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馬には第6感がある

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唐突に思えるかもしれないが、2012年の桜花賞に出走できなかったハナズゴールの話をしたい。チューリップ賞を強烈な末脚で制し、桜花賞でも人気の一角を占めたであろうハナズゴールが、右後肢の蹄球部を傷めたとの理由で、直前になって出走を断念した。その知らせと理由を聞いたとき、「ああ、やはりそうか」と素直に私は受け入れることができた。

それはあのときの感覚に似ていた。2009年、ダイワスカーレットがフェブラリーSを回避したときのことである。ダイワスカーレットは前年(2008年)の秋シーズン、伝説の天皇賞・秋でウオッカに敗れたが、暮れの有馬記念を驚異的なラップを刻んで勝ち、トウメイ以来37年ぶりの牝馬による制覇という快挙を成し遂げた。その後、ドバイワールドカップを目指して調整され、ステップレースとしてフェブラリーSが選ばれた。究極の仕上がりで、あれだけ激しいレースをしたわずか2ヶ月後に、再びフェブラリーSを走ることに私は違和感を覚えていた。何もなければ良いが、と思っていた矢先、ダイワスカーレットは屈腱炎を発症し、現役を引退した。

そこに至るまでにも実は伏線があった。3歳時に、ダイワスカーレットは桜花賞を勝ってオークスを目指して調整をされる中で感冒を発症し、出走を回避した。4歳時には、前年の有馬記念でマツリダゴッホの2着したのちに、ドバイを目指して調教を重ねていたところ、跳ね上がったウッドチップ(木片)が目に当たるというアクシデントに見舞われ、ドバイ行きは白紙となった。ダイワスカーレットが特別に体の弱い馬だったわけでも、運の悪い馬だったわけでもない。ましてやダイワスカーレットが個人的にドバイに行きたくなかったからということでもない。馬の怪我や病気やアクシデントにはそれなりの理由がある。偶然ではなく必然なのである。

昨日の追い切りまでは非常に順調に進んでいましたが、調教後の手入れで馬が壁を蹴ってしまい、その際、右トモ脚の蹄球に痛みが出てしまいました。その後、様子を見て回復を待ちましたが、今朝になって症状が悪化。脚がつけないような状態になったので、今後のことも考えて回避することを決めました。(netkeiba ニュースより)
  ハナズゴールを管理していた加藤和宏調教師のコメントを聞いて、不可解に思った競馬ファンも多いだろう。蹴る癖があったとはいえ、なぜこのタイミングで怪我をしてしまったのか。もしかすると、出走できなかった理由は他にあるのかもしれないと訝しがる面々もいただろう。真相は誰にも分からないが、おそらくは本当に馬が壁を蹴って怪我をしてしまったのだと私は思う。表面的にはそういうことだが、深く考えてゆくと、ハナズゴールには出走できない必然的な理由があったはず。前走のチューリップ賞に臨むにあたって馬体重を12kgも減らしていた上に、驚くべき末脚を使って他馬を大外から差し切ったことが、ハナズゴールの肉体に影響を与えたことは間違いない。究極の仕上がりになければあの脚は使えないし、その反動は少なからずあったはず。もしあのまま桜花賞に出走できていたとしても、体調不良で本来の走りができなかったか、体のどこかを痛めてしまっていただろう。最悪のケースだってあり得た。あくまでも結果論ではあるが、出走回避という事実がそれを示唆しているのだ。ハナズゴールに勝ち目はなかったと。

馬は第6感に優れた動物である。馬は人間には見えていない何かを感じている。ハナズゴールは自分の身に迫り来る何かを感じ取っていたのだろう。だから、壁を蹴った。ダイワスカーレットは調教中にウッドチップを目に入れた。それとは別のかたちで、たとえば寝違えたり、鼻出血をしたり、脚元に異常が出たりと、あらゆる現象をもって馬は自分の身を守る。人間は偶然だと思うかもしれないが、馬にとっては必然なのである。身体的な疲労が怪我というかたちで表面化するという必然もあるし、馬が普段とは違う何かを感じ取ってアクシデントを引き起こすという必然もある。信じるかどうかはあなた次第であるが、ハナズゴールは自分の馬券を買おうと思っていた競馬ファンよりもずっと、自分が桜花賞に出走したら力を出し切れずに負けてしまうということを知っていたはずなのである。

ダノンプレミアムが皐月賞を回避したニュースには驚かされた。挫跖ということで事なきを得て、日本ダービーに出走することができるようになった。私はそれで良かったのだと思う。デビュー戦から無敗の4連勝で来たが、見た目とは裏腹に、肉体的にも精神的に追い詰められていたのだろう。もしそのままの状態で皐月賞に出走していたとしたら、敗れただけではなく、体調が音を立ててガタガタと崩れてしまったかもしれない。ダノンプレミアムはそれを察したのである。窮地を脱したダノンプレミアムは、立て直されて今週の日本ダービーへ向かう。全てはダービー馬になるための必然であったことを、ダノンプレミアムは自身の力で証明してくれるはずだ。

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