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人も馬も普通ではいられない


日本ダービー2019
リオンリオンが思い切った逃げを打ち、高速馬場であることを考慮に入れても、前半1000mが57秒8という速いペースで飛ばした。道中のラップとしても、前半1200mが69秒8、後半1200mが72秒8だから、かなりの前傾ラップといえる。しかし、隊列を見るとまた違った風景が見えてくる。

ハイペースで逃げたのはリオンリオンだけで、2番手のロジャーバローズは平均ペース、その後に続く集団はややスローペースとそれぞれが別のレースをしていたことが分かる。結果的に見ると、ロジャーバローズが最適なペースで走っていたということだ。後続集団はせめて前にいないと勝負にならなかった。

勝ったロジャーバローズは、ディープインパクト産駒らしくなく一瞬の切れ味に欠ける馬だけに、道中も積極的に攻めて、後続を待つことなく早めに仕掛けたことが勝利につながった。さらに言うと、内枠を引けたことが最大の勝因である。勝ちポジを走れたことで、この馬の能力が最大限に生きた。

馬場やポジション、走ったコースの全てに恵まれたことは確かでも、もともと能力の高い馬だからこそ、運を掴むことができた。角居調教師としては複雑な気持ちだろう。圧倒的な人気に推された僚馬にとっての敗因が、ロジャーバローズにとっての勝因となったのだから。ダービーは運の良い馬が勝つのだ。

浜中俊騎手は人気薄の気安さもあっただろう、狙っていたプラン通りの、これ以上ない騎乗ができたはず。岩田康誠騎手を背に、ディープブリランテが高速馬場を粘り込んだ2012年のダービーに良く似ている。人気馬であればあるほどジョッキーは慎重になるので、こうした捨て身の騎乗が功を奏するのである。

惜しくも敗れたダノンキングリーは絶好のポジションを走り、戸崎圭太騎手の仕掛けのタイミングも抜群で、持てる力を出し切れた。最後にもうひと伸びできなかったのは、スタミナが足りなかったからである。2000mでも長いぐらいの馬であり、マイル前後の距離で走れば極上の切れ味を発揮できるはず。

ヴェロックスは外枠が響き、道中外を回らざるを得なかった分、最後に伸びあぐねてしまった。もう少し前の内目にポジショニングしたかったが、よほど強引に行かなければ、前につけることも、内に入ることも難しかった。後にも書くが、外枠を引いてしまったことで勝てない日本ダービーとは一体何なのか。

サートゥルナーリアは、馬場入りから入れ込み始め、精神状態が不安定なままゲートに入り、ゲート内でおかしな格好をしているところをスタートが切られてしまった。あれだけ落ち着いていた馬が、ダービー直前に入れ込み始めるとは、陣営にとっては悪夢のようだったに違いない。なぜ入れ込んだのか、サートゥルナーリアがこれまで負け知らずで来たからだと私は思う。無敗のダービー馬を誕生させるため、陣営にかかっていたプレッシャーはいかほどのものだったか。絶対に負けられないと追い詰められた人間の精神状態は馬にも伝わる。知らずのうちにサートゥルナーリアをも追い込んでしまっていたのだ。

あのディープインパクトでさえも、ダービーではパドックからずいぶんと入れ込んでいた。生涯一度も負けたことのない馬で、圧倒的な人気を背負って日本ダービーに臨むというのは、そういうことだ。関係者でなければ分からない、計り知れないプレッシャーが人馬を襲う。人も馬も普通ではいられない。

サートゥルナーリアは入れ込んで、道中力んで走ってしまったため、最後はスタミナが尽きてしまった。いつも通りリラックスして走れたら、もうひと伸びできたはず。この中間、見た目でも分かるぐらい筋肉量がアップしていたのもスタミナ切れを誘発する原因にもなったかも。これでは凱旋門賞は難しい。

ダミアン・レーン騎手は、批評する必要もないほどの拙騎乗。気が進まないまま書くと、安全に乗ろうとしすぎて新人騎手のような立ち振る舞いであった。遅れたなら腹をくくって内ラチ沿いを進めば良かったし、実際にスペースもあった。内で包まれることを嫌うから、意識は外に出すことばかりに行く。

結局、外々を回らされて、スタミナを削られて、脚を失ってしまった。具体的に言うと、第1コーナーを回った直後に内が空いていたところに入っていたら結果は違ったはず。このタイミングで入らなかったから、後ろにいたニシノデイジーに内を取られてしまい、二度と内ラチ沿いを走ることはなかった。

もしかすると、レーン騎手は東京2400mの勝ち方も教えられていないし、なぜ今回負けてしまったのか理解できていないかも。日本の高速馬場、しかも当日のような超高速馬場で外を回してしまうことが何を意味するのか。冷静で有能なジョッキーではあるが、これが競馬場を知らないことの怖さである。

最後に書いておくと、今年の日本ダービーはサートゥルナーリアやレーン騎手が悪いわけではなく、もちろんロジャーバローズや浜中騎手悪いわけでもなく、なぜ関係者が複雑な表情を浮かべているかというと、勝つためのポジションがひとつしかないアンフェアな馬場であったから。超高速馬場が生んだ悲劇。

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Comments

超高速馬場が枠順による有利不利を助長することのロジックがよくわからないので、一度記事にしていただきたいです。

Posted by: だいき | June 14, 2019 09:41 PM

だいきさん

ご質問ありがとうございます!

僕もツイッターでやり取りをしていて、
超高速馬場が枠順による有利不利(外を回る不利と内を回る有利)を助長するロジックが前提にないと、話が伝わらないと思いました。

どこかの記事かブログでそのことについて書かせていただきますね。

Posted by: 治郎丸敬之 | June 19, 2019 09:41 PM

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