至宝

Takaraduka08 by @84image
宝塚記念2008-観戦記-
エイシンデピュティの内田博幸騎手が押して押してハナを奪った。重馬場で上がり3ハロンが掛かったことを考慮に入れると、前半60秒6―後半62秒1はほぼイーブンペースとなる。この時期の阪神の傷んだ馬場に雨が降れば、力を要する走りにくい馬場になることは必至で、差し追い込み馬にとっては不利な展開となった。また、それ以上に、道悪に対する巧拙も問われた一戦となった。

勝ったエイシンデピュティは、迷うことなく先頭に立ち、自分の型に持ち込んで逃げ切った。今年に入っての勢いをそのまま体現したかのような渋太いレース振りで、心配された使い詰めによるガス欠は杞憂に終わった。最後の直線で他の有力馬がもがき苦しむ中、エイシンデピュティだけは道悪を苦にすることなく、普段どおりの走りを披露した。さらに、極端に力が要る馬場になったことも、パワータイプのこの馬にとってはプラスに作用した。馬場や展開を味方につけて、エイシンサニー以来18年ぶりのG1勝利を栄進牧場にもたらした。

内田博幸騎手にとっても、中央に移籍して以来、初のG1勝利となった。ゴール板のところでエネルギーをゼロにする、一滴の余力も残さない騎乗で、エイシンデピュティの力を完全に出し切った。初めてG1を勝ったピンクカメオの時も道悪だったように、ハミをしっかりかけながら、安定した騎座で馬を操る(エスコートする)技術に長けていることが分かる。実力的にはいつG1レースを勝ってもおかしくないジョッキーで、今回のように関西から有力馬を依頼されることが増えれば、自然と大きな勲章を手にすることも多くなるだろう。

勝ち馬とは対照的に、1番人気に推されたメイショウサムソンは不完全燃焼なレースであった。直線半ばでの不利よりも、スタート後に挟まれ、ポジションを下げてしまったことが悔やまれる。苦手とする道悪に怯むことなく、最後は力と意地で勝ち馬に迫ったが、わずかに及ばなかった。王者の意地は示した格好だが、それでも昨年の秋からの勝ち切れなさには、往年の凄みが失われている感もある。

それにしても、最近の武豊騎手の歯車の噛み合わなさは目を覆うばかりである。スタート後に挟まれてしまったことは運がなかったが、そこからがいけない。馬がエキサイトしたのだろうが、それでも、あのまま内を進みながらポジションを上げて行くべきであって、外に出すべきではなかった。もしかすると武豊騎手自身もエキサイトしてしまったのではないか、と思わせるほどのらしからぬコース取りであった。これまでは多少のロスがあっても差し切れてきたのかもしれないが、腕達者のジョッキー(今回で言えば内田博幸騎手)は残してしまうのだ。

インティライミの激走には驚かされた。佐藤哲三騎手の積極的な騎乗が光ったが、この馬自身も暖かい季節になって体が絞れてきたことで体調がアップしていた。もちろん、道悪を苦にすることがなかったことも大きい。残念だったのは、直線に向いてこれからという瞬間に、エイシンデピュティが馬体を併せに、アサクサキングスが外から切れ込んで来たため、進路を塞がれたことである。あのアクシデントがなければ、もしかすると勝っていたかも知れないと思わせるほどの素晴らしい走りであった。

4歳勢は良いところなく惨敗してしまった。アルナスラインは道中も苦しい位置に入ってしまい、そこから抜け出してくるだけの力はなかった。力が足りなかっただけではなく、馬体も太目残りに映ったように、今回は調整が難しかったようだ。ロックドゥカンブは岩田騎手が前半から積極的に攻めたが、4コーナーでは筒一杯になってしまっていた。道悪の影響もあったろうが、レース後に故障を発生していたことが判明したように、非常に残念な結果となった。最後に、アサクサキングスは4コーナーの手応えから楽勝かと思われたが、追われてから全く伸びなかったように、今日のような馬場は合わなかった。それにしても、多くのファンの夢を乗せたレースでもあるのだから、四位騎手にはもう少し丁寧に乗って欲しかった。

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死ぬまで18歳

Yasuda08 by photostud

逃げたくはないが逃げないと良さが出ないコンゴウリキシオーがハナに立ち、前半800mが46秒2という昨年よりも僅かに遅いペースを作り出した。後半の800mが46秒5だから、ほぼ平均ペース、このメンバーとしてはスローペースで流れたため、後ろから行った馬にとっては苦しい展開となり、積極的に乗られた馬たちが上位を占めた。

ダービー以来の勝利となったウオッカは、全ての要素が見事に噛み合った。最大の勝因は、海外遠征明けでどん底であった前走をひと叩きされ、体調は驚くほどに回復し、馬自身の精神面にもゆとりが生まれていたことだろう。また、伸び伸びと走られる府中コースに加え、内枠を引いて馬場の良いところをロスなく回ってこられたことも大きい。直線に向くや、あっという間に馬群を割って他馬を引き離し、ゴールまで伸び切った。ようやく、あの強かった頃のウオッカが戻ってきた。

ウオッカの体調が驚くほどに回復したと前述したが、まだ回復途上であったこともまた事実である。回復途上で安田記念を勝ったということは、この後、更に体調が上向くことが予測されるので、ぜひとも宝塚記念に出走してほしい。昨年の宝塚記念には出走するべきではなかったが、今回は出走しても良いのではないかと個人的には思う。

岩田康誠騎手の勝ちに行った騎乗も見事であった。敏感な牝馬にテン乗りだったにもかかわらず、腹を括ってスタートから出して行った勇気には、いつものことながら頭が下がる。もし先行してバテてしまえば非難に晒されるのを承知の上で、それでも攻めた思い切りの良さは、馬を抑える技術とバテても最後まで持たせることが出来るという自信に裏付けられているのだろう。

今回の岩田康誠騎手の騎乗を見て、他の騎手はどう思っただろうか?ヴィクトリアマイルの時に同じ先行策を取っていたらバテしまっていたかもしれないし、今回の安田記念で抑えて後ろから差しても届いていたかもしれない。馬の体調や出走メンバー等が異なる中での比較はナンセンスだが、今回のような乗り方でウオッカを勝たせたという事実は大きい。そろそろ、多くのジョッキーが自身の騎乗スタイルを見直す時期が来ているのではないだろうか。

アルマダは香港勢では唯一、馬体重が増えていたように、日本の環境にも慣れ、持てる能力を十分に発揮していた。今回はウオッカの瞬発力について行けなかったが、最後まで渋太く伸びていた。内が伸びる馬場で不利になりがちな外枠から、思い切って先行したホワイト騎手の好判断も光った。さすが香港ナンバーワンジョッキーである。短期免許を取得して日本で騎乗するプランもあるようなので、ぜひとも期待したい。

エイシンドーバーは、福永祐一騎手が内枠を利して、最大限の成果を引き出した。決してスパッと切れるタイプではないが、いい脚を長く使っている。もちろん馬自身が力をつけていることもあるが、今回に限っては、好枠とジョッキーの冷静な騎乗が功を奏した。

1番人気に推されたスーパーホーネットは、ここ最近のレースでは珍しく、直線で伸びを欠いた。馬体重の推移からも分かるように、前走がピークの体調であった。上積みがないばかりではなく、体調が下降線を辿っていては、G1メンバーの中ではさすがに苦しい。

グッドババは、当日の馬体重マイナス15kgが表すように、明らかに馬体が萎んでいた。昨年の安田記念時と同じ体重であり、香港ではコンスタントに500kg台で走っているところを見ると、単純に輸送を苦にするタイプなのだろう。パドックや返し馬レース前にすでに勝負は終わっていた。また、5連勝を達成した前走のチャンピオンズマイルが、ピークの出来であった。


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そしてまた夢は続いてゆく

Derby08 by photostud
ダービー2008-観戦記-
レッツゴーキリシマが果敢にハナを奪い、前半73秒6―73秒1というイーブンペースを作り出した。前日の降雨の影響で、後ろから行く馬にとっては追い込みにくい荒れた馬場だったにもかかわらず、全馬を直線だけで一気に差し切ったディープスカイの強さが目立ったレースであった。

勝ったディープスカイは、中2週という強行ローテーションをものともせず、NHKマイルCに続いてまたもや強靭な末脚を繰り出し、キングカメハメハ以来の変則2冠を達成した。府中のマイル戦を勝つ底力とスタミナが、ダービーでも通用することを証明した。初勝利を挙げるのに6戦を要した馬が、NHKマイルCだけではなく、まさか頂点のダービーを制するまでに成長するとは、関係者でさえも当初は想像できなかったに違いない。大外を風のように駆け抜けたディープスカイを観て、競馬は本当に分からないものだと思った。

四位騎手がディープスカイを完全に手の内に入れて、末脚を信じて乗っていたことも大きい。最後の直線に向くまでは、とにかくディープスカイのリズムを最優先して走らせていた。1番人気を背負ったプレッシャーもあっただろうが、落ち着いて折り合いに専念できたのは、昨年のダービーを優勝した自信と経験の裏づけがあったからに違いない。前にも書いたように、ディープスカイは決して乗りやすい馬ではなく、それをいとも簡単に勝たせたかのように見せてしまう四位騎手の技量の素晴らしさ(特に折り合い面)は見逃されてはならない。

あわやという場面を作ったスマイルジャックは、スプリングS後に萎んでいた馬体を、皐月賞後の1ヶ月で見事に立て直してきたのだろう。馬体こそ良くは見えなかったが、パドックでの歩様には力強さが漲っていた。最後はねじ伏せられた格好になったが、正攻法の競馬をして負けたのだから、今回は勝った馬を褒めるべきである。夏を越して、実りの秋につながる成長を心待ちにしたい1頭である。桜花賞やオークスに続き、小牧太騎手は無欲無心で乗って好結果につなげた。

ブラックシェルはスタート後に前をカットされ、その後、馬がエキサイトして終始引っ掛かってしまい、末脚を失ってしまった。武豊騎手があれだけ引っ掛けられ続けたのも珍しく、一旦スイッチが入ってしまうと抑えきれないほどに、ギリギリの仕上げで出走してきたのだろう。それでも3着を確保したように、スタート後のアクシデントがなければ、勝ち負けになっていたのではないだろうか。一生に一度しかないダービーだけに、陣営の悔しさは思い余りある。

