時計が違った。

Febs10 Photo by Scrap
フェブラリーS2010-観戦記-
ローレルゲレイロが手綱をしごきながら先頭に立ち、エスポワールシチーとレッドスパーダが追いかける形でレースは進んだ。半マイルが47秒ジャスト、上がりの4ハロンが47秒9だから、このメンバーとしては少し遅いぐらいのペースで流れたことになる。しかし、エスポワールシチーをマークした馬や目標として動いた馬たちが、最後の直線で脚が上がってしまったように、タイムや着差だけでは表しきれない、エスポワールシチーの強さばかりが目立ったレースであった。

勝ったエスポワールシチーは、好スタートから、外から被されることもなく、スムーズに2番手を確保することが出来た。全身に筋肉がついて、前進するパワーとスピードが他馬とは違ったということだろう。今のエスポワールシチーには、この馬について行くと、自分の馬がバテてしまうと思わせるだけの迫力がある。直線に向いて、満を持して追い出されると、最後まで一生懸命に伸びていた。1頭だけ34秒台で走ったように、時計が違った。かつては全力で走ることを恐れ、人間不信に陥っていた馬が、日本一を決めるG1レースでこれだけの走りをするのだから競馬は分からない。もうこの馬が国内で成すことはない。あとはドバイまで順調に行って欲しい。

2着に突っ込んだテスタマッタは、岩田康誠騎手の好判断、好騎乗が光った。エスポワールシチーのペースについていくと自身がバテてしまうこと、ついて行ってバテる馬たち(特に有力馬)が出てくることをイメージして、他馬が外へ外へと膨れながら追走する中、前の馬を壁にしながら、とにかく経済コースを走らせ、内を突くことだけを意識していた。内枠を引いたことも功を奏した。テスタマッタもここ2戦で前に行けるようになっていたように、以前に比べてダート馬らしい体つきになっている。勝った馬とは力差がありすぎるが、強い4歳ダート世代をリードしていく1頭になる。

サクセスブロッケンは復活した内田博幸騎手を背に、勇敢にエスポワールシチーに立ち向かった。結果論でいうと、勝ちに行くために早めに動いたことで、最後はテスタマッタに脚元をすくわれた。それだけ勝ち馬が強かったということである。サクセスブロッケン自身も昨年の出来にあり、完全に体調も戻っていただけに、エスポワールシチーには完敗を認めざるを得ないだろう。

レッドスパーダは絶好のスタートを切ったが、エスポワールシチーを追いかけて撃沈した。途中からついて行くのに骨を折っていたように、相手のスピードやパワーが完全に上だった。ダートが向かなかったというよりは、初めてのダート戦でマークした相手があまりにも強かったということだろう。それでも、最後の直線では頭が上がっていたように、現状としては、もうひと踏ん張りが求められるダート戦よりは芝向きということになる。

同じく芝から挑戦してきたリーチザクラウンは、今回は見せ場すらなかった。この馬の跳びの大きさを生かすのは、やはり芝のレースということになり、しかも中距離に限られるだろう。芝のマイル戦では、終いの切れがないだけに苦しい。調教ではどの馬にも負けないだけの動きをするほど、身体能力の高い馬だけに、本番でどうやって能力を活かすかの試行錯誤はこれからも続く。

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会心

Arima09 by Deliberation
有馬記念2009-観戦記-
武豊リーチザクラウンがスタート良く飛び出し、内のミヤビランベリを制する形で先頭に立った。確たる人気馬不在の中、各ジョッキーが勝ちを意識し、少しでも有利なポジションでレースを進めようと、スタートしてから192mしかない第1コーナーに殺到したことによって、全体的に淀みのない、前半1000m通過が58秒6という、昨年のダイワスカーレットの時よりも速いペースでレースは流れた。ブエナビスタ以外の上位馬は、後ろから行った3頭が1、3、4着という、典型的な前潰れのレースとなった。

勝ったドリームジャーニーにとっては会心のレースであった。自らが得意とするコーナーの多い右回りのコースで、これだけ展開に恵まれれば、まさに勝ってくださいと言わんばかり。スタートでの出遅れもなんのその、最後のコーナーで前の馬たちを一気に飲み込んだ。宝塚記念でピークに仕上げられ、天皇賞秋では完調手前だった体調が、ジャパンカップをパスしたことに加え、最後の追い切りでハードに追われたことで上向いていた。2歳時にマイルのG1レースを勝った馬が、5歳になって中距離の古馬G1レースを2つも勝つのだから、競馬は不思議である。父ステイゴールド、母父メジロマックイーンという遅咲きの血を大事に育てた関係者には、敬意を表したい。

池添謙一騎手は、追い込み馬に乗っても、常に落ち着いた手綱さばきを見せてくれる。スイープトウショウ、デュランダルなどに跨った経験が実になっているのだろう。池添謙一騎手のことだから、今回の有馬記念でも、レース前に自分を相当に追い込んだに違いない。追い込み馬に乗るジョッキーには我慢が求められる。行きたくても行かない、行けても行かない、我慢に我慢を重ねる精神力が必要である。そのために、あらゆる状況を何度も何度もイメージしたはずである。最も望んでいた形となり、ゴール後は緊張の糸がほどけて喜びの涙が溢れた。

負けて強しとはこういうレースのことを言うのだろう。この厳しいペースを自分から勝ちに行き、ドリームジャーニーに最後まで食い下がっているのだから、ブエナビスタは強い。結果的には、積極的に攻めたことが完全に裏目に出てしまった。それでも、これまでの牝馬らしいイメージを覆した、底力とスタミナに溢れる走りを見せてくれた。違った面を引き出せたことに関して言えば、実りの多いレースであったに違いない。競馬にはタラレバは禁物だが、もしこれまでのようにブエナビスタが後ろからレースを進めていたら、どんな結果になっていただろうか。

昨年と同じく3着に突っ込んだエアシェイディは、さすが高齢馬というべきか、周りの乱ペースに惑わされることなく、自らのリズムで走っていた。前に行った馬が勝手に潰れてくれた結果ではあるが、自身の力を出し切った。4着に入ったフォゲッタブルは、ルメール騎手の好判断が光った。周りの馬の状況を瞬時に察知する、レースに行っての頭の良さは素晴らしい。他の騎手が真似しようとしても真似できるものではない。フォゲッタブル自身も、この秋、最も力をつけた1頭だろう。菊花賞とステイヤーズSを2、1着と激走し、暮れの有馬記念まで走り切ったのだから、馬肥ゆる秋を見事に体現した。血統背景からも来年が楽しみな馬である。

これが引退レースとなったマツリダゴッホは、4コーナーであわやという見せ場を作った。切れる脚のない馬だけに、早めに動くしかなかったが、このペースを捲くり切るだけの力は残っていなかった。菊花賞馬スリーロールスは大変残念なことになってしまった。冬の時期だけにあり得ることとは分かっていても、悔やんでも悔やみきれない関係者の気持ちは察して余りある。競馬の陰の部分からも、私たちは決して目を背けてはならない。

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風格さえ

Asahihaifs09_2 by Deliberation
朝日杯フューチュリティS2009-観戦記-
1番枠を生かしたバトルシュリイマンがハナに立ち、それをツルマルジュピターとダイワバーバリアンが追いかける形でレースは始まった。前半800mが46秒1、後半が47秒9という朝日杯フューチュリティSに典型的なハイペースとなり、前半で前に行き過ぎた馬にとっては苦しいペースとなった。また、厳しい流れになったことにより、スピードだけでなくスタミナも問われるレースであった。流れに乗った上位2頭は現時点での完成度が高く、それ以下の馬たちとは力差も感じられた。

ローズキングダムは並ぶ間もなくエイシンアポロンを抜き去り、わずか3戦目にして横綱相撲でG1レースを勝ってしまった。好位に行こうと思えば行ける器用さと、騎手が行くなと抑えれば素直に反応できる賢さを兼ね備えている。前走もそうであったが、競走馬にとって一番苦しいキャリア2、3戦目にもかかわらず、パドックでも返し馬でもレースでも落ち着いていた。それでいてレースに行くと闘争心を発揮するのだから、非の打ち所のない馬である。この時期に激しいマイル戦を走ったことが来年どう出るか分からないが、底知れぬ強さを感じさせる勝利であった。

小牧太騎手は念願の橋口調教師の管理馬によるG1制覇を成し遂げた。圧倒的な1番人気に推され、自分が大きな失敗さえしなければ勝てるというプレッシャーを乗り越えての勝利だけに、嬉しさもひとしおだろう。道中でわずかに行きたがったローズキングダムを抑え、最後の直線まで中団で追い出しを我慢したように、ただ勝つだけではなく、完璧な手綱捌きであった。勝利ジョッキーインタビューにて、溢れそうになる感情を抑えながら答える様には、ジョッキーとしてひと皮むけたG1ジョッキーの風格があった。

エイシンアポロンも力強い競馬をしたが、今回は相手が強かった。51秒台で真っ直ぐ駆け上がってきた坂路調教からも、このレースに向けて最高の仕上がりにあった。父は鉄の馬と呼ばれたジャイアンツコーズウェイであり、エイシンアポロンもその渋太さを受け継いで、最後まで良い脚を長く使ってよく伸びている。デビュー戦から1800mを2度使ったことも、ここに来て布石として生きてきている。この馬の地脚の強さを生かすために、外目を通り、気持ち早目に仕掛けた池添騎手の好騎乗も光った。

3着に粘りこんだダイワバーバリアンからは、将来性の高さを感じさせられた。まだしっかりと筋肉が付ききっていない現状で、これだけのペースを先行して粘ったのだから、来年以降が楽しみな馬である。今年絶好調のマンハッタンカフェ産駒は、こうして早い時期から活躍できるだけではなく、成長力も備えている。来年以降もアグネスタキオンに次ぐ、サンデーサイレンスの後継者としての役割を担っていくことだろう。

キングレオポルドは結果的には前に行き過ぎた。勝負をしに行ったのは分かるが、この馬の良さを生かすには、ソロっと出して中団よりも後ろで折り合って進めるべきであった。その馬の能力と他馬のそれとの比較の上に成り立つ判断だが、まだ勝負に行くには馬が完成されていなかったということである。同じことはダッシャーゴーゴーにも言え、スタミナの不安を補うためには、ここは抑える競馬をしてみても良かったのではないだろうか。

まさかの14着と惨敗してしまったトーセンファントムは、明らかに外枠がこたえていた。内田博幸騎手はスタートしてから思い切って出して勝ちに行く選択肢を選んだが、やはり引っ掛かってしまった。私は後ろから下げて直線一気を狙うのかと思っていたが、前者を選んだようである。どちらが正解ということではないが、勝ちに行っての結果と受け止めるしかないだろう。この馬の引っ掛かる気性と中山マイル戦の外枠という条件が、どうにも一致しなかった。

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ALOHA,WORLD!

Hansinjf09 by Photostud
阪神ジュべナイルF2009-観戦記-
内枠を引いたジュエルオブナイルやパリスドールが元気良く飛び出し、控える馬は控えたため、第1コーナー手前の時点でペースダウンしつつ隊列はほぼ決した。縦長になりながら複合カーブをゆっくりと回り、最終コーナーにかかる直前から各馬一斉に動き始めた。前半の800mが47秒3、後半のそれが47秒6という平均ペースでレースは流れ、およそ力通りの決着となった。関東馬によるワンツーフィニッシュは初で、この時期の長距離遠征のハンデを克服しようという、関東陣営の試みがようやく実を結んだ結果である。長きにわたってその先陣を切っていた国枝調教師の管理馬が、関西で行われる牝馬のG1レースを制したという事実は大きい。

勝ったアパパネは折り合いが付いたことが最大の勝因である。スタート後に掛かる素振りを見せたが、蛯名正義騎手が手綱を引いて抑えると、素直に指示に従った。その後は理想的なポジションでレースを進め、4コーナー手前で外から来られて苦しい場面もあったが、蛯名正義騎手の好判断で、開いたスペースに馬が入って事なきを得た。アパパネに推進力があったからこそ、あそこのスペースに自然に入って行けたとも言える。外枠からの発走を克服したことに加え、最後は余裕を持ってのフィニッシュだっただけに、着差以上にこの馬の強さが際立った。ようやくキングカメハメハから待望の大物が誕生した。

2着に入ったアニメイトバイオは、決してスムーズな競馬ではなかったにもかかわらず、最後までよく伸びている。前走で牡馬を相手に2着した実績はダテではなかった。前走もそうだったが、馬込みも気にせず、息の長い末脚を使う馬である。この末脚は来年のクラシック第1弾桜花賞でも生きてくるだろう。激しい戦いが続いたので、今後少し休ませて疲れを癒してほしい。

ベストクルーズは安藤勝己騎手が実に上手く乗った。なかなかスピードに乗っていかない特性を利用して、ゴール前がトップスピードになるように、この馬のリズムで走らせることに終始した。直線に向いて前に開いたスペースに無理に入ろうとせず、アパパネが先に抜けたところを待ってから追い出したタイミングも完璧だった。安藤勝己騎手の連対率が高いのは、こうした何から何まで勝ちに行くのではなく、その馬の力を効率良く引き出す騎乗が出来るからに他ならない。結果こそ3着だったが、ベストクルーズにとっては最高のレースであった。

ラナンキュラスは内ラチ沿いを立ち回ったが、勝つためのレースではなかった。四位騎手としては、ラナンキュラスの現状を把握した上で、最短距離で回ってこようと考えたのだろう。最後までこの馬の力は出し切っているが、もうワンパンチ足りなかった。肉体的に力が付き切っていない中で、ここまで走られれば上出来だろう。肉体的な成長を促すためにも、馬をゆっくりと休ませてほしい。身体に力が付いてくれば、元々素質は高く、血統的にも来年のクラシックで楽しみな馬の1頭である。

1番人気に推されたシンメイフジは、スタートからダッシュが悪く、押してレースの流れに乗っていた。道中に遊んでしまうのはこの馬の良さでもあるとして、最後の勝負どころで反応が鈍かったのは休み明けのせいだろう。最後の直線でも左右から馬にぶつけられて、苦しいレースになってしまった。仕上がりこそ良かったものの、実戦に対する気持ちは仕上がっていなかったのだろう。気性的な成長が見られなかったのは残念である。

タガノエリザベートはポツンと後ろを進まないと末脚が発揮できない馬だけに、追い込んで届かずという結果は仕方ない。こういう結果が出ると、得てして後ろ過ぎたと言う人間が出てくるが(関係者も含め)、そうではないだろう。もっと前に行っていれば、最後の脚は使えないのである。前走のファンタジーSはハマったが、こういう競馬はなかなか2度続かないのである。

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芝の上を走るように

Jcdirt09 by @84img
JCダート2009-観戦記-
行こうとしない外国馬を横目に、コーナリングを利用してエスポワールシチーが楽に先頭に立った。ティズウェイのマラージ騎手が蓋をする形で、そのまま3コーナーまで流れ、安藤勝己騎手が動き出した時は既に遅し。自分の型に持ち込んだエスポワールシチーの勢いは、誰にも止めることが出来なかった。自ら動いた有力馬が最後の直線で止まり、ひと呼吸待って仕掛けた差し馬が2、3着に突っ込んだ。

佐藤哲三騎手が前走の南部杯後に絶賛したように、エスポワールシチーはここに来て大きく力を付けている。この馬の最大の良さは、力を抜きながら道中走られることだろう。パワー優先のダート馬は力を入れて走るタイプが多い中、エスポワールシチーはまるで芝の上を走るように軽快に走る。気持ちにも余裕があるので、たとえ外から来られていたとしても、スッと番手に控えられたに違いない。今回は展開が向いたことも加わって、新旧交代を告げる3馬身差の圧勝となった。陣営は海外も視野に入っているらしいが、この軽快なスピードはまさにドバイ向きである。ウオッカと共にぜひ挑戦して欲しい。

3歳馬シルクメビウスは道中この馬のリズムで追走し、仕掛けを待って追い出したことが好結果につながった。追って味がある馬だけに、シルクメビウスの良さを引き出した田中博康騎手の好騎乗を褒めたい。クイーンスプマンテでは大胆さを見せ、今回は冷静な手綱捌きを披露してくれた。同じく3歳馬のゴールデンチケットも、ルメール騎手の思い切った騎乗が功を奏した。他馬と自分の馬の力差を見極めた上で、2着狙いに徹したレース勘はさすがのひと言である。2頭共に仕掛けがドンピシャだったにせよ、この時期に56kgを背負って古馬相手に走っている。

サクセスブロッケンは好枠を利して、内田博幸騎手らしく積極的な競馬をした。エスポワールシチーには力負けしたが、この馬自身の力は出し切った。フェブラリーSを勝った春当時に比べ、馬体にどこか寂しさを感じさせたように、まだ体調が戻り切っていないところがあるのだろう。それが精神的にも影響しているのか、パドックでもG1馬とは思えないほど入れ込んでいた。この馬も4歳世代を代表するダート馬だけに、完全復活を心待ちにしたい。

ワンダーアキュートは最も中途半端なレースになってしまった。外枠を引いただけに、ジワジワと先行するしかないにしても、自分の得意とする形に持ち込めなかったのは惜しい。前走で馬体重が大幅に減っていたことの反動があったのだろう。最後は余力がなくなってしまった。この馬の本来の力はこれぐらいではないはずで、ひと息入れて立て直すことが出来れば、エスポワールシチーにも劣らぬ快速ぶりを見せてくれるに違いない。

10個目のG1タイトルを狙ったヴァーミリアンは、見せ場なく8着に終わった。第1コーナーの先行争いで、武豊騎手が手綱を少し引いてしまったことで、その後、ポジションをズルズルと下げてしまった。4コーナーを回る時にはもう手応えはなく、負けを覚悟したに違いない。消極的な騎乗はあったにせよ、これだけ負けたのだから、ヴァーミリアンの体調にこそ問題があったと考えるべきだろう。2走ボケというよりは、プラス9kgの馬体重が示すとおり、馬体が絞り切れていなかった。ヴァーミリアンのように調教で動かない馬は、寒い時期になると太目残りでの凡走が怖い。

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誰もが泣いていた。

Japancup09 by Deliberation
ジャパンカップ2009-観戦記-
エイシンデピュティから先頭を奪ったアサクサキングスから、リーチザクラウンがハナを奪う形でレースは進んだ。前後半の1200mが共に71秒2という、ジャストが付く平均ペースで流れ、展開による有利不利のほとんどない、各馬が実力を出し切ったフェアなレースとなった。先行して抜け出したウオッカも強ければ、後方から追い込んだオウケンブルースリも強い。

ウオッカはスムーズにスタートを切り、ゴチャつきやすいジャパンカップの第1コーナーを無事に乗り切った。道中は折り合い良く進み、追い出しをギリギリまで我慢して、ラストの一瞬の脚で抜け出した。ゴール前は止まっていたが、オウケンブルースリの追撃をハナ差だけ凌いだところがゴールであった。最大の勝因はウオッカ自身の体調の良さだろう。毎日王冠、天皇賞秋とは比べ物にならないほど、最高の仕上がりにあった。昨年の敗北を糧にして、今年はジャパンカップをピークになるように仕上げてきた陣営の手腕には恐れ入る。

牝馬のジャパンカップ制覇は、あのホーリックス以来、20年ぶりの快挙となる。日本馬としては初めてであり、これで名実共に日本競馬史上、最強牝馬の座を確たるものにした。ウオッカの凄さを挙げればキリがないが、ひと言で言い表すとすれば、強さを持続することの強さであろう。2歳時に阪神ジュべナイルFを制してから、3年間にわたって古馬や牡馬、そして世界の強豪たちと極限の戦いを続けてきたのである。ただ強いだけでも、その一瞬だけ強いでもない、常にトップレベルでの強さを持続していることがウオッカの強さである。

ルメール騎手はテン乗りにもかかわらず、ウオッカの力を最大限に引き出した。脚を溜めながら先行する技術はさすがで、仕掛けどころも文句なし。あっと言う間に後続との差を拡げ、ちょうどスタミナが尽きたところがゴール板前であった。武豊騎手の名誉のためにも言っておくと、彼が前走の天皇賞秋でゆっくり走るリズムを覚えさせたからこそ、さらに距離が伸びた今回のジャパンカップを克服することが出来た。また、競馬に飽きてきていたウオッカにとっては、ジョッキーが乗り慣れた武豊騎手からルメール騎手に替わったことも、良い刺激となったのではないだろうか。

ハナ差で惜しくも敗れてしまったオウケンブルースリも、最後は1頭だけ凄い脚で突っ込んできた。昨年時に比べると、夏の休養を挟んで、トモが強くなってきている。成長の余地を残しているだけに、もっとパンとしてくれば、スムーズに前に行けて、なおかつ今回のような強烈な脚を使えるようになるだろう。4コーナー手前で僅かに不利もあった。内田博幸騎手は悔しくて眠れないに違いない。走りたかったポジションを取れなかったが、最後の直線での鬼気迫る追いっぷりは、さすがリーディングジョッキーであった。

レッドディザイアは四位騎手のエスコートに導かれ3着と大健闘した。最もロスなく乗られて、力を出し切っての結果だけに、今回は上位2頭が強かった。秋華賞で極限の状態に仕上げられたレッドディザイアの体調を考慮して、エリザベス女王杯をスキップした陣営の選択は正しかった。5着に入ったエアシェイディは、高齢馬ながらよく走っている。内が開かず、前が詰まったのは誤算だったが、最後まで良く伸びた。後藤浩輝騎手としては、もう少し前の位置取りを取りたかったのだろうが、馬がズブくなっていて行けなかった。

BCターフ馬のコンデュイットは、外枠のロスや中2週のローテーションをはねのけて、2分22秒台で走っているのだから本当に強い。ジャパンカップに照準を合わせて狙ってきていたら、おそらくこの馬に勝たれていただろう。ダカラニ×サドラーズウェルズという重厚な血統だが、軽さと瞬発力を兼備していることが証明された。これからは日本の地にその血を伝えていって欲しい。

それにしても、今年のジャパンカップは国際色豊かなレースであった。英リーディングジョッキーのR・ムーア騎手をはじめ、フランスのルメール騎手、スミヨン騎手、米リーディング2位のルパルー騎手、そしてM・スタウト調教師にドライスディール調教師と、世界のホースマンが一堂に会した。ジャパンカップというレースの格式を感じさせるには十分であったが、そんな中でBCターフ2連覇馬を尻目に日本馬がワンツーしたことが今後どう出るのだろうか。海外からの強い馬の参戦があってこそのジャパンカップでもあるから。

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おつかれさま。

Milecs09 by Deliberation
マイルCS2009-観戦記-
逃げると決めていたマイネルファルケが外枠から先頭を奪い、キャプテントゥーレが番手を進み、終始落ち着いたペースでレースは流れた。前半800mが47秒2、後半が46秒0というマイルCSにしては珍しい極端なスローペースで、中団よりも前に行けなかった馬にとっては苦しいレースとなった。

カンパニーは、これをラストランにするのは本当に惜しいほどの、余裕綽々の勝利であった。スッとスタートを切ると、横山典弘騎手はマイル戦ということを意識して、重心をいつもより前に置くことで、自然な形で馬を推進していた。難なく中団のインに取り付いたカンパニーは、直線に向いて左ムチ一発のゴーサインが送られるや、とても8歳馬とは思えない瞬発力を見せ、前を行く4歳馬を捕らえ切った。最後は手綱を抑えていたように、着差以上の力差が感じられた。カンパニー自身がここに来てようやく完成された。小雨が降るマイルCSで、引退レースを見事に勝利で決めた、シンコウラブリイをふと思い出した。

横山典弘騎手はこれで今年100勝、G1レースは3つ目となった。騎乗技術については誰もが一目置く存在だけに、これまでなかなか勝てなかったのが不思議である。敢えて挙げるとすれば、今年に入ってからの横山典弘騎手は、無心で勝ちに行っているのが良く分かる。綺麗にカッコよく勝つとか、自分の巧さを知らしめるように勝つとか、そういう自己主張が騎乗から消えたのだ。だからこそ、横山典弘騎手だから勝ったという感じがしない。基本に忠実に、ごく当たり前のことを当たり前に実行する。それが何よりも難しいのではあるが。

14番人気のマイネルファルケは逃げて自身の良さを出し切った。厳しい展開になっても大崩れしない馬だけに、今回のような楽なペースで逃げれば止まらない。登録時点では出走できるかどうか微妙だった馬だけに、陣営が渾身の仕上げで天命を待っていた甲斐があったというものだ。母ビンゴハナコは典型的なスプリンターだったが、この馬は地脚の強さを生かすマイル戦が合っている。それにしても、和田竜二騎手は逃げ先行馬に乗せると安定感がある。

外国馬サプレザは、外枠が響いたものの、最後まで良く伸びている。さすがマイルCSの勝ち方を知っているペリエ騎手らしく、好スタートから迷うことなく先行して、積極的に勝ちに行った。マイル実績を見ても、この距離がベストであろう。欧州にはゴルディコヴァという強い牝馬のマイラーがいるが、この馬の将来性も確かである。今後、海の向こうから聞こえてくるであろう、サプレザの活躍の声を楽しみに待ちたい。

キャプテントゥーレは絶好の展開にもかかわらず、最後は伸びあぐねてしまった。最後の直線で、馬場の良い外に進路を取ったことがマイナスに働いた。2歳時の朝日フューチュリティSでも見せたように、1頭になってフラついてしまった。内ラチを頼らせるか、もしくは他馬と併せた方が伸びる馬である。それでも、骨折休養明けを4戦して、これだけ目一杯に走られるのだから、もはや完全に復活したと見てよい。

アブソリュートにとっては惜しまれる内容であった。最後の脚は際立っていただけに、もう少し前のポジションでレースが進められていればと思う。これは6着のスマイルジャックにも言えることだが、自分のリズムで走らせることも大切だが、積極的にポジションを取りに行かなければ勝てないこともある。G1レースともなれば、想像以上に他馬も止まらないので、ほんのわずかな位置取りのミスが致命傷となってしまうのである。

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大逃亡劇のトリック

Elizabeth09 by @84 image
エリザベス女王杯2009-観戦記-
行くしかないとハナを叩いたクイーンスプマンテをテイエムプリキュアが追いかけ、後続との差がみるみるついたと思いきや、そのままの形でゴールまでなだれ込んだ。前半の1000mが60秒5という遅めの流れにもかかわらず、3番手集団は遥か後方にいたのだから、どれだけ金縛り状態にあったかが分かる。痺れを切らせた横山典弘騎手が動いた時には時すでに遅しという、行った行ったの典型的なレースであった。これぞ競馬のレースは生き物であるという怖さである。

なぜ、このような前残りのレースになってしまったのだろうか。ここを明らかにせずしては、今年のエリザベス女王杯は語れない。というよりも、ほとんどの馬が力を出し切っていない状況では、他に語るべきはないのかもしれない。先行した2頭以外の馬に跨ったジョッキーたちが、なぜこれだけのスローであることが分かっていても動けなかったのだろうか。

答えはもちろん、先に動けば負けてしまうからである。どれだけスローで流れていても、同じ母集団からであれば、先に脚を使った馬が後から仕掛けた馬にやられる可能性は高い。京都の2200mというスタミナを問われるタフなコースで、牝馬が自ら動くのは勇気が要る。さらに圧倒的な1番人気のブエナビスタが後ろに控えている状況が加わると、ブエナビスタに勝つために少しでも末脚を溜めておきたいと考えるのは当然のジョッキー心理である。自分以外の誰かが動いてくれることを期待して、誰もが自ら動こうとはしなかったのである。

と、ここまではありきたりの解説にすぎず、このレースの全貌を解明したことにはならない。スローペースの前残りは、このような状況で日常的に繰り返されているのだ。それでは、なぜこれほどまでのボーンヘッドが、これだけの大舞台で公然と行われてしまったのだろうか。本当に先に動けば負けてしまうからという理由だけで、百戦錬磨のトップジョッキーたちが、いともやすやすと2頭の逃げ切りを許してしまったのだろうか。そうではないだろう。実はこのレースを紐解くトリックは別にある。

そのトリックとは、3番手につけたリトルアマポーラの鞍上にある。そう、今秋から短期免許で久しぶりに日本競馬に参戦しているスミヨン騎手である。日本競馬のペースにまだ不慣れな外国人ジョッキーが、後続集団の先頭に立ち、レースに蓋をしてしまう形になったことが、極端な前残りの展開に繋がったのだ。スミヨン騎手が目測を誤ったことにより、自ら動けない後方の馬たちも共倒れとなってしまった。外国人騎手や地方からスポット参戦してくるジョッキーが、このポジションを取ると、得てしてこうした展開に陥ることある。

たとえば、イングランディーレが逃げ切った2004年の天皇賞春もまったく同じ状況であった。あの時は、イングランディーレが超がつくほどのスローペースで逃げているにもかかわらず、離れた後方集団の先頭を走るアマノブレイブリー小牧太騎手が、まったく突っつこうともしなかった(追いかけようともしなかった)。当時の小牧太騎手はまだ地方・園田競馬場から中央競馬に移籍してきたばかりで、特に地方にはない長距離のレースでのペース判断が難しかったのである。

恐ろしいほどの凡レースになってしまった以上、負けた馬たちを責めることは出来ない。力を出し切っておらず、レースが終わってもすぐに息が入った馬が多かったのではないだろうか。その中でも、責任を果たすべく途中から動きつつ、最後は1頭になっても伸び続けたブエナビスタの強さを改めて認識できたことが唯一の救いであった。春に比べて馬体が細く映り、体調が芳しくないにもかかわらず、これだけの走りを見せてくれることに頭が下がる。この後はゆっくりと休んで、来年に備えてほしい。

