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シンボリクリスエス産駒の弱点と強み

Jiromaru

「たとえば、象が空を飛んでいるといっても、ひとは信じてくれないだろう。しかし、四千二百五十七頭の象が空を飛んでいるといえば、信じてもらえるかもしれない」

と作家ガルシア・マルケスは語りました。

同じことが、天皇賞秋のシンボリクリスエスにもいえます。たとえば、馬が空を飛んだといっても、ひとは信じてくれないでしょう。しかし、シンボリクリスエスが空を飛んだといえば、信じてもらえるかもしれません。実際に生でこのレースを観た方ならば、間違いなく信じてもらえるはずです。

2003年天皇賞秋、史上初の天皇賞秋連覇となったシンボリクリスエスは、中間に強い調教を課せられていたにもかかわらず10kgも馬体重を増やしていたように、前年の良かった頃の調子を完全に取り戻していました。僕が単勝馬券を握りしめていたローエングリンが、前半1000mが56秒9(スプリント戦並みのハイラップ!)という絶望的なハイペースで飛ばしたことによって、シンボリクリスエスは外々を回されるロスもなく、広々とした東京コースを大きなフットワークで走り、最後の直線を滑走路にして、飛んだのです!

その瞬間、僕は思わずアッと声を上げてしまいました。それぐらい、シンボリクリスエスの伸び脚は際立っていました。一完歩の長さは他馬のそれよりも長く、4本の脚全てが地面から離れている滞空時間も長かった。シンボリクリスエスが遠くへ高く飛んでいる間に、他馬は一瞬のうちに置き去りにされ、周りの風景もあっという間に通り過ぎていきました。だからこそ、私たちの目にはシンボリクリスエスが飛んでいるように映ったのです。いや、厳密にいうと、シンボリクリスエスは空を飛んでいたのだ。ノンフィクションのようでフィクションで、フィクションのようでノンフィクションである競馬の魅力を体現してくれた馬でした。

当然のことながら、大いなる期待を背負って種牡馬入りしましたが、産駒は気性が激しい馬が多く、それがレースに行っての前向きさに変われば走りますが、そうならない馬は大きな活躍をできないままターフを去ることになりました。エピファネイア、ストロングリターン、サクセスブロッケン、サンカルロなど、シンボリクリスエス産駒の活躍馬を上から並べて行くと分かるように、ほとんどが牡馬で占められています。牝馬の場合は、気性の激しさや難しさがカイ葉食いの悪さやレースに行って気持ちをコントロールできないことに直結してしまうのでしょう。

シンボリクリスエス産駒に気性が激しい馬が多い理由としては、様々な意見があると思いますが、僕はサンデーレイレンスの肌馬を中心として配合されたからだと考えています。つまり、サンデーサイレンスの気性の激しさが、そのまま産駒に伝わっているケースが多いということです。大きな期待をかけられ、サンデーサイレンスを父に持つ良血馬に配合されたのは良かったものの、残念なことにサンデーサイレンスの気性の激しさが伝わってしまい、せっかくの競走能力や馬体の良さを生かせずに終わってしまった馬が多かったということになります。

今週の京都大賞典に出走するレッドジェノヴァは、父シンボリクリスエスを彷彿させる馬体を有しています。見栄えする黒鹿毛の毛艶も光り輝いて、父よりも手脚の長さはありませんが、胴部や首はスラリと長く、大きな骨格に支えられた美しいシルエットの馬体です。特に胸前の筋肉のつき方は素晴らしいですね。他の有力馬が休み明けで8分程度の仕上がりであるのに対し、レッドジェノヴァの臨戦態勢の良さは目立ちます。表情(顔つき)も実に聡明であり、耳も大きく真っ直ぐ前を向いており、人間に対する信頼感を物語っています。

レッドジェノヴァは気性的には前向きな部分はありますが、コントロールできないほどではなく、前進気勢を保ちながらレースの流れに乗ることができます。シンボリクリスエス産駒の牝馬ではありますが、サンデーサイレンスの血が3代前となり、薄まっているからかもしれませんね。内枠を引いて馬群の内で脚をためて先行できれば、父シンボリクリスエスが2003年の天皇賞秋で僕たちをそうさせたように、アッと言わせる大金星を挙げることを期待しても良いのではないでしょうか。

Kyotodaishoten2018wt


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Comments

治郎丸さんいつもお疲れ様なんです(^^;レッドジェノヴァですか?!自身の追い切り予想の複勝一点勝負の馬も京都大賞典はレッドジェノヴァです。非常に前肢後肢の可動域も広く推進力もありデキがかなり良かったですね。治郎丸さんと同じ馬だとわかり更に自信がもて心強い限りです。治郎丸さんから競馬で大事なことをいろいろ教わっているのでほんとうに今でも感謝です。これからもいろいろ参考にさせて頂きますね。いつもほんとうにありがとうございます。

Posted by: ユビキタス | October 08, 2018 at 12:34 AM

母系の特徴を産駒に伝えることが仇になることもあるんですね。時代を経て地の影響が薄まることでいいあんばいになることもあるというのもとても興味深いです。そうえいばエピファネイアも三代前ですもんね。「馬体の見方」で母父シンボリクリスエスの可能性について紹介を見て、最近は母父にその名前がある産駒を注目することが多かったのですが、改めて父シンボリクリスエスにも注目してみます!

Posted by: やっとこ | October 08, 2018 at 01:18 AM

準オープンを勝った馬の単勝とは、流石ですね。もう少しでダイヤモンドを差し切る勢いでした。

Posted by: 翁 | October 09, 2018 at 01:51 PM

ユビキタスさん

いつもありがとうございます。

僕も複勝にしておけば良かったなあ(笑)

負け惜しみではなく、今回は前の馬が下がってきてしまって、勝てるレースを落としてしまった感じでした。

サトノダイヤモンドも強いのですが、レッドジェノバもなかなか強いですね。

Posted by: 治郎丸敬之 | October 10, 2018 at 10:44 AM

やっとこさん

馬体は語るも読んでくれて、ありがとうございます。

僕はサンデーサイレンス系のうるささが悪い方に出てしまったのではないかと思いますが、シンボリクリスエスが伝える潜在能力は素晴らしいと思います。

気性面における問題がクリアされて、コントロールがしやすくなったシンボリクリスエス産駒は走りますね。

それにしても惜しかったです。

Posted by: 治郎丸敬之 | October 10, 2018 at 10:46 AM

翁さん

ありがとうございます。

僕も勝つかどうかは一か八かでしたが、結果的には勝てるチャンスはありましたね。

前に置いた馬がばてて下がってくることがなければ、もっと際どい勝負になっていましたね。残念!

Posted by: 治郎丸敬之 | October 10, 2018 at 10:50 AM

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