2番人気に推されたマイネルチャールズは、折り合いを欠くことやアクシデントもなく、最後まで力を十分に出し切っていた。敢えて苦言を呈するとすれば、これだけの器の馬を寒い時期にも走らせ続け、成長を止めてしまった陣営もしくはオーナーサイドの方針には疑問が残る。少なくとも京成杯は使う必要のないレースであった。本気でクラシックを勝ちたいと思うならば、目先の勝利を捨てる決断も必要なのではないだろうか。

ダート4連勝で臨んできたサクセスブロッケンは、最後の直線で力尽き、最下位でゴールした。芝のレースがダメということではなく、パドックから入れ込んでいたように、これまでのレースとは全く異なる環境に対応できなかったということだろう。芝に挑戦するのは、もう少し体がシッカリと出来てからでもよい。ただ、挑戦そのものには意義があったと思うし、私たち競馬ファンにも大きな夢を与えてくれたことは確かである。そして何よりも、普段は馬のリズムを優先して走らせる横山典弘騎手が、スタートから馬を押してでもダービーを勝ちに行った姿を見て、私は久しぶりに心が震えた。夢は破れ、そしてまた夢は続いてゆく。

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もっと褒められていい

Oaks08 by Deliberation
オークス2008-観戦記-
エアパスカルが外枠からやや強引にハナを奪い、前半74秒3-後半74秒5という淀みない流れを作り出した。展開的に大きな有利不利のないミドルペースに、やや重まで馬場が回復したことも加わって、最終的には力通りの決着となり、完成度で上回る桜花賞組が上位を独占した。

トールポピーは前走に比べ、ふっくらとした体つきに仕上がっていた。桜花賞で惨敗した後のケアが上手く行ったのだろう。まともに走れば能力上位の馬だけに、前走こそ番狂わせであって、今回は順当勝ちと言ってよい。かき込むようなフットワークの馬だけに、馬場がやや重まで回復したのも功を奏した。最終追い切りで行きたがって口を割っていたのも、調教では走りたい気持ちを極限まで我慢させて、レースで爆発させるという、角居流のやり方であったのだろう。レース後に首を激しく上下させる仕草は父ジャングルポケット譲りであるが、極限の力を出し切った後だけに、精神面でのケアは十分に行われるべきである。

池添謙一騎手の見事な手綱捌きには唸らされた。ポイントはスタートしてから1コーナーにかけての進路の取り方で、外枠から馬群を縫うようにして、1コーナーを回るまでに内ラチ沿いに取り付いた。内を開けてしまったレッドアゲートの内田博幸騎手やエフティマイアの蛯名正義騎手とは対照的であった。そこからは内々の経済コースで脚を溜め、3コーナーから4コーナーにかけて少しずつ外に持ち出した。直線で焦って内に切れ込んでしまった粗相には目をつぶるとして、まさに府中のチャンピオンディスタンスを勝つためのお手本のような乗り方であった。

エフティマイアは桜花賞に続き、僅差の2着を確保した。こうして結果が出てしまえば、実力を過小評価されていたということなのだろう。私も早熟のマイラーと見ていただけに、この馬の頑張りには驚かされた。蛯名騎手の落ち着いた騎乗も光った。ギリギリまで追い出しを我慢したが、それでも最後はトールポピーの底力の前に屈してしまった。欲を言えば、6番枠からのスタートだっただけに、トールポピーに内の進路を取られていなければ、もう少し際どかったのではないか。

勝ち切るまでの勢いは感じさせなかったものの、レジネッタは桜花賞がフロックではなかったことを証明した。道中ではしっかりと折り合いもついて、最後までしぶとく伸びている。こういった力の要る馬場も苦にしないタイプであり、さすがG1ウィナーといった完成度の高さを見せてくれた。最後の直線で前をカットされてしまったのは残念だが、勝った馬とは脚色が違った。

松岡騎手の積極的な騎乗もあって、ブラックエンブレムは最後まで伸びて力を出し切った。桜花賞時は追い切りを行わなかった(行えなかった)ように完調ではなかったが、今回は中間にじっくりと乗り込まれ、この馬の力を発揮できる出来にあった。G1レースを勝つには、もう少しパワーアップすることが望まれる。

1番人気に推されたリトルアマポーラは、外を回ったこともこたえたが、馬場が渋ったことにより、持ち前の切れ味を殺されてしまった。良馬場の内枠であれば、もう少し上の着順には来ていたはずである。後ろから行かざるを得ないだけに、乗り難しい馬でもあり、今回は全てが悪い方向に出てしまった。クイーンCで減っていた馬体が前走でも戻り切っていなかったように、全体的に小さく見えたし、輸送の影響も少なからずあったのかもしれない。

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ASIAN WINDS!

Victoria08 by echizen
ヴィクトリアマイル2008-観戦記-
逃げ切り困難な府中のマイル戦を意識して、各ジョッキーが金縛りにあったようにハナを譲り合った結果、前半47秒9-後半45秒8という究極のスローペースが作り出された。直線に向いてからの瞬発力勝負になり、33秒台の脚を使える馬でなければ勝負にならないレースであった。また、馬群が団子状態になって進んだため、外々を回された馬は脚を溜めることができず、ゴールまで伸び切れなかった。

エイジアンウインズは極上の切れ味を発揮して快勝した。ここにきて馬体の充実が光っていたが、府中のマイル戦では馬体的にも血統的にも距離が僅かに長いと考えていただけに、今回の差し切りには少なからず驚かされた。たとえG1であろうとも、絶好の馬場でこれだけスローに流れるレースになれば、距離適性が僅かに短いスプリンターでも最後まで何とかもってしまうということだ。昨年に続き、今年もフジキセキ産駒の勝利であり、しかもエイジアンウインズの母父はデンヒルであることからも、ヴィクトリアマイルを勝つためにはスピードとパワーが問われるという傾向が明らかになってきた。

これまで差して勝ったこともあったが、前走を逃げ切っているだけに、エイジアンウインズを本番で再び差しにモデルチェンジした藤田伸二騎手には、勝利にこだわる男気を感じた。逃げ切りが難しいことが分かっていても、実際に勝ちパターンを変えるのは勇気の要ることだ。よほど昨年の安田記念のコンゴウリキシオーで差し切られたことが頭に残っていたのだろうか。馬の気分を壊さないよう、ペースに関係なく折り合いに専念した結果が、ゴール前の4分の3馬身差につながった。

ウオッカは折り合いも付いて、ギリギリまで仕掛けを我慢されたが、それでも僅かに届かなかった。武豊騎手はほぼ完璧な騎乗をしており、今回こそは素直に負けを認めざるを得ないだろう。33秒2の末脚で上がってきたものの、その伸びはウオッカ本来のものでないことは誰もが認めるところで、短期の放牧に出したぐらいでは、ダービーの後遺症は癒されなかったということだ。デビュー以来、最低の馬体重も気になったが、それ以上に、最後のもうひと踏ん張りが出来る精神力(気持ち)が回復していないのではないか。今度こそ思い切って休ませるタイミングが来ている。

ブルーメンブラッドは内々の経済コースを進み、最後まで良く伸びている。石坂厩舎に転厩してから以前のひ弱な面がなくなり、馬が大きく変わった。短期放牧を挟みながら、坂路調教を繰り返して課したことによるものだろう。特に前脚のかき込みが強くなったことで、どんなレースになっても、安定して走ることが出来るようになった。父アドマイヤベガと違い、ジワジワと伸びるタイプなので、今回のような究極の瞬発力勝負は苦しかったが、それでも力を十二分に発揮していた。後藤騎手の安定した手綱捌きも目に付いた。

2番人気に推されたニシノマナムスメは、直線で苦しがって、最後まで伸び切れなかった。あくまでも結果論ではあるが、プラス10kgの馬体からも、直前の調教が少し軽すぎたのかもしれない。長距離輸送を見越しての仕上げだからこそ、難しい部分もあったに違いない。スローペースを見越して先行した吉田隼人騎手の判断は見事だったが、直線での左右の斜行においては、ムチの使い方が自己中心的だったように映った。将来性のある素晴らしいジョッキーであることは確かなのだから、まずは馬を真っ直ぐ走らせることを心掛けて欲しい。

ベッラレイアは馬体こそ仕上がっていたが、スローの展開で外々を回らされてしまいアウト。下げすぎると届かないし、前に行けば馬群の外を走る羽目になる枠順だっただけに、今回は運が悪かったと諦めるしかないだろう。ただ、今回の馬体重の減少からも、次回への上積みは期待しづらく、吉田勝己氏に馬主名義が変わっているように、競走馬としては役割を終えた気がしないでもない。

ジョリーダンスはスタートから攻めに徹し、直線に向くまでは、まさに勝ちパターンの競馬であった。しかし、スパッと切れる馬ではないので、直線でのパッチンが痛かった。瞬発力勝負のレースで、スピードに乗る瞬間にあれだけ急ブレーキをかけてしまっては万事休す。抜け出していても結果はどうなっていたか分からないが、後味の悪いアンラッキーなレースとなった。

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I believe I can fly.

