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走ることが好き


天皇賞秋2018―観戦記―
ダンビュライトの放馬にどよめきが起こった場内も、天皇賞秋のスタートが切られる瞬間には静寂に包まれ、ゲートが開いた途端に再び沸いた。1番人気のスワ―ヴリチャードが立ち遅れてしまったのだ。あとからパトロール映像を観て分かったことだが、隣のマカヒキがいきなり左に倒れるように寄りかかってきたことで、スワ―ヴリチャードの進路が閉じられてしまうアクシデントに見舞われていたようだ。スタートがほんの少し悪かったことは確かだが、スワ―ヴリチャードにとっては何ともタイミングの悪い一瞬の出来事であった。しかも前半1000mが59秒4、後半が57秒4という超スローペースになったのだから、スタートで万事休す。これも競馬である。

勝ったレイデオロは3歳時の日本ダービー以来の勝利となった。ダービーを勝つことの消耗は私たちには計り知れないものがあり、これまで数多くのダービー馬たちが、ダービー以後に肉体的にも精神的にも燃え尽きてしまってきた。私が思いつく限りにおいても、ダービー以後に復活を果たすことができたのは、オルフェーヴル、ウオッカ、ディープインパクト、スペシャルウィーク、ナリタブライアンぐらいではないか。これらの名前を見るだけで、レイデオロの今回の勝利がどれだけの意味を持つか分かるだろう。レイデオロの復活を支えたのは、彼の走ることが好きという気持ちである。

クリストフ・ルメール騎手はスローペースを読み切っていたのだろうか、スタートしてからレイデオロのリズムを崩さないように気を付けながらも、少しでも前のポジションを走らせようと心掛けていた。あれ以上後ろから行くと厳しかっただろうし、あれ以上急かせることはできなかっただろうから、勝つためには完璧なポジションであった。アーモンドアイからフィエールマンに続き、これでG1レース3連勝となり、神がかっているとしか表現しようがないぐらい見事な騎乗である。

サングレーザーはレイデオロよりも後ろから進み、直線でも良く伸びているが、2着を確保するのが精いっぱいであった。脚質を考えると、この馬としては前目につけて追走できた方であり、力を出し切ったと考えるべきであろう。ジョアン・モレイラ騎手もテン乗りにもかかわらず、サングレーザーの力を十全に発揮させた。キセキは川田将雅騎手の積極的な騎乗が功を奏して、3着に粘り込んだ。秋華賞もそうであったが、各ジョッキーの出方をうかがうことなく、決め打ちしていたかのようにハナに立つ割り切りが素晴らしいく、バテた馬を最後までファイトさせる技術もさすがであり、外国人ジョッキーに太刀打ちできる唯一の日本人騎手という評価で間違いない。

スワ―ヴリチャードはレースの流れに乗ることができず、自ら動くことさえできず、最後の直線半ばでは流すようにしてゴールした。不完全燃焼といえばその通りだが、道中の反応や動きを見る限りにおいて、仕上がりが万全であったかにも疑問がある。最終追い切りを馬なりの不完全な形で終わらせたことで、スワ―ヴリチャードの気持ちも浮ついてしまっていたのではないだろうか。パドックでの姿を見た印象としては、馬体が仕上がっていなかったのではなく、気持ちが仕上がっていなかった。次走のジャパンカップこそは、気持ちもビッシリと仕上げて本気で臨んでもらいたい。

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