« シンボリクリスエス産駒の弱点と強み | Main | 秋華賞を当てるために知っておくべき3つのこと »

他流試合は自分のルールでやった者の勝ち


凱旋門賞2018―観戦記―
日本馬はクリンチャー1頭のみ参戦となった今年の凱旋門賞。オブライエン厩舎のペースメーカーであるネルソンが先頭に立ち、クリンチャーは内の2番手、その外を昨年の覇者エネイブルという隊列で進んだ。例年どおりのスローペースに流れ、道中は各馬折り合いに専念して脚をため、最後の直線に向いての攻防は迫力満点であった。その中でも、終始抑え切れない抜群の手応えで進み、早めに抜け出したエネイブルは力が一枚上であった。

凱旋門賞連覇となったエネイブルは、昨年の凱旋門賞以来、9月に行われたセプテンバーSを1戦使われたのみでの出走であった。ヒザの故障や勝負勘が戻るかという心配をよそに、他の18頭を正面から受けて立ち、まったく危なげない内容で勝利してみせた。これで10戦9勝、眩いばかりの戦績を。祖父のガリレオの生き写しのようであり、牝馬とは思えない非の打ち所のない理想的な馬体を誇っている。このような名馬が数年に1度、誕生するのだから、さすが欧州の競馬は奥が深い。ラフランコ・デットーリ騎手も、自信を持って騎乗していた。人馬共に、勝つべくして勝ったレースである。

2、3着にはシーザスターズ産駒のシーオブグラスとクロスオブスターズが入った。特に、2着に入った愛オークス馬のシーオブグラスの最後の直線での伸び脚は際立っていた。もう少し前の隊列でレースを進められていれば、あっと言わせたかもしれない。シーザスターズは私がこれまで観てきた中でも、最強の中の最強の凱旋門賞馬であると評価しているだけに、その産駒が血を見事に受け継いで走っていることが嬉しい。シーザスターズは意外にもコロンとしえ映る馬体であり、フットワークの大きさよりも、パワーと心肺機能が極めて優れていたのであろう。

クリンチャーは完璧なレース運びであったが、最後の直線に向いてズルズルと失速してしまった。伸び切れないでもなく、届かないのでもなく、馬の脚がなくなって止まってしまったという表現が相応しい。雨が降って馬場が悪くなっていたら、もっとスタミナが要求されて脚が上がってしまっていただろう。一昨年のマカヒキや昨年のサトノダイヤモンドが完全に馬が止まってしまった姿を見ても、いかに日本の競馬と凱旋門賞で問われている資質が異なるかが分かる。

格闘技で言うならば、その違いは立ち技とMMA(総合格闘技)のそれと同じだろうか。先日、行われたRIZIN13の那須川天心と堀口恭二の試合を青木真也が占って、「他流試合は自分のルールでやった者の勝ち。ワンサイドで那須川天心が勝つ」と予想していたのが印象的であった。ワンサイドにこそならなかったが、結果的には那須川天心の勝利に終わった。同じ格闘技であり、一見通用して(好勝負して)しまいそうに思えるが、実は目に見えない高い壁が横たわっている。つまり、相手の土俵でいきなりは勝負にはならず、堀口恭二が立ち技ルールで勝つためには、かなりの年月を立ち技のトレーニングに費やし、立ち技の試合を段階的に数試合行い、完全に自分自身をつくりかえる必要があるのだ。同じことは競馬にも当てはまる。それは逆でも同じことで、那須川天心が総合ルールで堀口恭二に勝つためにはそうしなければならないし、エネイブルがジャパンカップを勝つためにもそうしなければならないのである。

|

Comments

Post a comment