Nhkmilec08 by echizen
NHKマイルカップ2008-観戦記-
スタートからハミをガッチリと掛けられたゴスホークケンが、前半46秒7―後半47秒5という数字以上に厳しいペースを作り出した。前に行った馬は揃ってバテているように、水分を含んだ力を要する馬場状態も加わり、マイル戦以上のスタミナを問われるレースとなった。

勝ったディープスカイにとっては、まさに打ってつけの展開となった。スタートを決めるや、あとは馬任せでジッとしているだけで、勝手に4コーナーでは前がバテてきて、差が詰まったという感じだろう。手応えに余裕があったからだろうが、他馬が馬場の良い外を回す中、ズバッと内を突いた四位騎手の冷静なコース取りも光った。最後の直線に向いて、先に抜け出したブラックシェルをアッという間に交わし去ると、ゴール前では手綱を抑えるほどの余裕すらあった。

前走の毎日杯に続き、今回も楽に勝ったように見えるが、ディープスカイのような乗り難しい馬をいとも簡単に乗りこなす四位騎手の騎乗技術はさすがである。止め際の仕草からもディープスカイが口元の過敏な(操作の難しい)馬であることは想像がつくし、レース後に検量室前で振り落とされた一件も気性の激しさゆえである(あれば愛嬌だが)。そして、何と言っても、そんなディープスカイが厳しいペースになり気の難しさを出さずに済むであろう、マイルG1に向けて照準を絞った昆貢調教師の見立ては賞賛に値する。

ブラックシェルは暖かくなってきたことにより馬体が絞れ、本来の力を出し切れるだけの体調に仕上がっていた。器用な馬ではないだけに、幅員の広い府中コースに替わったことも好走の理由のひとつだろう。後藤浩輝騎手もスタートから負荷を掛けることなく流れに乗せ、最高のポジショニングでレースを進めていた。惜しむらくは、直線に向いてゴスホークケンをマークする形で追い出してしまったことだろう。あれだけのペースで行っているのだから、後ろから来る手応えの良い馬を待ってから追い出していれば、もう少し際どい勝負になっていたはずである。

ダノンゴーゴーは、最後方からレースを進めたことが吉と出て、他馬が揃ってバテる中をグイグイと最後まで伸びた。スプリント戦で切れ味を発揮する馬だけに、スタミナに不安のある状況の中でも最高の走りが出来ていた。ハイペースに賭けて、腹を括った藤岡佑介騎手の騎乗が見事にハマッたのだが、それを実際にやってのけたことが凄い。藤岡佑介騎手が大きなレースを獲る日はすぐそこまで来ている。

ファリダットは道中で引っ掛かってしまった分と、4コーナーで外を回したことにより、最後の伸びを欠いてしまった。これだけのペースでも掛かるのだから、本質的にはスプリンターなのだろう。武豊騎手が騙し騙し乗ってはいたが、上位2頭とは決定的なスタミナの差があった。しかし、将来性は十分に感じさせる馬だけに、成長に合わせてマイル以下の距離を使っていけば、いずれ大きなところを勝つ器であることは間違いない。

ゴスホークケンは果敢に逃げたが、4コーナー時点で既に手応えがなかった。キッチリと仕上がってはいたが、精神面でまだ立ち直っていない部分があるのだろう。馬なりで先手を取れた朝日杯フューチュリティSと、押して押してハナを奪った今回のレースでは雲泥の差があった。内田博幸騎手もハナを奪うことを優先したのだろうが、あれだけ強くハミを当てて出してしまえば、さすがに中央の競馬ではゴールまで持たないことを実感したはず。

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少なくとも最後まで歩かなかった

Tennosyoharu08 by M-style
天皇賞春2008-観戦記-
予想していた以上に、いや期待外れに、横山典弘ホクトスルタンが前半1000mを61秒1と抑えて進んだことにより、レースは例年通りの上がり1000mの競馬となった。これにより、2600mを走って、さらに残りの3ハロンを34秒台で上がることの出来る、瞬発力のある馬にとって有利なレースとなった。

勝ったアドマイヤジュピタにとって、出遅れてしまったことが結果的には吉と出た。もし好スタートを切っていたとすれば、外枠からの発走ということもあり、道中は終始アサクサキングスの外々を回されて脚を失っていたかもしれない。腹を括って、無理にポジションを押し上げるようとせず、メイショウサムソンの後ろの経済コースを進んだ岩田康誠騎手の判断も見事であった。

もちろん、最後は差し返してきたメイショウサムソンを振り切ったように、アドマイヤジュピタの力も相当なものである。コロンとしたステイヤーらしくない体型だが、それを補って余りあるステイヤーとしての気性の良さ(賢さ)がこの馬にはあり、道中で無駄な動きをしないからこそ最後の末脚が生きた。日経新春杯こそ調整に失敗して惨敗してしまったが、前走は馬体重を元に戻して勝利し、今回は極限まできっちりと仕上げられていた。この後はゆっくりと休養を取り、秋には海外からの一流馬を迎え撃って欲しい。

メイショウサムソンは、一瞬差し返したかと思ったが、最後はねじ伏せられてしまった。前走をひと叩きされて、形どおり良化していたのだろう。道中は強かった頃の行きっぷりの良さが窺えた。ただ、最後は競り負けてしまったことも事実で、この馬にとっては距離が若干長いということ以上に、肉体面、そして特に精神面において、未だ完調には戻りきっていないということだ。放牧に出されることなく大レースを走り続けてきたサムソンに、もう一度、あの唸るような走りを期待してしまうのは酷だろか。負けてしまったものの、武豊騎手のペース判断が光ったレースでもあった。

1番人気を裏切る形になったアサクサキングスにとって、前半の1000mが思いのほか遅く流れてしまったことが苦しかった。3コーナーの坂を下りながら、自ら早目に動いていったのだが、後方で脚を溜めていた馬たちにそれ以上の脚を使われてしまった。スタミナ勝負に持ち込めなかったことに悔いは残るだろうが、この馬としては良く走っている。ただ、直線では追われてフラついていたように、若さを残しているということだけではなく、少し太目が残っているかもしれない。いずれにせよ、全てを撥ね返して春の盾を手にするだけの力は付いていなかったということだ。

親子4代制覇の夢は叶わなかったものの、ホクトスルタンは昨年と比べて、少しずつ力を付けてきている。横山典弘騎手はもう少しペースを上げてくるのではと考えていたが、もしかすると菊花賞の二の舞にならないようにか、それともスタミナに不安があったのか、今回は抑える作戦に切り替えてきた。結果的に4着に残ったのだから大健闘ともいえるし、京都3200mの勝ちパターンではなかったともいえる。

ポップロックは昨年の有馬記念を境として、年齢的な衰えを感じざるを得ない。本質的にはステイヤーではないが、堅実だった馬がここまで惨敗をしている以上、ピークを過ぎてしまったのだろう。ドリームパスポートにとっても距離が長いだけではなく、今回のレースを観る限りは、3歳時のような勢いはなく、翳りが見え始めてきていることは否めない。

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イエス、キャプテン!

Satuki08 by fake Place
皐月賞2008-観戦記-
好枠を利してハナを奪った川田キャプテントゥーレが、前半61秒4ー後半60秒3という絶妙なスローペースを作り出し、2番手を追走したレッツゴーキリシマはほとんど競りかけることもなく、隊列に蓋をするような形で、ラスト600mまでは全くレースが動かず淡々と流れた。追い込みが利きづらい重い馬場とスローの展開が重なり、後ろから行った馬にとっては勝ち目のないレースであった。

勝ったキャプテントゥーレは、展開と馬場に恵まれたことは確かだが、4コーナーを回って後続を突き放したように、他馬に付け入る隙を与えなかった。同じような形になったデイリー杯を楽勝したように、自分のペースで行けると実力を十二分に発揮するタイプである。弥生賞は追い切りの本数が足りない状況での凡走だったが、今回はここを目標にマイナス18kgと究極の仕上がりにあった。今回は全てが上手く行った感が強いが、距離が伸びて悪い馬体ではなく、ダービーでも好走を期待してもよいだろう。

川田将雅騎手にとっては初めてのG1勝利となったが、らしい騎乗であったと思う。追っ付けながらでも迷いなく先頭に立ち、道中は出来るだけ遅いラップを刻むことに腐心し、キャプテントゥーレのジワジワ伸びる脚質を考慮に入れて早めに追い出した。朝日杯フューチュリティSでは直線でヨレたことを指摘したが、今回はラチを頼らせることによって、ゴールまで真っ直ぐ走らせることに成功した。技術的なことはもとより、川田将雅騎手の思い切りの良さが光った好騎乗であった。

2着を確保したタケミカヅチは、内々の経済コースを進み、最後も内を突いて差し込んだ。ゴールドアリュールの産駒だけに、こうした時計の掛かる馬場も苦にしないのだろう。一瞬しか脚が使えないため、自ら動いて行けない分だけ勝ち切れないが、それでも確実に良い脚を使っていることは評価できる。中間の追い切りで好時計を連発していたように、この馬も究極の仕上がりにあったことが好結果につながった。柴田善臣騎手の終始内にこだわった、一発勝負の騎乗も見事であった。

マイネルチャールズは最初から行きっぷりが悪く、道中で進みたかったポジションを取ることが出来なかった。スローペースの中団で馬群に揉まれながら、最後はなんとか抜け出してきたものの、いつもの迫力はなく、直線に向いた時は既に遅しであった。あくまでも結果論ではあるが、弥生賞を勝つために細いくらいに仕上げていたことが、本番で疲れとして出てしまったのだろう。これは弥生賞を勝った馬が皐月賞で惨敗してしまう理由のひとつでもある。体調が下降線を辿っている以上、今後のダービーに向けての明るい材料はない。

レインボーペガサスは抑える作戦が裏目に出てしまった。後方から出走馬中で最も良い脚を使っていたように、前々で競馬することが出来ていれば、もう少し差が詰まっていたはずである。とはいえ、この馬自身もキッチリと仕上がっていたように、ダービーに向けて大きな上積みは期待できないだろう。

スマイルジャックは前走とは全く別馬のような負け方であった。1コーナーで口を割って苦しがっていたように、パドック写真や追い切りの動きからは分からなかったが、前走でマイナス10kgと仕上げられたことによる反動があったようだ。トライアルで出走権利を取りに行くことと、皐月賞を勝つことを両立する仕上げは本当に難しい。

ショウナンアルバは大外枠がアダとなってしまった。行き切るか抑えるか、出たなりで決めようと蛯名騎手は考えていたのだろうが、内枠のキャプテントゥーレに先手を取られてしまい万事休す。抑えて競馬をしたことにより、終始外々を回されてしまい、4コーナーでは既に脚を失ってしまっていた。切れる脚のない馬だけに、4コーナー手前で動いたのは仕方ないとしても、全てにおいて中途半端な競馬であったように映った。蛯名騎手に迷いがあったか。

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この時期の牝馬の難しさ

Okasyo08 by echizen
桜花賞2008-観戦記-
デヴェロッペとエイムアットビップが暴走気味にレースを引っ張り、前半46秒4-後半48秒0という、魔の桜花賞ペースで道中は流れた。長い直線を考えると、差し馬におあつらえ向きの展開となったにもかかわらず、後方で脚を溜めていたはずの有力馬たちは伸び切れなかった。この時期の牝馬の難しさに、新阪神マイルコースにおける展開の妙が加わって、3連単が歴代6位の高配当という大波乱の決着となった。

