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空を飛ぶ馬のウィークポイントは?

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桜花賞の最後の直線におけるアーモンドアイの走りを見て、あのディープインパクトの姿が彷彿された競馬ファンも多かったのではないか。私もそのひとりである。ディープインパクトが若葉ステークスや菊花賞、そしてラストランとなった有馬記念などで見せつけた、他馬とは脚色が全く違って、まるで空を飛んでいるように映る走りである。

「たとえば、象が空を飛んでいるといっても、ひとは信じてくれないだろう。しかし、四千二百五十七頭の象が空を飛んでいるといえば、信じてもらえるかもしれない」と作家ガルシア・マルケスは語った。

しかし、武豊騎手はディープインパクトの走りについて「飛びました」とコメントし、たった1頭の馬の走りを見て、競馬ファンはその表現を何の疑いもなく信じたのである。それほどに、ディープインパクトという馬は強かったということだ。

ところが、のちの競走馬総合研究所による菊花賞の映像解析によって、実はディープインパクトは空を飛んでいなかったことが判明した。菊花賞の最後の直線において、四肢すべてが地面から離れていた時間は、ディープインパクトが0.124秒であったのに対し、他馬の平均は0.134秒であったという。ディープインパクトが宙に浮いていた時間は、他馬よりも逆に短かったのである。また、宙に浮いて移動した距離は、ディープインパクトが2.63mであったのに対し、他馬の平均は2.43mであったという。厳密に言うと、ディープインパクトは高く飛んでいたのではなく、遠くに飛んでいたのだ。

考えてみれば当たり前の話で、速く走るためには、高く飛んでも意味がない。むしろ高く飛ぶことはロスにさえなる。距離を稼ぐためには、より低く、より遠くへ飛ばなければならないのである。

それでは、どのようにして低く遠くへ飛んでいたのだろうか。馬のギャロップにおける一完歩の脚の運びを順に並べると、右手前で走った場合、左後ろ肢→右後ろ肢→左前肢→右前肢となる。ディープインパクトに特徴的だったのは、右後ろ肢と左前肢が着地した時点間の距離であった。ディープインパクトは、この距離が2.16mと他馬の平均に比べて10%以上も長かったという。

「ストライドを伸ばして、速度を上げる時に、一番伸びる部分です。大きな馬の方がこの距離が長くなるのが普通ですが、ディープインパクトのような小柄な馬が、ここでこれだけ延びているのは驚きです」とJRA競走馬総合研究所の高橋敏之さんは語った。(「優駿」馬学講座より)

いつかその走りが解析される日が来るだろうが、ディープインパクトと同様に、アーモンドアイも高く飛ぶのではなく、より低く、より遠くへ飛んでいるに違いない。だからこそ、他馬とはまるで脚色が違って見え、空を飛んでいるように映るのである。

ところで、空を飛んでいるように走るアーモンドアイにとって、ウィークポイントはどこにあるのだろうか。ひとつは道悪馬場である。ピッチ走法の馬ほど道悪馬場を苦にしないのに対し、他馬よりも大きなストライドで走ることにより、脚元が滑りやすくなる。しかし、ご存じのように、アーモンドアイは前々走のシンザン記念ですでに道悪馬場を克服している。もしかすると、ストライドは大きくても、高くではなく低く飛んでいるため、それほどバランスを崩すことがないのかもしれない。

もうひとつは、スタミナの問題である。全身を大きく使って、低く、遠くへ飛ぶ以上、それだけスタミナを消費してしまうのではないだろうか。他馬よりも速く走ることはできても、長く走ることができるのかという一抹の不安は残っている。今回のオークスは、桜花賞から距離が一気に800mも延びる。重箱の隅を楊枝でほじくるようではあるが、もしアーモンドアイの空を飛ぶような走りによる弱点が表出するとすれば、東京競馬場の2400mで行われる今回の舞台しかないと思える。

せっかくの名牝の走りを堪能したい気持ちは山々だが、今回のオークスばかりはもう1頭の名牝ラッキーライラックの安定感を評価したい。この馬は馬体を見る限り、胸も深く、胴部にも十分な長さがあり、決してマイラーの体型ではない。アーモンドアイのようにフットワークで勝負するタイプではないが、パワーを推進力とラストの切れ味に変えることができる。この中間は、距離が延びることに対応できるように馬がつくり変えられている。ライバルを負かす舞台はここしかない。

Oaks2018wtup

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Comments

こんばんは。
アーモンドアイの弱点である外から被せられて蓋をされる(新潟のデビュー戦で負けたときのパターン)ことをさせず、ラッキーライラックをマークしての瞬発力勝負に持ち込んだルメール騎手のうまさだけが光ったレースだったと思います。
スタートしてあの位置に付けられたらどうあがいても勝ち目はありませんでした。
マウレアの武騎手もサトノワルキューレのデムーロ騎手も4コーナー手前からアーモンドアイの外に持ち出そうとしましたが、馬の機動力に差がありすぎました。
リリーノーブルを追いかけていればひょっとしたら2着はあったかも?でしたが・・・。
とにかく完敗です。

Posted by: アダチ@おかやま | May 20, 2018 at 07:01 PM

アダチ@おかやまさん

こんにちは。

コメント見逃していました。すいません。

ルメール騎手は何気なく勝ちましたがさすがでしたね。

あの位置につけられたのは、ルメール騎手だからこそでもあります。

あの競馬をされて、閉じ込められた形になり、ラッキーライラックはらしさが発揮できませんでしたね。

でも悲観する内容ではありませんし、相手が悪かっただけで、ラッキーライラックの強さも私は信じています。

Posted by: 治郎丸敬之 | May 28, 2018 at 11:15 AM

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