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全ての知能を走ることに

天皇賞春2019―観戦記―
ヴォージュとロードヴァンドール、メイショウテッコンが先行争いをしつつ前半1000mを59秒8で通過し、速いペースになるかと思いきや、終わってみれば後半1000mが58秒5という後傾ラップであった。昨年の60秒1-60秒6、一昨年の58秒3-60秒2と比べると、今年はスローペースに流れたことが分かる。

勝ったフィエールマンとグローリーヴェイズは父にディープインパクトを持つことで共通している。天皇賞春と菊花賞の3000mを超える長距離G1レースは、ディープインパクト産駒にとって長らく鬼門であったが、晩年にしてようやく壁を乗り越える産駒が出てきた。しかも3着以下に6馬身という圧勝であった。

ディープインパクト産駒は、なぜこうも進化を遂げるのだろうか。ディープインパクト自身がサンデーサイレンス産駒の中でも進化形の馬であったように、産駒にも進化を続ける遺伝子が受け継がれている。その遺伝子とは、全ての知能を走ることに集結することができる能力である。

これは橋田満調教師の父である故橋田俊三調教師が著書「走れドトウ」にて提唱した概念である。橋田氏はレコードタイムが更新されていく過程を見て、その原因を馬場でもなく、血統や調教でもなく、サラブレッドの文化に求めた。サラブレッドが生きるために人間の文化に己を合わせていると説いたのだ。

自らの置かれた環境で生き残るために、野生の本能を捨て、人に喜ばれるようにタイムの更新を重ねてきたということだ。ディープインパクトもその産駒もそうして長く速く走ることができるように進化した。サラブレッドと真剣に向き合った調教師がたどり着いた結論として、一考に値すると私は思う。

フィエールマンはその筆頭であり、わずかキャリア4戦目で菊花賞を制し、6戦目にして天皇賞春を勝ってしまった。何という知能の終結だろうか。この馬こそがディープインパクトの正統な後継者になると直感した。凱旋門賞の舞台にどこまで適応して、どのような走りを見せてくれるのか楽しみである。

クリストフ・ルメール騎手は、今年に入って桜花賞、皐月賞に続き、あっという間にG1レース3勝目を挙げた。道中のポジションから仕掛けのタイミングまで、完璧に乗っている。馬乗りとしての技術や経験だけではなく、日本の競馬場を知り尽くしているからこそ、勝つべくして勝つことができるのだ。

フィエールマンに首差まで迫ったグローリーヴェイズも、わずかキャリア8戦目にして頂点に手の届くところまできた。母父スウェプトオーヴァーボードから、マイル前後が適性距離だと勘違いしていたこともあったが、母系を辿ってゆくとこの馬はステイヤーであることが分かる。今回は相手が悪かった。

グローリーヴェイズが晩成のステイヤーであると分かった今、振り返ってみると、きさらぎ賞で2着したことが驚異的である。キタサンブラックが3歳時にスプリングSを勝ったことが驚きであるように、かなり走る資質の高いステイヤーであるからこそ、3歳時に距離不足の重賞でも好走できる。

パフォーマプロミスは序盤からレースの流れに上手に乗り、この馬の力を十全に出し切っている。まともに走ればこれぐらいは走る馬であるが、乗り方が難しい。ユーキャンスマイルも道中スムーズに走っていたが、ラストは苦しがるように顔を外に向けて走っていたように、まだ力及ばずであった。

エタリオウは最後方からレースを進めたが、最後は力尽きてしまった。ゴーサインを出すと一気に行ってしまう癖が治らない限り、今回のような極端な競馬を強いられることになり、それゆえに展開に左右されたりして、勝ち切ることが難しくなる。ステイゴールド産駒の光と影である。

 

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