まずは1番人気を背負って負けたトールポピーについてだが、正直に言って、これといった敗因が見当たらない。マイナス10kgの馬体も、細くは映らなかったし、キッチリと仕上げられてのものだろう。パドックや返し馬でも入れ込まず、ゆったりと歩けていたように、精神的な部分に敗因を求めるのも難しい。それでも、勝ち馬のすぐ後ろの絶好位にいながら、早めに手応えが怪しくなったのを見ると、どこかに問題があったことは確かである。この時期の牝馬特有のフケ(発情期)の影響という結論には逃げたくはないが、そうせざるを得ないほど、凡走の理由が全くもって分からない。

リトルアマポーラは前走で減っていた馬体を戻していたが、その分、上積みは少なく、反応が少し鈍かった。それでも、最後までジワジワと脚を伸ばしており、負け方としては悪くはない。この馬自身の血統的背景を含めて考えると、次走のオークスでの巻き返しは大いに期待できるはず。

オディールはパドックから入れ込んでおり、レースでも気負ってしまい、折り合いを欠いてしまった。あれだけのハイペースで力を入れて走ってしまえば、最後にガス欠を起こしても仕方ない。安藤勝己騎手としては将来を考えてゆっくりと行きたかったはずだが、期待外れの内容に終わったと言っても良いのではないか。この馬の適性を考えると、オークスよりもNHKマイルカップに駒を進めるべきだろう。

勝ったレジネッタは、道中が極端なハイペースになったことにより、外枠から馬群に包まれずに進められたことが大きくプラスに働いた。前走のトライアルで差す競馬を身に付け、本番ですぐに結果を出したように、よほど末脚を生かす競馬が合っているのだろう。それを引き出した小牧太騎手に最大の功績はあり、前走は仕掛けのタイミングの差で負けて悔しい思いをしたが、今回は慌てず騒がずドンピシャのタイミングでゴール前を突き抜けた。小牧太騎手にとっては中央に移籍して以来、初めてのG1勝利である。トンネルが長かっただけに、これからは吹っ切れた騎乗をぜひとも期待したい。

エフティマイヤは新潟2歳Sを制した後、凡走を繰り返していたが、本番でようやく復活した。ハイペースを先団で追走しての2着だけに、その価値は高い。開業したばかりの鹿戸雄一厩舎に移ったことで、環境が変わったこともプラスに働いた。マイナス10kgと極限の仕上げを施してきたように、厩舎にとっても勝負を賭けた一戦だったのだろう。

3着に突っ込んだソーマジックは、最後は切れ負けしてしまったが、ジワジワとよく伸びている。奥行きのある血統だけに、距離が伸びてさらに良いはずだし、もう少し時計の掛かる馬場であればなお強さを発揮できるはず。この馬の渋太さを生かして、早めに仕掛けた後藤騎手のファインプレーも際立っていた。

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寸分の狂いもない

Takamatumiya08_2 by photostud
高松宮記念2008-観戦記-
降り出した雨の影響もなく、絶好の良馬場でレースは行われた。逃げ馬不在でスローペースが予想されていたが、蓋を開けてみれば前半33秒4-後半33秒7という、ハイペース寄りのミドルペースでレースは流れた。こうなるとスピードだけで押し切ることは難しく、スタミナを備えた末脚の爆発力に優る馬たちが台頭する、いつもの高松宮記念となった。

勝ったファイングレインは、抜群のスタートを切ったことにより、無理をすることなく好位を追走し、手応え抜群で直線に向き、先に抜け出していたキンシャサノキセキに襲い掛かった。着差はクビ差であったが、内容は完勝と言ってよい。これで1200m戦は4戦4勝の負け知らずで、短い距離での爆発力を要求されるスプリント戦が気性的に合うのだろう。棚からボタ餅のような形でスプリント適性が証明されたファイングレインが、G1レースまで勝ってしまうのだから競馬は面白い。

ファイングレインを勝利に導いた幸騎手の手綱捌きは見事であった。スタートからゴールまで、寸分の狂いもない、緻密なレース運びであった。G1レースのペースを考慮に入れて、前半から積極的に前へ推進力を強めて追走したことにより、4コーナー手前では、追い出しのタイミングを図る余裕が生まれた。僅かなミスが命取りとなるスプリント戦だけに、位置取りからコース取りまで、全てを理想的に運んだ幸騎手の騎乗は賞賛に値する。

2着に好走したキンシャサノキセキは、やはりG1のスプリント戦の流れが合う。この馬自身はいつものように引っ掛かってはいるものの、道中のペースが速いため、全体の流れから見てのロスが少ない。それでも、差し切られてしまったのは、道中で力んで走ってしまうこの馬の悪い癖ゆえのロスが最後の最後に響いたからである。こういう癖は馬の本質なので、改善される余地は少ないが、癖がカバーされる流れの速いスプリント戦であれば今後も好走可能である。

スズカフェニックスはスタートで躓いたことが全てである。本当であれば勝ち馬(ファイングレイン)の進んだコースを走りたかったのだが、立て直した時には既に遅し。馬の躓きは偶然の要素が強いのだが、今回は福永騎手の力みがスズカフェニックスに伝わってしまってのものではないかと想像する。具体的に言うと、内枠であったこともあり、強く出すつもりが、強く出しすぎてしまったということではないのだろうか。あの位置取り、コース取りでは、さすがの前年の覇者も3着に突っ込んでくるのが精一杯であった。

ローレルゲレイロは最後まで良く粘っている。直線でフサイチリシャールに強引に外から来られたことは痛かったが、それでも大きく崩れなかったように、ここにきて更に力をつけている。スプリント戦でもスピードは劣らないことを証明したが、末脚に力のない馬だけに、ベストの距離はやはり道中が緩む1400m~マイル戦だろう。

スーパーホーネットは道中の行きっぷりが悪く、最後の直線で良く追い込んだが、掲示板を確保するのが精一杯であった。スプリント適性も十分にあり、仕上がりも良かったのだが、それでも休み明けでいきなりの激流は厳しかった。典型的な、休み明けのG1スプリント戦といった内容の走りであった。

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かつてクロフネ以外に私は知らない

Febs08 by M-style
フェブラリーS2008-観戦記-
ダート初参戦のヴィクトリーが先頭を奪い、前半の1000mが59秒1という、超がつくほどのハイペースを創り出した。多少時計の掛かる馬場だったことを含めると、1分35秒3の勝ち時計は速く、レース全体のレベルも高く、実力が如実に反映されるレースとなった。

勝ったヴァーミリアンはスタートを決め、絶好の位置取りを一瞬にして確保した。スターとしてからの80mが芝だったことも有利に働き、この時点で勝負あった。テンが速いだけではなく、ハイペースの中盤を難なく追走し、直線に向いて馬なりで先頭に立つと、最後はひと伸びふた伸びしての圧勝であった。プラス7kgの馬体重からも、わずかに太目残りで完調一歩手前だったにもかかわらず、この内容だから恐れ入る。

これほどまでに高い次元でスピードとスタミナが融合されたダート馬を、かつてクロフネ以外に私は知らない。この後、上手く調整することが出来れば、昨年以上の充実を見せる今年こそ、ドバイワールドカップを勝つ本物のチャンスだろう。

武豊騎手の自信満々の手綱捌きも目立った。スタートの巧さは言うまでもないが、ドバイのレースをイメージしながら、ワイルドワンダーのポジションを潰してしまうあたりの強かさはさすが日本のトップジョッキーである。他の騎手に対して全く隙を作らない騎乗をしながらも、それを何事もなく回ってきたように見せるあたりが心憎い。

8歳馬のブルーコンコルドは、最近には珍しく、道中の行きっぷりが抜群であった。マイルの距離が合っているということ以上に、体調が戻っていたということが大きい。最終追い切りを坂路コースからDWコースに切り替えたことも功を奏したのだろう。最後のひと追いで、馬がキッチリと仕上がっていた。全盛期と比べると迫力はなくなったが、馬自身がレースを知っているし、これだけ厳しい流れを最後まで踏ん張ったのだから、本当に頭が下がる。

ワイルドワンダーはスタートで一瞬出負けしたことにより、獲りたかったポジションを武豊ヴァーミリアンに先を越されてしまった。同じ位置取りで、ヴァーミリアンの外を回ってはとても敵わないので、一旦後ろに下げ、一瞬の脚を生かす作戦に切り替えた岩田康誠騎手の判断は見事であった。仕掛けをもうすこし我慢しても良かったが、あれだけ馬が前に行く気になってしまっては仕方ないか。4コーナーでは、ヴァーミリアンと同じ手応えで回ってきたものの、最後はスタミナ切れを起こしてしまった。勝ちに行かなければ2着はあったが、勝ちに行っての3着と好評価したい。

ロングプライドは行き脚がつかず、レースの流れに乗り切れなかった。今回のような速いペースになってしまうと、ついて行くだけで脚を使ってしまい、持ち前の切れ味を生かすことが出来ない。同じことはメイショウトウコンにも当てはまり、スローの瞬発力勝負に強い同馬にとっては、道中のペースが速すぎて、逆に差し脚を失ってしまっていた。

リミットレスビッドは好走と凡走を繰り返す馬だが、今回は最後までキッチリと走っていた。高齢馬になると、手を抜いたり、気を抜いたりして、連続して走らない傾向が出てくるのは仕方のないことである。短い距離であればまだまだ力上位であることを改めて証明した。

フィールドルージュはどうしたのだろう。スタートしてから行き脚がつかなかったように、もうこの時点で故障を発生していたに違いない。絶好調だった川崎記念と遜色ない雰囲気でパドックを歩いていただけに、最後まで走らせてあげたかった。


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豪腕

Kisaragi08 by echizen
きさらぎ賞2008-観戦記-
メジロガストンが引っ張ったレースは、前半48秒6-後半48秒0という京都1800mに典型的な平均ラップで流れた。どの枠でも、どの位置からでもチャンスのある、まさに展開いらずのレースで、最後は各馬一線の迫力のある追い比べとなった。