フランスから来たシャラナヤも最後は鋭い脚で追い込んできた。まだまだ成長の余地を残した馬体に映ったが、さすがオペラ賞の勝ち馬というところを見せてくれた。メイショウベルーガも末脚勝負になって、自身の良さは生かせたのではないか。好枠からそのまま中団につけられたことも大きかった。ブロードストリートは不完全燃焼だろう。スタミナに一抹の不安があり、動かないことを自ら選択した結果だけに、仕方ないといえば仕方ない。

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奇跡の名馬

Tennosyoaki09 by deliberation
天皇賞秋2009-観戦記-
外枠から押してエイシンデピュティが先頭を奪い、前半1000mが59秒8という、このメンバーと馬場を考慮すると極めてスローな流れに落ち着いた。後半1000mの勝負となり、瞬発力に長けた馬でなければ勝負にならなかった。勝ちタイムの1分57秒2は昨年の伝説の天皇賞秋と同じ。とはいえ、レースの厳しさは全くと言ってよいほど異なる。昨年と今年のレースの前半と後半1000mのラップタイムを比較してみたい。

昨年 58秒7-58秒5 (1分57秒2)
今年 59秒8-57秒4 (1分57秒2)

昨年は淀みのない流れがゴール直前まで続く極限のラップであったが、今年は前半で各馬が脚を溜めることが出来たので、後半が速い上がりでの決着となった。同じタイムでどちらのレースレベルが高いかというと、もちろん前者(昨年)の方である。前半の負荷が後半に倍になって掛かってくるにもかかわらず、58秒5という上がりでまとめているからである。体感するレースの厳しさは、明らかに昨年の方が上であっただろう。

今年のレースレベルの方が落ちるからといって、カンパニーの勝利の価値を損なうものではない。8歳馬かつ34戦目にして、スピードレースの天皇賞秋でこの勝ち方が出来ること自体が驚異的である。前走の毎日王冠を目イチの仕上げで勝ったと私は決め付けていたが、そうではなかったようだ。馬体も良い意味で枯れて、無駄な動きをすることなく中団につけることができ、そこから鋭い脚を使うことが出来る。父ミラクルアドマイヤという地味な血統だけに、種牡馬としての道は遠いだろうが、私たちの常識を覆してくれた奇跡の名馬となった。

横山典弘騎手の100%の瞬発力を引き出す騎乗ぶりにもシビれた。レースの流れに関わらず、馬のリズムに逆らうことなく、道中は脚を溜めることだけに専念していた。直線に向いて、馬群が開いた一瞬のタイミングを見計らって、馬を一気に動かして突き抜けた。馬上で風となっていて、まるでカンパニーだけが走っているかのようであった。そして、横山典弘騎手だけでなく、前走であれだけの脚を使った8歳馬を中2週という期間の中でケアし、万全の態勢でG1レースに送り込んできた関係者にも惜しみない賛辞を送りたい。

スクリーンヒーローは内枠を生かして、最高のポジションを確保し、非の打ち所のない走りであった。まずは勝ちに行った北村宏司騎手の好騎乗を称えたい。そして、休み明けにもかかわらず、時計の速いレースを乗り切ったように、スクリーンヒーロー自身の仕上がりも素晴らしかった。ダイナアクトレスを経て、サンデーサイレンスが注入されている母系だけに、やはりこの位の距離の方が合う。折り合いを欠くことのない馬だけに、距離が延長されるジャパンカップでも同様の走りが期待できるだろう。

ウオッカの評価は難しい。この馬自身も極限の脚を使っているだけに、今回はポジション取りに失敗してしまったこと、カンパニーに切れ負けしてしまったことを敗因としてよいだろう。昨年時に比べると、パドックでも少し余裕を持たせた造りにも映った。ただし、昨年よりも明らかにレベルの落ちるレースを勝ち切れなかったばかりか、連対すらも外してしまったことの裏にある陰は暗い。衰えという言葉は使いたくはないが、ウオッカほどの名牝にも自分の走りが出来なくなる時が必ず来る。次走はジャパンカップではなく、マイルCSを使ってほしい。

オーケンブルースリは道中から直線にかけて狭いところに入ってしまい、この馬の良さでもある長い脚を使わずして終わってしまった。距離ロスを考えると、少しでも内を走らせたい鞍上の気持ちは分かるが、外枠を引いた今回に限って言えば、少し外を回してでもこの馬のフットワークで走らせた方が良策だったはず。次走はジャパンカップになるだろうが、距離延長がこの馬にとって悪いはずはなく、内目の枠を引けたら海外の馬とも好勝負になる。

シンゲンも伸びてきてはいるが、最後は力負けであった。パドックでの入れ込みも普段に比べるとマシで、力を出し切れる下地は整っていた。それでも勝ち負けに持ち込めなかったように、穴人気してしまったが、このクラスでは少し荷が重かった。ドリームジャーニーはG1馬らしく、最後は力のあるところを見せてくれた。天皇賞秋では宝塚記念馬の良績がないように、まだ春シーズンの疲れが抜け切っていない。ヤマニンキングリーは力を出し切って健闘している。内の良いポジションを取っていただけに、道中でフラフラして、4コーナー手前で外に出してしまった騎乗が悔やまれる。

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血の凄さをまざまざと

Kikkasyou09 by @84image
菊花賞2009-観戦記-
武豊リーチザクラウンが刻んだラップタイムは、前半1000mが59秒9、中盤が63秒2、後半が60秒4。僅かに前半が速いながらも、後ろから差してくる馬にとっては苦しい流れとなった。とはいえ、馬群の隊列に目を移してみると極端な縦長の形になっており、中盤で脚を溜めることのできなかった逃げ馬リーチクラウンにとっても、非常に厳しいペースであった。

1番人気に推されたリーチザクラウンは、前走とは打って変わって、道中からゴールまで力んで走っていた。1周目に大観衆のスタンド前を通るため、そこで馬がエキサイトしてしまったのだろう。向こう正面でペースダウンをして、後続を引き付けたかったところだが、最後まで息を入れることができなかった。机上の計算では逃げ切りが可能なラップではあるが、道中の馬とジョッキーの呼吸が合っていなければ、スタミナのロスは数字以上に大きい。

勝ったスリーロールスは父ダンスインザダーク、母父がブライアンズタイムという典型的なステイヤーであり、その資質を菊花賞の舞台で見事に生かし切ってみせた。内枠を利して、スタートから終始攻めに徹した浜中俊騎手の手綱捌きも光った。最後はスルスルと馬群を縫って出てきて、直線ではターフビジョンに物見をしてヒヤリとさせられたが、後ろから来られるとまた伸びた。道中は決してスムーズだったわけではなく、多少のことには動じない精神力と鞍上の指示に従える素直な気性、そしてこのメンバーでは一枚上のスタミナを有している。

2着に突っ込んできたのは、勝ち馬と同じくダンスインザダーク産駒のフォゲッタブル。こちらは母がエアグルーヴだから、まさに菊花賞の舞台で良血開花といえる。惜しむらくは、前が詰まるところもあって、道中のポジションが少し後ろになってしまったことだろう。このペースを考えると、スムーズに前に付けられていればと思わせられる。それにしても、長い距離で持続力を問われるレースにおける、ダンスインザダークの血の凄さをまざまざと見せつけられた。

セイウンワンダーは完璧に乗られて、完全に力を出し切っている。朝日杯フューチュリティSを勝っているように、決して菊の舞台に対する適性が高いとは言えないのだが、それでもこの馬の持つ生命力の高さで3着に粘り込んだ。体調が上向いているだけではなく、春に比べても馬体がドッシリとしてきたように、ここに来てさらに成長している。自分の得意な条件に戻れば、G1レースで再び好勝負する下地は整った。

イコピコが1頭だけ違う脚で追い上げてきた時には、既に勝敗は決してしまっていた。もう少し前に行っていればと思われるかもしれないが、そうすればこれだけの脚は使えなかっただろう。こういうタイプの馬は馬群の中で脚を溜めるよりも、周りに馬がいない状態の方が最後の瞬発力が生かしやすい。前走の神戸新聞杯の走りを見る限り、中距離で切れ味を生かす競馬が合っているようだ。マイラーであった祖母のカッティングエッジの血が出てきているのだろう。

関東馬ナカヤマフェスタは、道中押しても前に進んで行かない様子で、勝負どころで前走のような捲くりを打つことができなかった。元々、気性の難しい馬だけに、輸送等の影響もあってか体調が優れなかったのだろうか。アドマイヤメジャーもスタミナ不足を露呈してしまった。ステイヤーの資質が問われるレースでは、アグネスタキオンの血では太刀打ちできなかった。同じことはアンライバルドにも当てはまり、菊花賞の舞台とこの馬の資質が、精神的にも肉体的にも全く逆のベクトルにあった。

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情熱の勝利

Syukasyo09 by @84 image
秋華賞2009-観戦記-
ヴィーヴァヴォドカが飛ばし、それにワイドサファイアが張り付くようにして作られた淀みない流れは、前半1000mが58秒0というハイペース。これだけ厳しい流れになると、力のない馬は早々に手応えを失ってしまい、実力がそのまま反映されてしまう。小回りコースでゴチャついた分、ブロードストリートは致命的な不利を受けてしまったが、上位に入った馬たちはおよそ力通りの順当な結果となった。

レッドディザイアは太目で臨んだ前走のローズを叩かれ、マイナス14kgの馬体重が示すように、明らかに仕上がりが一変していた。馬が唸っているとは、まさにこういうことを言うのだろう。パドックでも気合が漲り、レースでは抑え切れないほどの行きっぷり。究極の出来にあったといえる。牝馬らしからぬ筋肉量の多さと胴詰まりの馬体だけに、2000mという距離もこの馬にとっては最適であった。ハイペースを積極的に追走し、早目に抜け出して後続を凌ぎ切ったのだから強い。次走のエリザベス女王杯でも古馬相手でも好勝負になるだろうが、今回で究極の仕上げを施されている以上、反動が出ることも心配される。

四位洋文騎手はよほど自信があったのだろう。後ろで構える2冠馬ブエナビスタや前走で敗れたブロードストリートをほとんど意識することなく、自分の競馬に徹していた。前走のローズSは外々を回してしまい不覚をとったが、今回は経済コースをピッタリと完璧に回ってきた。勝負どころの行くところ行くところ、前がスッと開いたことも大きかっただろう。レッドディザイアの地脚の強さを見事に生かしきった、非の打ち所のない騎乗であった。四位騎手を始め、レッドディザイア陣営からの勝ちたいという情熱がヒシヒシと伝わってくるような、待ちに待ったG1勝利であった。

3冠が懸かっていたブエナビスタは、ハナ差で優勝を逃がしたばかりか、降着という最悪の結末を迎えてしまった。札幌記念にせよ今回のレースにせよ、素質だけで最後は来ているが、本来のブエナビスタに比べるとエンジンの掛かりがワンテンポ遅い。連戦連勝で臨んだ春のオークスがハードなレースになっただけに、その反動もいまだ尾を引いている印象を受ける。蹄鉄の問題はその一環だろう。3つの異なった条件を全て勝ち切って3冠を制するには、相当な能力とタフさが求められる。メジロラモーヌとスティルインラブという偉大な先輩には追いつけなかったが、これからのブエナビスタに改めて期待したい。

安藤勝己騎手はこれで秋のG1レースを連続ハナ差で敗れてしまったことになる。2着が多いのは騎手の調子が悪いということでもあり、ここからどのように立て直して来るのか、それともこのまま衰えて行ってしまうのだろうか。降着の件に関しては、フルゲートの京都2000mの内回りコースでは十分に起こりえる状況であって、決してラフプレーではない。あくまでもレースの流れに沿った自然な形であって、たまたま同じ馬に2度被害を与えてしまったので印象が悪かったのだろう。いずれにせよ、加害馬も被害馬もお互いに力を発揮できない後味の悪い競馬であった。

ブロードストリートはあれだけの不利を受けても、最後まで伸びてきたように、夏を越して力を付けている。突き抜けたとまで言わないが、まともに走っていれば勝ち馬と際どい勝負は必至であった。藤田伸二騎手も悔しさと共に、不利を避けられなかった不甲斐なさを感じているはずである。繰り返し言うが、フルゲートの京都2000mの内回りコースでは十分に起こりえる状況であり、そのリスクを承知の上で内の経済コースを取ったのだから、誰が誰に文句を言っても埒は開かない。まだまだ成長の余地を残した馬体だけに、来年が楽しみな馬である。

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10年に1度の

Sprinterss09 by Deliberation
スプリンターズS2009-観戦記-
外枠からダッシュ良く飛び出したローレルゲレイロがハナを奪い、前半3ハロンが32秒9、後半が34秒6という、いかにもスプリンターズSらしいペースを作り出した。後ろから行った差し馬に有利な流れではあったが、3~4コーナーでゴチャついてしまった分、差して来る馬がいなかった。そのため、良馬場のスプリンターズSでは珍しい、逃げ切りとなった。

それにしても、この激流を自ら作り出し、最後まで逃げ切ったローレルゲレイロの心臓の強さには脱帽する。並みの馬であれば大バテしてもおかしくないレースを、最後の坂で止まりそうになりながら盛り返すのだから、まさに驚異的な粘り腰である。さすが昆貢調教師が「10年に1度の馬」と言うだけのことはある。休み明けの前走を大敗して、体調を心配されていたにもかかわらず、大一番で見事に復活した。これで春秋スプリントG1制覇であり、次は香港でも逃げ切って、名実ともに10年に1度のスプリンターとなって欲しいものだ。

ローレルゲレイロの復活に花を添えた藤田伸二騎手もさすがである。決めなければならないスタートを決め、迷うことなくハナを奪い、直線では渾身の力を込めて愛馬を叱咤激励した。わずかでも迷いがあれば、ハナ差の勝利はハナ差の敗北に変わっていたことだろう。ターフの外ではヤンチャな言動で知られるが、ターフの上では意外や誠実で真摯な仕事をする。好き嫌いは別として、馬券を買っている側からすれば、安心して見てられる数少ないジョッキーの一人である。そんな仕事人・藤田伸二のしたたかさが垣間見えた騎乗であった。

ビービーガルダンはあと一歩のところで勝利を逃してしまった。この馬としては理想的な位置取りで、最後までジワジワと伸びて、力は出し切っている。持ち時計がないことを心配されていたが、1分7秒5で走っているのだから、上出来の内容だろう。今回は勝った馬の驚異的な粘りに屈してしまった。もし悔いが残るとすれば、後ろから来る馬に意識が行った分、結果的にゴーサインが少しだけ遅くなったことだろうか。ローレルゲレイロが相手だと知っていれば、もう少し早めに捕まえに行ったはずである。僅かな差で負けてしまったものの、この馬自身も今年に入って力を付けている。安藤勝己騎手にとっては、ビリーヴに続く、悔しいハナ差でのスプリンターズSとなった。

サマースプリントチャンピオンのカノヤザクラは、末脚勝負に徹したことが功を奏した。中団以降がゴチャつく中、直線の競馬だけで他馬をごぼう抜きにした。もう少し前に行っていればという考えもあるかもしれないが、思い切った戦法を取ったからこその3着だったと私は思う。ローレルゲレイロが同厩舎のディープスカイの分も頑張ったように、カノヤザクラもスリープレスナイトの分まで走った。競馬はどこかで繋がっている。

1番人気に推されたアルティマトゥーレは、自分の型に持ち込めず、本来のスピードを生かし切れなかった。内枠からの発走のため、外から被せられて苦しいところに入ってしまったように、外目の枠を引けていれば3着はあったかもしれない。それでも抜け出してくる脚がなかったことは確かで、前走のセントウルS時がピークであった体調が下降線を辿りつつあったのだろう。パドックで歩く姿を見ても、ハミをしっかり噛んでいなかったように、最高潮だった前走に比べて闘争心が不足していた感は否めない。天性のスプリント資質がある馬だけに、この後は一旦休養を入れて、来年に備えて大事に使って欲しい。

その他、4着に入ったアイルラヴァゲインは体調が良かったことが好走の原因だろう。中間から馬が唸っているほど調子が良かった。本調子にあれば、これぐらいは走ってもおかしくない馬である。アーバニティは休み明けで馬が気負ったのか、前半で前に行ってしまい、末脚を生かす本来の競馬が出来なかった。外国馬シーニックブラストは、道中で躓いてしまい万事休す。パドックを見る限り、馬体も落ち着きも素晴らしく、ひょっとして勝たれたかと思っただけに、残念なアクシデントとなった。こういったことも含め、初めての競馬場に遠征して、いきなり勝つことは本当に難しい。

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天下一品

Takaraduka09 by echizen
宝塚記念2009-観戦記-
誰も行かないんだったら俺が行くよ、と言わんばかりのダービージョッキーを外から交わし、コスモバルクが玉砕覚悟の逃げを打った。前半1000mが59秒ジャストとやや速めだが、2番手以降はおよそ平均ペースで流れた。展開に有利不利が少なく、どこから行った馬でも力を発揮できる、紛れの少ないレースとなった。

勝ったドリームジャーニーは、ディープスカイを終始マークして、直線だけであっという間に突き抜けた。2歳時に軽く飛んだと表現された末脚は、古馬になってからさらに力強さを増し、3年という歳月を経て、再び頂点へと上り詰めた。母父メジロマックイーン譲りの成長力に加え、父ステイゴールドからは旺盛な闘争心を見事に受け継いでいる。特に今回の宝塚記念は、420kg台の馬とは思えない、馬体のボリュームと筋肉の盛り上がりを誇示していた。今年に入って4戦を使われつつ、最高の体調にあったことは間違いない。ゴール前では抑える余裕も見せて、本当に強い競馬であった。

池添謙一騎手は完全にドリームジャーニーを手の内に入れている。道中での折り合いの付け方から仕掛けどころまで、文句なしの騎乗であった。こういった後ろから行く馬に乗せると本当に上手い。チャンスがあると思えば思うほど、仕掛けのタイミングを我慢することは難しく、分かっていても、気持ちが先に動いてしまう。デュランダルやスイープトウショウといった名馬たちに、無心を演じることを教えてもらったのだろう。勝負どころでスッと馬を動かす技術も天下一品である。

サクラメガワンダーは正攻法の競馬で勝ちに行ったが、勝ち馬の切れ味に屈してしまった。とはいえ、昨年の鳴尾記念あたりからの成長は著しく、このメンバーに入っても見劣らないだけの力を付けている。クラシックでも期待された馬だが、祖母サクラクレアーから流れる血脈がようやく6歳にして開花してきた。もう少しトモに筋肉がついてくれば、最後のひとふん張りが利き、G1のタイトルにも手が届くのではないだろうか。夏を越しての成長を楽しみに待ちたい。

1番人気に推されたディープスカイは、4コーナー手前ですでに手応えが怪しくなり、直線に向いて勝ち馬に交わされると、全く抵抗できなかった。馬体は絞れ、最高の仕上がりを見せていただけに、不甲斐なさだけが残った。数字的には体調は戻っているだけに、考えられる敗因としては、ダービーを勝ったことによる精神的なダメージをまだ引きずっているということだろうか。細かいことを言えば、今回も道中で舌がハミを越しかけていたように、ハミ受けの悪さが出てきているように映る(安田記念の最終追い切りでもそのような仕草は見られた)。それもこれも走ることに対して苦しがっているからである。この結果を受けて、凱旋門賞うんぬんの前に陣営が採るべき選択肢はひとつ。厩舎に置いておくのではなく、勇気を持って放牧に出すことだ。

カンパニーは外枠発走からスッと先行し、4番手で見事に折り合った。最後は上位3頭に交わされてしまったが、この馬の力は出し切っている。今回は体調も良く、悔いのないレースであっただろう。アルナスラインは馬体重こそマイナスではあったが、最終追い切りでバタバタしていたように、前走時に比べると仕上がりが優れなかった印象を受けた。追い切りで動かないこの馬にとっては、天皇賞春からおよそ2ヶ月という間隔の長さが裏目に出てしまった。

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あっぱれ

Yasuda09 by echizen
安田記念2009-観戦記-
大外枠からダッシュ良く飛び出したローレルゲレイロから、一昨年の2着馬コンゴウリキシオーがハナを奪い、前半800mが45秒3というハイペースでレースを引っ張った。力を要する馬場であったことも手伝って、上がり3ハロンが36秒1と掛かり、先行した馬にとっては苦しい底力勝負となった。ダービー馬であるウオッカとディープスカイの2頭がワンツーを決めたのも、当然といえば当然の結果といえる。また、ドバイデューティフリーに参戦したウオッカが地元で勝利を飾り、アジアマイルチャレンジの最終戦に相応しい決着でもあった。

勝ったウオッカは、力の違いをまざまざと見せ付けた形となった。前走同様、ゲートを飛び出し、あっという間に先団につけると、あとは追い出しのタイミングだけという絶好の手応え。馬群を抜け出すのには苦労したが、武豊騎手がなんとかスペースを見つけると、あっという間に先に抜け出していたディープスカイを捕らえてみせた。前走で走りすぎたことの反動を心配していたが、全くの杞憂であった。個人的に大好きな馬だけに、小さなことが気になってしまう。精神的に参ってしまうどころか、ドバイ遠征で世界の強豪に揉まれたことで、心臓が鍛えられ、あらゆる面で強さを増している。

武豊騎手は「下手に乗った」と言うが、あそこはレースの綾だけに仕方ない部分もある。外に出すという安全な方に意識が行っていたため、内に空いた1頭分のスペースを後ろにいた四位ディープスカイに入られてしまった。今回はウオッカの力が抜けていたから差し切れたが、もしディープスカイが真っ直ぐ伸びていたら危なかった。とはいえ、馬を操って瞬時に前に出す技術があってこそ、ギリギリの状況でも慌てることなく仕事をすることが出来た。昨年は岩田康誠騎手に乗り替わって結果を出されたレースだけに、この安田記念の勝利は格別に違いない。

ディープスカイはウオッカを前に見る最高の形でレースを進めていた。最後の直線を向いて、1頭分だけ空いたスペースにスッと入った時の脚はさすがで、四位騎手の判断にも迷いがなかった。ただ、1頭だけになってしまった後、少しフラついてしまったように、結果的には馬体が少し太かった。前走が休み明けにもかかわらず馬体重が減っていたため、そのことも仕上げに影響を与えたのかもしれない。ビッシリと攻めて、馬体が絞れ、もう少しトモに筋肉がついてくれば、脚を溜めてビュッと抜け出す競馬が出来るようになる。完成までもうすぐだ。

見せ場を作ったファリダットは、安藤勝己騎手の腹を括った騎乗が功を奏した。距離に不安のある同馬の力を最大限に発揮するために、練りに練った末の作戦だろう。最後方から最後の直線に全てを賭け、あわや大金星かと思わせる末脚を繰り出した。もう少しスタミナがあれば、突き抜けていただろう。このように道中で脚を溜める走りが出来れば、これから先のスプリントG1につながっていくはずである。来年の高松宮記念が楽しみになった。

末脚が不発に終わったスーパーホーネットにとっては、上がりの掛かる激しい競馬が応えたようだ。マイル戦の瞬発力勝負には滅法強いが、これだけ底力を問われる内容になってしまうと、ダービー馬2頭と真っ向から渡り合うのは正直厳しい。ウオッカとディープスカイが内枠から経済コースを進めたのに対し、スーパーホーネットは外を回る形で脚を溜められなかったのも苦しかった。前走をひと叩きされ、最高の体調で臨んだだけに、もはや完敗といってよい。

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信じ続けたものだけが救われる。

Derby09 by Ruby
ダービー2009-観戦記-
馬場を叩くように降った雨の影響で、ダービーとしては珍しい不良馬場でレースは行われた。ジョーカプチーノが若さに任せて飛び出し、前半1000mが59秒9という暴走ペースでレースを引っ張った。馬群は縦長になり、後続は平均的なラップで走ったことになるが、ここまで上がりが掛かると前に行った馬にとって有利な、後ろからでは差しにくい流れとなった。とはいえ、上位に入線した馬は力のある馬ばかりで、皐月賞とは対照的に、まさに力通りの決着となった。

勝ったロジユニヴァースは、前走の皐月賞の鬱憤を晴らすような圧勝劇を演じた。皐月賞で落ちるところまで落ちて、下手に好走しなかったことが功を奏したのだろう。6週間の間に、短期放牧を経て、陣営の懸命なケアが実り、なんとかダービーに間に合った。もちろん、この馬の生命力も高かった。2歳時に2度の関西遠征をして、ラジオNIKKEI杯をもぎ取ってくるほどの関東馬であり、終わってみれば力が違ったということだ。久しぶりに関東から超がつく一流馬が誕生した。

横山典弘騎手にとって、念願の初ダービー制覇となった。本人も今年はチャンスだと思っていたし、最後のチャンスかもしれないと感じていたはず。ここ10年以上にわたる、関東馬の劣勢のあおりを最も受けた騎手と言っても過言ではなく、もし関西に所属していれば武豊騎手との実績は逆になっていたかもしれない。それほどに一流の技術を持ったジョッキーなのである。忸怩たる思いを胸に秘め、関東の競馬を10年以上にわたって支えてきた騎手だけに、関東馬でダービーを勝ったことは何ものにも代えがたい喜びに違いない。

リーチザクラウンも武豊騎手の手綱に導かれて、自分の力を最後まで出し切った。2番手につけたが、ジョーカプチーノが飛ばしてくれたおかげで、この馬としては単騎で逃げる形となり、折り合いもつけやすかったのではないか。元々能力の高い馬だけに、自分の走りさえ出来ればやはり強い。直線では一旦先頭に立ち、あわやというシーンを作り出した。ただ、勝ったロジユニヴァースにはラジオNIKKEI杯でも負けているように、現時点での力差は大きかった。そして最後に、武豊騎手が内を開けたことについて。武豊騎手にとっては珍しいことではあるが、勝ち負けを超越した、中央の競馬を共に背負ってきた同志に対する無言のリスペクトが感じられる、美しい行為であったと私は思う。

アンライバルドは自分のレースを全くさせてもらえなかった。最内枠のロジユニヴァースがあっさりと最高のポジションを確保したのに対し、アンライバルドは後手後手を踏んでしまったように、1コーナーに入る際のポジション取りが勝敗を大きく分けたレースであった。元来難しい面を秘めた馬だけに、道悪の中で揉みくちゃにされてしまい、走る気を完全に喪失してしまった。スプリングS、皐月賞と、岩田康誠騎手の神業的な手綱捌で勝ち続けてきた勢いはあったが、肝心のダービーでモロさを露呈してしまった。

それにしても、競馬というゲームはドラマチックに作られていると改めて思った。神が創ったのではないかと思わせるほど、ひとつひとつの糸が綿密に織り成されて結末を作り上げていく。昨日の大敗が今日の勝利につながり、今日の栄光が明日の敗北を予感させる。世の中の大勢はあっさりと覆され、信じ続けたものだけが救われる。しかし、信じ続けられる者は少ない。これが競馬なのである。そして、故寺山修司が「競馬が人生の比喩なのではない。人生が競馬の比喩なのだ」と語ったように、これが人生なのかもしれない。今年のダービーは私たちに多くのことを教えてくれた。

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明るい未来しか見えない

Oaks09 by Deliberation
オークス2009-観戦記-
前夜から降り続いた雨の影響もほとんどなく、わずかに水分を含んだ走りやすい良馬場でレースは行われた。ヴィーヴァヴォドカが先導して作り出したペースは、前半1000mが61秒0というオークスらしいスローな流れ。当然のことながら、レースは直線に向いてからの瞬発力勝負となり、桜花賞組が再び上位を独占した。桜花賞が新阪神1600mコースで行われるようになってから、緩やかな上り坂を間に挟んだ長い直線という共通項が生まれ、桜花賞とオークスはかつてほどの垣根がなくなった。

勝ったブエナビスタは、決して有利な流れとは言えない中、大外を回して、それでもなんとか届いた。先頭に立つと気を抜いてしまう馬とはいえ、さすがに今回はそんな余裕はなかった。スタートから馬の行く気に任せてポジションを決め、道中はジッとして、4コーナーに向けて少しずつ差を詰めていく。おそらく安藤勝己騎手のイメージどおりの競馬だったはずだが、レッドディザイアのしぶとさだけは思っていた以上だったのではないか。また、凱旋門賞を含めた先々を見据えた競馬をしようと、馬群を突き抜ける競馬を試みようか、もしくは安全に外を回そうかというジョッキーのレベルの高い迷いがわずかに見えた。最後は計ったように差し切ってみせたが、薄氷を踏む勝利であったに違いない。

そんな人間側の思惑や動揺とは裏腹に、ブエナビスタ自身は飄々としたものであった。初輸送、初めての競馬場にもかかわらず、パドックから返し馬に至るまで、全く入れ込むところがなかった。この辺りの気持ちの余裕は、父スペシャルウィークから受け継いだものだろう。武豊騎手がスペシャルウィークを評して、「飄々としていて、明るい未来しか想像できない」と語っていたことを思い出した。私もブエナビスタには明るい未来しか見えない。

レッドディザイアは、究極の仕上がりがそのままレースでも生きた。休み明けだった前走と違い、今回は鍛え抜かれての出走だっただけに、別馬のように筋肉が盛り上がっていた。そのことがかえって距離に対して不安を抱かせたが、私の杞憂に終わった。内枠からそのまま競馬を進め、最短距離を最高のタイミングで抜け出した四位騎手の騎乗も見事であった。完璧に乗って、それでも交わされたのだから、勝った馬が強かったという言葉で慰めるしかないだろう。

