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集中連載:現代のコアな競馬ファンがすなる一口馬主というものを(最終回)

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クインアマランサスの引退の報告がメールで届いた。浅屈腱炎。勝ったり負けたりを繰り返しながら、ようやく競走馬として完成期を迎えた矢先の引退だけに、しばし呆然としてしまった。初勝利を挙げたときの喜びよりも、突然の引退の方が圧倒的に心を動かされたのだから不思議である。引退の連絡を受けたとき、フラッシュバックのように思い出されたのは、遠い昔に読んだ漫画のあのシーン。上手く説明することはできないが、たぶんあのシーンを読んだときの感情とクインアマランサス引退を知ったときのそれが重なり、つながったのだろう。

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きれいな顔してるだろ
ウソみたいだろ
死んでるんだぜ。それで・・・
たいしたキズもないのに、ただ、
ちょっと打ちどころが悪かっただけで・・・
もう動かないんだぜ

ウソみたいだろ

競走馬としてデビューするまでにも時間が掛かり、メイクデビューは14着とどうあることかと心配をさせ、3歳になってからダートに転向して3戦目で初勝利を収めた。そこからは長い休養期間をふんだんに挟みながら、勝ち切れないながらも大事に使われてきた。特に肩の硬さがウィークポイントであり、その点は最後まで解消されることはなかった。坂路で55秒を切ることのできない馬が、毎回、レースに行くと好走する気持ちの強さには頭が下がる思いであった。

とにかく、待ちに待ったのである。出資を決めてからの3年間、クインアマランサスが地方交流重賞を勝ちまくる日が来ることを夢見て、待ち続けた。それは我慢したというネガティブな意味では決してなく、あきらめず、希望を捨てることなく、じっと時間を味方につけようと耐えたということだ。焦っても仕方ない。待てば海路の日和ありだ。長い時間をかけたからこそ、前走の完勝劇には鬱憤が晴れ、視界が一気に広がった。希望的観測ではあるが、1000万、1600万、オープンと一気に駆け上がってくれる可能性もあった。そのための充電期間であったとさえ思えた。

「初めての出資馬で、これだけコンスタントに走る馬は当たりですよ」と良く言われてもピンと来なかったが、全くその通りなのだろう。彼女の競走馬としての頑張りや厩舎・育成牧場関係者の手厚いケアがあったからこそ、私は一口馬主ライフを楽しめたのだ。今は感謝の気持ちしかない。

105歳まで生きた日野原重明先生は、「星の王子さま」の一節「悲しみはいつか和らぐよ。いつかその悲しい気持ちが和らいだら、僕と出会ってよかったって思うよ」を引いて、著書にこう記した。

別れというものは本当に悲しいものですね。それでも、別れるべきその日が来たならば、ただ悲しさを感じて終わりにするのではなく、別れが教えてくれる「出会いの意味」に目を向けてほしいのです。別れとは出会いの中にあり、悲しく静かに僕たちが出会った本当の意味を再認識させてくれるものだからです。たくさんの別れを経て、感動の正体を探し続けた今、僕は改めてそう感じているのです。

彼女が私に教えてくれたことは、1頭の競走馬についてであった。1頭の競走馬にどれだけの人々や時間が費やされ、期待や夢を背負わされ、それでも走る馬もいれば走らない馬もいる。そんな中での一勝の喜びや辛抱強く待つことの大切さ、そしていつか輝かしい現役時代には終わりが来ること、それも突然に。たかだか500分の1しか出資していない一口会員と競走馬の出会いかもしれないが、初めて出資できた馬がクインアマランサスで良かったと思う。

(了)

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Comments

治郎丸さま
ROUNDERS vol. 4 を拝読しまして、以降、こちらのブログをいつも楽しみにしております。
クインアマランサスさん、引退ですね。実は、私も2014年産駒から治郎丸さまと同じクラブで一口を始め、同世代はたった1頭だけの出資、そして奇しくもクインアマランサスさんと同じ日にデビューし、同じ日に登録抹消となった愛馬がおります。
「初めて出資できた馬がクインアマランサスで良かった」、そのお言葉に重なる想いでおります。
今後は、クインアマランサスさん、そして当方の愛馬が良き母となるよう、祈るばかりです。

Posted by: バラダ | April 18, 2019 10:37 PM

バラダさん

初めまして。

最近はこちらのブログの更新がのんびりですいません。

クインアマランサスはついにというか、突然に引退してしまいました。寂しいものです。

同じクラブで同じデビュー日、そして登録抹消も同じ日なんて、そのような偶然があるものですね。

お互いに自分の出資馬からどのような仔が生まれてくるのか楽しみですね。

まさか世紀の名馬が誕生したらどうしましょう(笑)

Posted by: 治郎丸敬之 | April 19, 2019 09:33 PM

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