勝ったレインボーフェニックスは、ペリエ騎手にビッシリと追われ、最後までしっかりと伸び切った。大外枠からスムーズにレースを進められたことが最大の勝因であろう。これまで全て1番人気に推されていたように、素質を高く評価されていた馬だが、今回は芝で未勝利であったことに加え、休み明けということで人気の盲点となっていた。今回のレースで、芝でも走れる、いや芝の方が走るということを証明した。また、ペリエ騎手の豪腕が目立ったレースでもあり、ゴール前では全盛期のペリエ騎手を見た気がした。

スマイルジャックも僅かに負けてしまったが、最後までシッカリと伸びている。スタートしてから最後の直線に向くまで、絶妙な位置取りを進んでいたように、小牧太騎手のほぼ完璧な騎乗が光った。これで負けたのだから、勝ち馬には力負けを認めるべきだろう。もうワンパンチ足りない印象だが、スマイルジャック自身も前走の若竹賞を叩いて体調がアップしていたし、伸び伸びと走ることのできるコースの方が合っていたのだろう。

ヤマニンキングリーは藤田伸二騎手に導かれ、最後はあわやと思わせる伸びを見せた。成長分を含めても少し重め残りだったはずで、それでもここまで来たのだから、さすがにレベルの高い黄菊賞を勝っただけのことはある。器用さに欠ける馬だけに、直線の長いコースならば、これからもその末脚を十分に生かす競馬が出来るはず。この馬にとっては次走が試金石か。

レッツゴーキリシマは57kgを背負って頑張ったが、この馬にとっては少し距離が長かったのだろう。テンから少し掛かり気味で先行したように、前走でマイルを使っていたことがマイナスに出てしまった。もちろん、休み明けであったことも引っ掛かった原因のひとつではあるので、叩いた次走は折り合えるだろうし、距離も2000mぐらいまでなら十分にもつ馬である。

ダイシンプランは最後方からよく伸びたが、前も伸びていたので届かなかった。能力は高いだけに、もう少し気性が大人になって、レースにしっかりと参加できるようになれば怖い1頭である。アルカザンは道中折り合いも付いて直線に向いたが、最後は休み明けの分、伸び切れなかった。

圧倒的な1番人気に推されたブラックシェルは、スタートから立ち遅れて、最後は外から伸びて来たが、わずかに差を縮めるのが精一杯。最終追い切りの動きも重く映ったように、プラス10kgの馬体重が示すとおり、少し太目残りでの出走であった。この時期の坂路コースの調教馬は絞り切れないことがあるので、これからも注意して見るべきである。


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力を信じて

Silkroads08_3シルクロードS2008-観戦記-
抑える競馬をすると踏んでいたアストンマーチャンが逃げ、創り出したのは、前半33秒7―後半35秒4という前傾ラップ。特に3ハロン目も10秒8というG1レース並みのハイラップを刻んでおり、この辺りで先行集団にいた馬たちは、最後の直線で軒並みバテてしまった。

勝ったファイングレインは、スタートから自分のペースでレースを進め、最後は桁違いの末脚で全馬を差し切った。マイル以上の距離になると甘さを見せる馬だが、底力の不足を補えるこのくらいの距離が合っている。高松宮記念は開催5日目で馬場も傷んでくる時期なので、今回こうした馬場で結果を残せたことは大きい。直線が短い高松宮記念は仕掛けどころが難しいが、幸騎手には今日のように馬の能力を信じて乗って欲しい。

コパノフウジンが久しぶりに好走した。前走で惨敗したことによりハンデが軽くなっていたこともあるが、レースの流れに上手く乗り、最後はステキシンスケクンの猛追を凌ぎ切った。先行争いが激しくなるのを横目に、馬のリズムに合わせて走らせた、藤岡祐介騎手の当たりの柔らかい騎乗が目に付いた。

ステキシンスケクンも、差しに回って好走した。気難しいところのある馬だけに、あの先行争いに巻き込まれてしまっていたら、おそらく着外に消えていただろう。ペースを読み切って、馬の新たな面を引き出した岩田康誠騎手の絶妙の手綱捌きであった。

1番人気に推されたアストンマーチャンは、休み明けをあれだけのペースで飛ばしては失速もやむを得ない。高松宮記念のことを考えて、抑える競馬を試してくると思っていただけに、逃げて惨敗とは何ともやるせない。今回のレースにおいて勝つ確率の高い乗り方をしたということなのだろうが、それではなぜ武豊騎手に手綱を戻したのか分からないし、少なくとも次走へ繋がる負け方(乗り方)には見えなかった。

アイルラヴァゲインも不甲斐ない負け方であった。休み明けにしては体も出来ていただけに、ハイペースを追走したとはいえ、とてもG1を意識できるような走りではなかった。ペールギュントはルメール騎手が積極的に攻めすぎたことが裏目に出てしまった。普段どおりの終いを生かす競馬をしていれば、上位に食い込んでいただろう。ただ、これはあくまでも結果論で、乗り方と展開次第で、次回の巻き返しは期待できる。

upper photo by Deliberation


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最有力候補に

Negisi08
根岸ステークス2008-観戦記-
降雪による中止明けの1戦で、ダートは水が浮きそうな泥んこ馬場でレースは行われた。ここまでの不良馬場になってしまうと、まともに泥を被ってしまう(被らざるを得ない)位置でレースを進めた馬にとっては厳しいレースとなる。

そのような状況の中でも、勝ったワイルドワンダーは、飛んでくる泥をモノともせず、最後の直線で爆発的な差し脚を発揮した。JCダートで引っ掛かっても4着した実力は本物であることを証明した。精神的にも強い馬なのであろう。体型的なことを考えると、マイルのG1フェブラリーSは適鞍であることは間違いなく、最有力候補にのし上った。唯一の心配材料は、マイナス8kgとキッチリ仕上がり過ぎていたように見えたことぐらいか。

タイセイアトムが刻んだ34秒3-36秒4というラップは、馬場を考えると、およそ淡々とした平均ペース。外枠と馬場を味方につけたことは確かだが、タイセイアトムは4コーナーも持ったままで、一瞬勝ったかと思わせる力強い走りであった。坂路調教でのパワーアップがそのままレースに繋がっている。スタートしてからムキになって走らなかったように、精神面での成長も大きい。スピードに溢れる馬だけに、これ以上距離が伸びてプラス材料にはならないが、もしフェブラリーSに出走してくるのであれば目を離せない馬の1頭である。

アドマイヤスバルは、トウショウギアの故障事故に巻き込まれるような形で、道中で一気にポジションを落としてしまった。もはや万事窮すの状況であっただけに、あそこから最後の直線だけで3着まで追い上げてきたことには驚かされた。あのまま流れに乗っていれば、勝ち負けになっていたことは間違いない。少し間隔が開いて、馬体も増えていたように、ひと叩きした次走での巻き返しに期待したい。

マイネルスケルツィは4コーナーまでは完璧な内容であったが、最後の直線で伸びを欠いた。プラス16kgの馬体が示すとおり、本番に向けて余裕を残した仕上げだったのだろう。この敗戦を負け過ぎとみるか、本番へお釣りを残したとみるかは人それぞれであるが、今回のレースに限っては見せ場もなく、期待外れの内容であった。

トーセンブライトもカフェオリンボスも、内で泥を浴びる厳しい展開の中、最後まで良く伸びてきているように、さすがダート歴戦のツワモノである。メイショウバトラーも勝ちパターンに持ち込んだが、最後は力尽きてしまった。年齢的なものか、疲労が残っているのか、ここにきて少し勢いが落ちてしまっている。トウショウギアはぬかるんだ馬場に脚を取られたのだろうか。非常に残念である。

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まさに勝ちパターン

Heians08 by echizen 

冬場ということもあり、意外なほどに馬場が回復せず、わずかに水分を含んだやや重馬場でレースは行われた。前半48.5-後半49.7というハイペースであるが、これぐらい速くなっても、やはり平安ステークスはなかなか前が止まらない。内枠を利して積極的に攻めたクワイエットデイとマコトスパルビエロの間に、メイショウトウコンがなんとか割って入ったところがゴールであった。

クワイエットデイは、陣営の希望通りの湿った馬場であったことも幸運であったが、馬自身も前走のペテルギウスSを叩いて調子を上げていた。ゲートを出てすぐさま好位の内という理想的ポジションを確保し、スタートしてから気合をつけた分、道中はわずかに引っ掛かったが、3コーナー過ぎには落ち着き、4コーナーでは引っ張りきれない手応え。あとはゴール目がけて追い出すだけという完勝であった。まさに勝ちパターンの、非の打ち所がない角田騎手の騎乗であった。

メイショウトウコンにとっては少しペースが速すぎたこともあるが、4コーナーでの手応えが少し悪かったように、昨年のエルムS時と比べると、体調が落ちてきているのだろう。それでも最後は差を詰めたように、G1レースで揉まれてきた意地は見せた。

マコトスパルビエロのプラス22kgの馬体重は、わずかに太目も残っていたが、ほとんどが成長分と考えていいだろう。55kgを背負ってこのペースを粘り通したのだから、休養前に比べて力を付けてきていることは間違いない。G1レベルでは末脚のパンチ力が少し足りないが、これからは重賞レース上位の常連になるだろう。

ロングプライドも最後まで良く伸びているが、どうしても届かなかった。4コーナーではメイショウトウコンよりも手応えが良く映ったにもかかわらず、伸び切れなかったのだから力不足だったと言ってよい。湿った馬場状態を苦手とするこの馬にとって、やや重の馬場も不利に働いたのかもしれない。

ドラゴンファイアーは全く見せ場なしの惨敗を喫してしまった。連勝が止まったことによる肉体的、精神的な疲れが尾を引いているのか、この馬本来の走りではなかった。まだ馬体にも若さを残す馬だけに、今回で見限るのは早計で、この先、さらに成長することを期待できる素質馬であることに変わりはない。

距離が少し長かったのか、フェラーリピサは最後の直線で伸び切れなかった。他の4歳馬よりも重い57kgの斤量を背負っていたことも、わずかに響いている。同じことは59kgを背負ったボンネビルレコードにも言えて、最後は猛追してきたもののわずかに届かなかった。