ジェルミナルも桜花賞の走りをそのままオークスに持ち込んだ。3頭出しの藤原英昭厩舎では最も完成度の高い馬が、その力を最大限に発揮してみせた。福永祐一騎手もソツなく乗った。2着馬とは3馬身も離されている以上、どう乗っても勝ち負けにはならず、悔いはないだろう。同厩舎でアグネスタキオン産駒のブロードストリートも、現時点でのこの馬なりの力を出し切っている。ワイドサファイアは残念な結果(放馬による競走除外)になってしまったが、走っていれば3頭が掲示板を独占していたかもしれない。藤原英昭調教師の仕上げの手腕はここでも光っている。

ディアジーナは不向きな瞬発力勝負になってしまったが、それでも5着に入ったあたり、能力の高さを証明した。もう少し持続力を問われるレースになれば、また違った結果が出たに違いない。ダノンベルベールとハシッテホシーノは、3歳春のアグネスタキオン産駒によくある線の細さがあり、G1レベルのレースでは、もうひとつパンチ力が足りない印象を受けた。

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いつもウオッカが助けてくれる

Victoriamile09 by Deliberation
ヴィクトリアマイル2009-観戦記-
ショウナンラノビアが逃げた前半46秒7-後半45秒7というスローペースに、先週からの高速馬場が加わったことにより、前に行ってかつ内で脚を溜められた馬に有利なレースとなった。勝った馬は別格として、2着以下は枠順と道中の位置取りが明暗を分けた。

1分32秒4はヴィクトリアマイルのレースレコードあり、7馬身差で後続を突き放したウオッカ自身が作り出した時計と言ってよい。まるでドバイの鬱憤を晴らしたかのような完勝であった。心配された海外遠征による疲れなど微塵も見せず、ウオッカはスタートからゴールまで元気一杯に駆け抜けた。昨年時よりも肉体的には仕上がっていたが、精神的に参ってしまっていても自然な状況であっただけに、今回はウオッカの闘争心の強さがより一層際立ったレースであった。ウオッカにこれだけ本気で走られては、他の牝馬はなす術がない。歴代1位の獲得賞金女王となり、これで名実ともにエアグルーヴを超えたといってもよいだろう。

武豊騎手も、流れるように美しくウオッカをゴールまで導いた。思うように結果が出ず、自身の不調説もささやかれる中での完勝だけに、武豊騎手とはいえど失いかけていた自信やプライドを取り戻したのではないだろうか。そもそも周りのレベルが上がっただけで、武豊騎手の技術レベルが落ちているわけでも、肉体が衰えてきているわけでもない。強い馬に乗れば強い競馬が出来るのだ。「苦しいときにいつもウオッカが助けてくれる」という勝利インタビューを聞き、デビュー以来、日本の競馬を背負ってきたジョッキーの孤独と矜持を思い、少し胸が熱くなった。

2着に入ったブラボーデイジーは力を付けてきている。今回は相手が強かったとしか言いようがないが、抑え切れない手応えで先行し、最後までしっかりと走り切ったレース振りは大いに評価できる。前走は不良馬場、今回はパンパンの良馬場とまるっきり異なる条件に、これだけスムーズに対応できたことも驚きである。父から柔らかい筋肉から繰り出されるパワーを、母父から前向きな気性に乗るスピードを受け継いでいる。将来性豊かな牝馬の新星が登場した。

ショウナンラノビアはマイペースで逃げられたことが功を奏した。柴田善臣騎手が逃げると、本当にゆっくりと逃げる。これだけゆっくり逃げられるジョッキーも珍しい。肉を切らせて骨を断つという形にはならないが、今回のように力以上の結果を出すこともままある。

ウオッカの対抗と目されていたカワカミプリンセスとリトルアマポーラは、外枠が完全に仇となった。外々を回された挙句、前が止まらないペースと馬場だから、もうどうにもしようがない。さらに、カワカミプリンセスにとってもリトルアマポーラにとっては、マイル戦の瞬発力勝負では分が悪い。それでも勝ち負けできる力が備わっていなかったということでもある。

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若さゆえの勝利、老獪さゆえの2着

Nhkmilec09 by fakePlace
NHKマイルC2009-観戦記-
例年、雨にたたられることが多いこのレースだが、今年の開催は好天に恵まれ、パンパンの良馬場でNHKマイルCは行われた。レコードが出るほど淀みのないペースで流れたにもかかわらず、前が止まらなかったのは、そういった馬場の影響も少なくない。また、ゲットフルマークスとジョーカプチーノが縦に並び、それ以下の隊列が固まっていたように、有力馬が後方で互いにけん制し合い金縛りにあってしまった。それにより、馬のリズムに合わせて、素直に競馬をした先行馬がそのまま残る結果となった。

勝ったジョーカプチーノは、離れた2番手という最高のポジションで競馬をすることが出来た。競り合うこともなく、他馬から目標とされることもなく、実質は楽な単騎逃げと変わらない。G1レースのマイル戦でなかなかこのようなポケットが生じることはないが、今回に限っては全てがうまく運んだ。もちろん、これだけのタイムで逃げ切ったのだから、ジョーカプチーノのスピードと成長力は認めなければならないだろう。前走のニュージーランドTでもハイペースを前で粘っていたように、今回の走りも決してフロックではない。若いジョッキーということからも、人気の盲点になっていた。

その藤岡康太騎手はデビュー3年目、2回目のG1レース挑戦にして、そのタイトルを手にしてしまった。折り合いさえつけば力を発揮してくれると信じ、ジョーカプチーノの良さを引き出すことに専心した結果、どの馬よりも先にゴールすることが出来た。若さゆえの素直さの勝利である。兄の藤岡佑介騎手よりも先にG1レースを勝ち、本人は複雑な心境だろうが、これからますます将来が楽しみなジョッキーが誕生した。

レッドスパーダも横山典弘騎手に導かれて、最高のパフォーマンスを発揮した。こういう馬場と展開を予測していたかのような先行策で、前を意識しつつ、後ろにも注意を払いながら、仕掛けのタイミングも文句なしであった。勝ち馬が若さゆえの1着ならば、この馬は老獪さゆえの2着と言うべきか。レッドスパーダ自身も馬体から走る活力が溢れていて、さすがに府中のマイル戦に強い藤沢和雄厩舎の馬だと感じさせられた。まだ成長の余白を残すだけに、1年後の安田記念が楽しみな馬である。

グランプリエンゼルが3着に食い込んで、3連単は大波乱となった。内田博幸騎手の思い切りの良さと、腕っ節の強さが光った。この馬を3着に持ってくるのだから鬼である。4着に入ったマイネルエルフも5着のフィフスペトルも、鞍上の積極策が功を奏した。一方、ワンカラットの藤岡佑介騎手は、枠順やこの馬の地脚の強さを考えても、もう少し出して行っても良かったのではないか。最下位に降着となったサンカルロも、武豊ブレイクランアウトを意識しすぎてか、道中の位置取りと仕掛けのタイミングがまずく、せっかくの好枠を生かせなかった。

ダービーを目指して臨んで来たブレイクランアウトとアイアンルックだが、いずれの末脚も不発に終わってしまった。ブレイクランアウトに関しては、絶好のスタートから好位を取れる手応えだったところを、敢えて控えてしまったことが裏目に出た。朝日杯フューチュリティSで自分から動いて最後は止まってしまった経験があるだけに、武豊騎手が自ら動けなかった気持ちもよく分かる。もちろん、共同通信杯以来ということもあって、動ける出来になかったということもあるだろう。

アイアンルックはレース前からの入れ込みが目立った。G1レースを勝つには心臓が小さいのかもしれない。道中はキッチリと折り合い、この馬のリズムで走れていたが、最後の直線に向いたところで前をカットされて万事休す。そこから追い上げてくるだけの力はなかった。どちらの馬にも言えることだが、今日のレースを見る限り、ダービー云々言えるだけの力がまだないというのが現状だろう。

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挑戦者は最短距離を進む

Tennosyoharu09 by Deliberation
天皇賞春2009-観戦記-
前半1000mが速く、中盤が遅く、後半になって再度ペースが上がるという流れで、前半に飛ばしすぎた逃げ・先行馬、そして中盤で前との差を詰められなかった差し・追い込み馬にとっては厳しい展開となった。また、長距離のレースにおいては、多少ペースが遅くとも馬群は縦長で進むものだが(各馬が距離ロスを避けるため)、フルゲートということもあって今回のレースでは馬群が固まっていた。そのため、道中で馬群の外々を回された馬は、最後の直線を迎える前にすでに手応えを失ってしまった。

こうしたレースの流れに最高に上手く乗って、マイネルキッツが6歳にして大金星を挙げた。牡馬にしては線が細く映る馬ではあるが、長距離向き、つまりステイヤーの馬体だったということだろう。中距離でどうにも歯がゆいレースが続いていたが、距離が伸びてその素質が見事開花した。馬体も絞り込まれて、生涯最高と言って良い出来にあったことも確かである。ゴールデンウィークの渋滞を避ける目的もあり、早めに栗東留学をさせていた国枝調教師の戦略とノウハウも生きた。

松岡正海騎手の冷静な手綱さばきも見逃せない。周りのペースに惑わされることなく、前半はマイネルキッツのペースで走らせ、2周目の3コーナーで空いたポケットを見逃さずに入りこみ、4コーナーでは内が空くのを狙いすますようにギリギリまで仕掛けを待った。枠順の利を生かして、徹底的に内にこだわった騎乗も見事であった。

アルナスラインはあと一歩のところまで盾に手が届いていた。勝ち馬とは道中のコース取りと仕掛けのタイミングの差だけである。この馬も上手く流れに乗っているのだが、有力馬を意識した分、足元をすくわれてしまった感が強い。蛯名正義騎手もステージチャンプの借りを返せる絶好のチャンスだっただけに、悔しくてたまらないだろう。日経賞から調教を強化したことで、ようやくアルナスライン本来の力が発揮できるようになっている。

1番人気に推されたアサクサキングスは9着と惨敗した。この馬としては本格化していただけに不可解な部分があり、おそらく敗因は単一ではないだろう。四位騎手も言っているように、前走で極悪馬場を走り切ったことによる目に見えない疲れ、そして、コース取りによるロスが大きかった。前述したように、思っていたよりも馬群が横に膨らんだだけに、6つのコーナーで外々を回ったアサクサキングスは徐々にスタミナを奪われてしまった。外枠からの発走とアサクサキングスの脚質を考えると、外を回さざるを得なかったのは仕方ないとして、四位騎手は隣の馬との距離をタイトに走らせる騎乗を心掛けるべきだろう。

スクリーンヒーローは積極的にレースを進め、主導権を握ったまでは良かったが、直線に入ってだらしなかった。この馬も前走で極悪馬場を走った影響があったのかもしれない。ドリームジャーニーは上手く走っているが、この馬にとっては距離が若干長かった。ペースが遅くなったところで、スタミナに不安があるから動けなかったため、どうしても最後に差を詰めるだけで終わってしまう。同じことはサンライズマックスにも言える。ジャガーメイルは休み明けの分、道中動けず、最後も伸び切れなかった。

今年の天皇賞春は、サンデーサイレンスの血が入った馬が人気をしていたが(特に母父サンデーサイレンス)、結局勝ったのはチーフベアハート×サッカーボーイ。2003年の天皇賞春を思い出した。リンカーン、ネオユニヴァース、ザッツザプレンティが惨敗し、イングランディーレ(ホワイトマズル×リアルシャダイ)が逃げ切ったレースである。スタミナと底力が優先される舞台では、サンデーサイレンスの血がマイナスに働くこともある。これは来年以降も続いていく傾向だけに覚えておきたい。

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人の気持ちは、馬にも伝わる

Satuki09 by Photostud
皐月賞2009-観戦記-
4月開催最終週の傷んで重い馬場で、前半1000mが59秒1という速いペース。特に、スタートしてから最初のコーナーを回り切るまでの2ハロンの攻防が凄まじかった。皐月賞は前に行った馬が圧倒的に有利、というジョッキーや関係者の意識の総和が飽和点に達した結果、レースは誰もが想像した以上の激流となった。4コーナー手前から、抑えきれなくなった武豊リーチザクラウンが早めに動き、それをマークしていた有力馬も動き始めたこともハイペースに輪をかけた。そのため、前に行った組と後ろから行った組が、前半と後半でそっくり入れ替わる、典型的な前潰れのレースとなった。

勝ったアンライバルドは、後ろからレースを進めた組の中では、力が一枚上であった。4コーナーで馬群から一気に抜け切った脚はさすがだが、先行勢がバテて後ろに下がって来た瞬間と重なってのものだけに、過大評価は禁物である。アンライバルドにとっては、ハイペースを外枠からスムーズに追走できたこともプラスに働いた。こういった厳しい流れの方が、かえって気難しさを出さないものである。この馬としては未完成の部分が多い中で、完成度を問われる皐月賞をこのような形で勝てたことは大きい。矛盾するようではあるが、この時期の3歳馬はレースごと、いや日々成長しているのだ。

ここぞという場面での、岩田康誠騎手の勝負強さも光った。何と言っても、第1コーナーまでの間にハイペースを見切って、位置取りを下げた判断が素晴らしい。スタートから出して行ったので、前々で攻めるつもりだったのだろうが、他馬の出方やペースを瞬時に察知して、迷いもなく手綱を引いた。幾多の実戦によって培われたものなのか、レース前にかなりのシュミレーションをしていたのか、それともその両方なのか。いずれにせよ、一瞬で判断をして行動するという、ジョッキーに不可欠な要素を持っている。

2着に突っ込んだトライアンフマーチは、前崩れの展開が見事に嵌った。抑える競馬を教えてきたことが好走につながったと言えなくもないが、まず何よりも前が勝手に潰れてくれたということであろう。今回の結果を額面どおりに受けることは出来ないが、この馬も競走馬として成長する余白をまだまだ残しているだけに、将来は大きいところを狙える器であることは間違いない。父サンデー系、母父ダンシングブレーヴはこれからのトレンドになっていくだろう。

圧倒的な1番人気に推されたロジユニヴァースは、4コーナー手前ですでに手応えがなくなり、まさかの大敗を喫してしまった。見た目以上に速い流れを、終始、追いかけてしまったこともあるが、敗因はそれだけではないだろう。最大の敗因は、馬の体調と気持ちがピークを越していたということに尽きる。5連勝することの難しさ、さらに言えば、無敗の馬を扱うことの難しさが、本番を迎えてモロに出てしまった。負けられないという人の気持ちは、馬にも伝わるものである。陣営が思っていた以上に仕上がってしまっていた弥生賞のピークの状態を、残念ながら皐月賞まで維持することが結果的に出来なかったということだろう。体調と気持ちが下降線を辿った末の敗北だけに、横山典弘騎手のダービー初制覇に黄色信号が灯った。

案の定というか、リーチザクラウンは中途半端なレースをしてしまった。大外枠を引いてしまったことが仇となり、押すでもなく引くでもない、皐月賞を勝てるでもないダービーにつながるでもない、悩ましいレースであった。いくら能力があっても、最初からあれだけ力んで走ってしまうと、最後まで到底持たない。前の馬を追っかけてしまう真面目すぎる気性ゆえに、走りに遊びがなくなっている。体型的には距離が伸びて悪いはずがないのだが、ダービーに向けて精神面での課題を残した。

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ディープインパクトに通底する

Oukasyo09 by Deliberation
桜花賞2009-観戦記-
前半1000mが46秒9-後半も47秒1というラップタイムだけを見ると、およそ平均ペースでレースは流れた。しかし、道中における縦長の馬群を見ると、明らかに逃げ・先行馬にとっては厳しい流れになったといえる。淀みのない流れを、後方から自分のリズムを守りつつ、馬群の外のポジションで走ることの出来た馬たちが上位を独占した。

勝ったブエナビスタだけは、展開やペースなどはほとんど関係なく、自分のリズムで終始走り切った。ヒヤッとさせられたのは、最終コーナーを回った直後の前が詰まった一瞬だけ。安藤勝己騎手が冷静に外に進路を変えると、あとはゴールまで一直線に伸びた。最後は手綱を抑えていたように、外から見るよりも、人馬としては余裕があったのだろう。ギリギリで届いたように見えるが、オークスを見据えた上で2400mを走るリズムでマイル戦を勝つことが出来たのだから、その価値は高い。あまり綺麗に勝ちすぎるよりも、これぐらいの方が先へつながりやすい。33秒台の速い上がりを使った反動が出なければ、次走のオークスも磐石だろう。

どこから見ても普通の馬であるが、それでこれだけ走るのだから、実際に走った時のフットワークや搭載されているエンジンが他馬とは違うということである。そういった点では、ディープインパクトに通底するものがある。また、兄のアドマイヤジャパンやアドマイヤオーラと違い、父がスペシャルウィークに代わったことで、精神的にもゆったりしたというか奥行きが増したというか、3歳牝馬らしからぬ落ち着きでパドックから歩いていた。将来が楽しみで仕方ない馬である。ブエナビスタにとって、桜花賞の勝利はスタート地点にすぎない。

レッドディザイアは、相手こそ悪かったものの、勝ちに等しい競馬をした。道中のペースが速くなり、馬群が縦長になったことで、かえって大外枠を引いたことが吉と出た。スタートしてそのままのリズムで走り、最後は自ら動いて勝ちに行った。ゴール前までキッチリと伸びていて、3着以下とは力の差を感じさせる内容であった。スタミナも問われるレースだっただけに、オークスで距離が伸びることはこの馬にとってもプラス材料となる。わずか2戦のキャリアでこれだけ走るのだから、うまく成長していけば、ブエナビスタのライバルになり得るかもしれない。

ジェルミナルはこれぐらい走って良い馬だろう。阪神ジュべナイルFでは外々を回って大きなロスがあったが、今回は福永祐一騎手がタメて乗って順当な結果を出した。雄大なフットワークからも、こういう競馬の方が合っている。馬体に芯が入ってくれば、もっと良くなるだろう。

ワンカラットは動きづらい位置を終始走らされたが、藤岡佑介騎手が我慢に我慢を重ねて4着を確保した。距離が少し長かった印象もあるので、今回は力を最大限に出し切ったと考えてよい。オークスとなると条件が悪くなるが、折り合いのつく馬だけに、展開次第では好走の可能性はある。

3番人気に推された関東馬ダノンベルベールだが、この馬も苦しい位置取りを強いられ、勝ちに行ったものの、最後は失速してしまった。この馬の力は出し切っているが、2歳からの成長があまり見られず、G1レースにおいてはパンチ力が不足している感は否めない。同じく関東馬のサクラミモザは、道中自分のリズムで走られず、展開的にも前崩れの厳しい流れの中で走らなければならなかった。大きくバテてはいないが、このペースを押し切るだけの力はなかった。

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気迫で逃げ、気合で差し返した

Takamatumiya09 by fakePlace
高松宮記念2009-観戦記-
前半33秒1、後半34秒9といった前傾ラップにもかかわらず、レース全体としてはスローに流れたように感じてならない。開催6日目であること(例年は10日目)によって、芝の傷みが比較的少なく(特に向こう正面は馬場が絶好)、前が非常に止まりにくい馬場状態であった。さらにレースの流れが中盤から落ち着いたことで、後ろから行った馬では勝負にならないレースとなった。全てにおいて恩恵を受けたローレルゲレイロが、まんまと逃げ切った。

勝ったローレルゲレイロは、スタートしてから先頭を取り切れたことが大きい。香港遠征を経て、レースを2度叩き、馬がピークの状態に仕上がっていたこと。また、最初からハナを奪うという決め打ちが出来たことが勝因である。8分程度の仕上がりであった阪急杯でも3着以下に3馬身以上の差を付けているのだから、今回のように馬場や展開に恵まれれば、勝つチャンスは十分にあったということだろう。父キングヘイローと同じ5歳での勝利となり、大外から豪快に追い込んだ父に対し、ローレルゲレイロはスタートからゴールまで逃げ切った、対照的な勝利であった。

それにしても、藤田騎手がハナを主張した時には、意外にも流れが落ち着く。レース前からの口撃のようなものがあるとは思わないが、絶対にハナを取ってやる、下手に絡んでくる奴は許さないぞという無言の圧力がほとばしっているような騎乗であった。ショウナンカンプで逃げ切ったレースは馬のスピードで逃げ切ったが、今回は男・藤田伸二の気迫で逃げ、気合で差し返した逃走劇であった。

惜しくも春秋スプリントG1制覇を逃したスリープレスナイトだが、この馬のスプリンターとしての資質は十二分に示した。仕上がりは悪くなかったが、最後の最後で差し返されてしまったのは、やはり休み明けの影響である。最後の一歩を後押しする心臓までが出来上がっていなかったということに尽きる。どこかでひと叩き出来ていれば、違った結果が出ていたはず。スピードとパワー、そして最後まで走り切る精神力と、過去の名スプリンターと呼ばれた馬たちと比べても、この馬が劣ることはどこにもない。とはいえ牝馬だけに、今後も細心の注意を払ってケアしてもらいたい。

後方から突っ込んできたソルジャーソングやトウショウカレッジ、コスモベルは、勝てる競馬にはならなかったが、内枠と自身の好調を利して見せ場を作った。特に内田博幸騎手との追い比べを制した北村友一騎手にとっては、大きな自信につながる3着だろう。これから先、もっと活躍が見込めるジョッキーである。反対に、出脚がつかず、大外を回して届かなかったファリダットは、もう少しうまく捌けていればと思わせられた。人気を背負っているだけに外を回してしまうのだろうが、それにしても前半のロスがあった以上、後半はもっと思い切ったコース取りをしても良かったのではないか。

有力馬の凡走も目立った。ビービーガルダンは前哨戦の圧勝が嘘のような走りで、見せ場すら作れずに終わってしまった。行き切るならともかく、番手で競馬をしたかったビービーガルダンにとっては、外枠が予想以上に堪えた。左回りが初めてということもあったのだろうが、あれだけ外々を回されては苦しい。アーバニティは4コーナーでゴチャついてしまい、レースの流れに乗り切れなかったが、最後まで一度もガツンと来るところもなかった。前走を連闘で勝ったことによる目に見えない反動があったのかもしれない。キンシャサノキセキは見事なレース運びで、勝ちパターンに乗っていたが、最後は馬が止まってしまった。前回の負け方を含め、以前の勢いが感じられず、ピークを過ぎてしまった印象を受ける。昨年の覇者ファイングレインも全く伸びを欠いた。体調自体は問題ないのだが、血統的に強いクロスを持っている馬だけに、精神面での難しさが出てきてしまっているのだろう。

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シビれた。

Febs09 by Ruby
フェブラリーS2009-観戦記-
大方の予想通り、エスポワールシチーがハナを奪い、有力馬たちも積極的にポジション争いに加わったため、前半47秒0-後半47秒6という息つく間のない厳しいレースとなった。前に行った馬もなかなか止まらず、ある程度の位置に付けていないと勝負にならないという、極めてハイレベルな争いであった。これだけ厳しい流れになると、スピードが足りない馬はもちろん、マイル以上のスタミナに欠ける馬も最後には脱落してしまう。それにしても、ゴール前の内田博幸騎手と安藤勝己騎手、ルメール騎手の壮絶な叩き合いにはシビれた。

勝ったサクセスブロッケンは、好発から自然な形でポジションを取り、マイルの速い流れに折り合いがピタリと付いていた。最後の直線に向いて、一瞬はカジノドライヴに離されたものの、鞍上の叱咤激励に応えるように食らいついて、最後はスタミナと底力にものを言わせてゴール前で差し切った。昨年秋のシーズンは、疲れが完全には癒えていない状態で走って古馬の壁に阻まれてしまったが、ここに来て体調が戻ってきたことが大きい。そして何よりも、この馬自身の成長が著しい。ようやく7歳世代に引導を渡した形となり、これからはこの馬とカジノドライヴがダート界を引っ張っていく存在となるだろう。

内田博幸騎手にとっても会心の勝利だったに違いない。東京大賞典と川崎記念と2戦手綱を取り、いずれも引っ掛かりがちであったサクセスブロッケンを、今回は敢えて出して行かなかった作戦が功を奏した。スタートが決まったことも幸いした。馬のリズムに合わせながら、勝ちポジを取り、直線に向いてカジノドライヴを目標に追い出してからの迫力は、さすが元南関東ナンバーワンジョッキーである。年始はなかなか勝てずに心配されたが、これでもうエンジン全開といったところだろう。

惜しくも2着に敗れたカジノドライヴは、あとひと踏ん張りが利かなかった。最後にカネヒキリとサクセスブロッケンに内と外から来られて、追い比べて負けてしまったのは、これまで叩き合いをした経験がなかったゆえであろう。そういう経験が一度でもあれば、もう一歩前に出られた可能性もある。それでも、これだけの厳しいペースを追いかけて行って、最後まで粘ったのだから、ダート馬としての資質や将来性の高さは十分に示したといえる。安藤勝己騎手もエスポワールシチーとの距離を計りながら、後続の手応えを確認し、ギリギリまで追い出しを待った最高の騎乗であった。

カネヒキリはG1レース8勝の記録を逃してしまったが、それでも最大の賛辞を送りたい。昨年の秋から高いレベルのレースを勝ち続け、目に見えない疲れも溜まっていただろう。内枠を引いて、苦しいポジションを走らなければならなかったことも、この馬にとっては運がなかった。やはりG1レース7勝の壁を超えるのはなかなか難しい。それでも、最後まで諦めずにファイトする姿を見て、この雷神の精神の強さと崇高さを思い知った。ルメール騎手もこの馬の力を最大限に引き出していた。

エスポワールシチーの快走には驚かされた。やや重の脚抜きの良い馬場になったこともプラスに働いたのだろうが、この時計を作り出して、自らも4着に粘ったのだから褒められるべきである。速いペースではあったが、最後の直線に向くまで、気持ち良く走っていた姿が印象的であった。フェラーリピサもあわやという見せ場を作ったが、最後の直線では伸び切れなかった。これだけ厳しい流れになってしまい、スタミナ不足を露呈してしまった。

2番人気のヴァーミリアンも伸び切れずに6着。馬体にも翳りが見えてきて、中間の調教でも精彩を欠いていたように、競走馬としての峠を越してしまった感は否めない。ドバイへの2度の遠征も含め、長きにわたって一戦級で活躍してきた疲れが出てきているのだろう。それでも、この馬がカネヒキリにも並ぶとも劣らない最強のダート馬の1頭であることは間違いない。

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どこまで世界を変えるのか

Arima08 by Deliberation
有馬記念2008-観戦記-
楽々と先頭を奪ったダイワスカーレットと安藤勝己騎手が作り出した流れは、前後半1000mが59秒6-59秒8というイーブンペース。コーナーを6つも回る有馬記念にしては、中盤の緩みも少ない、全体を通して息のつく間もない厳しいレースとなった。ダイワスカーレットを目標にした馬たちは壊滅し、勝ちに行かずに脚を溜めた馬たちが足元を掬った格好となった。

トウメイ以来37年ぶりの快挙となったダイワスカーレットは、もはや牡馬牝馬というレベルを超えた、現代におけるサラブレッドとしての頂上のレベルにある。天皇賞秋をひと叩きされて、精神的に落ち着いていたように、今回は磐石の勝利であった。それでも、1番人気を背負い、ハナに立つ形で目標にされながら、最後は逆に突き放してしまうのだから恐れ入る。自分のペースで走れば、どこまで行っても止まることなく、最後の直線ではもう一度伸びたように、この馬の底は一体どこにあるのだろうか。来年は海外遠征のプランもあるようで、どこまで世界を変えることが出来るのか、楽しみや期待が尽きない。私たちの常識を超えた馬である。

安藤勝己騎手もダイワスカーレットの強さを信じて、極めてシンプルに騎乗していた。スタートを決めると、迷うことなくハナに立ち、ダイワスカーレットのストライドをそのまま生かしながら、後続の脚をなし崩し的に使わせた。ゴール前で多少行きたがったダイワスカーレットを抑える技術もお手のものである。強い馬が力で押し切ったレースではあったが、ゴールの瞬間にガッツポーズを決めた安藤勝己騎手の表情を見ると、やはり相当なプレッシャーを感じていたのではないかと想像する。競馬の恐ろしさを誰よりも知る騎手だからこその重圧だったのだろう。

2番人気に推された前年の覇者マツリダゴッホは、全くレースをさせてもらえなかった。スタートでメイショウサムソンにポジションを取られると、さらにスクリーンヒーローにも内からブロックされてしまい、終始外々を回る形になった。切れる脚のない馬だけに、4コーナー手前から動いて行かざるを得なかったが、そんなに乱暴に勝てるほどG1レースは甘くはない。昨年と比べて、マツリダゴッホの力が大きく落ちたという訳ではなく、人気を背負っている分、他馬(ジョッキー)からのマークが厳しくなってしまったということである。本当にわずかな動きの差が、これほどまでに大きく結果を変えてしまうという競馬のレースの怖さをここに見た。

武豊騎手がメイショウサムソンを完璧に操り、あわやマッチレースかという見せ場を作った。おそらく予定していた通りのポジション、コース取りだったはずで、道中は(私を含め)夢を見たに違いない。4コーナー手前で夢は潰えてしまったが、メイショウサムソンのレースをしたという思いはあるだろう。厳しいペースをついて行っての惨敗ではあるが、もはやかつての唸るような強さは残っていなかったということである。3年間にわたって一戦で走り続けてきた馬だけに、目に見えない精神的な疲れが限界を超えてしまったのだろう。それでも後ろの世代にバトンを渡す、正々堂々とした走りであった。

