦法にシフトしていってるので、脚を余したレースはほとんどなかったと思いますけどね。

件のラップ&ピッチ研究家の方も同じ見解で、4歳JCなどはキタサンとサウンズが脚が上がったところで差を詰めてるだけで、ピッチ上は脚を余してるとは言えないという意味のことを言ってた記憶があります。
早仕掛けの有馬はむしろ勝ちを焦りすぎてスパートが早かったので脚が持たなかった、という内容ですし。

佐々木オーナーはご不満だったようですが、個人的には宝塚記念で逃げたのは好判断だったと思ってますし。ファンとしては春天でこそヤマカツの2番手で進めてキタサンの望むよりもほんの少しだけ遅いペースを演出して欲しかったですが(笑)

Posted by: シンプル | May 17, 2018 at 12:27 AM

Post a comment