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ただひたすらに

Nikkeisinnsyun08 photo by mighty

スローになることを意識した若手ジョッキーたちが、好位を確保しようと第1コーナーへ殺到したため、前半47秒9-中盤50秒2-後半49秒3という一昨年にアドマイヤフジが勝った時とほぼ同じラップ構成でレースは流れた。3コーナーからマキハタサイボーグが強引に動いていったことも加わって、先行した馬たちにとってはかなり厳しい、前崩れの展開となった。

それにしても、昨年に続き勝利した安藤勝己騎手の手綱捌きには驚かされた。「全体の流れが速いときには遅く行き、遅いときには速く行く」は騎乗のイロハのイだが、前半800mは死んだふりをして、ペースの落ちた向う正面で位置取りを上げたペース判断には非の打ち所がない。勝負どころでのコース取りや馬群の捌き方は、もはや神業と言ってもよいだろう。直線に向いてからも、抜け出すと気を抜くアドマイヤモナークを焦って追い出すことなく、内からヨレてきた川田騎手のトウカイワイルドを余裕を持って交わしてから、最後の最後にゴーサインを送った。ただひたすらに、安藤勝己騎手の冷静さが際立ったレースであった。

勝ったアドマイヤモナークは、後ろから差して届かずの歯がゆいレースが続いていたが、前走の万葉Sを叩いて体調もアップしていたし、今回は展開面がバッチリと嵌った。首の高い走法の馬だけに、こういう渋った馬場も合っていたのだろう。こういう脚質の馬だけに、展開面に左右されがちな馬ではあるが、長距離戦であれば安定した末脚を生かして活躍が見込まれる。

2着に突っ込んだダークメッセージは、どうしてもワンパンチ足りないが、武豊騎手のソツない騎乗に導かれ、何とか連対を確保した。勝ちパターンの展開だっただけに悔しいだろうが、勝ち馬の決め手が一枚上であった。

テイエムプリキュアは厳しい展開の中、最後まで良く走っている。この馬も頭の高い走法で、渋った馬場を滅法得意とするタイプである。血統的にもネヴァーベンド系の馬だけに、こういう道中の流れが厳しく、上がりの掛かる競馬も合っていた。スローペースが常の長距離戦で安定した走りを期待するのは難しい馬だが、また忘れた頃に穴を開けることもあるかもしれない。

1番人気に推されたアドマイヤジュピタは、雨が降って力の要る馬場で57kgを背負ったこと、先行争いに巻き込まれたこと、そしてプラス18kgの太目残りの馬体と、あらゆる悪条件が重なってしまい、最後は末脚をなくしてしまった。それでも、大きくは負けておらず、これで見限るのは早計か。

モッタイナイ乗り方をしたのがオースミグラスワンである。ギリギリまで溜めてこその馬で、もう少し仕掛けのタイミングを遅らせれば、上位入線も可能であったのではないだろうか。跳びの大きい馬だけに追い出してからノメったところもあったのだろうが、福永騎手の焦りが目に付いたのも確かである。


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KY有馬記念

Arima07 by fake Place
有馬記念2007-観戦記-
外枠からチョウサンが少々強引に先頭を奪い、創り出した流れは前半73秒5、後半73秒2というイーブンペースに見えるが、実は前半中盤後半に分けると、前半46秒9、中盤51秒0、後半48秒8というまるで長距離戦のように中盤が緩む差し馬にとって厳しいペース。それに加え、当日朝まで降り続いた雨が時期的にも乾きづらく、地盤は緩み、全馬のスタミナを奪う馬場であった。前に行った馬もバテているが、後ろから行った馬もバテているという、まさに行ったもん勝ちのレースとなった。4コーナーでは既に大勢が決しており、ゴール後に蛯名騎手が発した「よっしゃ!」の喚声だけが沈黙の中山の冬空に響き渡った。

大金星を獲得したマツリダゴッホの勝利は、中山競馬場に対する適性以上に、力の要る馬場に拠るところが大きい。他馬が馬場にスタミナを奪われて手応えがなくなる中、この馬だけは絶好の手応えで4コーナーを回り、あとは後続を離す一方であった。こういう首の高い馬は、手脚に力を入れて走るため、道悪・力の要る馬場に滅法強い。サンデーサイレンス産駒のマツリダゴッホは一見顕著に映り、パワーを感じさせないのだが、この馬の走法が今回の馬場にピッタリと一致したということだろう。また、ジャパンカップをスキップした効果もあり、体調も最高の状態にあった。

2着に粘りこんだダイワスカーレットは本当に良く走っている。スタートから絡まれて、道中は少しエキサイトして走っていたように映った。なんとか折り合ってはいたものの、これまでの自分の型でレースをさせてもらえなかった中での連対確保だけに、その価値は高い。展開に恵まれた面は確かにあるが、それ以上にこの馬の強さと勢いを見せつけた走りであった。牝馬だけに、来年も同じテンションの走りを期待するのは難しいかもしれないが、末恐ろしい牝馬であることは間違いない。

これが引退レースとなったダイワメジャーも最後まで伸びている。これがラストランとなるのがもったいないほどの、力強いレースであった。距離不安があっただけに、マイル+800mという競馬をデムーロ騎手は意識していたのだろう。また、少しでもスタミナを温存するために、ダイワメジャーのような大型馬を手綱一本でコントロールしながら、内埒ギリギリを通るコース取りも見事であった。

惜しいレースだったのが4着に入ったロックドゥカンブである。キネーン騎手が他の有力馬を意識したのか、それとも馬自身が前に行けなかったのか、前半から積極的に攻めることなく、好位を確保することが出来なかった。前走の敗因を踏まえると、もう少し無理をしてでもポジションを取りにいっても良かったのではないかと思う。このあたりは、たとえ世界的ジョッキーとはいえ、ポンと来て乗り慣れていないキネーン騎手と、勝った蛯名騎手との間には大きな差があったように感じた。

1番人気に推されたメイショウサムソンは、4コーナー手前の時点で手応えが全く残っていなかった。スタートしてからの行きっぷりも悪く、武豊騎手がおっつける始末で、道中もずっと推進意欲のない走りに終始してしまった。ここまで惨敗してしまうと、走られるだけの体調になかったことは明らかである。凱旋門賞を目指して放牧に出さずに、厩舎で夏を越したツケがここに来て出てしまったということだろう。

ポップロックは4コーナー手前までは抜群の手応えに見えたが、追ってから全く伸びなかった。年齢的にピークを過ぎていたのか、それともジャパンカップが意外と厳しいレースで反動があったのか分からないが、いずれにせよ本来の体調にはなかった。

ウオッカは前走よりも積極的な競馬を心掛けたが、結局伸びきれずに惨敗した。秋華賞とジャパンカップ、そして今回の走りを見る限り、敗因は乗り方ではなく、ウオッカ自身の体調にあることは明らかである。ダービーを勝った反動はそう簡単には抜けない。春までゆっくり休養して、また強いウオッカとしてターフに戻ってきて欲しい。

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強運、強運、また強運

Asahifs07 by M-style
朝日杯フューチュリティS2007観戦記
ゴスホークケンがポンと1頭だけ飛び出し、そのままハナを奪う形であっさりと隊列は決した。前半800mが46秒3、後半800mが47秒2だから、決してスローではないが、それでも毎年ハイペースで流れる朝日杯フューチュリティSにしては遅いと言ってよいだろう。それは道中の馬群の密集度合いにも表れていて、スピードに溢れる馬が多いこのメンバーにとっては明らかにスローであった。さらに5回中山の最初は内が止まらないという特性もあり、外を回らされた馬と後ろから行った馬にとっては極めて厳しいレースとなった。

ゴスホークケンの最大の勝因はマイペースに持ち込めたことに尽きる。1番枠からの好スタートで、道中は誰も競りかけてこないという、まるで勝ってくださいといわんばかりの楽な競馬であった。大型馬だけに、ゴチャつかない展開になったのも良かった。それでも、直線に向いてから2番手以降を突き放したように、単調なスピードだけではなく、パワーとスタミナをも感じさせる外国産馬である。前走の東京スポーツ杯は中間の乗り込みが少なかったが、今回はポリトラックコースでしっかり追えたように、仕上がりも全く違っていた。今回は逃げる形になったが、今後色々なパターンの競馬が出来るようになれば、かなりの活躍が期待できるだろう。また、テン乗りの勝浦騎手の好スタートから躊躇なく先手を奪った一瞬の判断が光った。

2着に食い込んだレッツゴーキリシマは、好枠とスローの展開を幸騎手が見事に生かした。道中も全くスタミナのロスのない形で進み、直線に追い出されてからも良く伸びている。これ以上の距離延長はマイナスだろうが、マイルまでなら持ち前の渋太さを発揮できるだろう。マルゼンスキーの母シルから流れる血が、ここで実を結んだというのも血統の奥深さを感じざるを得ない。

キャプテントゥーレにとっては願ってもない流れになったにもかかわらず、直線はあっさり突き放されてしまった。パドックで入れ込んでいたように、初めての長距離輸送が若干影響したのかもしれない。それにしても、川田騎手の直線での追い出しは無駄がありすぎる。追えるという印象をアピールしたいのは分かるが、あそこは内から伸びてきたレッツゴーキリシマに併せていく冷静な判断をしていれば2着は確保できたのではないだろうか。

最終的に1番人気に推されたスズジュピターは何とも中途半端な競馬で終わった。切れる脚のない同馬にとっては位置取りが少し後ろ過ぎたため、直線でバテてはいないが前との差を詰めることも出来なかった。テン乗りということもあったのだろうが、自ら動ける馬でもあるので、最後まで何もしないで終わったのはペースが読めていないと言われても仕方ないだろう。

外枠から最も苦しい競馬を強いられたのがアポロドルチェ。これだけ詰まった馬群の外を回れば、どれだけ強い馬でもバテてしまう。ガッチリとした短距離馬だけに、余計に距離ロスが最後に響いてしまった。後ろから一気に伸びる馬ではない以上、強引な競馬をしなければならなかったのだが、それにしても強引すぎる競馬であった。力負けではないので、次回以降の巻き返しに期待したい。