スクリーンヒーローも勝ちに行っての敗北だけに、勝った馬が強かったと認めざるを得ないだろう。道中もしっかりと折り合い、虎視眈々とスパートのタイミングを窺っていた。最後の坂で止まってしまったが、4コーナーで捲くって行った時の脚色に今の充実が感じられた。ジャパンカップを勝って暮れの大一番だけに、完調とはいえない状態だっただろうが、それでも見せ場を作ったことで、ジャパンカップの勝利が決してフロックではなかったことを証明した。

大外から2着に突っ込んだアドマイヤモナークは、川田将雅騎手の思い切った騎乗が見事にハマった。力の要る暮れの馬場も合っていたのだろう。もちろん、日経新春杯、ダイヤモンドSを勝ち、京都大賞典でも2着しているように、今年に入って力を付けた馬である。同じくエアシェイディも、ハイレベルの天皇賞秋を5着し、有馬記念でも3着と走ったように、ここにきてまた馬が変わってきている。G1レベルだとあとひと踏ん張りが足りないが、8歳となる来年の飛躍に期待したい。後藤浩輝騎手もレースの流れを見切って、実に見事な騎乗をしていた。

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測り違えにもほどがある

Asahihaifs08 by Deliberation
朝日杯フューチュリティS2008-観戦記-
ゲットフルマークスにツルマルジャパンが絡み、前後半が46秒3-48秒8という、いかにも朝日杯フューチュリティSらしい厳しいペースでレースは流れた。これだけ前半が速ければ、いくら中山競馬場の直線が短いとはいえ、先行した馬たちが流れ込むのは難しい。また、全体的に少し時計の掛かる馬場になってきたこともあり、差し脚を溜めた馬のワンツーフィニッシュとなった。

勝ったセイウンワンダーは、新潟2歳S以来の実戦となったが、休み明けを全く感じさせない走りであった。夏はコロンと映った馬体にも伸びが出てきていて、これだけ動けたのだから、プラス10kgの馬体重は成長分と見ても良いだろう。今回はスタートも抜群で、スッと先行し、ペースに合わせてジワジワと下げて脚を溜めるという王道の競馬ができた。直線では馬群をあっという間に突き抜けると、ゴール板まで一気に駆け抜けた。父グラスワンダーからはパワー、母父サンデーサイレンスからは切れ味を受け継いだ新チャンピオンの登場である。

ロスなく乗った岩田康誠騎手の騎乗は、完璧というより他ない。これ以上、望むべくもない手綱捌きでセイウンワンダーを導いていた。それにしても、馬を出して行く技術、馬の気分を損ねないように少しずつ折り合いをつけていく技術、そして直線に向いてから一気にシフトチェンジする技術は年々凄みを増している。ジャパンカップ、JCダートと、武豊騎手の欠場で回ってきた馬たちで結果を出せずにいたが、鬱憤もこれで晴れたのではないだろうか。

フィフスペトルもほぼ完璧に乗られたが、それでも勝ちきれなかった。勝負どころでの反応が少し遅れたのは痛かったが、勝ち馬との差は枠順の違いとしか言いようがない。前後肢にシッカリ筋肉がついた体型で、距離延長には僅かな心配があったが、今日のレース振りを見ていると全く問題なかった。父キングカメハメハに初のG1勝利をプレゼントするには至らなかったが、来年に向けて奥の深さを感じさせる走りでもあった。惜しくもG1レース3連勝とはいかなかったルメール騎手だが、外から武豊騎手が動いた時も焦らずに待ったように、あらゆる判断が優れている。ヨーロッパだけではなく、日本の競馬も知り尽くしている。

岩田康誠騎手とルメール騎手に対し、武豊騎手の拙騎乗には、驚きを通り越して同情の念すら覚える。道中で交わした馬たちに内を掬われただけではなく、外からも差し込まれたのだから、脚の測り違えにもほどがある。ブレイクランアウトが馬体を併せると走るのをやめてしまうことを前走で知っている以上、もはや弁解の余地はないだろう。あれだけの前傾ラップを、外からマクって上がっていく必要性がどこにあったのだろうか。持ち上げておいて落とすつもりは全くないのだが、日本一のジョッキーであるならば、ギリギリまで脚を溜めて最後の直線で爆発させる騎乗をするべきであった。

北村友一騎手が跨ったシェーンヴァルトは、内ラチ沿いでレースを進めたものの、終始手応えが良くなかった。初めての長距離輸送がこたえていたのか、前進意欲が感じられず、体調自体が優れなかったように映った。4着に入ったホッコータキオンは、外枠の不利やハイペースに巻き込まれたにもかわわらず、最後まで脚を失うことなく良く走っている。現時点では、上位3頭と同じだけの力を持っていると評価したい。ペリエ騎手のミッキーパンプキンは、レースの主導権を奪えず、自分の型に持ち込むことができなかった。それでも、これだけのペースで行って、よく最後までバテることなく走っている。

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ためいきの日曜日

Hansinjf08 by echizen
阪神ジュべナイルF2008-観戦記-
ラップだけを見ても特に目立った凹凸はなく、前後半47秒3-47秒9というタイムもごく平凡なミドルペースである。ただし、実際のレースを見てみると、先行集団で揉まれた馬たちが、数字には表れてこない消耗をしていることが分かる。キャリア数戦の2歳牝馬があれだけゴチャついた中で競馬をすれば、よほど精神的に強い馬でない限り、直線に向いてからの余力は残っていないはずだ。運良く揉まれずに済んだ馬、後ろから行って揉まれなかった馬が上位を独占する形となった。ペースではなく、レース運びが勝敗を分けた。

ブエナビスタの強さにはため息が出た。もし揉まれていたらどうなっていたか分からないが、そんな仮定すらナンセンスと思わせるほどの文句なしの圧勝であった。ゴチャついた先行集団が、なんとか折り合いを付けようとしている後ろで、この馬は自分のリズムを崩すことなく、悠々自適なペースで走っていた。マイル戦で、1頭だけ中距離のレースを走っているかのようであった。この馬には2歳馬らしからぬ落ち着きと、レースに行ってのセンスの良さがある。道中で全く力まない分、直線に向いて鞍上からゴーサインが出るや、あっと言う間に反応し加速できる。大柄に出やすいスペシャルウィークと小柄なビワハイジが絶妙のマッチングで、かくも空を飛ぶような天才少女が誕生した。

安藤勝己騎手のベテランらしい落ち着きも見逃せない。これだけの人気を背負う馬に跨れば、どうしても無難な競馬をしてしまいがちであるが、安藤勝己騎手はそうではなかった。「勝つためには勝つ気で乗らないこと」という自身の信条に反しない、勝つ気で乗らない勝つための騎乗であった。また、こういうゆったりとしたリズムで走らせて、なおかつ勝てたことは、来年のクラシックへとつながっていくだろう。「大きいレースをいくつも勝つつもり」という安藤勝己騎手のコメントも、そのあたりから来ているはずである。

関東馬ダノンベルベールは力を出し切ったが、今回は相手が強すぎた。内枠発走であったにもかかわらず、道中で揉まれることもほとんどなく、3コーナーから4コーナーにかけて、ゴチャつく先行勢を尻目に、後藤浩輝騎手が見事にダノンベルベールを外に出せたことが大きい。追い出しのタイミングも絶妙であったが、さらに後ろからあっと言う間に交わされて、グウの音も出なかっただろう。それでも勝ちに等しい2着である。長距離輸送の不利を克服すべく、11月から栗東入りして、やるだけのことをやった陣営の努力が実った。まだ線の細さが目立つ馬だが、成長を促しながら使っていけば、将来は明るい。

ミクロコスモスは道中、死んだふりをして3着を拾った。勝ちに行った競馬ではなかったが、まだキャリア1戦の馬だっただけに、結果的には揉まれない競馬をしたことが功を奏した。コロンとした体つきだけに、決してクラシック向きとはいえないが、道中でリラックスして走ることを教えられれば、将来の選択肢の幅も広がるだろう。新種牡馬ネオユニヴァースの第1世代であり、2歳戦から活躍できる父の血の優秀さを示したことにもなる。

ジェルミナルの走りにもため息が出た。パドックから入れ込んでいたことや、スタートで好位を取りに行こうと馬を少し出したことなど、要因は色々と考えられるが、道中の走りには力みが目立ち、最後の直線に向いた時点で既に余力がなかった。もしかすると、牡馬と叩き合った前走が意外にこたえていたのではないだろうか。前走で厳しいレースを強いられた馬よりも、前走のレース内容は平凡でも、余裕と余力を持って臨んでくる馬の方が、敏感な2歳牝馬のレースでは案外良い結果を出すということを改めて知らされた。

ためいきの日曜日

Mr.Childrenの中で私が好きな曲のひとつです。


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True Champion!

Jcdirt08 by echizen
JCダート2008-観戦記-
サクセスブロッケンが途中から抑えきれない形で先頭を奪い、前半の1000mが1分01という、このメンバーにしては予想外に遅いペースを作り出した。アメリカ調教馬が2頭出走した割には遅い流れとなったが、これは右回りに戸惑ったアメリカ馬が思ったような走りが出来なかったゆえであろう。全体としては上がりの勝負となり、コースロスの少なく立ち回れた馬や末脚勝負の得意な馬にとって有利なレースであった。

勝ったカネヒキリは前半から行きっぷりも良く、終始絶好の手応えでレースを進めた。勝敗を決めたのはルメール騎手の絶妙な判断で、3コーナーからサクセスブロッケンの後を付いて追走するコース取りを選択したことにある。サクセスブロッケンが直線に向いてもうひと伸びすると確信したからこそ、その後ろをトレースしても前が詰まらないと読み切れたのだろう。もしあそこで後ろの馬を意識しすぎて外を回していたら、勝っていたかどうかは分からない。ルメール騎手はこの秋2つ目のG1レース勝利となったが、とにかく騎乗勘が冴えている。かつて同郷のペリエ騎手がG1レースでハットトリック(3連勝)を決めた頃の雰囲気に似ている。

当然のことながら、3年ぶりにG1レースを勝利したカネヒキリも褒められるべきだ。屈腱炎により2年以上も競走生活を棒に振っていたが、この馬を種牡馬にしたいという陣営の執念がようやく実った。この馬自身、3歳時に古馬を倒してジャパンカップダートを制し、ドバイワールドカップでも4着と好走したように、ダートにおける能力は超ド級である。それでも、実戦を一度叩いただけでここまで復活してくるのだから、角居厩舎の調教技術も含め、驚きを隠せない。それにしても、現6歳世代(ディープインパクト世代)のダートにおける強さは一体何なのだろうか。

メイショウトウコンは得意の軽いダートの上がり勝負になったことで勝ち馬に肉薄した。動き出すタイミングも完璧で、ヴァーミリアンと馬体が併さったことも加わり、この馬の力は最大限に発揮している。G1レベルのレースになると、脚質的にどうしても勝ち切れないが、それでも常に迫力のある末脚を繰り出す上がりは並のダート馬ではない。叩いて叩いて良くなる馬だけに、次走の東京大賞典も、大井の砂質を除けば見通しは明るい。

ヴァーミリアンはやはり本調子にはなかったようだ。サクセスブロッケンに前をカットされ、アメリカ馬に外に振られてポジションを下げた不利はあったが、最後の直線では思いの外、弾けなかった。昨年と同じローテーションではあったが、ドバイの疲れが完全に癒えていない状態でJBCクラシックを快勝した反動があったのではないだろうか。最終追い切りの動きにも、わずかながらもその兆候は見えていた。

3歳馬ながらも2番人気に推されたサクセスブロッケンは、1コーナーでは勝ちパターンかと思いきや、馬が落ち着きを欠いてハナに立ち、他馬の目標とされてしまった。若さが出てしまったというよりは、前走のJBCクラシックで小回りを意識しすぎて前に出しすぎたツケが、ここでも出てしまった感が強い。若駒は一度行き切ってしまう癖が付くと、なかなか解消するのが難しくなる。サクセスブロッケンの芽を摘まないよう、今後は勝ち負けよりも、調教でもレースでもゆったりと走ることから教えて行って欲しい。

同じく3歳馬ながらにして人気を背負ったカジノドライブは、あらゆる苦しい条件を克服してよく走っている。海外遠征を経て約1ヶ月の期間での出走、日本のダートを走るのが2戦目、しかも古馬との対戦という中で、これだけのレースが出来るのだからこの馬はやはり強い。しっかりと成長を促して、来年を迎えられれば、サクセスブロッケンの良きライバルとなるだろう。それにしても、この素質ある2頭の3歳馬の惨敗を見るにつけ、ただでさえ3歳馬が古馬と戦うのは厳しいのに、なぜ古馬と3歳馬の斤量差を1kgにしたのかと疑問に思う。

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新時代へ

Japancup08 by fakePlace
ジャパンカップ2008-観戦記-
スローペースを読んだ横山典弘ネヴァブションがハナを切り、前半74秒6-後半70秒9という超スローペースを自ら作り出した。勝ちタイムの2分25秒5からも分かるように、どんな馬でも来られるレースであった。最も上手く流れに乗り、最もロスなく直線に向いたデムーロ騎手のスクリーンヒーローが大金星を挙げた。

それにしても、ゴール板を先頭で駆け抜けたのがスクリーンヒーローだと知った時には、さすがに腰が抜けそうになった。いくら最小限のロスで直線に向いたとはいえ、これだけのメンバーが集まったジャパンカップを勝ち切ってしまうとは。前走のアルゼンチン共和国杯も、東京2400mの勝ち方に忠実な走りをしてのものだったように、この馬の走るリズムが府中のチャンピオンディスタンスとピタリと符号するのだろう。瞬発力勝負になり、母父サンデーサイレンスの血の後押しがあったのも確かだが、グラスワンダー産駒の初G1勝利がこのような形で訪れようとは思いも拠らなかった。掲示板に載った5頭のうち4頭が父内国産であり、時代の変化には感慨深いものがある。

ミルコ・デムーロ騎手がスクリーンヒーローを勝たせた、といっても過言ではないだろう。大外枠という不利を、好スタートから思い切って先団に取り付くことによって克服した。ロスといえばそこだけで、あとは終始内の馬の横にピタリとつけた経済コースを進めた。馬の背に張り付いたような4コーナーのコーナーリングは、美しいとしか表現の仕様がない。直線で追い出してから、馬に気を抜かせず真っ直ぐに走らせる技術も見事であった。

デムーロ騎手の最も優れた点はコーナーリングの巧さにあり、内の馬にピタリとくっ付いているのではと思わせるほど、コースロスなく回ってくる。だからこそ、馬を内に置いても(内から2頭目でも)、まるで内ラチ沿いを進むかのようなロスで済むのだ。常識的には勝ち目のない馬を持ってきてしまうあたりは、同じイタリアのデットーリ騎手にも通じる天才がある。ジョッキーの世界においても、新しい時代の変化が訪れている。

ディープスカイは栄冠まであと少しのところで伏兵馬の大駆けに遭った。惜しむべくは4コーナーの回り方だろう。最も重要な4コーナーで、追っ付けながらあれだけ外を回ってしまうと、馬に対する負荷はハンパではない。人気を背負って焦るのは分かるが、もっと馬群と隙のない形で回してこないと、レベルの高いレースであればあるほど足元を掬われる可能性は高い。デムーロ騎手の回し方と比べてみると、そのコーナーリングの稚拙さが分かる。騎乗の不備を挙げればキリがないが、四位騎手にはたくさんのレースビデオを観て、さらに巧くなってもらいたい。ディープスカイ自身は前走の天皇賞秋に比べ、馬体も絞れ、雰囲気も明らかに良くなっていた。この馬にとって、有馬記念を使う意味はあまりないので、来年の飛躍へ向けて休養を取らせてもらいたい。

ウオッカは最後まで踏ん張ったが、直線に向いていつもの反応がなかった分、勝ち切れなかった。岩田騎手は昨年のアドマイヤムーンのイメージを持って積極的に前々で競馬を進めたが、ウオッカの前走までの経緯や今回の距離を考えると、もう少しリラックスしてゲートを出しても良かったのではないか。前走の天皇賞秋に比べて体調が少し落ちていることに加え、道中で人馬が喧嘩してしまったことが、最後の直線でのゴーサインにスムーズに応えないという結果に繋がった。それでも最後は盛り返してきているあたり、もはや牝馬という枠を超越しているのは明らかで、レース前の体つきを見ても牡馬顔負けといった物凄い馬体であった。体調を維持することが出来れば、有馬記念でも好走してくれるはず。

マツリダゴッホにとってはレースの流れが向かなかったが、それでも良く走っている。グランプリホースの意地を見せたとともに、ここに来てさらに力を付けているようだ。このまま有馬記念に向かうようであれば、有力馬の1頭になることは間違いないだろう。惜しかったのはオウケンブルースリで、内田博幸騎手がスタートから最後の直線に向くまで完璧な騎乗をしていたが、直線に入って前が詰まってしまった。一瞬の速い脚がないゆえであるが、スムーズに追い出せていれば、もう少し際どい勝負になっていたに違いない。メイショウサムソンはパドックから覇気がなかったように、海外遠征の疲れがまだ完全には癒えていなかった。それでも一瞬伸びかけたように、ひと叩きされた次走への望みを託したい。


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美しき花には切れがある

Milecs08 by echizen
マイルチャンピオンシップ2008-観戦記-
前後半が46秒3で全く同じという、最近のマイルCSに典型的な平均ペースでレースは流れた。こういう流れでは、瞬発力に富んだ馬、もしくは軽いスピードを生かして先行できる馬が有利になる。今年はラップには現れない程度に先行馬が競り合い、自滅したため、後方で脚を溜めた馬の瞬発力が生きる展開となった。マイル戦の連対率が5割を下回る馬同士でのワンツーとなったように、時計的には昨年、一昨年と同じでも、レベル的には少し劣るレースであった。

勝ったブルーメンブラットは、父アドマイヤベガ譲りの瞬発力をフルに発揮した。牝馬の優勝はノースフライト以来14年ぶりである。ノースフライトのように牡馬をねじ伏せたという勝ち方ではないが、牝馬らしい一瞬の切れ味が生きた。3歳時は線の細さが多分にあった馬だが、石坂正厩舎に転厩して後、調教方法が合っていたのだろう、ひと回りもふた回りもパワーアップした。何よりも今年の夏を越しての充実ぶりには目を見張るものがあり、柔らかい筋肉がびっしりと付いて絶好調であった。石坂正調教師の手腕は実に見事である。また、力と力をぶつけ合うのではなく、一瞬の末脚で勝負して負けたら仕方ないという、吉田豊騎手の腹を括った騎乗も功を奏した。

1番人気に推されたスーパーホーネットだが、最後まで伸びきれず、牝馬の切れ味に屈してしまった。外枠発走ということもあり、道中で位置取りを下げてしまったことは痛い。人気を背負っているだけに、内を突くわけにもいかず、外を回して強引に追い込んだものの惜しくも届かなかった。枠順の不利を覆すだけの力がなかったということだが、前半の行きっぷりも悪かったように、ウオッカを下した毎日王冠時の仕上がりにはなかったとことも確かである。G1レースを勝つためには、生涯最高の出来が求められるのだ。藤岡佑介騎手と矢作芳人調教師にとって、初G1勝利にあと僅かで手が届きかけたレースだけに残念だろう。いずれ新たなチャンスは必ず来る。

ファイングレインも一瞬伸びかけたが、最後は止まってしまった。幸騎手が内でロスなく進めて、この馬の力は出し切ったが、距離が長くなるとどうしても切れ味が鈍るように、やはりこの馬のベスト距離はスプリントである。調子が上向いてきているようなので、次走、距離短縮でこそ狙いたい。

カンパニーもマイルの速い流れを追走して、最後まで諦めずに伸びて来ているが、それでもスパッと反応できなかった。年齢的なものもあるのだろう。ローレルゲレイロは先行馬が総崩れする中、最後までよく踏ん張っている。力負けというよりも、切れる脚がない分の負けといってもよい。スズカフェニックスにとっては絶好の流れとなったが、それでも伸び切れなかったように、少し能力に翳りが見え始めてきているようだ。

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これほどまでに変わるのかと

Elizabeth08 by echizen
エリザベス女王杯2008-観戦記-
若い石橋脩騎手が乗ったコスモプラチナが果敢にハナを切り、前半1000m59秒3という淀みのない流れを作り出した。エリザベス女王杯は各馬が折り合いを意識してスローになるか、思い切って飛ばす馬がいて意外なハイペースになるか、極端に分かれるのだが、今年はまさに後者であった。そのため、スタミナと底力が問われ、各馬の実力が如実に現れたレースとなった。

勝ったリトルアマポーラは、桜花賞2番人気、オークス1番人気と、春シーズンは期待を裏切るレースを続けていたが、秋の大一番を迎えてようやく大輪を咲かせた。サンデーサイレンス産駒と同様、アグネスタキオン産駒は仕上がりが早く、秋を迎えてもさらに成長するのだから恐れ入る。それでもまだ成長の余地を残す馬体からは、リトルアマポーラがこの先どれだけの馬に成るのか、明るい未来をイメージせずにはいられない。この馬の最大の長所は、鞍上の指示をしっかり理解し、折り合うことのできる素直さだろう。リラックスしてレースの流れに乗れたことで、持てる力を最大限に発揮することが出来た。

テン乗りとなったルメール騎手だが、完璧すぎるほど完璧にリトルアマポーラを乗りこなした。引っ張る馬がいて、馬群が長くなったのも功を奏したが、好スタートを切るや、スッと先行してあっという間に折り合いを付けた。秋華賞ではバタバタと走っていた馬が、しっかりとしたフットワークで地面を捉え、最後の直線では真っ直ぐに走っていたのが印象的である。ルメール騎手は自分の形に馬をはめ込むタイプで、そのスタイルがリトルアマポーラのようなコンパクトな馬体と素直な性格の馬とうまくマッチしたのだろう。ジョッキーが替わるとこれほどまでに馬の走りも変わるのか、とルメール騎手の鞍ハマリの良さ改めて驚かされた。

1番人気のカワカミプリンセスも、好スタートからレースの流れに乗り、最後まであらん限りの力を発揮した。横山典弘騎手としても、この馬の力を十分に出し切ったという感触があるはず。前走からマイナス10kgの馬体重で出走したように、ほぼ完璧な仕上がりにもあった。それでいてもリトルアマポーラに突き放されてしまったのは、連勝街道を突き進んでいたかつてほどの勢いが既になかったということに他ならない。

ベッラレイアも最後まで力を出し切った。ペースが速くなったことにより、外枠のロスも最小限に収まり、この馬にとっては最高の形となった。それでも勝てなかっただけではなく、カワカミプリンセスをも捕らえ切れなかったように、これがこの馬の能力の限界なのだろう。秋山真一郎騎手も馬の背から姿を消して上手く乗っていた。

スタート直後にポルトフィーノと武豊騎手が落馬して騒然となったが、レース自体には大きな影響を与えることはなかった。たまたま躓いたアクシデントだろうが、スタート前から少し入れ込んでいたように、今までにないG1レースの雰囲気の中で、ポルトフィーノ自身が落ち着きを欠いていたことも要因のひとつと考えられる。いずれにせよ、空馬になっても最後までレースに参加するポルトフィーノを見て、競馬は群れ(集団)で行われるという原点を再認識した。

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美しすぎる結末

Tennosyoaki08 by fake Place
天皇賞秋2008-観戦記-
休み明けのダイワスカーレットがハナを切り、前半58秒7-後半58秒5という、平均ペースながらもスピードの持続力を問われる、息の入りにくい厳しい流れを作り出した。その流れの中、ダイワスカーレットを射程圏に入れつつ勝ちに行ったディープスカイとウオッカが直線でビッシリと叩き合い、内のダイワスカーレットが粘り腰を幾枚も繰り出した結果、史上稀に見るあまりにも美しすぎる結末となった。ラスト1ハロン12秒6という時計からも分かるように、最後はウオッカもダイワスカーレットもディープスカイも皆、脚が上がっていた。それほどに死力を尽くした激闘であった。100年後にも語り継がれる名勝負である。

勝ったウオッカにとって、ダイワスカーレットが意外にも飛ばしてくれたことにより、馬群が縦長になってくれたことが大きかった。抜群のスタートを切り、少し掛かる素振りを見せたものの、向こう正面ではピタリと馬群の外に折り合うことが出来ていた。毎日王冠は逃げる形になり足元を掬われたが、安田記念をきっかけとして、体調も上向きになり、前進意欲も出てきていたことも、この天皇賞秋を勝つためには功を奏した。

パドックでもこれ以上ないギリギリとも言える状態に仕上がっていて、陣営のこのレースに賭ける思いが伝わってくるようであった。武豊騎手にとっても、大きな大きなハナ差であった。あらん限りの力を出し切ったウオッカが、この先どのような走りを見せてくれるか分からないが、とにかく今はこの勝利に酔いたい。ダービー馬であるウオッカがついに天皇賞馬にもなる。牝馬ながらにしてこの2つのレースを制することがどれだけ価値があることなのか、私たちはこれから知っていくのかもしれない。

負けて最も強いことを証明したのはダイワスカーレットである。休み明けであることに加え、府中の2000mを逃げてレコード決着のハナ差2着であるから、そのスピードとスタミナと底力は筆舌に尽くせない。最後の直線ではさすがにバテていたが、カンパニーが内から伸びてきたことでゴール前もうひと伸びしたのだから、ウオッカと馬体が併さっていれば結果はどうなっていただろうか。惜しむらくは、休み明けである分、馬がレース前半からファイトしてしまったことである。休み明けにしては細く映るくらいに馬体は仕上がっていたが、やはり気持ちの面で苦しいところがあったのだろう。有馬記念に直行するらしいが、これだけの死闘を繰り広げた反動を癒し、まずはこの先無事に行ってくれることを願う。

ディープスカイは2頭の名牝に競り負けしてしまったが、ダイワスカーレットを追いかけながら、ウオッカよりも早めに仕掛けてのものだけに、最後までよく頑張っている。四位騎手も前半から積極的に勝ちに行く競馬をしたものの、ペースが速くなったことにより、結果論としては武豊騎手にマークされる形となってしまった。前半でアサクサキングスに内からこすられてカッとなってしまったことが最後に響いた。とはいえ、僅かなことで折り合いを欠いてしまうほど、ディープスカイ自身にも苦しい部分があったのだろう。ダービーの疲れが完全には癒えていない中での走りだけに、無事に行けば来年、日本競馬の頂点に立っているのは間違いなくこの馬であろう。

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あそこから動いたからこそ

Kikka08 by @84 image
菊花賞2008-観戦記-
武豊騎手のノーリーズンがスタートで落馬した2002年を思い起こさせる曇天の下、今年の菊花賞は行われた。前半1000m58秒8-中盤66秒7-後半60秒2という前半が極端に厳しく、中盤が極端に緩んだペースも、その時の菊花賞と酷似している。この年の菊花賞を勝ったのがヒシミラクルだったように、中盤で折り合いが試され、後半でスタミナが問われるという、まさに真のステイヤーを決めるためのレースとなった。

勝ったオウケンブルースリは4コーナー手前から捲くり切っての完勝であった。夏を境に馬体が絞れ、3連勝を飾ったのもあっという間だったが、G1の勲章を手にしたのもあっと言う間だった。前走(3着)は本番の菊花賞を意識して8、9分の仕上がりだったというから、ディープスカイやブラックシェルの抜けたメンバーであれば明らかに力は上位であった。いや、もしその2頭が仮に出走してきたとしても、オウケンブルースリが勝っていたのではないだろうか。パドックでも良い雰囲気で歩いていて、本番に照準を定めて最高に仕上げ切った音無調教師の見事な手腕も光った。

それにしても内田博幸騎手の大胆さには恐れ入った。3コーナーからの下り坂を利用して、一気に捲くり切るのがベストな乗り方だと分かっていても、人気を背負ってしまうとなかなか動けないものだ。菊花賞の1番人気がなかなか勝てないのは、そこにも理由がある。躊躇することなくあそこから勝ちに行った内田博幸騎手の優顔の下に、百戦錬磨の冷たい鉄のような強かさが見えた。今から思えば、トライアルの神戸新聞杯は、折り合いと使える脚の長さを測ったトライアルだったのだろう。夏の上がり馬でトライアルに徹したその豪胆にも只々感服する。

スペシャルウィーク×リアルシャダイという長距離の血が騒いだのか、フロテーションが素晴らしい末脚を見せて2着に突っ込んだ。スペシャルウィーク産駒は寒くなると馬体を絞るのに苦労する馬が多い中、馬体が絞れていたことも大きい。研ぎ澄まされた馬体でパドックを悠然と歩く姿からは、最高の仕上がりが見て取れた。もちろん、藤岡佑介騎手の手綱捌きも素晴らしかった。決して勝ちに行く競馬ではなかったが、一発勝負を賭けた見事な騎乗であった。

スマイルジャックは道中でハミを噛んでしまい、心配されていた折り合い面での弱点がモロに出てしまった。小牧太騎手は自分が下手に乗ったと言うかもしれないが、スマイルジャックのように首の位置を低く保持して走る馬は、一度ハミが掛かってしまうと抑えるのが極めて難しい。道中は前が速いペースで引っ張ってくれて理想的な展開であったにもかかわらず、折り合えなかった以上、スタミナ云々ではなく、現時点では長距離に対する適性がなかったと考えるべきである。

