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世界のダートの舞台へ

インティが好スタートから内枠を利して楽に先頭に立ち、前半800m48秒7―後半47秒7という絶妙なペースをつくり出した。コーナーを4つ回るコース形態とスローペースが合わさって、前々のポジションで内ラチ沿いを走った馬たちにとって有利なレースとなった。そのポジションを有力馬が占めたことで、人気どおりの決着となり、伏兵の出る余地は全くなかった。昨年もそうであったが、東京競馬場の2100mでジャンカップダートが行われていた頃に比べると、道中ただ回ってきて最後の直線だけの勝負となるダートの頂上決戦は少し寂しい。ダート競馬ファンとしては、もっと激しい競馬が見てみたい。

勝った3歳馬クリソベリルは、デビューから6連勝で頂点に登り詰めた。JDDでその姿を生で観たときから、かつてのダートの鬼たちと遜色ないパワフルな馬体とハートの強さを備えていることは身をもって感じていたので、これだけ高レベルのメンバーでも勝ち切ってしまったことに何ら不思議はない。普段は堂々と歩いている馬だが、今回は初めてレース前に気持ちがカッカする面が見られた。それだけキッチリと仕上げられたということだろう。まだ馬体全体に緩さが残っているだけに、古馬になって身体に芯が入ってくれば、さらに効率よく全身のパワーを前進する力に変えられるだろう。緩さがなくなると故障のリスクも高まるので、そのあたりに気をつけてケアをしつつ、世界のダートの舞台を目指してもらいたい。

川田将雅騎手は今年に入ってようやく中央のG1レースに手が届いた。春は不運なレースが続き、秋はあと一歩の競馬が多かった中、常に騎乗馬の力を十全に出し切ってきた(先週のジャパンカップのワグネリアンは除く)。それでも競馬は勝負事でありスポーツである以上、勝てないときは勝てないし、勝てるときはこんなものだろう。枠順も良く、逃げたインティの直後を走ったポジションも完璧で、最後の直線はたまたま2頭の間を割る形になったが、手応えは十分にあったから焦りはなかったはず。世界の名手たちが揃ったレースにおいて、最後の追い比べでも迫力は負けておらず、川田騎手にも世界の競馬に挑戦してもらいたいと願うのは私だけだろうか。

川田騎手以上に秀逸な騎乗だと感じたのは、ゴールドドリームに乗ったクリストフ・ルメール騎手であった。レースがスローに流れることを読み切って、相手となるであろうクリソベリルが番手につけるのも知っていたはず。そこで自身も前に行かないと勝ち目がないと判断し、スタートしてから迷うことなく外の3番手を取りに行った。前半でゴールドドリームの行く気に任せていたら、道中は中団を進み、最後は脚を伸ばしたものの連対できず終わっていた可能性もある。力は落ちてはいないが、決して上積みはないゴールドドリームの現時点での力とレースにおける最適なポジションを組み合わせて勝ち取った2着である。さすが日本のリーディングジョッキーである。

インティは武豊騎手お得意の逃げにはめこまれて、前走の惨敗を払拭する走りを見せてくれた。もっと速いペースで飛ばし、後続にも脚を使わせて、自身はそのまま押し切るのがこの馬本来の勝ちパターンだが、まだ絶好調時には戻っていないため、今回は無難な競馬をして正解であった。気持ちで走る馬だけに、肉体的にも精神的にも充実してくれば、再び強いインティが戻ってくるはず。

チュウワウィザードは、決して力負けではなく、もうひとつ前のポジションが取れていれば、勝ち馬と同じような競馬ができていた可能性が高い。ということは、クリソベリルはもう1頭分後ろか外になっていたはずで、苦しい競馬を強いられただろう。勝ち馬と勝利ジョッキーとの違いはそのポジションを狙っていたかどうかあり、狙っていなかったから譲ってしまったのである。乗り替わりだから慎重に乗ったと弁護することもできるが、せっかくの2枠なのだから攻めるべきであった。

オメガパフュームはこのようなスローのヨーイドンの競馬は向かない。デットーリ騎手もこの馬にとっては最善のポジションを走らせているが、前に行った有力馬たちが止まらなかった。展開が違えば(もっと激しいレースになれば)、上位馬たちを逆転するのは可能な力関係である。5着に入ったキングズガードは、あのポジションから最後の直線だけで突っ込んできた。年齢を重ねて道中はゆっくり追走できる距離の方が合ってきているのかもしれない。それにしても磨きのかかった驚きの末脚であった。

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