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ホープフルS観戦記の観戦記

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「Gallop重賞年鑑2018」の観戦記を書いてくれとの依頼を受けた。1995年に創刊されて以来、年末年始に帰省するときに連れていき、穴が開くほど読みふけってしまう私の友。かつては私の尊敬するノンフィクションライターである木村幸治さんや馬事文化賞を受賞した吉澤譲治さん、浅田次郎さん、今も吉川良さんや高橋源一郎さんという錚々たる面々が名を連ねている歴史の書。そんな「Gallop重賞年鑑」に私の名前が刻まれる日が来るとは夢にも思わなかったが、拙ブログを立ち上げて18年間、観戦記を書き続けてきてようやく夢がひとつ叶ったのだ。

今回のミッションは、JRA最後のG1レースであるホープフルステークスを観て、当日の18時までに1800文字の原稿を書き上げること。私にとって観戦記を書くことはライフワークだけに、ふたつ返事で引き受けた。日本広しといえども、G1レースの観戦記を18年間書き続けている奇特な人間など、私以外にいるはずもない。年間に21レースとして18をかけると、378レースの観戦記を書いてきたことになる(凱旋門賞や他のレースも含めるとさらに多いはず)。競馬の観戦記を書くために生まれて、書きながら死んでゆくのかもしれない。大げさに書いたが、つまり楽しみで仕方がなかったのである。

当日、中山競馬場に着くと、クリストフ・ルメール騎手が213勝目を挙げ、武豊騎手の記録を更新した直後であった。白毛馬のマイヨブランに跨るルメール騎手は、まるで白馬の王子様のようであった。ウイナーズサークルの傍では、マイヨブランの出資会員さんたちが、ルメール騎手のサイン入りのゼッケンを持ちながら、集合写真を撮っていた。これだけの大記録を達成されたのが、自らの出資馬の勝利によることは実に誇らしいだろう。

その微笑ましい光景を私はうらやましく眺めつつ、そういえばミスター競馬と呼ばれた野平祐二先生が「競馬はみんなで楽しむもの」と言っていたことを、ふと思い出したりした。そう、今回の観戦記は野平祐二先生こと祐ちゃん先生のことを絡めて書こうと考えていたのだ。一口馬主という形で、競馬ファンが競馬を皆で楽しむ未来が来るとは、祐ちゃん先生は知っていただろうか。知っていたにせよそうでないにせよ、決して悪くない未来ではないか。

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馬主席に連れて行ってもらったり、パドックを内側から見させてもらったり、調教師スタンドやジョッキールームを見学しているうちに、アッという間にメインレースの時間がやってきた。調教師スタンドの最前列には、ルメール騎手のファミリーが座って、父がG1レースを勝つシーンを心待ちにしている姿が伝わってくる。こうして家族が揃って現場で応援するのは日本では珍しいことだが、これは文化の違いなのだろうか。ルメール騎手も勝つごとに子どもたちが喜んでいて、レースの合間にひと言ふた言、言葉を交わし合える瞬間にどれだけ励まされ、勇気づけられてこの215勝があったのだろう。

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家族の想いはホープフルステークスでは届かなかったが、勝ったサートゥルナーリアは驚くほどの強さであり、ルメール騎手は良く乗っていたと思う。「ごめんね、引っかかった」と言って引き揚げてきたが、勝つためにポジションを取りに行った分、持って行かれたのであり仕方ない。最後に戻ってきたミルコ・デムーロ騎手は、終始嬉しそうにしており、彼もまた競馬で勝つことが楽しくて仕方ないのだろう。勝利ジョッキーインタビューで、「良いお年を」とコメントしていたように、彼はもう日本の騎手なのである。

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そして、サートゥルナーリアがレース後に、暴れることも取り乱すこともなく、冷静さを保ちながらゆったりと歩けている姿をみて、もしかするととんでもない名馬の序章に立ち会うことができたのかもしれないと直感した。同じロードカナロア産駒のアーモンドアイもそうであったように、実に目が澄んでいて美しい。周回しているサートゥルナーリアを目に焼き付けながら、このままいつまでも見ていたいような気持ちに駆られてしまった。

誰もいなくなった記者室で、私はパソコンの画面と向き合った。残り時間90分。いつもは1時間ぐらいで観戦記を書き上げるのだが、今回は文字数(20文字×90行)と18時までという二重の制限があるため、気持ちばかり焦ってしまい、遅々として筆が進まず、しかも着地点も見えてこない。序盤から中盤までは下書きしてきたにもかかわらず、後半になってパタリと足が止まってしまったのだ。それでも何とか踏ん張りつつ、編集長にも見守られつつ、ようやく10分前に原稿を完成させ、送ることができたのだ!こんなにドキドキしながら観戦記を書くのは初めての体験であった。また機会がもらえるならば、ぜひ来年も挑戦してみたい。

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Comments

治郎丸さん、明けましておめでとうございます。
昨年は一口馬主という趣味を始めてから、初の重賞制覇をホープフルステークスで達成することができました!!
そう、まさに治郎丸さんが観戦記を書かれたそのレースです。この偶然にまたも競馬の神様の存在を意識してしまいました。
そして、購入後かかり気味にページをめくったせいで、後ろの方のページばかり探してしまい目次に戻るはめになりました(笑)
本当にサートゥルナーリアが『男版アーモンドアイ』となって、2019年版のダービー観戦記を治郎丸が担当されることを夢見ながら、今年も競馬を存分に楽しみたいと思っています。

Posted by: ダイコウサク | January 02, 2019 at 11:39 AM

ダイコウサクさん

あけましておめでとうございます。

まさかのサートゥルナーリアですか!すごいですね。

1億4000万はさすがに高いと思っていましたが、ここまで来ると安く思えるから不思議です。

僕も重賞年鑑をかかりぎみにめくって、どこにも見当たらず、バックして最初から読んでいったらあったという同じ経験をしましたよ!(笑)

とにかくこのまま順調に行って、僕がダービーの観戦記をでサートゥルナーリアの勝利のことを書けるといいですね。

Posted by: 治郎丸敬之 | January 02, 2019 at 04:57 PM

治郎丸さん
お返事ありがとうございました。
最初のコメントで治郎丸『さん』が抜けておりました。
大変失礼致しました。恥ずかしいです。
(次郎丸さんにならないように意識し過ぎました...)
サートゥルナーリア はレース後も馬体に異常がないようでホッとしております。
ダービーの観戦記をガラスの競馬場だけでなく、年末にも振り返って活字で読めるように楽しみにしています。

Posted by: ダイコウサク | January 04, 2019 at 12:49 AM

ダイコウサクさん

全然気にしないでください。

次郎丸でも五郎丸でもジローラモでもいいですよ(笑)

サートゥルナーリア無事で良かったですね。

ダービーの観戦記を活字で読んでもらえたら僕も本望です!

Posted by: 治郎丸敬之 | January 04, 2019 at 11:08 AM

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