3着に粘りきったナムラクレセントは後ろから切れ味を生かす馬とイメージしていただけに、好走には驚かされたが、和田騎手の好判断で先行したことが吉と出たのだろう。マイネルチャールズは思い切った騎乗をして、あわやというシーンは作ったが、4コーナーでは勝ち馬に捲くり切られてしまったように、この距離ではスタミナと底力の絶対値が足りなかった。セントライト記念の勝ち馬ダイワワイルドボアは外枠からスムーズに進めたが、勝負どころで反応できなかった。馬場が重くなれば結果はまた違ってくるのだろうが、現時点ではスピードの絶対値が足りない。

わが本命馬のロードアリエスは、道中、理想的な位置を進んでいたものの、他馬が動き始めた時に前が詰まって動けなかった。これはロードアリエスだけに限ったことではないが、スタミナに対して少しでも不安があると、内で脚を溜めるような競馬をしてしまい、それが結果的に内で前が詰まってしまうことに繋がってしまうのである。菊花賞で内を進むことはリスクが高く、そのリスクを回避するためにはスタミナに対する自信が必要だということだ。

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勝利のエンブレム

Syukasyo08 by M-style
秋華賞2008-観戦記-
エアパスカルが前半1000mを58秒6のペースで逃げ、途中からプロヴィナージュが引き継ぐ形でレースを引っ張り、全体的に引き締まった流れとなった。それでもプロヴィナージュが最後まで残ったように、今の京都の絶好の芝は前に行った馬がなかなか止まらない。そして、速い流れにもかかわらず中団は団子状態で流れたため、外を回した人気馬はなし崩し的に脚を使い、内で脚を溜められた馬にとっては願ってもいない展開となった。

勝ったブラックエンブレムに騎乗した岩田康誠騎手は、内枠を生かして積極的に好位を取りに行き、前が速いとみるやスッと抑えて最高のポジションを確保する、非の打ち所のない騎乗であった。内が詰まりやすい4コーナー手前でも、有力馬が外を回ってくれたおかげで、前後左右に馬1頭分のエアスポットが出来たように、運にも恵まれた。スタートからゴールに至るまで、思い描いていた通りのレースだったのではないだろうか。ジョッキーの腕が試される小回りコースの舞台で、その実力をいかんなく見せ付けた結果となった。

数少ないウォーエンブレム産駒として、ブラックエンブレムは初のG1勝利馬となった。栗東に滞在したことがプラスと出て、明らかに体調がアップしていたことが大きい。春の桜花賞当時は、追い切りが出来ないほどギリギリの状態であったが、ひと夏を越しての成長もあり、栗東に滞在した今回は中間に3本の強い追い切りをこなせていた。また、前走のローズSで不良馬場に脚を取られて惨敗したことにより、人気の盲点になっていた感もある。本来はオークスで4着したほどの実力馬であり、良馬場で一変した。

2着に突っ込んだムードインディゴは、直線の差し脚の勢いは勝ったかと思わせるものであった。勝ち馬の後ろの位置で競馬をしていたが、結果的には4コーナーで外を回したことが裏目に出てしまった。とはいえ、ムードインディゴも福永祐一騎手も最後まで力を出し切った。今回は勝った相手があまりにも完璧すぎた、悔いは残るが仕方ない、というのが正直な気持ちではないだろうか。

プロヴィナージュは佐藤哲三騎手に導かれて、あっと驚く波乱を演出した。まるでタップダンスシチーがファインモーションのハナを奪った2002年の有馬記念を思い出させるような、積極的なレース運びであった。とにかくプロヴィナージュの渋太さを存分に生かそうと、一か八かの騎乗をした佐藤哲三騎手らしい思い切りの良さに尽きる。

1番人気に押されたオークス馬のトールポピーは、4コーナー手前ですでに手応えがなくなっていたように、今回は全く勝負にならなかった。オークスで全力を尽くして勝ったことによる肉体的、精神的な疲れが癒されていないのだろう。オークス馬、ダービー馬の秋の不振は幾度となく繰り返されてきた歴史でもあり、これは天皇賞秋に出走する予定のディープスカイにも当てはまることなので、今後ともしっかりと覚えておきたい。

レジネッタとオディールは外枠が堪えていた。スタートからの位置取りに苦しんだ上、中団で馬群が固まってしまったことで外々を回らざるを得ず、脚を溜めることが出来なかったばかりか、知らず知らずのうちにスタミナまで奪われてしまった。秋華賞は小回りコースで行われる珍しいG1レースだけに、極端なハイペースにでもならない限り、大外枠を引いた差し馬は苦しいレースを強いられるということである。

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競馬で泣けることもある

Sprinterss08 by Deliberation
スプリンターズS2008-観戦記-
心配された雨の影響もなく、スプリンターズSが久しぶりに良馬場で行われた。それにもかかわらず、前半33秒6―後半が34秒4、全体が1分8秒0という時計は、スプリンターズSとしては少々物足りない。折り合いを欠いた馬が目立ったように、前に行った馬にとって有利な、非常に落ち着いた流れであった。差し・追い込み馬にとっては、直線の短いコース設定も含め、非常に苦しいレースであった。

スリープレスナイトが真っ先にゲートを出て、レースの主導権を握った時点で、勝負の半分はあった。あとはスリープナイトの行く気とペースに合わせて、位置取りの上げ下げをすれば良いだけだ。ペースがもっと速ければ、もう少し後ろに下げることも上村騎手は考えていたに違いない。それぐらい余裕を持った手綱の握り具合で、鞍下との呼吸もピッタリと合っていた。キンシャサノキセキに外から来られて早めに動いたが、直線に向いてグイッと伸びた時点で勝利を確信したに違いない。上村洋行騎手にとって初めてのG1タイトルであり、これまでの苦難の道のりを思うと、他人事ではなく、嬉しい。

スリープレスナイトは久しぶりに出た生粋のスプリンターである。速いだけのスプリンターではなく、スタミナとパワーに溢れている。褒めすぎかもしれないが、サクラバクシンオーやサイレントウィットネスに感じたような迫力がある。今回のレースでも、1馬身ほど抜け出してからは遊んでいたように、着差以上の力を秘めている。父クロフネからはスピードとパワーを、ヒシアマゾンを辿る母系からはスタミナと底力を受け継いだのだろう。牝馬だけに、この強さのピークをどこまで維持できるかは未知数だが、次は海外にぜひ挑戦して欲しい。そのためにも、この後は休養を挟み、夏に走ってきた疲れを癒してもらいたい。

キンシャサノキセキは、4コーナーでは一瞬やったかに見えたが、最後は勝ち馬に突き放されてしまった。ペースを考えると、早めに仕掛けた岩田騎手の判断は結果的に正しく、もし待っていれば2着はなかったかもしれない。道中で折り合いを欠いていたように、引っ掛かり癖のあるこの馬にとっては流れが遅すぎたことは残念だった。それにしても、最近のキンシャサノキセキの走りを見ていると、函館SSを押して勝ちに行ったことが悪い方向に出てしまった印象は拭えない。

ビービーガルダンは、迷わず先手を奪い、最後まで渋太く脚を伸ばした。落ち着いたペースに恵まれた面はあるが、勝ち馬に早めに来られてのものだけに、価値ある3着である。この馬の地脚の強さを生かして、バテた馬を最後まで粘り込ませた安藤勝己騎手の技術もさすがであった。

スズカフェニックスは展開が向かなかったのひと言に尽きる。前走を叩いて体調はアップしていただけに、先行馬に有利なペースを、後ろから外々を回して追い込まなければならなかったのは不運だった。さすがに昨年に比べ力が落ちている感は否めないが、この馬なりに力を出し切っている。

ファイングレインは、道中でゴチャついてエキサイトしてしまったこともあったのだろうが、それにしても見せ場すらなかった。放牧先から体が減って帰ってきたところから、何とかセントウルSは間に合ったのだが、まだ春の激戦からの疲れが抜け切っていない。G1を勝つような馬でも、連勝が止まるとガタっと来るということは覚えておきたい。

カノヤザクラはスタート後に挟まれて、道中の位置取りが後ろになってしまったことが痛かった。終始、行きっぷりも悪く、今回のレースの展開では力を出し切れなかった。それにしても負け過ぎであり、最終追い切りの動きも悪かったように、直前になって急激に体調が下降線を辿ってしまったのだろう。これが牝馬の難しさである。

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至宝

Takaraduka08 by @84image
宝塚記念2008-観戦記-
エイシンデピュティの内田博幸騎手が押して押してハナを奪った。重馬場で上がり3ハロンが掛かったことを考慮に入れると、前半60秒6―後半62秒1はほぼイーブンペースとなる。この時期の阪神の傷んだ馬場に雨が降れば、力を要する走りにくい馬場になることは必至で、差し追い込み馬にとっては不利な展開となった。また、それ以上に、道悪に対する巧拙も問われた一戦となった。

勝ったエイシンデピュティは、迷うことなく先頭に立ち、自分の型に持ち込んで逃げ切った。今年に入っての勢いをそのまま体現したかのような渋太いレース振りで、心配された使い詰めによるガス欠は杞憂に終わった。最後の直線で他の有力馬がもがき苦しむ中、エイシンデピュティだけは道悪を苦にすることなく、普段どおりの走りを披露した。さらに、極端に力が要る馬場になったことも、パワータイプのこの馬にとってはプラスに作用した。馬場や展開を味方につけて、エイシンサニー以来18年ぶりのG1勝利を栄進牧場にもたらした。

内田博幸騎手にとっても、中央に移籍して以来、初のG1勝利となった。ゴール板のところでエネルギーをゼロにする、一滴の余力も残さない騎乗で、エイシンデピュティの力を完全に出し切った。初めてG1を勝ったピンクカメオの時も道悪だったように、ハミをしっかりかけながら、安定した騎座で馬を操る(エスコートする)技術に長けていることが分かる。実力的にはいつG1レースを勝ってもおかしくないジョッキーで、今回のように関西から有力馬を依頼されることが増えれば、自然と大きな勲章を手にすることも多くなるだろう。

勝ち馬とは対照的に、1番人気に推されたメイショウサムソンは不完全燃焼なレースであった。直線半ばでの不利よりも、スタート後に挟まれ、ポジションを下げてしまったことが悔やまれる。苦手とする道悪に怯むことなく、最後は力と意地で勝ち馬に迫ったが、わずかに及ばなかった。王者の意地は示した格好だが、それでも昨年の秋からの勝ち切れなさには、往年の凄みが失われている感もある。

それにしても、最近の武豊騎手の歯車の噛み合わなさは目を覆うばかりである。スタート後に挟まれてしまったことは運がなかったが、そこからがいけない。馬がエキサイトしたのだろうが、それでも、あのまま内を進みながらポジションを上げて行くべきであって、外に出すべきではなかった。もしかすると武豊騎手自身もエキサイトしてしまったのではないか、と思わせるほどのらしからぬコース取りであった。これまでは多少のロスがあっても差し切れてきたのかもしれないが、腕達者のジョッキー(今回で言えば内田博幸騎手)は残してしまうのだ。

インティライミの激走には驚かされた。佐藤哲三騎手の積極的な騎乗が光ったが、この馬自身も暖かい季節になって体が絞れてきたことで体調がアップしていた。もちろん、道悪を苦にすることがなかったことも大きい。残念だったのは、直線に向いてこれからという瞬間に、エイシンデピュティが馬体を併せに、アサクサキングスが外から切れ込んで来たため、進路を塞がれたことである。あのアクシデントがなければ、もしかすると勝っていたかも知れないと思わせるほどの素晴らしい走りであった。

4歳勢は良いところなく惨敗してしまった。アルナスラインは道中も苦しい位置に入ってしまい、そこから抜け出してくるだけの力はなかった。力が足りなかっただけではなく、馬体も太目残りに映ったように、今回は調整が難しかったようだ。ロックドゥカンブは岩田騎手が前半から積極的に攻めたが、4コーナーでは筒一杯になってしまっていた。道悪の影響もあったろうが、レース後に故障を発生していたことが判明したように、非常に残念な結果となった。最後に、アサクサキングスは4コーナーの手応えから楽勝かと思われたが、追われてから全く伸びなかったように、今日のような馬場は合わなかった。それにしても、多くのファンの夢を乗せたレースでもあるのだから、四位騎手にはもう少し丁寧に乗って欲しかった。

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死ぬまで18歳

Yasuda08 by photostud

逃げたくはないが逃げないと良さが出ないコンゴウリキシオーがハナに立ち、前半800mが46秒2という昨年よりも僅かに遅いペースを作り出した。後半の800mが46秒5だから、ほぼ平均ペース、このメンバーとしてはスローペースで流れたため、後ろから行った馬にとっては苦しい展開となり、積極的に乗られた馬たちが上位を占めた。

ダービー以来の勝利となったウオッカは、全ての要素が見事に噛み合った。最大の勝因は、海外遠征明けでどん底であった前走をひと叩きされ、体調は驚くほどに回復し、馬自身の精神面にもゆとりが生まれていたことだろう。また、伸び伸びと走られる府中コースに加え、内枠を引いて馬場の良いところをロスなく回ってこられたことも大きい。直線に向くや、あっという間に馬群を割って他馬を引き離し、ゴールまで伸び切った。ようやく、あの強かった頃のウオッカが戻ってきた。

ウオッカの体調が驚くほどに回復したと前述したが、まだ回復途上であったこともまた事実である。回復途上で安田記念を勝ったということは、この後、更に体調が上向くことが予測されるので、ぜひとも宝塚記念に出走してほしい。昨年の宝塚記念には出走するべきではなかったが、今回は出走しても良いのではないかと個人的には思う。

岩田康誠騎手の勝ちに行った騎乗も見事であった。敏感な牝馬にテン乗りだったにもかかわらず、腹を括ってスタートから出して行った勇気には、いつものことながら頭が下がる。もし先行してバテてしまえば非難に晒されるのを承知の上で、それでも攻めた思い切りの良さは、馬を抑える技術とバテても最後まで持たせることが出来るという自信に裏付けられているのだろう。

今回の岩田康誠騎手の騎乗を見て、他の騎手はどう思っただろうか?ヴィクトリアマイルの時に同じ先行策を取っていたらバテしまっていたかもしれないし、今回の安田記念で抑えて後ろから差しても届いていたかもしれない。馬の体調や出走メンバー等が異なる中での比較はナンセンスだが、今回のような乗り方でウオッカを勝たせたという事実は大きい。そろそろ、多くのジョッキーが自身の騎乗スタイルを見直す時期が来ているのではないだろうか。

アルマダは香港勢では唯一、馬体重が増えていたように、日本の環境にも慣れ、持てる能力を十分に発揮していた。今回はウオッカの瞬発力について行けなかったが、最後まで渋太く伸びていた。内が伸びる馬場で不利になりがちな外枠から、思い切って先行したホワイト騎手の好判断も光った。さすが香港ナンバーワンジョッキーである。短期免許を取得して日本で騎乗するプランもあるようなので、ぜひとも期待したい。

エイシンドーバーは、福永祐一騎手が内枠を利して、最大限の成果を引き出した。決してスパッと切れるタイプではないが、いい脚を長く使っている。もちろん馬自身が力をつけていることもあるが、今回に限っては、好枠とジョッキーの冷静な騎乗が功を奏した。

1番人気に推されたスーパーホーネットは、ここ最近のレースでは珍しく、直線で伸びを欠いた。馬体重の推移からも分かるように、前走がピークの体調であった。上積みがないばかりではなく、体調が下降線を辿っていては、G1メンバーの中ではさすがに苦しい。

グッドババは、当日の馬体重マイナス15kgが表すように、明らかに馬体が萎んでいた。昨年の安田記念時と同じ体重であり、香港ではコンスタントに500kg台で走っているところを見ると、単純に輸送を苦にするタイプなのだろう。パドックや返し馬レース前にすでに勝負は終わっていた。また、5連勝を達成した前走のチャンピオンズマイルが、ピークの出来であった。


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そしてまた夢は続いてゆく

Derby08 by photostud
ダービー2008-観戦記-
レッツゴーキリシマが果敢にハナを奪い、前半73秒6―73秒1というイーブンペースを作り出した。前日の降雨の影響で、後ろから行く馬にとっては追い込みにくい荒れた馬場だったにもかかわらず、全馬を直線だけで一気に差し切ったディープスカイの強さが目立ったレースであった。

勝ったディープスカイは、中2週という強行ローテーションをものともせず、NHKマイルCに続いてまたもや強靭な末脚を繰り出し、キングカメハメハ以来の変則2冠を達成した。府中のマイル戦を勝つ底力とスタミナが、ダービーでも通用することを証明した。初勝利を挙げるのに6戦を要した馬が、NHKマイルCだけではなく、まさか頂点のダービーを制するまでに成長するとは、関係者でさえも当初は想像できなかったに違いない。大外を風のように駆け抜けたディープスカイを観て、競馬は本当に分からないものだと思った。

四位騎手がディープスカイを完全に手の内に入れて、末脚を信じて乗っていたことも大きい。最後の直線に向くまでは、とにかくディープスカイのリズムを最優先して走らせていた。1番人気を背負ったプレッシャーもあっただろうが、落ち着いて折り合いに専念できたのは、昨年のダービーを優勝した自信と経験の裏づけがあったからに違いない。前にも書いたように、ディープスカイは決して乗りやすい馬ではなく、それをいとも簡単に勝たせたかのように見せてしまう四位騎手の技量の素晴らしさ(特に折り合い面)は見逃されてはならない。

あわやという場面を作ったスマイルジャックは、スプリングS後に萎んでいた馬体を、皐月賞後の1ヶ月で見事に立て直してきたのだろう。馬体こそ良くは見えなかったが、パドックでの歩様には力強さが漲っていた。最後はねじ伏せられた格好になったが、正攻法の競馬をして負けたのだから、今回は勝った馬を褒めるべきである。夏を越して、実りの秋につながる成長を心待ちにしたい1頭である。桜花賞やオークスに続き、小牧太騎手は無欲無心で乗って好結果につなげた。

ブラックシェルはスタート後に前をカットされ、その後、馬がエキサイトして終始引っ掛かってしまい、末脚を失ってしまった。武豊騎手があれだけ引っ掛けられ続けたのも珍しく、一旦スイッチが入ってしまうと抑えきれないほどに、ギリギリの仕上げで出走してきたのだろう。それでも3着を確保したように、スタート後のアクシデントがなければ、勝ち負けになっていたのではないだろうか。一生に一度しかないダービーだけに、陣営の悔しさは思い余りある。

2番人気に推されたマイネルチャールズは、折り合いを欠くことやアクシデントもなく、最後まで力を十分に出し切っていた。敢えて苦言を呈するとすれば、これだけの器の馬を寒い時期にも走らせ続け、成長を止めてしまった陣営もしくはオーナーサイドの方針には疑問が残る。少なくとも京成杯は使う必要のないレースであった。本気でクラシックを勝ちたいと思うならば、目先の勝利を捨てる決断も必要なのではないだろうか。

ダート4連勝で臨んできたサクセスブロッケンは、最後の直線で力尽き、最下位でゴールした。芝のレースがダメということではなく、パドックから入れ込んでいたように、これまでのレースとは全く異なる環境に対応できなかったということだろう。芝に挑戦するのは、もう少し体がシッカリと出来てからでもよい。ただ、挑戦そのものには意義があったと思うし、私たち競馬ファンにも大きな夢を与えてくれたことは確かである。そして何よりも、普段は馬のリズムを優先して走らせる横山典弘騎手が、スタートから馬を押してでもダービーを勝ちに行った姿を見て、私は久しぶりに心が震えた。夢は破れ、そしてまた夢は続いてゆく。

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もっと褒められていい

Oaks08 by Deliberation
オークス2008-観戦記-
エアパスカルが外枠からやや強引にハナを奪い、前半74秒3-後半74秒5という淀みない流れを作り出した。展開的に大きな有利不利のないミドルペースに、やや重まで馬場が回復したことも加わって、最終的には力通りの決着となり、完成度で上回る桜花賞組が上位を独占した。

トールポピーは前走に比べ、ふっくらとした体つきに仕上がっていた。桜花賞で惨敗した後のケアが上手く行ったのだろう。まともに走れば能力上位の馬だけに、前走こそ番狂わせであって、今回は順当勝ちと言ってよい。かき込むようなフットワークの馬だけに、馬場がやや重まで回復したのも功を奏した。最終追い切りで行きたがって口を割っていたのも、調教では走りたい気持ちを極限まで我慢させて、レースで爆発させるという、角居流のやり方であったのだろう。レース後に首を激しく上下させる仕草は父ジャングルポケット譲りであるが、極限の力を出し切った後だけに、精神面でのケアは十分に行われるべきである。

池添謙一騎手の見事な手綱捌きには唸らされた。ポイントはスタートしてから1コーナーにかけての進路の取り方で、外枠から馬群を縫うようにして、1コーナーを回るまでに内ラチ沿いに取り付いた。内を開けてしまったレッドアゲートの内田博幸騎手やエフティマイアの蛯名正義騎手とは対照的であった。そこからは内々の経済コースで脚を溜め、3コーナーから4コーナーにかけて少しずつ外に持ち出した。直線で焦って内に切れ込んでしまった粗相には目をつぶるとして、まさに府中のチャンピオンディスタンスを勝つためのお手本のような乗り方であった。

エフティマイアは桜花賞に続き、僅差の2着を確保した。こうして結果が出てしまえば、実力を過小評価されていたということなのだろう。私も早熟のマイラーと見ていただけに、この馬の頑張りには驚かされた。蛯名騎手の落ち着いた騎乗も光った。ギリギリまで追い出しを我慢したが、それでも最後はトールポピーの底力の前に屈してしまった。欲を言えば、6番枠からのスタートだっただけに、トールポピーに内の進路を取られていなければ、もう少し際どかったのではないか。

勝ち切るまでの勢いは感じさせなかったものの、レジネッタは桜花賞がフロックではなかったことを証明した。道中ではしっかりと折り合いもついて、最後までしぶとく伸びている。こういった力の要る馬場も苦にしないタイプであり、さすがG1ウィナーといった完成度の高さを見せてくれた。最後の直線で前をカットされてしまったのは残念だが、勝った馬とは脚色が違った。

松岡騎手の積極的な騎乗もあって、ブラックエンブレムは最後まで伸びて力を出し切った。桜花賞時は追い切りを行わなかった(行えなかった)ように完調ではなかったが、今回は中間にじっくりと乗り込まれ、この馬の力を発揮できる出来にあった。G1レースを勝つには、もう少しパワーアップすることが望まれる。

1番人気に推されたリトルアマポーラは、外を回ったこともこたえたが、馬場が渋ったことにより、持ち前の切れ味を殺されてしまった。良馬場の内枠であれば、もう少し上の着順には来ていたはずである。後ろから行かざるを得ないだけに、乗り難しい馬でもあり、今回は全てが悪い方向に出てしまった。クイーンCで減っていた馬体が前走でも戻り切っていなかったように、全体的に小さく見えたし、輸送の影響も少なからずあったのかもしれない。

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ASIAN WINDS!

Victoria08 by echizen
ヴィクトリアマイル2008-観戦記-
逃げ切り困難な府中のマイル戦を意識して、各ジョッキーが金縛りにあったようにハナを譲り合った結果、前半47秒9-後半45秒8という究極のスローペースが作り出された。直線に向いてからの瞬発力勝負になり、33秒台の脚を使える馬でなければ勝負にならないレースであった。また、馬群が団子状態になって進んだため、外々を回された馬は脚を溜めることができず、ゴールまで伸び切れなかった。

エイジアンウインズは極上の切れ味を発揮して快勝した。ここにきて馬体の充実が光っていたが、府中のマイル戦では馬体的にも血統的にも距離が僅かに長いと考えていただけに、今回の差し切りには少なからず驚かされた。たとえG1であろうとも、絶好の馬場でこれだけスローに流れるレースになれば、距離適性が僅かに短いスプリンターでも最後まで何とかもってしまうということだ。昨年に続き、今年もフジキセキ産駒の勝利であり、しかもエイジアンウインズの母父はデンヒルであることからも、ヴィクトリアマイルを勝つためにはスピードとパワーが問われるという傾向が明らかになってきた。

これまで差して勝ったこともあったが、前走を逃げ切っているだけに、エイジアンウインズを本番で再び差しにモデルチェンジした藤田伸二騎手には、勝利にこだわる男気を感じた。逃げ切りが難しいことが分かっていても、実際に勝ちパターンを変えるのは勇気の要ることだ。よほど昨年の安田記念のコンゴウリキシオーで差し切られたことが頭に残っていたのだろうか。馬の気分を壊さないよう、ペースに関係なく折り合いに専念した結果が、ゴール前の4分の3馬身差につながった。

ウオッカは折り合いも付いて、ギリギリまで仕掛けを我慢されたが、それでも僅かに届かなかった。武豊騎手はほぼ完璧な騎乗をしており、今回こそは素直に負けを認めざるを得ないだろう。33秒2の末脚で上がってきたものの、その伸びはウオッカ本来のものでないことは誰もが認めるところで、短期の放牧に出したぐらいでは、ダービーの後遺症は癒されなかったということだ。デビュー以来、最低の馬体重も気になったが、それ以上に、最後のもうひと踏ん張りが出来る精神力(気持ち)が回復していないのではないか。今度こそ思い切って休ませるタイミングが来ている。

ブルーメンブラッドは内々の経済コースを進み、最後まで良く伸びている。石坂厩舎に転厩してから以前のひ弱な面がなくなり、馬が大きく変わった。短期放牧を挟みながら、坂路調教を繰り返して課したことによるものだろう。特に前脚のかき込みが強くなったことで、どんなレースになっても、安定して走ることが出来るようになった。父アドマイヤベガと違い、ジワジワと伸びるタイプなので、今回のような究極の瞬発力勝負は苦しかったが、それでも力を十二分に発揮していた。後藤騎手の安定した手綱捌きも目に付いた。

2番人気に推されたニシノマナムスメは、直線で苦しがって、最後まで伸び切れなかった。あくまでも結果論ではあるが、プラス10kgの馬体からも、直前の調教が少し軽すぎたのかもしれない。長距離輸送を見越しての仕上げだからこそ、難しい部分もあったに違いない。スローペースを見越して先行した吉田隼人騎手の判断は見事だったが、直線での左右の斜行においては、ムチの使い方が自己中心的だったように映った。将来性のある素晴らしいジョッキーであることは確かなのだから、まずは馬を真っ直ぐ走らせることを心掛けて欲しい。

ベッラレイアは馬体こそ仕上がっていたが、スローの展開で外々を回らされてしまいアウト。下げすぎると届かないし、前に行けば馬群の外を走る羽目になる枠順だっただけに、今回は運が悪かったと諦めるしかないだろう。ただ、今回の馬体重の減少からも、次回への上積みは期待しづらく、吉田勝己氏に馬主名義が変わっているように、競走馬としては役割を終えた気がしないでもない。

ジョリーダンスはスタートから攻めに徹し、直線に向くまでは、まさに勝ちパターンの競馬であった。しかし、スパッと切れる馬ではないので、直線でのパッチンが痛かった。瞬発力勝負のレースで、スピードに乗る瞬間にあれだけ急ブレーキをかけてしまっては万事休す。抜け出していても結果はどうなっていたか分からないが、後味の悪いアンラッキーなレースとなった。

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I believe I can fly.

