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ハービンジャーの馬場


有馬記念2018―観戦記―
オジュウチョウサンの参戦もあり、異常な盛り上がりと緊張感の中、スタートは切られた。小回りの6つコーナーを意識して、内枠を引いた馬たちはこぞって前目のポジションを目指し、やや行き脚がつかなかったキセキが二の足を使ってようやく先頭に立った。前半1000mが60秒7、後半1000mが60秒3だから、速すぎもせず遅すぎもしない平均的なペースであった。それよりも雨が降ったことで、クリストフ・ルメール騎手が「ハービンジャーの馬場になった」と形容するように、力を要する馬場になっていたことの影響の方が大きかった。最後はパワーと底力勝負となり、力強い馬が上位を占める結果となった。

G1初勝利が有馬記念となった3歳馬ブラストワンピースは、55kgという斤量面でのメリットはあったにしても、中団から早めに動いて直線では力強く抜け出して、追いすがるレイデオロを軽くしのいでみせた。着差以上に強いレースであり、日本ダービーや菊花賞の口惜しさをようやく晴らすことができた。スパッと切れる脚がないことで、勝ち味に遅い(乗り難しい)ところがあることは確かだが、今回は横綱相撲で頂点に立つことができた。もともと前駆のつくりの素晴らしい馬体であったが、この中間ははちきれそうな張りを誇っており、ハービンジャー産駒は3歳の秋以降にもうひと回り成長を遂げることを証明してみせた。

これで有馬記念4勝目となった池添謙一騎手は、大一番での強さをいかんなく発揮してみせた。道中は淀みないペースになったことで、中団の馬群の外をロスなく追走することができ、慌てず騒がず、いつでも動ける安心感を持って騎乗していた。日本ダービーも菊花賞も乗り方次第では勝ちもあったという敗戦が続いただけに、ようやく結果を出すことができたという気持ちが強いだろう。それぐらい力のある馬であり、自信を持って仕掛けられたところが素晴らしい。ゴール前200mではほとんど手綱だけでファイトさせており、大舞台でこれだけ美しいフォームで馬体を追える冷静さは、さすがシーズトウショウやオルフェーヴルの主戦ジョッキーである。

レイデオロは持てる力を最大限に発揮しての敗北であった。道中のポジションも展開も申し分なかったにもかかわらず、ブラストワンピースに及ばず完敗を喫してしまったのだから、陣営はルメール騎手共々あきらめるしかないだろう。天皇賞秋から間隔が開いて、馬自身の体長も走るモチベーションも最高潮であったはず。それでも勝てなかったのは、前述したように、力の要る馬場においては勝ち馬の方が一枚上だったということだ。この2頭の良馬場での再戦を見てみたい。

シュヴァルグランは後方から外を回して、最後は上位2頭を追い詰めた。レースを使われつつ、走れる体つきになってきたし、パワーと底力を問われる馬場も6歳になったこの馬にとっては、軽い馬場でのスピード競馬と比べると合っていたかもしれない。それにしてもヒュー・ボウマン騎手は昨年に続き、シュヴァルグランの力を出し切って結果につなげているように、ジョッキーとしての力量は世界トップクラスのものがある。

キセキはなかなかのペースで進んだが、ラスト200m前の地点で脚が上がってしまった。川田将雅騎手は、勝つためには、スローに落として切れ負けするよりも、上りの掛かる底力を問われる展開に持ち込もうと考えたのかもしれない。それでも極端に速いペースで引っ張った訳ではなかったにもかかわらず、秋4戦目の疲れがあったのか、最後まで踏ん張ることができなかった。作戦は良かったが、馬が応えてくれなかったというのが正直なところだろう。

モズカッチャンにとっては、仕上がりも体調自体も良かった中、馬場が重くなってしまったことが苦しかった。軽い馬場でスローに流れてくれれば、この馬の立ち回りの巧さが生きる可能性もあったが、全くの逆目に出てしまった。障害チャンピオンのオジュウチョウサンは、このメンバーに混じって9着と好走した。最後の直線でも一瞬伸びるシーンもあり、決してこの挑戦が無謀であったわけではないことを証明してみせた。サラブレッドの可能性を狭めない長山オーナーの柔軟な発想こそが、今年の有馬記念を盛り上げてくれた。

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