サブジェクトは大外の不利を克服すべく、内に切れ込む作戦を取ったが、この展開ではなす術がなかった。直線で外に出してからも前が壁になり、ほとんど追えず何も出来なかった。パドックでは堂々と歩いて状態も良かっただけに残念な結果である。欲を言えば、直線は内を突くべきであった。実際に外が詰まり、内が開いていたのだから。ヤマニンキングリーもこのペースでは手も足も出なかった。完成するのはまだ先という感じを受けるが、血統的背景のある馬だけに将来に期待したい。

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大逆転

Hansinjf07_2好発の武豊レジネッタが先制攻撃を仕掛ける形で、マイネブリッツがハナに立ち、途中からエイシンパンサーが先頭に踊り出たレースは、前半46秒2、後半47秒6という前傾ペース。新阪神マイルコースは3コーナーから4コーナーがゆったりと流れることが多いが、今回はジョッキーたちがそのことを多分に意識しすぎた結果、まさかのハイペースとなった。外枠を引いたジョッキーたちが、スローに流れることを嫌い、前々へと位置しようと積極的に動いたことの影響も大きい。そのため、早熟のスピード馬たちが直線の坂で力尽き、後発の中距離馬が逆転した。

勝ったトールポピーは、中団後ろからレースの流れに乗り、最後はきっちりと全馬を差し切った。追い切りでも首を上げたりする仕草を見せていたように、乗り難しいところのある馬だが、道中が息をつくところのない流れになったおかげで、かえって悪い部分を出すことがなかった。他馬に比べ、スタミナでは優位に立つだけに、今回のような底力を試される厳しい流れはまさにピッタリであった。

池添騎手は差し馬に乗せるとさすがに巧い。道中で慌てることなくトールポピーを流れに乗せ、他馬が動き始めた4角でも仕掛けのタイミングを遅らせて、直線に向いてから落ち着いて追い出していた。スイープトウショウから教えてもらった、差し馬に乗って我慢することの大切さを見事に実践していた。

2着に突っ込んできたレーヴダムールは展開の利を得たことは否めないが、それでもキャリア1戦であったことを考慮すると好走中の好走である。スタートで立ち遅れたが、かえってハイペースに巻き込まれることがなかった。新馬戦もレベルの高いレースであったが、タイムを2秒以上縮めたように、マイラーとしての資質が非常に高い。中間も調教のピッチを上げてきていたように、前走からかなりの上積みもあったのだろう。パドックでも、とても2戦目とは思えない落ち着き、かつ柔らかい歩様でしっかりと歩いていた。

エイムアットビップは一瞬あわやと思わせるレース振りで、惜しい3着。レースの流れを見極め、行きたがる馬をなだめながらここまで持ってきた福永騎手の腕が光った。オディールを目標として、スタミナを最後まで温存したことが最後のひと伸びに繋がっていた。これぐらい落ち着いたレースが出来れば、今後も楽しめそうな馬である。

1番人気に推されたオディールは、安藤勝己騎手が正攻法の競馬をしたが、最後は力尽きて4着。予想外のハイペースとなり、マイル以上のスタミナを要求されるレースになったことが、この馬にとっては凶と出た。それでも最後まで踏ん張っており、この馬の能力も高い。

シャランジュは道中ピタリと折り合いが付き、最後の直線でもしっかりと伸びている。最後の直線の入り口でニシノガーランドに寄られたのは痛かったが、突き抜けるまでの力はなかった。レジネッタは、これだけの速いペースを前半から攻めての6着だけに、力があることを証明した。アロマキャンドルは3コーナーで外から内ラチにぶつけられてしまい手応えがなくなった。レースにならなかったのは確かだが、これだけのハイペースではまともに走っていても苦しかったか。ラルケットもスタートで出遅れた上に、道中もバタバタしてしまい、力を出し切れなかった。

photo by mighty

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フルムーン

Japancup07 by echizen

チョウサンが先頭に立って作り出した流れは、前半72秒8、後半71秒9というイーブンペースよりやや遅めの、特に中盤が緩んだスローペース。ラスト3ハロンの勝負になったことにより、中団より前に位置できなかった馬にとっては極めて厳しい展開となってしまった。

勝ったアドマイヤムーンは、最後は詰め寄られたものの、ほぼ完勝と言ってよい。直線の坂を駆け上がってから一気に伸びたその脚力は、ドバイデューティーフリーを思い出させる強烈さであった。距離不安が囁かれていたが、今年に入って胴部が拳1個分ほど伸びていたように、決して2000mまでの馬ではなかった。力の要る馬場であったことに加え、天皇賞秋を叩かれて体調も万全で臨んできていたことも勝因のひとつであった。

岩田康誠騎手はアドマイヤムーンの力を出し切る完璧な騎乗であった。折り合いを欠くことを恐れることなく、スタートから強気で好位を取りに行き、1コーナーでは少しゴチャついてしまったが、それ以降は最高の位置取りでレースを進めることが出来た。直線で前が開いてもギリギリまで仕掛けを待ち、坂を登り切ってから追い出したタイミングも見事。これが東京コース初重賞とは思えない、まさに府中2400mのお手本のような乗り方であった。

2着に敗れはしたものの、ポップロックも最後の最後まで伸びていた。この秋に入って、末脚の切れ味も増してきている。府中コースも合っているし、前走から距離が延長されたことによって、レースの流れにもスムーズに乗ることが出来た。また、この馬も内枠を利して、強気に攻めたペリエ騎手の好騎乗が光る。惜しむらくは、最後の直線でわずかに前が壁になり、ワンテンポ追い出しが遅れたことだろう。エンジンの掛かりが遅い馬だけに、あそこさえスムーズに抜けていれば、もしかしたら勝利に手が届いていたかもしれない。

メイショウサムソンは明らかに外を回しすぎた。せっかく1~2コーナーを内ラチ沿いで進めたにもかかわらず、向う正面で外に出してしまったのはいただけない。これだけスローな展開であれば、4コーナーで大外を回したことによるロスは計り知れない。前が壁になるリスクはあったとしても、アドマイヤムーンが通ってきた進路をトレースしてくるのが勝つための定石であろう。安全策で外を回したというよりも、安易に外を回したという感が強い。当日、そのような乗り方をして何度も勝っていただけに、武豊騎手自身、少し傲慢になっていた部分もあったのだろう。

とはいえ、メイショウサムソンが思うほどに伸びなかったのも事実である。天皇賞に比べ、わずかに緩く仕上げた馬体に映った。秋3戦ということを考えて、中間の乗り込みも少なかったように、わずかに手加減して調整していたことが裏目に出た。いつになく馬場に入ってから入れ込んでいたし、スタートしてからの推進意欲もなかった。それでいて、外を回って3着に食い込んできているだけに、やはりこの馬は強い。まともに仕上げて来れば、有馬記念はまずこの馬のものだろう。

ウオッカはまだ本調子になかったのだろう。四位騎手はそれを考慮して位置取りを下げて乗っていたが、結果的には裏目に出てしまった。4コーナーの回り方は見事であったが、最後、メイショウサムソンに詰め寄ったところで力尽きてしまった。しかし、もしこの馬がダービー時の体調にあれば突き抜けていたかもしれない、と思わせるだけの迫力は見せてくれた。今年はゆっくりと休養させて、来年の活躍を楽しみに待ちたい。

京都大賞典とほぼ同タイムで同じ上がりにもかかわらず、インティライミが弾けなかったのは馬場の違いと馬体が少し重かったからであろう。今回のジャパンカップの馬場は野芝の成長も止まり、やや力の要る馬場になっていた。このメンバーに入ると華奢に見える馬だけに、もう少し軽い馬場で戦いたかったというのが本音だろう。また、京都大賞典から間隔が開いたことにより、プラス4kgと馬体が増えてしまったことが誤算であった。ギリギリに絞り込んでこその馬であり、調教はこなしていたものの、わずかに仕上がりが甘かったか。

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ヴァーミリアンの恩返し

Jcdirt07 photo by echizen

スタート後の100mを除いた前半1000mが57秒7、後半が61秒9という、超ハイペースでレースは流れた。これだけのハイペースになってしまうと、逃げ・先行馬に勝ち目はない。差し馬同士の決着となった中でも、最後まで末脚を爆発させたヴァーミリアンが、レコードタイムで圧勝した。

ヴァーミリアンはスタートも良く、道中はレースの流れに乗り、最後の直線は先に抜けたフィールドルージュ1頭に相手を絞って追い出された。ペースが速くなったことにより、この馬の強さが浮き彫りになった感もあり、見た目以上の楽勝であった。芝の重賞レースを勝っているように、このメンバーではスピードが一枚も二枚も抜けている。昨年の秋から馬が良くなっており、ドバイに行ったことで馬が完全に変わった。また、ドバイ遠征後に無理をさせなかったことが、この馬の成長をさらに促したのだろう。スピード、スタミナ、パワー、どの面から見てもまさにダートの鬼である。

武豊騎手は昨年の惜しい2着の借りを見事に返した。前半で前がかなりやり合っていたが、全く気にすることなく、ヴァーミリアンのリズムでレースを進めていた。そして、最後の直線に向いた際、周りの馬たちとの手応えを図りながら、1テンポ追い出しを我慢させた辺りの冷静さはさすがである。あのまま一気に行ってもおそらく勝っていただろうが、あそこで1テンポ遅らせたことでヴァーミリアンの勝利を確定させたと言ってよい。

惜しくも2着に敗れたフィールドルージュは、あらん限りの力を出し切っての敗北であった。前走は前が止まらない馬場で敗れたが、今回は展開が見事にハマった。それにしても、横山典弘騎手の騎乗は見事である。一昨年のシーキングザダイヤもそうであったが、わずかな距離ロスもなく、追い出しのタイミングも完璧と、本人も非の打ち所のないレースだったに違いない。力に劣る馬で勝つためにはこう乗るというお手本のような乗り方であった。それにしても、今年も勝った馬が強すぎた。

サンライズバッカスは最後伸びてきたものの、3着を確保するのが精一杯であった。この馬にとっては距離が長いことは確かで、それを補うために最後の直線に賭けた以上、この結果は上出来と考えてよい。マイル前後のダート戦であれば、まだまだ活躍が見込める。