Nhkmilec08 by echizen
NHKマイルカップ2008-観戦記-
スタートからハミをガッチリと掛けられたゴスホークケンが、前半46秒7―後半47秒5という数字以上に厳しいペースを作り出した。前に行った馬は揃ってバテているように、水分を含んだ力を要する馬場状態も加わり、マイル戦以上のスタミナを問われるレースとなった。

勝ったディープスカイにとっては、まさに打ってつけの展開となった。スタートを決めるや、あとは馬任せでジッとしているだけで、勝手に4コーナーでは前がバテてきて、差が詰まったという感じだろう。手応えに余裕があったからだろうが、他馬が馬場の良い外を回す中、ズバッと内を突いた四位騎手の冷静なコース取りも光った。最後の直線に向いて、先に抜け出したブラックシェルをアッという間に交わし去ると、ゴール前では手綱を抑えるほどの余裕すらあった。

前走の毎日杯に続き、今回も楽に勝ったように見えるが、ディープスカイのような乗り難しい馬をいとも簡単に乗りこなす四位騎手の騎乗技術はさすがである。止め際の仕草からもディープスカイが口元の過敏な(操作の難しい)馬であることは想像がつくし、レース後に検量室前で振り落とされた一件も気性の激しさゆえである(あれば愛嬌だが)。そして、何と言っても、そんなディープスカイが厳しいペースになり気の難しさを出さずに済むであろう、マイルG1に向けて照準を絞った昆貢調教師の見立ては賞賛に値する。

ブラックシェルは暖かくなってきたことにより馬体が絞れ、本来の力を出し切れるだけの体調に仕上がっていた。器用な馬ではないだけに、幅員の広い府中コースに替わったことも好走の理由のひとつだろう。後藤浩輝騎手もスタートから負荷を掛けることなく流れに乗せ、最高のポジショニングでレースを進めていた。惜しむらくは、直線に向いてゴスホークケンをマークする形で追い出してしまったことだろう。あれだけのペースで行っているのだから、後ろから来る手応えの良い馬を待ってから追い出していれば、もう少し際どい勝負になっていたはずである。

ダノンゴーゴーは、最後方からレースを進めたことが吉と出て、他馬が揃ってバテる中をグイグイと最後まで伸びた。スプリント戦で切れ味を発揮する馬だけに、スタミナに不安のある状況の中でも最高の走りが出来ていた。ハイペースに賭けて、腹を括った藤岡佑介騎手の騎乗が見事にハマッたのだが、それを実際にやってのけたことが凄い。藤岡佑介騎手が大きなレースを獲る日はすぐそこまで来ている。

ファリダットは道中で引っ掛かってしまった分と、4コーナーで外を回したことにより、最後の伸びを欠いてしまった。これだけのペースでも掛かるのだから、本質的にはスプリンターなのだろう。武豊騎手が騙し騙し乗ってはいたが、上位2頭とは決定的なスタミナの差があった。しかし、将来性は十分に感じさせる馬だけに、成長に合わせてマイル以下の距離を使っていけば、いずれ大きなところを勝つ器であることは間違いない。

ゴスホークケンは果敢に逃げたが、4コーナー時点で既に手応えがなかった。キッチリと仕上がってはいたが、精神面でまだ立ち直っていない部分があるのだろう。馬なりで先手を取れた朝日杯フューチュリティSと、押して押してハナを奪った今回のレースでは雲泥の差があった。内田博幸騎手もハナを奪うことを優先したのだろうが、あれだけ強くハミを当てて出してしまえば、さすがに中央の競馬ではゴールまで持たないことを実感したはず。

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少なくとも最後まで歩かなかった

Tennosyoharu08 by M-style
天皇賞春2008-観戦記-
予想していた以上に、いや期待外れに、横山典弘ホクトスルタンが前半1000mを61秒1と抑えて進んだことにより、レースは例年通りの上がり1000mの競馬となった。これにより、2600mを走って、さらに残りの3ハロンを34秒台で上がることの出来る、瞬発力のある馬にとって有利なレースとなった。

勝ったアドマイヤジュピタにとって、出遅れてしまったことが結果的には吉と出た。もし好スタートを切っていたとすれば、外枠からの発走ということもあり、道中は終始アサクサキングスの外々を回されて脚を失っていたかもしれない。腹を括って、無理にポジションを押し上げるようとせず、メイショウサムソンの後ろの経済コースを進んだ岩田康誠騎手の判断も見事であった。

もちろん、最後は差し返してきたメイショウサムソンを振り切ったように、アドマイヤジュピタの力も相当なものである。コロンとしたステイヤーらしくない体型だが、それを補って余りあるステイヤーとしての気性の良さ(賢さ)がこの馬にはあり、道中で無駄な動きをしないからこそ最後の末脚が生きた。日経新春杯こそ調整に失敗して惨敗してしまったが、前走は馬体重を元に戻して勝利し、今回は極限まできっちりと仕上げられていた。この後はゆっくりと休養を取り、秋には海外からの一流馬を迎え撃って欲しい。

メイショウサムソンは、一瞬差し返したかと思ったが、最後はねじ伏せられてしまった。前走をひと叩きされて、形どおり良化していたのだろう。道中は強かった頃の行きっぷりの良さが窺えた。ただ、最後は競り負けてしまったことも事実で、この馬にとっては距離が若干長いということ以上に、肉体面、そして特に精神面において、未だ完調には戻りきっていないということだ。放牧に出されることなく大レースを走り続けてきたサムソンに、もう一度、あの唸るような走りを期待してしまうのは酷だろか。負けてしまったものの、武豊騎手のペース判断が光ったレースでもあった。

1番人気を裏切る形になったアサクサキングスにとって、前半の1000mが思いのほか遅く流れてしまったことが苦しかった。3コーナーの坂を下りながら、自ら早目に動いていったのだが、後方で脚を溜めていた馬たちにそれ以上の脚を使われてしまった。スタミナ勝負に持ち込めなかったことに悔いは残るだろうが、この馬としては良く走っている。ただ、直線では追われてフラついていたように、若さを残しているということだけではなく、少し太目が残っているかもしれない。いずれにせよ、全てを撥ね返して春の盾を手にするだけの力は付いていなかったということだ。

親子4代制覇の夢は叶わなかったものの、ホクトスルタンは昨年と比べて、少しずつ力を付けてきている。横山典弘騎手はもう少しペースを上げてくるのではと考えていたが、もしかすると菊花賞の二の舞にならないようにか、それともスタミナに不安があったのか、今回は抑える作戦に切り替えてきた。結果的に4着に残ったのだから大健闘ともいえるし、京都3200mの勝ちパターンではなかったともいえる。

ポップロックは昨年の有馬記念を境として、年齢的な衰えを感じざるを得ない。本質的にはステイヤーではないが、堅実だった馬がここまで惨敗をしている以上、ピークを過ぎてしまったのだろう。ドリームパスポートにとっても距離が長いだけではなく、今回のレースを観る限りは、3歳時のような勢いはなく、翳りが見え始めてきていることは否めない。

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イエス、キャプテン!

Satuki08 by fake Place
皐月賞2008-観戦記-
好枠を利してハナを奪った川田キャプテントゥーレが、前半61秒4ー後半60秒3という絶妙なスローペースを作り出し、2番手を追走したレッツゴーキリシマはほとんど競りかけることもなく、隊列に蓋をするような形で、ラスト600mまでは全くレースが動かず淡々と流れた。追い込みが利きづらい重い馬場とスローの展開が重なり、後ろから行った馬にとっては勝ち目のないレースであった。

勝ったキャプテントゥーレは、展開と馬場に恵まれたことは確かだが、4コーナーを回って後続を突き放したように、他馬に付け入る隙を与えなかった。同じような形になったデイリー杯を楽勝したように、自分のペースで行けると実力を十二分に発揮するタイプである。弥生賞は追い切りの本数が足りない状況での凡走だったが、今回はここを目標にマイナス18kgと究極の仕上がりにあった。今回は全てが上手く行った感が強いが、距離が伸びて悪い馬体ではなく、ダービーでも好走を期待してもよいだろう。

川田将雅騎手にとっては初めてのG1勝利となったが、らしい騎乗であったと思う。追っ付けながらでも迷いなく先頭に立ち、道中は出来るだけ遅いラップを刻むことに腐心し、キャプテントゥーレのジワジワ伸びる脚質を考慮に入れて早めに追い出した。朝日杯フューチュリティSでは直線でヨレたことを指摘したが、今回はラチを頼らせることによって、ゴールまで真っ直ぐ走らせることに成功した。技術的なことはもとより、川田将雅騎手の思い切りの良さが光った好騎乗であった。

2着を確保したタケミカヅチは、内々の経済コースを進み、最後も内を突いて差し込んだ。ゴールドアリュールの産駒だけに、こうした時計の掛かる馬場も苦にしないのだろう。一瞬しか脚が使えないため、自ら動いて行けない分だけ勝ち切れないが、それでも確実に良い脚を使っていることは評価できる。中間の追い切りで好時計を連発していたように、この馬も究極の仕上がりにあったことが好結果につながった。柴田善臣騎手の終始内にこだわった、一発勝負の騎乗も見事であった。

マイネルチャールズは最初から行きっぷりが悪く、道中で進みたかったポジションを取ることが出来なかった。スローペースの中団で馬群に揉まれながら、最後はなんとか抜け出してきたものの、いつもの迫力はなく、直線に向いた時は既に遅しであった。あくまでも結果論ではあるが、弥生賞を勝つために細いくらいに仕上げていたことが、本番で疲れとして出てしまったのだろう。これは弥生賞を勝った馬が皐月賞で惨敗してしまう理由のひとつでもある。体調が下降線を辿っている以上、今後のダービーに向けての明るい材料はない。

レインボーペガサスは抑える作戦が裏目に出てしまった。後方から出走馬中で最も良い脚を使っていたように、前々で競馬することが出来ていれば、もう少し差が詰まっていたはずである。とはいえ、この馬自身もキッチリと仕上がっていたように、ダービーに向けて大きな上積みは期待できないだろう。

スマイルジャックは前走とは全く別馬のような負け方であった。1コーナーで口を割って苦しがっていたように、パドック写真や追い切りの動きからは分からなかったが、前走でマイナス10kgと仕上げられたことによる反動があったようだ。トライアルで出走権利を取りに行くことと、皐月賞を勝つことを両立する仕上げは本当に難しい。

ショウナンアルバは大外枠がアダとなってしまった。行き切るか抑えるか、出たなりで決めようと蛯名騎手は考えていたのだろうが、内枠のキャプテントゥーレに先手を取られてしまい万事休す。抑えて競馬をしたことにより、終始外々を回されてしまい、4コーナーでは既に脚を失ってしまっていた。切れる脚のない馬だけに、4コーナー手前で動いたのは仕方ないとしても、全てにおいて中途半端な競馬であったように映った。蛯名騎手に迷いがあったか。

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この時期の牝馬の難しさ

Okasyo08 by echizen
桜花賞2008-観戦記-
デヴェロッペとエイムアットビップが暴走気味にレースを引っ張り、前半46秒4-後半48秒0という、魔の桜花賞ペースで道中は流れた。長い直線を考えると、差し馬におあつらえ向きの展開となったにもかかわらず、後方で脚を溜めていたはずの有力馬たちは伸び切れなかった。この時期の牝馬の難しさに、新阪神マイルコースにおける展開の妙が加わって、3連単が歴代6位の高配当という大波乱の決着となった。

まずは1番人気を背負って負けたトールポピーについてだが、正直に言って、これといった敗因が見当たらない。マイナス10kgの馬体も、細くは映らなかったし、キッチリと仕上げられてのものだろう。パドックや返し馬でも入れ込まず、ゆったりと歩けていたように、精神的な部分に敗因を求めるのも難しい。それでも、勝ち馬のすぐ後ろの絶好位にいながら、早めに手応えが怪しくなったのを見ると、どこかに問題があったことは確かである。この時期の牝馬特有のフケ(発情期)の影響という結論には逃げたくはないが、そうせざるを得ないほど、凡走の理由が全くもって分からない。

リトルアマポーラは前走で減っていた馬体を戻していたが、その分、上積みは少なく、反応が少し鈍かった。それでも、最後までジワジワと脚を伸ばしており、負け方としては悪くはない。この馬自身の血統的背景を含めて考えると、次走のオークスでの巻き返しは大いに期待できるはず。

オディールはパドックから入れ込んでおり、レースでも気負ってしまい、折り合いを欠いてしまった。あれだけのハイペースで力を入れて走ってしまえば、最後にガス欠を起こしても仕方ない。安藤勝己騎手としては将来を考えてゆっくりと行きたかったはずだが、期待外れの内容に終わったと言っても良いのではないか。この馬の適性を考えると、オークスよりもNHKマイルカップに駒を進めるべきだろう。

勝ったレジネッタは、道中が極端なハイペースになったことにより、外枠から馬群に包まれずに進められたことが大きくプラスに働いた。前走のトライアルで差す競馬を身に付け、本番ですぐに結果を出したように、よほど末脚を生かす競馬が合っているのだろう。それを引き出した小牧太騎手に最大の功績はあり、前走は仕掛けのタイミングの差で負けて悔しい思いをしたが、今回は慌てず騒がずドンピシャのタイミングでゴール前を突き抜けた。小牧太騎手にとっては中央に移籍して以来、初めてのG1勝利である。トンネルが長かっただけに、これからは吹っ切れた騎乗をぜひとも期待したい。

エフティマイヤは新潟2歳Sを制した後、凡走を繰り返していたが、本番でようやく復活した。ハイペースを先団で追走しての2着だけに、その価値は高い。開業したばかりの鹿戸雄一厩舎に移ったことで、環境が変わったこともプラスに働いた。マイナス10kgと極限の仕上げを施してきたように、厩舎にとっても勝負を賭けた一戦だったのだろう。

3着に突っ込んだソーマジックは、最後は切れ負けしてしまったが、ジワジワとよく伸びている。奥行きのある血統だけに、距離が伸びてさらに良いはずだし、もう少し時計の掛かる馬場であればなお強さを発揮できるはず。この馬の渋太さを生かして、早めに仕掛けた後藤騎手のファインプレーも際立っていた。

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寸分の狂いもない

Takamatumiya08_2 by photostud
高松宮記念2008-観戦記-
降り出した雨の影響もなく、絶好の良馬場でレースは行われた。逃げ馬不在でスローペースが予想されていたが、蓋を開けてみれば前半33秒4-後半33秒7という、ハイペース寄りのミドルペースでレースは流れた。こうなるとスピードだけで押し切ることは難しく、スタミナを備えた末脚の爆発力に優る馬たちが台頭する、いつもの高松宮記念となった。

勝ったファイングレインは、抜群のスタートを切ったことにより、無理をすることなく好位を追走し、手応え抜群で直線に向き、先に抜け出していたキンシャサノキセキに襲い掛かった。着差はクビ差であったが、内容は完勝と言ってよい。これで1200m戦は4戦4勝の負け知らずで、短い距離での爆発力を要求されるスプリント戦が気性的に合うのだろう。棚からボタ餅のような形でスプリント適性が証明されたファイングレインが、G1レースまで勝ってしまうのだから競馬は面白い。

ファイングレインを勝利に導いた幸騎手の手綱捌きは見事であった。スタートからゴールまで、寸分の狂いもない、緻密なレース運びであった。G1レースのペースを考慮に入れて、前半から積極的に前へ推進力を強めて追走したことにより、4コーナー手前では、追い出しのタイミングを図る余裕が生まれた。僅かなミスが命取りとなるスプリント戦だけに、位置取りからコース取りまで、全てを理想的に運んだ幸騎手の騎乗は賞賛に値する。

2着に好走したキンシャサノキセキは、やはりG1のスプリント戦の流れが合う。この馬自身はいつものように引っ掛かってはいるものの、道中のペースが速いため、全体の流れから見てのロスが少ない。それでも、差し切られてしまったのは、道中で力んで走ってしまうこの馬の悪い癖ゆえのロスが最後の最後に響いたからである。こういう癖は馬の本質なので、改善される余地は少ないが、癖がカバーされる流れの速いスプリント戦であれば今後も好走可能である。

スズカフェニックスはスタートで躓いたことが全てである。本当であれば勝ち馬(ファイングレイン)の進んだコースを走りたかったのだが、立て直した時には既に遅し。馬の躓きは偶然の要素が強いのだが、今回は福永騎手の力みがスズカフェニックスに伝わってしまってのものではないかと想像する。具体的に言うと、内枠であったこともあり、強く出すつもりが、強く出しすぎてしまったということではないのだろうか。あの位置取り、コース取りでは、さすがの前年の覇者も3着に突っ込んでくるのが精一杯であった。

ローレルゲレイロは最後まで良く粘っている。直線でフサイチリシャールに強引に外から来られたことは痛かったが、それでも大きく崩れなかったように、ここにきて更に力をつけている。スプリント戦でもスピードは劣らないことを証明したが、末脚に力のない馬だけに、ベストの距離はやはり道中が緩む1400m~マイル戦だろう。

スーパーホーネットは道中の行きっぷりが悪く、最後の直線で良く追い込んだが、掲示板を確保するのが精一杯であった。スプリント適性も十分にあり、仕上がりも良かったのだが、それでも休み明けでいきなりの激流は厳しかった。典型的な、休み明けのG1スプリント戦といった内容の走りであった。

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かつてクロフネ以外に私は知らない

Febs08 by M-style
フェブラリーS2008-観戦記-
ダート初参戦のヴィクトリーが先頭を奪い、前半の1000mが59秒1という、超がつくほどのハイペースを創り出した。多少時計の掛かる馬場だったことを含めると、1分35秒3の勝ち時計は速く、レース全体のレベルも高く、実力が如実に反映されるレースとなった。

勝ったヴァーミリアンはスタートを決め、絶好の位置取りを一瞬にして確保した。スターとしてからの80mが芝だったことも有利に働き、この時点で勝負あった。テンが速いだけではなく、ハイペースの中盤を難なく追走し、直線に向いて馬なりで先頭に立つと、最後はひと伸びふた伸びしての圧勝であった。プラス7kgの馬体重からも、わずかに太目残りで完調一歩手前だったにもかかわらず、この内容だから恐れ入る。

これほどまでに高い次元でスピードとスタミナが融合されたダート馬を、かつてクロフネ以外に私は知らない。この後、上手く調整することが出来れば、昨年以上の充実を見せる今年こそ、ドバイワールドカップを勝つ本物のチャンスだろう。

武豊騎手の自信満々の手綱捌きも目立った。スタートの巧さは言うまでもないが、ドバイのレースをイメージしながら、ワイルドワンダーのポジションを潰してしまうあたりの強かさはさすが日本のトップジョッキーである。他の騎手に対して全く隙を作らない騎乗をしながらも、それを何事もなく回ってきたように見せるあたりが心憎い。

8歳馬のブルーコンコルドは、最近には珍しく、道中の行きっぷりが抜群であった。マイルの距離が合っているということ以上に、体調が戻っていたということが大きい。最終追い切りを坂路コースからDWコースに切り替えたことも功を奏したのだろう。最後のひと追いで、馬がキッチリと仕上がっていた。全盛期と比べると迫力はなくなったが、馬自身がレースを知っているし、これだけ厳しい流れを最後まで踏ん張ったのだから、本当に頭が下がる。

ワイルドワンダーはスタートで一瞬出負けしたことにより、獲りたかったポジションを武豊ヴァーミリアンに先を越されてしまった。同じ位置取りで、ヴァーミリアンの外を回ってはとても敵わないので、一旦後ろに下げ、一瞬の脚を生かす作戦に切り替えた岩田康誠騎手の判断は見事であった。仕掛けをもうすこし我慢しても良かったが、あれだけ馬が前に行く気になってしまっては仕方ないか。4コーナーでは、ヴァーミリアンと同じ手応えで回ってきたものの、最後はスタミナ切れを起こしてしまった。勝ちに行かなければ2着はあったが、勝ちに行っての3着と好評価したい。

ロングプライドは行き脚がつかず、レースの流れに乗り切れなかった。今回のような速いペースになってしまうと、ついて行くだけで脚を使ってしまい、持ち前の切れ味を生かすことが出来ない。同じことはメイショウトウコンにも当てはまり、スローの瞬発力勝負に強い同馬にとっては、道中のペースが速すぎて、逆に差し脚を失ってしまっていた。

リミットレスビッドは好走と凡走を繰り返す馬だが、今回は最後までキッチリと走っていた。高齢馬になると、手を抜いたり、気を抜いたりして、連続して走らない傾向が出てくるのは仕方のないことである。短い距離であればまだまだ力上位であることを改めて証明した。

フィールドルージュはどうしたのだろう。スタートしてから行き脚がつかなかったように、もうこの時点で故障を発生していたに違いない。絶好調だった川崎記念と遜色ない雰囲気でパドックを歩いていただけに、最後まで走らせてあげたかった。


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豪腕

Kisaragi08 by echizen
きさらぎ賞2008-観戦記-
メジロガストンが引っ張ったレースは、前半48秒6-後半48秒0という京都1800mに典型的な平均ラップで流れた。どの枠でも、どの位置からでもチャンスのある、まさに展開いらずのレースで、最後は各馬一線の迫力のある追い比べとなった。

勝ったレインボーフェニックスは、ペリエ騎手にビッシリと追われ、最後までしっかりと伸び切った。大外枠からスムーズにレースを進められたことが最大の勝因であろう。これまで全て1番人気に推されていたように、素質を高く評価されていた馬だが、今回は芝で未勝利であったことに加え、休み明けということで人気の盲点となっていた。今回のレースで、芝でも走れる、いや芝の方が走るということを証明した。また、ペリエ騎手の豪腕が目立ったレースでもあり、ゴール前では全盛期のペリエ騎手を見た気がした。

スマイルジャックも僅かに負けてしまったが、最後までシッカリと伸びている。スタートしてから最後の直線に向くまで、絶妙な位置取りを進んでいたように、小牧太騎手のほぼ完璧な騎乗が光った。これで負けたのだから、勝ち馬には力負けを認めるべきだろう。もうワンパンチ足りない印象だが、スマイルジャック自身も前走の若竹賞を叩いて体調がアップしていたし、伸び伸びと走ることのできるコースの方が合っていたのだろう。

ヤマニンキングリーは藤田伸二騎手に導かれ、最後はあわやと思わせる伸びを見せた。成長分を含めても少し重め残りだったはずで、それでもここまで来たのだから、さすがにレベルの高い黄菊賞を勝っただけのことはある。器用さに欠ける馬だけに、直線の長いコースならば、これからもその末脚を十分に生かす競馬が出来るはず。この馬にとっては次走が試金石か。

レッツゴーキリシマは57kgを背負って頑張ったが、この馬にとっては少し距離が長かったのだろう。テンから少し掛かり気味で先行したように、前走でマイルを使っていたことがマイナスに出てしまった。もちろん、休み明けであったことも引っ掛かった原因のひとつではあるので、叩いた次走は折り合えるだろうし、距離も2000mぐらいまでなら十分にもつ馬である。

ダイシンプランは最後方からよく伸びたが、前も伸びていたので届かなかった。能力は高いだけに、もう少し気性が大人になって、レースにしっかりと参加できるようになれば怖い1頭である。アルカザンは道中折り合いも付いて直線に向いたが、最後は休み明けの分、伸び切れなかった。

圧倒的な1番人気に推されたブラックシェルは、スタートから立ち遅れて、最後は外から伸びて来たが、わずかに差を縮めるのが精一杯。最終追い切りの動きも重く映ったように、プラス10kgの馬体重が示すとおり、少し太目残りでの出走であった。この時期の坂路コースの調教馬は絞り切れないことがあるので、これからも注意して見るべきである。


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力を信じて

Silkroads08_3シルクロードS2008-観戦記-
抑える競馬をすると踏んでいたアストンマーチャンが逃げ、創り出したのは、前半33秒7―後半35秒4という前傾ラップ。特に3ハロン目も10秒8というG1レース並みのハイラップを刻んでおり、この辺りで先行集団にいた馬たちは、最後の直線で軒並みバテてしまった。

勝ったファイングレインは、スタートから自分のペースでレースを進め、最後は桁違いの末脚で全馬を差し切った。マイル以上の距離になると甘さを見せる馬だが、底力の不足を補えるこのくらいの距離が合っている。高松宮記念は開催5日目で馬場も傷んでくる時期なので、今回こうした馬場で結果を残せたことは大きい。直線が短い高松宮記念は仕掛けどころが難しいが、幸騎手には今日のように馬の能力を信じて乗って欲しい。

コパノフウジンが久しぶりに好走した。前走で惨敗したことによりハンデが軽くなっていたこともあるが、レースの流れに上手く乗り、最後はステキシンスケクンの猛追を凌ぎ切った。先行争いが激しくなるのを横目に、馬のリズムに合わせて走らせた、藤岡祐介騎手の当たりの柔らかい騎乗が目に付いた。

ステキシンスケクンも、差しに回って好走した。気難しいところのある馬だけに、あの先行争いに巻き込まれてしまっていたら、おそらく着外に消えていただろう。ペースを読み切って、馬の新たな面を引き出した岩田康誠騎手の絶妙の手綱捌きであった。

1番人気に推されたアストンマーチャンは、休み明けをあれだけのペースで飛ばしては失速もやむを得ない。高松宮記念のことを考えて、抑える競馬を試してくると思っていただけに、逃げて惨敗とは何ともやるせない。今回のレースにおいて勝つ確率の高い乗り方をしたということなのだろうが、それではなぜ武豊騎手に手綱を戻したのか分からないし、少なくとも次走へ繋がる負け方(乗り方)には見えなかった。

アイルラヴァゲインも不甲斐ない負け方であった。休み明けにしては体も出来ていただけに、ハイペースを追走したとはいえ、とてもG1を意識できるような走りではなかった。ペールギュントはルメール騎手が積極的に攻めすぎたことが裏目に出てしまった。普段どおりの終いを生かす競馬をしていれば、上位に食い込んでいただろう。ただ、これはあくまでも結果論で、乗り方と展開次第で、次回の巻き返しは期待できる。

upper photo by Deliberation


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最有力候補に

Negisi08
根岸ステークス2008-観戦記-
降雪による中止明けの1戦で、ダートは水が浮きそうな泥んこ馬場でレースは行われた。ここまでの不良馬場になってしまうと、まともに泥を被ってしまう(被らざるを得ない)位置でレースを進めた馬にとっては厳しいレースとなる。

そのような状況の中でも、勝ったワイルドワンダーは、飛んでくる泥をモノともせず、最後の直線で爆発的な差し脚を発揮した。JCダートで引っ掛かっても4着した実力は本物であることを証明した。精神的にも強い馬なのであろう。体型的なことを考えると、マイルのG1フェブラリーSは適鞍であることは間違いなく、最有力候補にのし上った。唯一の心配材料は、マイナス8kgとキッチリ仕上がり過ぎていたように見えたことぐらいか。

タイセイアトムが刻んだ34秒3-36秒4というラップは、馬場を考えると、およそ淡々とした平均ペース。外枠と馬場を味方につけたことは確かだが、タイセイアトムは4コーナーも持ったままで、一瞬勝ったかと思わせる力強い走りであった。坂路調教でのパワーアップがそのままレースに繋がっている。スタートしてからムキになって走らなかったように、精神面での成長も大きい。スピードに溢れる馬だけに、これ以上距離が伸びてプラス材料にはならないが、もしフェブラリーSに出走してくるのであれば目を離せない馬の1頭である。

アドマイヤスバルは、トウショウギアの故障事故に巻き込まれるような形で、道中で一気にポジションを落としてしまった。もはや万事窮すの状況であっただけに、あそこから最後の直線だけで3着まで追い上げてきたことには驚かされた。あのまま流れに乗っていれば、勝ち負けになっていたことは間違いない。少し間隔が開いて、馬体も増えていたように、ひと叩きした次走での巻き返しに期待したい。

マイネルスケルツィは4コーナーまでは完璧な内容であったが、最後の直線で伸びを欠いた。プラス16kgの馬体が示すとおり、本番に向けて余裕を残した仕上げだったのだろう。この敗戦を負け過ぎとみるか、本番へお釣りを残したとみるかは人それぞれであるが、今回のレースに限っては見せ場もなく、期待外れの内容であった。

トーセンブライトもカフェオリンボスも、内で泥を浴びる厳しい展開の中、最後まで良く伸びてきているように、さすがダート歴戦のツワモノである。メイショウバトラーも勝ちパターンに持ち込んだが、最後は力尽きてしまった。年齢的なものか、疲労が残っているのか、ここにきて少し勢いが落ちてしまっている。トウショウギアはぬかるんだ馬場に脚を取られたのだろうか。非常に残念である。

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まさに勝ちパターン

Heians08 by echizen 

冬場ということもあり、意外なほどに馬場が回復せず、わずかに水分を含んだやや重馬場でレースは行われた。前半48.5-後半49.7というハイペースであるが、これぐらい速くなっても、やはり平安ステークスはなかなか前が止まらない。内枠を利して積極的に攻めたクワイエットデイとマコトスパルビエロの間に、メイショウトウコンがなんとか割って入ったところがゴールであった。

クワイエットデイは、陣営の希望通りの湿った馬場であったことも幸運であったが、馬自身も前走のペテルギウスSを叩いて調子を上げていた。ゲートを出てすぐさま好位の内という理想的ポジションを確保し、スタートしてから気合をつけた分、道中はわずかに引っ掛かったが、3コーナー過ぎには落ち着き、4コーナーでは引っ張りきれない手応え。あとはゴール目がけて追い出すだけという完勝であった。まさに勝ちパターンの、非の打ち所がない角田騎手の騎乗であった。

メイショウトウコンにとっては少しペースが速すぎたこともあるが、4コーナーでの手応えが少し悪かったように、昨年のエルムS時と比べると、体調が落ちてきているのだろう。それでも最後は差を詰めたように、G1レースで揉まれてきた意地は見せた。

マコトスパルビエロのプラス22kgの馬体重は、わずかに太目も残っていたが、ほとんどが成長分と考えていいだろう。55kgを背負ってこのペースを粘り通したのだから、休養前に比べて力を付けてきていることは間違いない。G1レベルでは末脚のパンチ力が少し足りないが、これからは重賞レース上位の常連になるだろう。

ロングプライドも最後まで良く伸びているが、どうしても届かなかった。4コーナーではメイショウトウコンよりも手応えが良く映ったにもかかわらず、伸び切れなかったのだから力不足だったと言ってよい。湿った馬場状態を苦手とするこの馬にとって、やや重の馬場も不利に働いたのかもしれない。

ドラゴンファイアーは全く見せ場なしの惨敗を喫してしまった。連勝が止まったことによる肉体的、精神的な疲れが尾を引いているのか、この馬本来の走りではなかった。まだ馬体にも若さを残す馬だけに、今回で見限るのは早計で、この先、さらに成長することを期待できる素質馬であることに変わりはない。

距離が少し長かったのか、フェラーリピサは最後の直線で伸び切れなかった。他の4歳馬よりも重い57kgの斤量を背負っていたことも、わずかに響いている。同じことは59kgを背負ったボンネビルレコードにも言えて、最後は猛追してきたもののわずかに届かなかった。

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ただひたすらに

Nikkeisinnsyun08 photo by mighty

スローになることを意識した若手ジョッキーたちが、好位を確保しようと第1コーナーへ殺到したため、前半47秒9-中盤50秒2-後半49秒3という一昨年にアドマイヤフジが勝った時とほぼ同じラップ構成でレースは流れた。3コーナーからマキハタサイボーグが強引に動いていったことも加わって、先行した馬たちにとってはかなり厳しい、前崩れの展開となった。

