至宝
by @84image
宝塚記念2008-観戦記-
エイシンデピュティの内田博幸騎手が押して押してハナを奪った。重馬場で上がり3ハロンが掛かったことを考慮に入れると、前半60秒6―後半62秒1はほぼイーブンペースとなる。この時期の阪神の傷んだ馬場に雨が降れば、力を要する走りにくい馬場になることは必至で、差し追い込み馬にとっては不利な展開となった。また、それ以上に、道悪に対する巧拙も問われた一戦となった。
勝ったエイシンデピュティは、迷うことなく先頭に立ち、自分の型に持ち込んで逃げ切った。今年に入っての勢いをそのまま体現したかのような渋太いレース振りで、心配された使い詰めによるガス欠は杞憂に終わった。最後の直線で他の有力馬がもがき苦しむ中、エイシンデピュティだけは道悪を苦にすることなく、普段どおりの走りを披露した。さらに、極端に力が要る馬場になったことも、パワータイプのこの馬にとってはプラスに作用した。馬場や展開を味方につけて、エイシンサニー以来18年ぶりのG1勝利を栄進牧場にもたらした。
内田博幸騎手にとっても、中央に移籍して以来、初のG1勝利となった。ゴール板のところでエネルギーをゼロにする、一滴の余力も残さない騎乗で、エイシンデピュティの力を完全に出し切った。初めてG1を勝ったピンクカメオの時も道悪だったように、ハミをしっかりかけながら、安定した騎座で馬を操る(エスコートする)技術に長けていることが分かる。実力的にはいつG1レースを勝ってもおかしくないジョッキーで、今回のように関西から有力馬を依頼されることが増えれば、自然と大きな勲章を手にすることも多くなるだろう。
勝ち馬とは対照的に、1番人気に推されたメイショウサムソンは不完全燃焼なレースであった。直線半ばでの不利よりも、スタート後に挟まれ、ポジションを下げてしまったことが悔やまれる。苦手とする道悪に怯むことなく、最後は力と意地で勝ち馬に迫ったが、わずかに及ばなかった。王者の意地は示した格好だが、それでも昨年の秋からの勝ち切れなさには、往年の凄みが失われている感もある。
それにしても、最近の武豊騎手の歯車の噛み合わなさは目を覆うばかりである。スタート後に挟まれてしまったことは運がなかったが、そこからがいけない。馬がエキサイトしたのだろうが、それでも、あのまま内を進みながらポジションを上げて行くべきであって、外に出すべきではなかった。もしかすると武豊騎手自身もエキサイトしてしまったのではないか、と思わせるほどのらしからぬコース取りであった。これまでは多少のロスがあっても差し切れてきたのかもしれないが、腕達者のジョッキー(今回で言えば内田博幸騎手)は残してしまうのだ。
インティライミの激走には驚かされた。佐藤哲三騎手の積極的な騎乗が光ったが、この馬自身も暖かい季節になって体が絞れてきたことで体調がアップしていた。もちろん、道悪を苦にすることがなかったことも大きい。残念だったのは、直線に向いてこれからという瞬間に、エイシンデピュティが馬体を併せに、アサクサキングスが外から切れ込んで来たため、進路を塞がれたことである。あのアクシデントがなければ、もしかすると勝っていたかも知れないと思わせるほどの素晴らしい走りであった。
4歳勢は良いところなく惨敗してしまった。アルナスラインは道中も苦しい位置に入ってしまい、そこから抜け出してくるだけの力はなかった。力が足りなかっただけではなく、馬体も太目残りに映ったように、今回は調整が難しかったようだ。ロックドゥカンブは岩田騎手が前半から積極的に攻めたが、4コーナーでは筒一杯になってしまっていた。道悪の影響もあったろうが、レース後に故障を発生していたことが判明したように、非常に残念な結果となった。最後に、アサクサキングスは4コーナーの手応えから楽勝かと思われたが、追われてから全く伸びなかったように、今日のような馬場は合わなかった。それにしても、多くのファンの夢を乗せたレースでもあるのだから、四位騎手にはもう少し丁寧に乗って欲しかった。
シルクロードS2008-観戦記-
好発の武豊レジネッタが先制攻撃を仕掛ける形で、マイネブリッツがハナに立ち、途中からエイシンパンサーが先頭に踊り出たレースは、前半46秒2、後半47秒6という前傾ペース。新阪神マイルコースは3コーナーから4コーナーがゆったりと流れることが多いが、今回はジョッキーたちがそのことを多分に意識しすぎた結果、まさかのハイペースとなった。外枠を引いたジョッキーたちが、スローに流れることを嫌い、前々へと位置しようと積極的に動いたことの影響も大きい。そのため、早熟のスピード馬たちが直線の坂で力尽き、後発の中距離馬が逆転した。