メイショウトウコンは絶好調の出来にあったが、この馬にとってはペースが速すぎた。ダート馬としては珍しく、スローペースの瞬発力勝負に強いタイプだけに、ハイペースになし崩し的に脚を使わされてしまった。前がバテたので4着に追い込んでこられたが、もう少しゆったりと行けるレースの方がこの馬には合っている。

ワイルドワンダーは向う正面で引っ掛かってしまったのが痛かった。豊富なスタミナがある馬ではないため、あの時点で脚を使ってしまっては勝負にはならない。同厩舎のドラゴンファイアーは、レースの流れに乗っていたものの、追い出されると全く伸びることがなかった。馬体を見てもまだ幼いように、これから先に大きな期待をかけるべき馬である。

ブルーコンコルドは前半で飛ばしすぎたため、最後は大きく失速してしまった。不利を受けたくないという幸騎手の判断もあったのだろうが、どう見てもあのペースに付いていくのは無謀としか言えない。同じことはフリーオーソにも言える。

ポリトラックの馬場を勝って臨んできたスチューデントカウンシルは、実力を発揮しての2着だろう。アメリカの一流馬でも、日本の砂など、あらゆる条件を克服して好走することはやはり難しいのだろうか。来年度からは阪神1800mで行われるJCダートだが、どのようなメンバーが揃い、どのようなレースが行われるか今から楽しみである。

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1分後の世界

Milecs07 by echizen
マイルCS2007-観戦記-
まるで昨年のデジャブを見ているようなレースであった。勝ち時計は1分32秒7、前半の半マイルが46秒4、後半が46秒3であるから、昨年の46秒0、46秒7よりもわずかに緩い流れであった。昨年が雨だったことも考えると、ダイワメジャーにとっては、今年の方が楽な勝利だったのではないだろうか。

勝ったダイワメジャーはこれでマイルCS2連覇、安田記念を挟んでマイルG1を3連覇となり、あのニホンピロウイナー、タイキシャトルと肩を並べたことになる。一昨年がハナ差の2着であるから、マイラーとしての資質は3頭よりも上と言っても過言ではないだろう。馬体が併さってから強い馬なので、圧倒的な速さや強さを感じさせる馬ではないが、今回も着差以上の速さと強さであった。衰えや消耗を危惧する小賢しい論者たち(私を含む)をあざ笑うかのような痛快な勝利であった。強烈な脚を使わないこういうタイプの馬は、肉体的にも精神的にも案外使い減りしないことを肝に銘じておきたい。

安藤勝己騎手がもはや別次元のジョッキーであることに異論はないだろう。スタートしてから「行かなければ俺が行くよ」と先制パンチを浴びせ、フサイチリシャールが行くや、スッと下げた時点で安藤勝己騎手にはゴール板までの1分後の世界が見えていたに違いない。4コーナーを抜群の手応えで回るや、内の馬たちに手応えがないのを確認し、後ろから伸びてくるのは外からとまるで知っているように、ダイワメジャーを馬場の外へと促した。そのゾーンにまんまとハマったスーパーホーネットと馬体を併せると、ダイワメジャーが最後にもうひと伸びしたところがゴール前であった。

安藤勝己騎手は、今年これで6つめのG1勝利となる。連対率も4割を超えている。笠松では「カラスの鳴かない日はあっても、アンカツの勝たない日はない」と言われてきたが、もはやそれは中央競馬でも当てはまる。安藤勝己騎手が今年大きく変わった点は、馬の抑え方(御し方)だろう。以前よりもさらに手綱を短く持って、折り合いに難のありそうな馬でもガッチリと抑え込んでいる。簡単に見えることだが、日本の騎手でここまで馬を押さえ込める人間はいない。阪神大賞典のドリームパスポートでは裏目に出てしまったが、今回のマイルCSの1コーナーでの抑え方を見ても、実を結んできている。

2着に敗れたが、スーパーホーネットは最後まで力を出し切った。距離が短かったスワンSをなんとか追い込んだものの、やはり適距離はマイルなのであろう。少し掛かり気味ながらも道中はベストのポジションをキープし、抜群の手応えで直線を向いた。今回は負けた相手が悪かったが、この馬自身も4歳の秋を迎えて大きく成長している。追い出されてから頭が高くなる走り方が矯正されれば、さらに強くなるだろう。藤岡騎手もこの大舞台でパーフェクトに乗っていた。

スズカフェニックスは後方から良く伸びてきたが、最後は苦しがってササってしまった。まともに追えていれば、連対もあったかもしれない。やはり、調整の狂いから立て直してきたものの、まだ絶好調時の体調には戻っていないのだろう。

アグネスアークは先行集団の後ろのポケットを進み、絶好の手応えで直線を向いた。あとはスーパーホーネットと一緒に伸びるだけという感じであったが、意外にも伸びを欠いてしまった。夏から使い詰めで来た影響があったのか、前走の天皇賞秋で挟まれても激走した反動があったのか、それとも直線に向いた時点で脚元に異常を発生していたのか。敗因は分からないが、負けたことだけは事実である。藤田騎手が下馬したシーンを見て、朝日杯3歳Sで骨折したタガノテイオーを思い出してしまった。

カンパニーは最後の直線で良く伸びたものの、5着を確保するのが精一杯であった。前走の天皇賞秋に比べると、前進意欲がないように映った。もう少し間隔を開けて使った方がいい馬なのかもしれない。キングストレイルは最後まで良く走っている。G1レベルのマイル戦は、この馬にとって少し荷が重かった。

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新女王誕生

Elizabeth07 by@84Photo Gallery
エリザベス女王杯2007-観戦記-
スタートした瞬間に勝負は決まったと言ってよい。ペースの鍵を握ると思われた柴田善臣アサヒライジングが出負けしたことにより、安藤勝己ダイワスカーレットがいとも簡単に主導権を握り、作り出した前半のペースは60秒6。まるで昨年と前後半が逆転したかのような後傾ペースで、こうなってしまうと他馬の出る幕はない。

勝ったダイワスカーレットは、文句の付け所がないほどに強かった。前半はパワーで主導権を取り、後半はスピードの持続力で決着を付ける。今までの牝馬ではお目にかかれなかった強かさを持っている。心配された体調も、下降線を辿っていたのかどうかは分からないが、力を十分に発揮できる状態にあった。ダイワスカーレットのポテンシャルの高さと、マツクニ流の細心の仕上げが最高の形で紡ぎあった結果といえる。たとえウオッカが出走してきたとしても、このペースではダイワスカーレットには追い付けなかったのではないか。昨年と一昨年の女王を従えてのフィニッシュは、まさに新女王の誕生に相応しいものであった。

また、安藤勝己騎手のサポートなしには、新女王の誕生もなかっただろう。本人はあっさり勝っているような口調だが、仕掛けのタイミングひとつ間違えば危うい中、常にダイワスカーレットの脚を余さないレースを続けているのには恐れ入る。4コーナーでほんの少し左に傾きながら回ることで、後ろから並んで来る馬たちをスイープする技術も見事である。円熟期の岡部幸雄騎手を思わせる、凄みすら感じさせる手綱捌きである。このジョッキーの手綱捌きを、私たちはあと何年見ることができるだろうか。

2着に敗れたフサイチパンドラは、不向きの展開の中、最後まであきらめずに走っていた。絞れにくい時期にもかかわらず、馬体重が絞れてきたことが好走の理由だろう。札幌記念後にエルムSを使ったことが、ここで吉と出た。ルメール騎手もラスト800m時点から自ら動く好判断であったが、時既に遅し。欲を言うと、この馬の良さを生かすのであれば、4コーナーで一呼吸置かず一気に仕掛けた方が良かったか。

これが引退レースとなったスイープトウショウは、大健闘の3着と気を吐いた。遅いペースにもなんとか折り合い、最後の直線では最内を突き、一瞬あわやと思わせる末脚を見せた。これで4年間に渡る長き戦いを終えることになったが、最後まで一級の能力を見せ続けた名牝であった。激戦を重ねた牝馬は良い仔を出しにくいと言われるが、それでもその仔たちには大きな期待をしたいと思う。

7着と惨敗してしまったアサヒライジングは、あまりにも不甲斐なかった。先手を取られて動けなかったのは分かるが、最後までそのまま回ってきては勝つ可能性はゼロである。レースを作れる立場にありながら鈴を付けに行かなかった騎手の罪は重い。この馬自身、昨年の時計ですら走れていないわけで、今回のレース全体の時計と上がり時計を見て、どうするべきだったか分からなければ騎手失格であろう。と少し個人的な感情も入ってしまったが、この馬の勝ち負けは別として、動いていればダイワスカーレットの真の強さが見られたかもしれないと思うと、残念でならない。

ウオッカの出走取り消しには驚かされたが、と同時に、やはりそうなのかという思いもあった。今回は右寛跛行であったが、夏には蹄球炎で凱旋門賞を回避したり、どうもまだ本調子に戻りきっていない部分があるのではないか。極限の力のぶつかり合いになるダービーを制したことが、ウオッカの肉体面、そして内面にどれだけの影響を与えたか誰にも分からない。様子をみて、ゆっくりと時間を取って休ませてもいいのではないか。たとえばあのスペシャルウイークでさえ秋は勝てず、有馬記念をスキップしたことにより翌年には復活できたのだから。

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人馬一体

Tennosyoaki07_2

前日に降り続いた雨がウソのような秋晴れの下、馬場が水分をわずかに含んだ、サラブレッドにとっては最も走りやすい最高の馬場でレースは行われた。前半1000mが59秒6という、G1クラスにしては遅いペースでレースは流れ、中団以降に位置した馬にとっては差し込みにくい展開となった。

勝ったメイショウサムソンは、スタートで勝利の半分を手に入れた。出たなりのスピードで4、5番手を確保し、内々の経済コースを進み、あとは直線に向いて追い出すだけという、とても初コンビとは思えない人馬一体となった楽勝であった。34秒台の脚がコンスタントに使えるメイショウサムソンにとって、馬場が回復したことは大きくプラスに働いた。心配されたインフルエンザの影響も皆無で、馬体重の増減もなかったように、休み明けでもキッチリと仕上がっていた。夏は放牧に出さず、厩舎で