それにしても、昨年に続き勝利した安藤勝己騎手の手綱捌きには驚かされた。「全体の流れが速いときには遅く行き、遅いときには速く行く」は騎乗のイロハのイだが、前半800mは死んだふりをして、ペースの落ちた向う正面で位置取りを上げたペース判断には非の打ち所がない。勝負どころでのコース取りや馬群の捌き方は、もはや神業と言ってもよいだろう。直線に向いてからも、抜け出すと気を抜くアドマイヤモナークを焦って追い出すことなく、内からヨレてきた川田騎手のトウカイワイルドを余裕を持って交わしてから、最後の最後にゴーサインを送った。ただひたすらに、安藤勝己騎手の冷静さが際立ったレースであった。

勝ったアドマイヤモナークは、後ろから差して届かずの歯がゆいレースが続いていたが、前走の万葉Sを叩いて体調もアップしていたし、今回は展開面がバッチリと嵌った。首の高い走法の馬だけに、こういう渋った馬場も合っていたのだろう。こういう脚質の馬だけに、展開面に左右されがちな馬ではあるが、長距離戦であれば安定した末脚を生かして活躍が見込まれる。

2着に突っ込んだダークメッセージは、どうしてもワンパンチ足りないが、武豊騎手のソツない騎乗に導かれ、何とか連対を確保した。勝ちパターンの展開だっただけに悔しいだろうが、勝ち馬の決め手が一枚上であった。

テイエムプリキュアは厳しい展開の中、最後まで良く走っている。この馬も頭の高い走法で、渋った馬場を滅法得意とするタイプである。血統的にもネヴァーベンド系の馬だけに、こういう道中の流れが厳しく、上がりの掛かる競馬も合っていた。スローペースが常の長距離戦で安定した走りを期待するのは難しい馬だが、また忘れた頃に穴を開けることもあるかもしれない。

1番人気に推されたアドマイヤジュピタは、雨が降って力の要る馬場で57kgを背負ったこと、先行争いに巻き込まれたこと、そしてプラス18kgの太目残りの馬体と、あらゆる悪条件が重なってしまい、最後は末脚をなくしてしまった。それでも、大きくは負けておらず、これで見限るのは早計か。

モッタイナイ乗り方をしたのがオースミグラスワンである。ギリギリまで溜めてこその馬で、もう少し仕掛けのタイミングを遅らせれば、上位入線も可能であったのではないだろうか。跳びの大きい馬だけに追い出してからノメったところもあったのだろうが、福永騎手の焦りが目に付いたのも確かである。


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KY有馬記念

Arima07 by fake Place
有馬記念2007-観戦記-
外枠からチョウサンが少々強引に先頭を奪い、創り出した流れは前半73秒5、後半73秒2というイーブンペースに見えるが、実は前半中盤後半に分けると、前半46秒9、中盤51秒0、後半48秒8というまるで長距離戦のように中盤が緩む差し馬にとって厳しいペース。それに加え、当日朝まで降り続いた雨が時期的にも乾きづらく、地盤は緩み、全馬のスタミナを奪う馬場であった。前に行った馬もバテているが、後ろから行った馬もバテているという、まさに行ったもん勝ちのレースとなった。4コーナーでは既に大勢が決しており、ゴール後に蛯名騎手が発した「よっしゃ!」の喚声だけが沈黙の中山の冬空に響き渡った。

大金星を獲得したマツリダゴッホの勝利は、中山競馬場に対する適性以上に、力の要る馬場に拠るところが大きい。他馬が馬場にスタミナを奪われて手応えがなくなる中、この馬だけは絶好の手応えで4コーナーを回り、あとは後続を離す一方であった。こういう首の高い馬は、手脚に力を入れて走るため、道悪・力の要る馬場に滅法強い。サンデーサイレンス産駒のマツリダゴッホは一見顕著に映り、パワーを感じさせないのだが、この馬の走法が今回の馬場にピッタリと一致したということだろう。また、ジャパンカップをスキップした効果もあり、体調も最高の状態にあった。

2着に粘りこんだダイワスカーレットは本当に良く走っている。スタートから絡まれて、道中は少しエキサイトして走っていたように映った。なんとか折り合ってはいたものの、これまでの自分の型でレースをさせてもらえなかった中での連対確保だけに、その価値は高い。展開に恵まれた面は確かにあるが、それ以上にこの馬の強さと勢いを見せつけた走りであった。牝馬だけに、来年も同じテンションの走りを期待するのは難しいかもしれないが、末恐ろしい牝馬であることは間違いない。

これが引退レースとなったダイワメジャーも最後まで伸びている。これがラストランとなるのがもったいないほどの、力強いレースであった。距離不安があっただけに、マイル+800mという競馬をデムーロ騎手は意識していたのだろう。また、少しでもスタミナを温存するために、ダイワメジャーのような大型馬を手綱一本でコントロールしながら、内埒ギリギリを通るコース取りも見事であった。

惜しいレースだったのが4着に入ったロックドゥカンブである。キネーン騎手が他の有力馬を意識したのか、それとも馬自身が前に行けなかったのか、前半から積極的に攻めることなく、好位を確保することが出来なかった。前走の敗因を踏まえると、もう少し無理をしてでもポジションを取りにいっても良かったのではないかと思う。このあたりは、たとえ世界的ジョッキーとはいえ、ポンと来て乗り慣れていないキネーン騎手と、勝った蛯名騎手との間には大きな差があったように感じた。

1番人気に推されたメイショウサムソンは、4コーナー手前の時点で手応えが全く残っていなかった。スタートしてからの行きっぷりも悪く、武豊騎手がおっつける始末で、道中もずっと推進意欲のない走りに終始してしまった。ここまで惨敗してしまうと、走られるだけの体調になかったことは明らかである。凱旋門賞を目指して放牧に出さずに、厩舎で夏を越したツケがここに来て出てしまったということだろう。

ポップロックは4コーナー手前までは抜群の手応えに見えたが、追ってから全く伸びなかった。年齢的にピークを過ぎていたのか、それともジャパンカップが意外と厳しいレースで反動があったのか分からないが、いずれにせよ本来の体調にはなかった。

ウオッカは前走よりも積極的な競馬を心掛けたが、結局伸びきれずに惨敗した。秋華賞とジャパンカップ、そして今回の走りを見る限り、敗因は乗り方ではなく、ウオッカ自身の体調にあることは明らかである。ダービーを勝った反動はそう簡単には抜けない。春までゆっくり休養して、また強いウオッカとしてターフに戻ってきて欲しい。

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強運、強運、また強運

Asahifs07 by M-style
朝日杯フューチュリティS2007観戦記
ゴスホークケンがポンと1頭だけ飛び出し、そのままハナを奪う形であっさりと隊列は決した。前半800mが46秒3、後半800mが47秒2だから、決してスローではないが、それでも毎年ハイペースで流れる朝日杯フューチュリティSにしては遅いと言ってよいだろう。それは道中の馬群の密集度合いにも表れていて、スピードに溢れる馬が多いこのメンバーにとっては明らかにスローであった。さらに5回中山の最初は内が止まらないという特性もあり、外を回らされた馬と後ろから行った馬にとっては極めて厳しいレースとなった。

ゴスホークケンの最大の勝因はマイペースに持ち込めたことに尽きる。1番枠からの好スタートで、道中は誰も競りかけてこないという、まるで勝ってくださいといわんばかりの楽な競馬であった。大型馬だけに、ゴチャつかない展開になったのも良かった。それでも、直線に向いてから2番手以降を突き放したように、単調なスピードだけではなく、パワーとスタミナをも感じさせる外国産馬である。前走の東京スポーツ杯は中間の乗り込みが少なかったが、今回はポリトラックコースでしっかり追えたように、仕上がりも全く違っていた。今回は逃げる形になったが、今後色々なパターンの競馬が出来るようになれば、かなりの活躍が期待できるだろう。また、テン乗りの勝浦騎手の好スタートから躊躇なく先手を奪った一瞬の判断が光った。

2着に食い込んだレッツゴーキリシマは、好枠とスローの展開を幸騎手が見事に生かした。道中も全くスタミナのロスのない形で進み、直線に追い出されてからも良く伸びている。これ以上の距離延長はマイナスだろうが、マイルまでなら持ち前の渋太さを発揮できるだろう。マルゼンスキーの母シルから流れる血が、ここで実を結んだというのも血統の奥深さを感じざるを得ない。

キャプテントゥーレにとっては願ってもない流れになったにもかかわらず、直線はあっさり突き放されてしまった。パドックで入れ込んでいたように、初めての長距離輸送が若干影響したのかもしれない。それにしても、川田騎手の直線での追い出しは無駄がありすぎる。追えるという印象をアピールしたいのは分かるが、あそこは内から伸びてきたレッツゴーキリシマに併せていく冷静な判断をしていれば2着は確保できたのではないだろうか。

最終的に1番人気に推されたスズジュピターは何とも中途半端な競馬で終わった。切れる脚のない同馬にとっては位置取りが少し後ろ過ぎたため、直線でバテてはいないが前との差を詰めることも出来なかった。テン乗りということもあったのだろうが、自ら動ける馬でもあるので、最後まで何もしないで終わったのはペースが読めていないと言われても仕方ないだろう。

外枠から最も苦しい競馬を強いられたのがアポロドルチェ。これだけ詰まった馬群の外を回れば、どれだけ強い馬でもバテてしまう。ガッチリとした短距離馬だけに、余計に距離ロスが最後に響いてしまった。後ろから一気に伸びる馬ではない以上、強引な競馬をしなければならなかったのだが、それにしても強引すぎる競馬であった。力負けではないので、次回以降の巻き返しに期待したい。

サブジェクトは大外の不利を克服すべく、内に切れ込む作戦を取ったが、この展開ではなす術がなかった。直線で外に出してからも前が壁になり、ほとんど追えず何も出来なかった。パドックでは堂々と歩いて状態も良かっただけに残念な結果である。欲を言えば、直線は内を突くべきであった。実際に外が詰まり、内が開いていたのだから。ヤマニンキングリーもこのペースでは手も足も出なかった。完成するのはまだ先という感じを受けるが、血統的背景のある馬だけに将来に期待したい。

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大逆転

Hansinjf07_2好発の武豊レジネッタが先制攻撃を仕掛ける形で、マイネブリッツがハナに立ち、途中からエイシンパンサーが先頭に踊り出たレースは、前半46秒2、後半47秒6という前傾ペース。新阪神マイルコースは3コーナーから4コーナーがゆったりと流れることが多いが、今回はジョッキーたちがそのことを多分に意識しすぎた結果、まさかのハイペースとなった。外枠を引いたジョッキーたちが、スローに流れることを嫌い、前々へと位置しようと積極的に動いたことの影響も大きい。そのため、早熟のスピード馬たちが直線の坂で力尽き、後発の中距離馬が逆転した。

勝ったトールポピーは、中団後ろからレースの流れに乗り、最後はきっちりと全馬を差し切った。追い切りでも首を上げたりする仕草を見せていたように、乗り難しいところのある馬だが、道中が息をつくところのない流れになったおかげで、かえって悪い部分を出すことがなかった。他馬に比べ、スタミナでは優位に立つだけに、今回のような底力を試される厳しい流れはまさにピッタリであった。

池添騎手は差し馬に乗せるとさすがに巧い。道中で慌てることなくトールポピーを流れに乗せ、他馬が動き始めた4角でも仕掛けのタイミングを遅らせて、直線に向いてから落ち着いて追い出していた。スイープトウショウから教えてもらった、差し馬に乗って我慢することの大切さを見事に実践していた。

2着に突っ込んできたレーヴダムールは展開の利を得たことは否めないが、それでもキャリア1戦であったことを考慮すると好走中の好走である。スタートで立ち遅れたが、かえってハイペースに巻き込まれることがなかった。新馬戦もレベルの高いレースであったが、タイムを2秒以上縮めたように、マイラーとしての資質が非常に高い。中間も調教のピッチを上げてきていたように、前走からかなりの上積みもあったのだろう。パドックでも、とても2戦目とは思えない落ち着き、かつ柔らかい歩様でしっかりと歩いていた。

エイムアットビップは一瞬あわやと思わせるレース振りで、惜しい3着。レースの流れを見極め、行きたがる馬をなだめながらここまで持ってきた福永騎手の腕が光った。オディールを目標として、スタミナを最後まで温存したことが最後のひと伸びに繋がっていた。これぐらい落ち着いたレースが出来れば、今後も楽しめそうな馬である。

1番人気に推されたオディールは、安藤勝己騎手が正攻法の競馬をしたが、最後は力尽きて4着。予想外のハイペースとなり、マイル以上のスタミナを要求されるレースになったことが、この馬にとっては凶と出た。それでも最後まで踏ん張っており、この馬の能力も高い。

シャランジュは道中ピタリと折り合いが付き、最後の直線でもしっかりと伸びている。最後の直線の入り口でニシノガーランドに寄られたのは痛かったが、突き抜けるまでの力はなかった。レジネッタは、これだけの速いペースを前半から攻めての6着だけに、力があることを証明した。アロマキャンドルは3コーナーで外から内ラチにぶつけられてしまい手応えがなくなった。レースにならなかったのは確かだが、これだけのハイペースではまともに走っていても苦しかったか。ラルケットもスタートで出遅れた上に、道中もバタバタしてしまい、力を出し切れなかった。

photo by mighty

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フルムーン

Japancup07 by echizen

チョウサンが先頭に立って作り出した流れは、前半72秒8、後半71秒9というイーブンペースよりやや遅めの、特に中盤が緩んだスローペース。ラスト3ハロンの勝負になったことにより、中団より前に位置できなかった馬にとっては極めて厳しい展開となってしまった。

勝ったアドマイヤムーンは、最後は詰め寄られたものの、ほぼ完勝と言ってよい。直線の坂を駆け上がってから一気に伸びたその脚力は、ドバイデューティーフリーを思い出させる強烈さであった。距離不安が囁かれていたが、今年に入って胴部が拳1個分ほど伸びていたように、決して2000mまでの馬ではなかった。力の要る馬場であったことに加え、天皇賞秋を叩かれて体調も万全で臨んできていたことも勝因のひとつであった。

岩田康誠騎手はアドマイヤムーンの力を出し切る完璧な騎乗であった。折り合いを欠くことを恐れることなく、スタートから強気で好位を取りに行き、1コーナーでは少しゴチャついてしまったが、それ以降は最高の位置取りでレースを進めることが出来た。直線で前が開いてもギリギリまで仕掛けを待ち、坂を登り切ってから追い出したタイミングも見事。これが東京コース初重賞とは思えない、まさに府中2400mのお手本のような乗り方であった。

2着に敗れはしたものの、ポップロックも最後の最後まで伸びていた。この秋に入って、末脚の切れ味も増してきている。府中コースも合っているし、前走から距離が延長されたことによって、レースの流れにもスムーズに乗ることが出来た。また、この馬も内枠を利して、強気に攻めたペリエ騎手の好騎乗が光る。惜しむらくは、最後の直線でわずかに前が壁になり、ワンテンポ追い出しが遅れたことだろう。エンジンの掛かりが遅い馬だけに、あそこさえスムーズに抜けていれば、もしかしたら勝利に手が届いていたかもしれない。

メイショウサムソンは明らかに外を回しすぎた。せっかく1~2コーナーを内ラチ沿いで進めたにもかかわらず、向う正面で外に出してしまったのはいただけない。これだけスローな展開であれば、4コーナーで大外を回したことによるロスは計り知れない。前が壁になるリスクはあったとしても、アドマイヤムーンが通ってきた進路をトレースしてくるのが勝つための定石であろう。安全策で外を回したというよりも、安易に外を回したという感が強い。当日、そのような乗り方をして何度も勝っていただけに、武豊騎手自身、少し傲慢になっていた部分もあったのだろう。

とはいえ、メイショウサムソンが思うほどに伸びなかったのも事実である。天皇賞に比べ、わずかに緩く仕上げた馬体に映った。秋3戦ということを考えて、中間の乗り込みも少なかったように、わずかに手加減して調整していたことが裏目に出た。いつになく馬場に入ってから入れ込んでいたし、スタートしてからの推進意欲もなかった。それでいて、外を回って3着に食い込んできているだけに、やはりこの馬は強い。まともに仕上げて来れば、有馬記念はまずこの馬のものだろう。

ウオッカはまだ本調子になかったのだろう。四位騎手はそれを考慮して位置取りを下げて乗っていたが、結果的には裏目に出てしまった。4コーナーの回り方は見事であったが、最後、メイショウサムソンに詰め寄ったところで力尽きてしまった。しかし、もしこの馬がダービー時の体調にあれば突き抜けていたかもしれない、と思わせるだけの迫力は見せてくれた。今年はゆっくりと休養させて、来年の活躍を楽しみに待ちたい。

京都大賞典とほぼ同タイムで同じ上がりにもかかわらず、インティライミが弾けなかったのは馬場の違いと馬体が少し重かったからであろう。今回のジャパンカップの馬場は野芝の成長も止まり、やや力の要る馬場になっていた。このメンバーに入ると華奢に見える馬だけに、もう少し軽い馬場で戦いたかったというのが本音だろう。また、京都大賞典から間隔が開いたことにより、プラス4kgと馬体が増えてしまったことが誤算であった。ギリギリに絞り込んでこその馬であり、調教はこなしていたものの、わずかに仕上がりが甘かったか。

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ヴァーミリアンの恩返し

Jcdirt07 photo by echizen

スタート後の100mを除いた前半1000mが57秒7、後半が61秒9という、超ハイペースでレースは流れた。これだけのハイペースになってしまうと、逃げ・先行馬に勝ち目はない。差し馬同士の決着となった中でも、最後まで末脚を爆発させたヴァーミリアンが、レコードタイムで圧勝した。

ヴァーミリアンはスタートも良く、道中はレースの流れに乗り、最後の直線は先に抜けたフィールドルージュ1頭に相手を絞って追い出された。ペースが速くなったことにより、この馬の強さが浮き彫りになった感もあり、見た目以上の楽勝であった。芝の重賞レースを勝っているように、このメンバーではスピードが一枚も二枚も抜けている。昨年の秋から馬が良くなっており、ドバイに行ったことで馬が完全に変わった。また、ドバイ遠征後に無理をさせなかったことが、この馬の成長をさらに促したのだろう。スピード、スタミナ、パワー、どの面から見てもまさにダートの鬼である。

武豊騎手は昨年の惜しい2着の借りを見事に返した。前半で前がかなりやり合っていたが、全く気にすることなく、ヴァーミリアンのリズムでレースを進めていた。そして、最後の直線に向いた際、周りの馬たちとの手応えを図りながら、1テンポ追い出しを我慢させた辺りの冷静さはさすがである。あのまま一気に行ってもおそらく勝っていただろうが、あそこで1テンポ遅らせたことでヴァーミリアンの勝利を確定させたと言ってよい。

惜しくも2着に敗れたフィールドルージュは、あらん限りの力を出し切っての敗北であった。前走は前が止まらない馬場で敗れたが、今回は展開が見事にハマった。それにしても、横山典弘騎手の騎乗は見事である。一昨年のシーキングザダイヤもそうであったが、わずかな距離ロスもなく、追い出しのタイミングも完璧と、本人も非の打ち所のないレースだったに違いない。力に劣る馬で勝つためにはこう乗るというお手本のような乗り方であった。それにしても、今年も勝った馬が強すぎた。

サンライズバッカスは最後伸びてきたものの、3着を確保するのが精一杯であった。この馬にとっては距離が長いことは確かで、それを補うために最後の直線に賭けた以上、この結果は上出来と考えてよい。マイル前後のダート戦であれば、まだまだ活躍が見込める。

メイショウトウコンは絶好調の出来にあったが、この馬にとってはペースが速すぎた。ダート馬としては珍しく、スローペースの瞬発力勝負に強いタイプだけに、ハイペースになし崩し的に脚を使わされてしまった。前がバテたので4着に追い込んでこられたが、もう少しゆったりと行けるレースの方がこの馬には合っている。

ワイルドワンダーは向う正面で引っ掛かってしまったのが痛かった。豊富なスタミナがある馬ではないため、あの時点で脚を使ってしまっては勝負にはならない。同厩舎のドラゴンファイアーは、レースの流れに乗っていたものの、追い出されると全く伸びることがなかった。馬体を見てもまだ幼いように、これから先に大きな期待をかけるべき馬である。

ブルーコンコルドは前半で飛ばしすぎたため、最後は大きく失速してしまった。不利を受けたくないという幸騎手の判断もあったのだろうが、どう見てもあのペースに付いていくのは無謀としか言えない。同じことはフリーオーソにも言える。

ポリトラックの馬場を勝って臨んできたスチューデントカウンシルは、実力を発揮しての2着だろう。アメリカの一流馬でも、日本の砂など、あらゆる条件を克服して好走することはやはり難しいのだろうか。来年度からは阪神1800mで行われるJCダートだが、どのようなメンバーが揃い、どのようなレースが行われるか今から楽しみである。

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1分後の世界

Milecs07 by echizen
マイルCS2007-観戦記-
まるで昨年のデジャブを見ているようなレースであった。勝ち時計は1分32秒7、前半の半マイルが46秒4、後半が46秒3であるから、昨年の46秒0、46秒7よりもわずかに緩い流れであった。昨年が雨だったことも考えると、ダイワメジャーにとっては、今年の方が楽な勝利だったのではないだろうか。

勝ったダイワメジャーはこれでマイルCS2連覇、安田記念を挟んでマイルG1を3連覇となり、あのニホンピロウイナー、タイキシャトルと肩を並べたことになる。一昨年がハナ差の2着であるから、マイラーとしての資質は3頭よりも上と言っても過言ではないだろう。馬体が併さってから強い馬なので、圧倒的な速さや強さを感じさせる馬ではないが、今回も着差以上の速さと強さであった。衰えや消耗を危惧する小賢しい論者たち(私を含む)をあざ笑うかのような痛快な勝利であった。強烈な脚を使わないこういうタイプの馬は、肉体的にも精神的にも案外使い減りしないことを肝に銘じておきたい。

安藤勝己騎手がもはや別次元のジョッキーであることに異論はないだろう。スタートしてから「行かなければ俺が行くよ」と先制パンチを浴びせ、フサイチリシャールが行くや、スッと下げた時点で安藤勝己騎手にはゴール板までの1分後の世界が見えていたに違いない。4コーナーを抜群の手応えで回るや、内の馬たちに手応えがないのを確認し、後ろから伸びてくるのは外からとまるで知っているように、ダイワメジャーを馬場の外へと促した。そのゾーンにまんまとハマったスーパーホーネットと馬体を併せると、ダイワメジャーが最後にもうひと伸びしたところがゴール前であった。

安藤勝己騎手は、今年これで6つめのG1勝利となる。連対率も4割を超えている。笠松では「カラスの鳴かない日はあっても、アンカツの勝たない日はない」と言われてきたが、もはやそれは中央競馬でも当てはまる。安藤勝己騎手が今年大きく変わった点は、馬の抑え方(御し方)だろう。以前よりもさらに手綱を短く持って、折り合いに難のありそうな馬でもガッチリと抑え込んでいる。簡単に見えることだが、日本の騎手でここまで馬を押さえ込める人間はいない。阪神大賞典のドリームパスポートでは裏目に出てしまったが、今回のマイルCSの1コーナーでの抑え方を見ても、実を結んできている。

2着に敗れたが、スーパーホーネットは最後まで力を出し切った。距離が短かったスワンSをなんとか追い込んだものの、やはり適距離はマイルなのであろう。少し掛かり気味ながらも道中はベストのポジションをキープし、抜群の手応えで直線を向いた。今回は負けた相手が悪かったが、この馬自身も4歳の秋を迎えて大きく成長している。追い出されてから頭が高くなる走り方が矯正されれば、さらに強くなるだろう。藤岡騎手もこの大舞台でパーフェクトに乗っていた。

スズカフェニックスは後方から良く伸びてきたが、最後は苦しがってササってしまった。まともに追えていれば、連対もあったかもしれない。やはり、調整の狂いから立て直してきたものの、まだ絶好調時の体調には戻っていないのだろう。

アグネスアークは先行集団の後ろのポケットを進み、絶好の手応えで直線を向いた。あとはスーパーホーネットと一緒に伸びるだけという感じであったが、意外にも伸びを欠いてしまった。夏から使い詰めで来た影響があったのか、前走の天皇賞秋で挟まれても激走した反動があったのか、それとも直線に向いた時点で脚元に異常を発生していたのか。敗因は分からないが、負けたことだけは事実である。藤田騎手が下馬したシーンを見て、朝日杯3歳Sで骨折したタガノテイオーを思い出してしまった。

カンパニーは最後の直線で良く伸びたものの、5着を確保するのが精一杯であった。前走の天皇賞秋に比べると、前進意欲がないように映った。もう少し間隔を開けて使った方がいい馬なのかもしれない。キングストレイルは最後まで良く走っている。G1レベルのマイル戦は、この馬にとって少し荷が重かった。

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新女王誕生

Elizabeth07 by@84Photo Gallery
エリザベス女王杯2007-観戦記-
スタートした瞬間に勝負は決まったと言ってよい。ペースの鍵を握ると思われた柴田善臣アサヒライジングが出負けしたことにより、安藤勝己ダイワスカーレットがいとも簡単に主導権を握り、作り出した前半のペースは60秒6。まるで昨年と前後半が逆転したかのような後傾ペースで、こうなってしまうと他馬の出る幕はない。

勝ったダイワスカーレットは、文句の付け所がないほどに強かった。前半はパワーで主導権を取り、後半はスピードの持続力で決着を付ける。今までの牝馬ではお目にかかれなかった強かさを持っている。心配された体調も、下降線を辿っていたのかどうかは分からないが、力を十分に発揮できる状態にあった。ダイワスカーレットのポテンシャルの高さと、マツクニ流の細心の仕上げが最高の形で紡ぎあった結果といえる。たとえウオッカが出走してきたとしても、このペースではダイワスカーレットには追い付けなかったのではないか。昨年と一昨年の女王を従えてのフィニッシュは、まさに新女王の誕生に相応しいものであった。

また、安藤勝己騎手のサポートなしには、新女王の誕生もなかっただろう。本人はあっさり勝っているような口調だが、仕掛けのタイミングひとつ間違えば危うい中、常にダイワスカーレットの脚を余さないレースを続けているのには恐れ入る。4コーナーでほんの少し左に傾きながら回ることで、後ろから並んで来る馬たちをスイープする技術も見事である。円熟期の岡部幸雄騎手を思わせる、凄みすら感じさせる手綱捌きである。このジョッキーの手綱捌きを、私たちはあと何年見ることができるだろうか。

2着に敗れたフサイチパンドラは、不向きの展開の中、最後まであきらめずに走っていた。絞れにくい時期にもかかわらず、馬体重が絞れてきたことが好走の理由だろう。札幌記念後にエルムSを使ったことが、ここで吉と出た。ルメール騎手もラスト800m時点から自ら動く好判断であったが、時既に遅し。欲を言うと、この馬の良さを生かすのであれば、4コーナーで一呼吸置かず一気に仕掛けた方が良かったか。

これが引退レースとなったスイープトウショウは、大健闘の3着と気を吐いた。遅いペースにもなんとか折り合い、最後の直線では最内を突き、一瞬あわやと思わせる末脚を見せた。これで4年間に渡る長き戦いを終えることになったが、最後まで一級の能力を見せ続けた名牝であった。激戦を重ねた牝馬は良い仔を出しにくいと言われるが、それでもその仔たちには大きな期待をしたいと思う。

7着と惨敗してしまったアサヒライジングは、あまりにも不甲斐なかった。先手を取られて動けなかったのは分かるが、最後までそのまま回ってきては勝つ可能性はゼロである。レースを作れる立場にありながら鈴を付けに行かなかった騎手の罪は重い。この馬自身、昨年の時計ですら走れていないわけで、今回のレース全体の時計と上がり時計を見て、どうするべきだったか分からなければ騎手失格であろう。と少し個人的な感情も入ってしまったが、この馬の勝ち負けは別として、動いていればダイワスカーレットの真の強さが見られたかもしれないと思うと、残念でならない。

ウオッカの出走取り消しには驚かされたが、と同時に、やはりそうなのかという思いもあった。今回は右寛跛行であったが、夏には蹄球炎で凱旋門賞を回避したり、どうもまだ本調子に戻りきっていない部分があるのではないか。極限の力のぶつかり合いになるダービーを制したことが、ウオッカの肉体面、そして内面にどれだけの影響を与えたか誰にも分からない。様子をみて、ゆっくりと時間を取って休ませてもいいのではないか。たとえばあのスペシャルウイークでさえ秋は勝てず、有馬記念をスキップしたことにより翌年には復活できたのだから。

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人馬一体

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前日に降り続いた雨がウソのような秋晴れの下、馬場が水分をわずかに含んだ、サラブレッドにとっては最も走りやすい最高の馬場でレースは行われた。前半1000mが59秒6という、G1クラスにしては遅いペースでレースは流れ、中団以降に位置した馬にとっては差し込みにくい展開となった。

勝ったメイショウサムソンは、スタートで勝利の半分を手に入れた。出たなりのスピードで4、5番手を確保し、内々の経済コースを進み、あとは直線に向いて追い出すだけという、とても初コンビとは思えない人馬一体となった楽勝であった。34秒台の脚がコンスタントに使えるメイショウサムソンにとって、馬場が回復したことは大きくプラスに働いた。心配されたインフルエンザの影響も皆無で、馬体重の増減もなかったように、休み明けでもキッチリと仕上がっていた。夏は放牧に出さず、厩舎で仕上げてきた甲斐もあったのだろう。これだけ走るのであれば、ブッツケで凱旋門賞に行っていても良いレースになったのでは、と思うのは私だけだろうか。

