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納得できるジョッキー


ジャパンカップ2019―観戦記―
後ろからは差し込みにくい馬場を見切って、ダイワギャグニーの石橋脩騎手は積極的に先頭に立ち、レースを引っ張った。前半1000mが60秒3、後半が61秒3であり、勝負どころから最後の直線が馬場の影響で時計が掛かったことを踏まえると、ほぼ平均に近いペースであったと考えることができる。ペースによる前残りではなく、馬場によって後ろから伸びてくるのが難しいレースであった。

勝ったスワ―ヴリチャードは、ひと叩きされて、渾身の仕上げが施されたこともあり、道中も唸るような手応えで内ラチ沿いを走っていた。最後は一瞬前が詰まりそうになったが、すぐさま開いた内に突っ込み、この馬らしい強靭な末脚を長く繰り出して勝利した。大阪杯(G1)以来、どちらかというとメンタル面での調子を崩していたが、少しずつ立て直されてきたところに、ノーザンファームと厩舎の究極の仕上げとジョッキーの腕がはまり久しぶりのG1勝利となった。兄弟もそうであったように、気性面に難しさを内包しており、一度リズムを崩してしまうと立て直しが難しく、今回こうして勝ったからといって次回も同じような走りを望めないところが不安要素である。

オイシン・マーフィー騎手はその腕を買われ、今秋はノーザンファームの強力なバックアップがあることも確実であり、さっそく結果を出したところもさすがである。枠順も良かったが、何よりもワグネリアンが外に出たことで、2着馬の後ろにつけられたことが大きい。最後の直線ではカレンブーケドールが内に切れ込んできて、一瞬、馬群を抜けられないシーンがあったが、すぐさま内に進路を切り替えた判断力はさすがである。前を走る2頭の間に突っ込む前に、内ラチ沿いにも1頭分のスペースがあることが分かっていたからこその動きであった。欧州のジョッキーはそうだが、特にマーフィー騎手は内にこだわり、できるだけ脚を失わずに、騎乗馬の力を全て発揮することに心血を注いでいることが伝わってくる、馬券を買っていても納得できるジョッキーである。

カレンブーケドールは持てる力を全て出し切った好走である。エリザベス女王杯をパスして、ジャパンカップに照準を絞った陣営の意図を見事に体現したとも言える。レースの間隔が開いていたこともあり、馬体はふっくらとして、秋華賞時から比べても格段に良くなっていた。またハンデも53kgと軽く、古馬の牡馬とのハンデ差(4kg)を生かすことができた。重馬場は想定外だったはずだが、内枠を引いたことで相殺されるどころか、結果的には吉と出た。

何と言っても、今回は津村明秀騎手の強気の好騎乗が光る。スタートしてから少し馬を出していったように、何としても内ラチ沿いの前目を進もうという強い意思が感じられたし、津村騎手が引かなかったからこそ、内の2番手という最高のポジションで走ることができた。勝ち馬の方が力が一枚上手であったが、騎乗としては文句のつけようがない。最後の直線で津村騎手がマーフィー騎手の進路を閉じたように見えるかもしれないが、あれは右ムチを入れたら右に寄れただけの偶然であろう。

3着に入ったワグネリアンは、最後の直線で良く伸びているだけに、道中のポジション取りが実に惜しかった。2番枠を引いたにもかかわらず、終始、内から2頭目を走らされたのは、スタートしてから第1コーナーまでの攻防が全てである。おそらく最内のカレンブーケドールよりも前のポジションに収まるつもりであったろうし、ワグネリアンも好スタートを切り行き脚もついたが、思いの外カレンブーケドールが押して前を主張してきたので、併走する形になってしまったのだ。逆にカレンブーケドールの方が行き脚が良ければ、スッと引いてインの3番手に付けることもできたろうが、どっちつかずになってしまったのが敗因である。今回の馬場は内1頭分以外は悪い(特に勝負どころの第4コーナー)ので、2番枠を生かし切れなかった致命的な騎乗であった。ポジション取りに長けている川田騎手が中途半端な騎乗になってしまったのは、乗り替わりであったことが大きい。もしかすると、距離に不安を抱えていたから安全に乗ってしまったのかもしれない。福永祐一騎手であれば、ワグネリアンを信じて、日本ダービーを勝ったときのように、序盤から思い切ってポジションを取りに行っていたはずである。ワグネリアン自身は頭がやや高く、決して重馬場が苦手なタイプではないはずで、スムーズに内ラチ沿いを回ることさえできれば、勝ち馬と良い勝負になったはずである。

マカヒキに騎乗した武豊騎手も、立ち遅れしてしまったことをプラスに変える、絶妙な騎乗であった。勝ち負けを捨てて、とにかく馬場の良いところを選んで走らせることで、最も効率的な走りとなり4着に突っ込んだ。ユーキャンスマイルも馬場の良いところは走っており、最後も伸びてきているが、いかんせん道中のポジションが悪かった。

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