武豊騎手の手綱捌きも素晴らしい。難しいことを簡単に見せてしまうのが武豊騎手の凄さだが、スタートのタイミングの良さ、馬の行く気を削がない道中のなだめ方、馬に一切の負担を掛けない最後の直線での追い出しのバランスなど、挙げればキリがないほどの高度な技術を、ごく当たり前にやってのけて見せてしまう。さすが日本一のジョッキーである。

2番人気に推されたアドマイヤムーンは、直線の不利もあり、伸びきれず6着と惨敗した。最終追い切りでもこの馬本来の動きになかったように、肉体的にも精神的にも走る準備が整っていなかった。宝塚記念の後、放牧に出し、馬体を一旦緩めてからの仕上げ直しであり、勝ったメイショウサムソンと比べると調整不足であったことは否めない。春シーズンを最後まで戦い抜いた馬だけに、本調子に戻るまでにはもう少し時間が掛かるかもしれない。

3強の1角を形成していたダイワメジャーは道中の行きっぷりも悪く、直線での不利も重なり、9着と大敗した。昨年あれだけの走りを見せた馬だけに、精神面でのピークをすでに越え始めているのだろう。年齢を重ねてズブくなってきているということもあるのだろうが、ダイワメジャーの真骨頂である前進意欲が全く感じられなかった。この秋は、たとえ好走しても勝ち切れないレースが続くはずである。

アグネスアークは小柄な馬体ながらも、最後の直線で不利を克服し、最後の最後まで良く伸びて2着を確保した。不利がなければもっと際どい勝負になっていたはずで、前走の毎日王冠で外を回しすぎた失敗もあっただけに、吉田隼人騎手にとっては悔やみきれないレースとなっただろう。馬体からは強さを全く感じさせないタイプだが、これだけのレースを見せられては誰しもがその強さを認めざるを得ないだろう。体はギリギリだが、次回マイルCSに回ってくれば面白い存在となる。

あわや2着のカンパニーは、コスモバルクのふらつきを上手く交わし、最後まで力を出し切った。関屋記念の勢いがそのまま弾けたように、この馬自身、休み明けの方が走るタイプなのだろう。福永騎手の東京競馬場を心得た乗り方も、見事と言わざるを得ない。

惜しかったのはポップロック。前走がスローだったせいもあってか、前半から行き脚がつかず、後方から最速の上がりで突っ込んできたが届かなかった。本来は道中をゆったり行って、終いが伸びる馬だけに、距離が延びる次走のジャパンカップは大きな期待が出来るはず。毎日王冠をレコードで勝ったチョウサンは気の悪さを見せたか、終始レースの流れに乗ることができなかった。

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誕生

Kikka07 by echizen
菊花賞2007-観戦記-
大方の予想どおり、横山典弘ホクトスルタンがハナを切り、60秒7→63秒6→60秒8という「速緩速」の巧妙なペースを作り出した。京都3000mのレースにおいて、前半1000mを60秒台前後のペースでまとめると、後ろから来る馬は差せない展開となる。そのため、道中の位置取りが勝敗を大きく左右したレースとなった。

勝ったアサクサキングスは、道中の流れに乗り、4コーナーでの先頭に立つ勢いでの完勝であった。ダービー2着馬が、最大のトライアルレースで2着してきたのだから、結果的には順当勝ちと言ってよいだろう。厳しい展開となった前走に比べ、本番ではこの馬の脚質がバッチリと嵌ったとも言える。

それにしても、四位騎手のこの馬に対する鞍ハマリは素晴らしい。スタートしてから4コーナーまで、馬との呼吸がピタリと合い、上下左右のブレもなく、微塵のロスもなかった。前半が速いペースを読みきって、4コーナー手前から早めに動いたのもファインプレーであった。そして、勝利ジョッキーインタビューでの受け答えも大きく変わったなと思った。私のような者が言うのもおこがましいが、人間的に大きく成長した。元々、技術的には抜けている存在だけに、安心して見ていられるジョッキーがまたひとり誕生した。

惜しくも勝利を逃したアルナスラインであったが、この馬の変わり身には驚かされた。早め早めに動いたのは和田騎手の好判断であったが、前走で古馬に混じってヨーイドンの瞬発力勝負のレースをした馬が、今度は上がり3ハロンが36秒2も掛かる持久戦でも好走したのだから、その価値は極めて高い。瞬発力に長けた馬が多いアドマイヤベガ産駒だが、馬格、クラシックに強い母系からは、こういうガチンコ勝負でこその馬なのかもしれない。

4連勝で1番人気に推されたロックドゥカンブにとっては、道中の位置取りが厳しかった。あのペースでロックドゥカンブの位置からでは、ディープインパクトぐらいの末脚を持っていないと届かない。さらにバテてきた馬に進路を塞がれ、4コーナーで開くはずの内もなかなか開かず、柴山騎手やロックドゥカンブ陣営にとってはまさに悪夢のような3分間だったに違いない。馬体が併わさって伸びる馬だけに、直線でポッカリと開いた空間に放り出されてしまったこともダメ押しとなった。ただ、いくらアンラッキーだったとはいえ、あそこから差し切るだけの強さがロックドゥカンブにはまだ付き切っていなかったことも事実である。

エイシンダードマンは菊花賞に強いダンスインザダークの血が騒いだか。4コーナー手前から一気に動いて、ドリームジャーニーと馬体を併わせながら良く伸びている。ドリームジャーニーも、あの位置からの競馬をせざるを得ない馬だけに、この距離、展開ではこれが精一杯の結果である。

絶妙なペースを作りだしたホクトスルタンは力を出し切っての6着。今後の長距離路線では、横山典弘騎手とのコンビには注目したい。先行有利な展開にもかかわらず大きく崩れたヴィクトリーとサンツェッペリンは、距離もしくは精神面に明らかな敗因があったということだろう。

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大いなる錯覚

Syukasyo07 by echizen
秋華賞2007-観戦記-
好メンバーが揃い、秋華賞とは思えないほどの盛り上がりを見せたが、終わってみれば、秋華賞とは思えない上がり33秒台の決着でレースは幕を閉じた。前半59秒2、後半59秒9という数字だけを見れば、今までの秋華賞にもあったごく普通の平均ペースだが、レースを前半(テン3ハロン)、中盤、後半(ラスト3ハロン)の3つに分けてみると、今年の秋華賞の特異性が浮かび上がってくる。

今年
12.3 - 10.4 - 11.5 - 12.2 - 12.8 -13.6 -12.4 -11.3 - 11.1 - 11.5

過去5年(新しい年が上)
12.0 - 10.6 - 11.9 - 12.0 - 11.9 - 12.2 - 12.0 - 12.0 - 11.6 - 12.0
12.4 - 11.0 - 12.2 - 12.2 - 12.3 - 12.3 - 11.8 - 11.6 - 11.3 - 12.1
12.4 - 11.0 - 12.1 -12.4- 12.0 - 12.0 - 11.6 - 11.7 - 11.6 - 11.6
12.5 - 11.0 - 11.9 - 12.2 - 12.2 - 12.1 - 11.7 - 11.6 - 11.9 - 12.0
12.3 - 10.8 - 12.0 - 11.9 - 12.0 - 12.3 - 11.9 - 11.5 - 11.6 - 11.8

中盤の4ハロン(800m)において、最も遅かった年のラップを太字にしてみると、今年の秋華賞が恐ろしいほどの中緩みであることが分かる。まるで長距離レースのような、極端な中緩みである。これだけ道中が緩んでしまえば、内回りコースの直線の短さからして、後ろから行った馬はまず届かない。まさに上がり3ハロンのレースであった。

しかし、ここでひとつの疑問が生じる。なぜこれだけの中緩みのペースにもかかわらず、最後の最後まで縦長の隊列が変わることなく流れ続けたのだろうか?ダイワスカーレットの安藤勝己騎手以外のほとんどの騎手が、あたかもハイペースのレースであるかのように、自ら動くことなく溜め殺してしまったのは何故だろうか?

その答えは、スタートしてから2ハロン目のラップにある。過去5年と比較してみると、今年のラップが最も速い(赤字)。なんとハイペースで流れた昨年の秋華賞の10秒6よりも速いのだ。

ジョッキーはスタートしてからの2ハロン目のラップの速さで大まかなペース判断するため、この時点での体感速度で、全ての騎手が「ペースが速い」と錯覚してしまったのである。途中から気付いても動けなかった騎手もいるだろうが、おそらくほとんどのジョッキーたちは、これほどまでに途中が緩んでいたことに気付いていなかっただろう。

勝ったダイワスカーレットは、またもや回ってきただけの楽なレースであった。ペースが速くなろうとも胸を貸せるだけの力を持った馬だけに、ある意味、不完全燃焼といってもよいだろう。ペースが上がっても止まらないダイワスカーレットを見てみたかった気もする。夏を越えて、それぐらい強い馬に成長した。

また、安藤勝己騎手の判断力の良さも光った。遅ければ行く、速ければ控えるという当たり前だが難しいことを、どのレースでも瞬時に的確に判断しているのは見えないファインプレーである。次走はエリザベス女王杯になるだろうが、2200mの距離も、直線の長い外回りコースも問題ないだろう。後ろからモノ凄い脚で一気に来られる以外、このコンビに負ける要素はない。

3強の一角を崩したレインダンスは、夏の間にもレースを使って上がりの競馬に慣れていたことが好結果につながった。道中の折り合いもピタリと付いて、持ち前の瞬発力を如何なく発揮した。これからもこういう上がりの競馬になれば、おのずと台頭してくる存在となるだろう。

休み明けながらも1番人気に推されたウオッカは、外々を回るロスがありながらも、最後は一瞬だけ伸びかけて地力の高さを証明した。外を回ったことは枠順からも仕方なかったとしても、四位騎手が取った位置取りは明らかに消極的すぎた。上記のようにペース判断を読み違えたのと、ウオッカのリズムを大事に乗ろうと意識した結果だろうが、あまりにも淡白に映った。しかし、あそこまで来てレインダンスを交わせなかったあたりは、ウオッカ自身もダービーから尾を引いている疲れが抜け切っていないのだろう。休み明けをひと叩きして次走こそはと考えるのは早計だろう。

ベッラレイアは最後方から32秒9の末脚で迫ったが、時すでに遅し。この上がりであの位置からでは到底届かない。武豊騎手も4コーナー時点で負けを覚悟したに違いない。今回の武豊騎手の騎乗については賛否両論あると思うが、あくまでも勝ちに行くというコンセプトとしては間違ってはいない。折り合いを欠きたくないという気持ちもあって、一か八かに賭けたところが八に出てしまったというだけのことである。一か八かに賭けなければならないぐらいに、ダイワスカーレットとの力量の差があったということでもある。前に行って主導権を握れる馬とそうでない馬との明暗が、大レースに行ってはっきりと出てしまった。

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天 地 人

Sprinters07 by gradeone
スプリンターズS2007-観戦記-
土曜日から降り続いた雨の影響により、不良馬場でレースは行われた。夏の間にシッカリと根を張った野芝100%の馬場だけに、元々、前に行った馬が止まりにくいだけでなく、さらに道悪になったことによって、後ろから来る馬も脚が使えないという典型的な前残りのスプリンターズSになった。平成12年のダイタクヤマト、平成16年のカルストンライトオ、平成18年のテイクオーバーターゲットの勝利を再現したような、アストンマーチャンの逃げ切りであった。

アストンマーチャンの勝利には、天と地と人の運命的なものを感じざるを得ない。雨が降ったから、逃げるために中舘英二騎手に乗り替わったのではなく、逃げを得意とする中舘英二騎手に乗り替わり、当日に雨が降り、そして不良馬場をまんまと逃げ切ったのだ。まるでアストンマーチャンが勝つためのシナリオが出来上がっていたかのように、彼女は一直線にゴールへ導かれた。もちろん、アストンマーチャン自身のスプリント能力が高かったこと、調教量を増やしたことで精神的な落ち着きを取り戻していたこと、不良馬場の中で53kgの斤量が有利に働いたこと等々も勝因の中のひとつではある。それにしても今年の3歳牝馬は強い。

中舘騎手はヒシアマゾンで勝ったエリザベス女王杯以来、13年振りのG1勝利となった。逃げといえば中舘、中舘といえば逃げとされるほどに、馬を逃がす技術をひたすらに磨き続けてきた騎手である。レースが始まる前から、名前で逃げることが出来るのは、この騎手をおいて他にはいない。今回のスプリンターズSも、技術で逃げたというよりも、「俺は中舘だ。逃げるのは俺だ」という気迫だけでハナを奪っていた。他の騎手も逃げるのは中舘騎手という暗黙のルールでもあるかのように、ハナを主張するジョッキーはひとりもいなかった。まさにこれまでの騎手人生の結晶と言っても過言ではない美しい逃げ切りであった。

2着に敗れたが、サンアディユも強いレースをしている。馬の気に任せ、揉まれることなくレースを進めた川田騎手も上手く乗ってはいたが、4コーナーで追い出されてからの反応が鈍かった。これだけ馬場が悪くなってしまうと、追ってから伸びる馬は少ないだろう。道中の位置取りが勝負を決めたレースではあるが、1番人気を背負って無理に逃げるわけにはいかない以上、同馬にとっては苦しい展開となってしまった。それでも最後は差を詰めているように、このメンバーでは力上位であることを改めて証明した。

アイルラヴァゲインは積極的に立ち回り、何とか3着を確保した。4コーナーでアストンマーチャンを捕まえにいった分、最後は後ろから差されてしまったが、勝ちに行ってのもので仕方ないだろう。ひとつだけ欲を言えば、もし勝ちに行くのならば、1番枠と人気を背負っていないことを最大限に活かして、スタートしてからの200mで勝ちに行く気を見せてほしかった。

キングストレイルはあわやと思わせる場面を作っての4着。これだけ差し込みにくい馬場を、外を回してあそこまで差してくるのだから、夏の休養を挟んでまさに本格化したとみてよい。若干短いと思われた距離も克服して、スピードの能力も十分にあることを証明した。この後、順調に行けば、マイルCSでも好走は可能だろう。

スズカフェニックスは、4コーナーですでに手応えがなくなってしまった。高松宮記念を勝っている以上、距離が短いということではないのだが、こういう馬場ではとにかくテンのダッシュ力のある馬でないと勝負にならない。また馬インフルエンザで調整が遅れた影響も少なからずあったはずである。スプリンターとしての資質は疑いようがないが、今回は不良馬場と体調不良の二重苦にやられた。

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漫画のようなガチンコ勝負

Takaraduka07 by@84Photo Gallery
宝塚記念2007-観戦記-
道悪で各ジョッキーが好位を取りに行こうとしたことに加え、前走で控えて失敗したローエングリンが大外枠に入ったことによって創り出された、前半1000mが57秒5という暴走ペースによって、前に行っている馬はほぼ全滅という、まさに展開(道中の位置取り)が勝負の明暗を分けたレースであった。最後の直線は、まるで熱血漫画のような、日本を代表する男同士のガチンコ勝負となった。

ガチンコ勝負に勝ったアドマイヤムーンは道悪馬場をモノともせず、最後までしっかりと伸び、メイショウサムソンをねじ伏せた。前走の香港クイーンECでは体調が優れなかったが、そこから2ヶ月で回復してきたように、今年に入っての充実は著しい。瞬発力勝負ではなく、これだけ上がりの掛かる底力勝負のレースを制したことも価値が高い。エンドスイープ産駒らしく、古馬になりさらに充実して、スピードの持続力が加わってきている。ドバイデューティーフリーを圧勝した力を日本でも見せ付けた形となった。このまま順調に行けば、秋にもまた大仕事をやってくれそうである。

岩田騎手の肝の据わった騎乗にも拍手を送りたい。道中の位置取り、仕掛けるタイミングなど、全てが勝つために完璧だった。レース前はなるべく前に行くように指示されていたはずだが、道中のペースを瞬時に判断し、アドマイヤムーンの力と自分を信じて後ろから行った見事な「決断」であった。また、直線でメイショウサムソンに馬体を併せないように追ったことも技ありであった。

メイショウサムソンは負けて強しといった内容であった。ハイペースになったことで、外枠も不利にならず、4コーナーまで終始抜群の手応えで走っていた。惜しむらくは仕掛けがワンテンポ早かったことと4コーナーのコース取りで、これらが勝ち馬との差につながった。少し強引ではあったが、切れる脚がないことを考えると仕方なく、石橋騎手としてはメイショウサムソンの力を出し切ったはず。それにしても、ノックアウト寸前で立ち上がろうとした、メイショウサムソンの最後の差し返しには心が震えた。

ポップロックは、前が総崩れした展開の利を得ての3着。メルボルンカップ(2着)でも重い馬場に対応できたように、この馬はどんな条件でも力を出し切る長所がある。上位2頭とは力の差はあったが、武豊騎手の展開を読み切った好騎乗のサポートも得て、見事に好走した。

3歳牝馬ながらも堂々の1番人気に推されたウオッカは、4コーナーで見せ場を作ったものの、追い出してから伸びず8着に敗れた。これまで体験したことのないペースや馬場、そして古馬(しかも牡馬の超一流どころ)との初対戦と、これだけ不利な要素があっての走りだけに、やはりこの馬は並みの牝馬ではない。体調もさほど優れなかったのだろう。ウオッカにとっては苦くも良い経験になったはずで、順調に行きさえすれば、今回の敗戦は必ずや秋の大仕事への糧となるだろう。

ダイワメジャーは、4コーナーでの不利があったが、追い出してからも全く伸びずに凡走してしまった。海外遠征→安田記念勝利から中2週というローテーションの中、さすがのダイワメジャーも疲れが噴出してしまった。昨年の秋から最高峰のレベルで鎬を削ってきたことにより、精神的にもそろそろ限界が見え始めているようだ。

カワカミプリンセスは、これだけの殺人ペースを前々で追走し、早めに先頭に立つという積極的な競馬をした。結果的には、もう少しゆっくりと追い出しても良かったはずだが、それでも6着と粘っており、体調も上向いてきていたのだろうが、この馬のスタミナと底力を再認識した。これからの古馬牝馬を引っ張っていく存在であることは間違いがない。

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百戦錬磨

Yasuda07 by M.H

押して先頭に立ったコンゴウリキシオーが平均的なラップを刻み、エイブルワンが引っ掛かってくるシーンも一瞬はあったが、全体的には少し遅めのペースでレースは流れた。とはいえ、最速の上がりでも34秒3であったように(勝ったダイワメジャーは34秒4)、緩急の少ないラップで、後続もなし崩し的に脚を使わされてしまい、差し馬にとっては厳しい展開となった。スピードの持続力とスタミナに優る2頭での決着となった。

勝ったダイワメジャーは内枠から先団を追走し、海外遠征帰りの疲れを微塵も見せない横綱相撲で、マイルのG1レースを連勝した。やはり、海外への輸送の技術やノウハウが蓄積されたことによって、以前よりもダメージを残すことなく海外へと挑戦できるようになったことは大きい。それにしても、ここ2年の惜敗をあざ笑うかのような楽勝で、コンゴウリキシオーに襲い掛かった最後の伸び脚は、まるでチーターのような鋭さであった。精神面での疲れさえ出なければ、宝塚記念でも十分期待できる。

安藤勝己騎手の全体を俯瞰したような落ち着いた騎乗も光った。圧巻は4コーナーからの追い出しで、コンゴウリキシオーを射程圏に入れながら、後続の馬群から抜け出て来る馬を確認し、ラスト200mで後ろからはもう来ないとみるや、最後はコンゴウリキシオー1頭にターゲットを切り替え、計ったように差し切った。ラストは下半身から全身を使った、ヨーロピアンスタイルのアクションでダイワメジャーを叱咤激励し、馬もそれに応えた。静から動へと一瞬にして移り変わる、まさに百戦錬磨の業を、この大舞台で見せ付けてしまうのだから恐れ入る。

コンゴウリキシオーは、ここに来て成長著しく、前走の走りがフロックでないことを証明した。バネがあって、跳びの大きなフットワークで、府中のコースを伸び伸びと走っていた。マイペースで逃げられたとはいえ、逃げ切りの難しい府中のマイル戦での好走だけにその価値は高い。勝ち馬とは着差以上の力差を感じたが、マイル適性は高く、強い逃げを打てるマイラーの久しぶりの登場である。

ジョリーダンスは、馬の気に逆らうことなく先行させた秋山騎手の好判断によって好走した。前走のヴィクトリアマイルでも1頭だけ違う脚を使って伸びてきており、今回も牡馬を相手にその充実振りをいかんなく発揮した。その末脚の切れを見る限り、マイルまでの距離がベストか。

スズカフェニックスは、道中で引っ掛かる素振りを見せており、前走とはリズムの違うレースに少し戸惑っていた。結果的には位置取りも悪かったが、この馬自身も上がり34秒3と、ほとんど伸びていない。やはり、高松宮記念勝ち馬にとっては、様々な面で条件が異なる安田記念は鬼門である。また、軽い切れ味を特徴とするスズカフェニックスのような馬にとっては、安田記念のようにスピードの持続とスタミナを問われるレースは不向きであった。

それ以上に位置取りが後ろ過ぎたのは、香港から来たジョイフルウィナーである。マイル戦には若干のスタミナ不足を感じるのか、前半は後方に控えるいつものパターンであったが、今回はそれが裏目に出た形となった。後ろから行く馬が展開に左右されるのは、世界のどの競馬でも同じだが、昨年よりも体調も良かっただけに、リベンジを賭けてきた陣営は悔しいに違いない。

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価値観の転倒さえ

Derby07 by M.H
ダービー2007-観戦記-
64年ぶりとなる牝馬の優勝で、ウオッカが8470頭のサラブレッドの頂点に立った。スローの瞬発力勝負になったことにより、牝馬特有の切れ味が生きた形になったが、それにしても、チャンピオンディスタンス(2400m)を走り、ラスト3ハロン33秒ジャストの脚で上がられては、牡馬もとうてい太刀打ちできない。

パドックでは桜花賞当時よりも落ち着いていて、レース間隔が開いたことにより体調を戻していたのだろう。単に牡馬を負かしただけではなく、初の長距離輸送や前走からの800mの距離延長を乗り越えての完勝だけに、その価値は非常に高い。私を含め、価値観の転倒さえ感じた人は多かったのではないだろうか。究極の仕上げと極限の切れ味だっただけに、レース後の反動が心配されるところだが、今後もとにかく無事に行って欲しい。無事でさえあれば、さらなる伝説を創れる牝馬であることは間違いない。

ダービージョッキーとなった四位騎手は、道中は馬を落ち着かせることに専念し、4コーナーでは内に進路を取り、馬群が開いてから冷静に追い出していた。さすがに直線は夢中で追っていたが、全体的にはウオッカの走りを見事にサポートしていた。また、ダービー挑戦を決めた陣営の英断と冷静な判断には、最大級の賛辞を送りたい。何よりも、この時期の難しい牝馬を、本番に向けてピタリと照準を合わせて仕上げた角居調教師の技術には恐れ入る。

圧倒的1番人気に支持されたフサイチホウオーは、瞬発力勝負に屈して惨敗してしまった。安藤騎手は自ら動きたかったのだろうが、道中で引っ掛かった分、最後まで慎重に運んでしまったことが凶と出た。確かに入れ込んではいたが、首を激しく上下させる素振りは父ジャングルポケット譲りで、これが最大の敗因とはなりえない。もしかすると、連勝が途切れたことによる目に見えない疲れがあったのかも知れないが、詰まるところは、極端なスローの展開に全てを殺されてしまったということだろう。ダービーを勝つことは、かく難しい。

アサクサキングスは、メンバー中、最も展開の恩恵を受けた馬の1頭である。ヴィクトリーの出遅れという思いがけない展開となり、前半1000mが60秒5という、今の馬場を考えるとかなりのスローペースで逃げることができた。跳びの大きい同馬にとって、ゆったりとした府中コースを自分のリズムで走られたことも大きい。

アドマイヤオーラにとっては、スローの瞬発力勝負は願ってもない展開であった。それでもウオッカに逆に突き放されてしまったということは、競走馬としての資質が劣っていたと考えるべきであろう。岩田騎手はフサイチホウオーをマークして4コーナーで外を回したが、結果、それが裏目に出てしまい、直線では目標を失ってフラフラしていた。コース取り次第では2着は確保できただろう。まだまだ馬体や精神面に幼さが残る馬なので、夏を越しての成長に期待したい。

皐月賞馬ヴィクトリーは、スタートで出遅れ、さらに両脇から挟まれて万事休す。気性の難しい馬だけに、ちょっとしたことで全く走らなくなってしまうという弱点を露呈した形となった。この馬についても、夏を越して精神的に成長を遂げ、さらに強いヴィクトリーを秋には見せてほしい。

追記
いつも素晴らしいレース写真を提供して頂いている「Horse Memory」様ですが、写真は管理人であるうまタロー様のお兄さまが撮影されているそうです。ちなみに、うまタロー様はブログ「Monologo」も運営されていて、穴狙いの予想も素晴らしいのですが、特に左サイドバーにある海外競馬の情報量には驚かされます。実は私も海外競馬の情報に関しては、いつも参考にさせていただいております。

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これで負けたら仕方ない?

Oaks07 by gradeone
オークス2007-観戦記-
前半1000mが59秒1という、オークスとしてはかなりのハイペースでレースは進み、全体としても2分25秒3というオークスレコードでの決着となった。これだけの前傾ラップだけに、前半での僅かな位置取りの差が、結果を大きく左右したレースとなった。

勝ったローブデコルテは、内枠を利してスッと中団に付け、道中も人馬一体となってレースの流れにスムーズに乗っていた。前走の桜花賞で、目先の着順ではなく、馬との呼吸を優先したことが、今回のレースに生かされたと言ってよい。血統的には不向きに見えたこの距離を勝ち切ることが出来たのは、道中でムキにならないローブデコルテの気性に拠るところが大きく、2着馬とのハナ差の違いはここにあるといっても良いだろう。福永騎手の恐ろしいほどの冷静な騎乗も光った。最後の直線でも、慌てず騒がず、勝ち馬との距離を計りながら、馬のリズムを崩さないように追っていた。何よりも、最後の一鞭のタイミングが絶妙であった。

僅差で涙を飲んだベッラレイアは、負けて強しの内容であった。スタートを五分に出てしまったことにより、思ったよりも前半の位置取りが前過ぎたことが悔やまれる。陣営や鞍上の気持ちが伝わったのか、パドックから精神的にも余裕がなく、レースでガツンと行ってしまった。あと馬1頭分後ろに位置して、あとひと呼吸分追い出しを遅らせていれば、押し切ることができたかもと思わせる内容であった。逆に言えば、押し切るだけの力がまだベッラレイアには付いていなかったということである。

ひとつ疑問に思うのは、ベッラレイアはベッラレイアの競馬が出来たのかということだ。返し馬であれだけ走る気になって力んでいる馬を、ゲートから普通に出せば、あれぐらい掛かることは想像に難くないはずで、それでもソロっと出そうとしなかったということは、秋山騎手もしくはベッラレイア陣営は行けたら前に行こうと考えていたのではないだろうか。出来るだけ良いポジションを取って、直線で包まれることだけは避けたいと思っていたのではないだろうか。

これで負けたら仕方ないというレースをしようと考えることは、積極的であるように見えるが、状況次第では消極的な選択にもなる。たとえば、野球で言えばフォークボールを決め手とする投手が、9回ツーアウト満塁ツースリーという状況で、フォークボールがすっぽ抜けることを恐れて、直球勝負をするようなものだ。直球で向かって行って、打たれたのなら仕方ない。誰もがそう言って納得するかもしれないが、果たして投げるべきは直球だったのだろうか。たとえすっぽ抜けても、フォークボールで勝負に行くべきではなかったのだろうか。直球勝負を賞賛するのは簡単なのだが、今回はあえて苦言を呈してみたい。

反対に、ラブカーナは切れる脚がない割に良く伸びているだけに、もう少し前に行けていればと悔やまれる。ミンティエアーはベッラレイアをマークして完璧なレース運びであったが、直線では止まってしまったように、まだ力不足であった。ピンクカメオは中1週で距離延長という不利を克服して、最後の直線もよく踏ん張っている。輸送がないのが良いのだろうし、またこの馬の精神力には頭が下がる。ザレマにとっては、外枠も不利に働いたこともあり、また距離も長かった。カタマチボタンは、精神的に長い距離を我慢して走ることが出来なかった。

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ナイス、松岡!

Victoriamile07 by echizen
ヴィクトリアマイル2007-観戦記-
前半46秒6→後半45秒9という後傾ラップで、前が止まらない馬場を考慮に入れると、後ろから行った馬にとってはかなり厳しい展開となった。また、馬群が固まって4コーナーを回ったこともあり、外を回さざるを得なかった差し馬にとっては、距離ロスも痛かった。

コイウタの大駆けには正直驚かされた。3歳時に比べ、牡馬のように逞しくなった馬体からも、速い時計が出るにもかかわらず緩いという、多少力の要る馬場が合ったということだろう。また、好位から流れに乗り、ロスのないコース取りで内枠を利した松岡騎手の騎乗も光った。特に直線に向いてから内を突いた一瞬の判断は見事であり、コイウタから最大限のパフォーマンスを引き出した。G1レースは今回が初勝利になるが、少しでも前に行こうという積極的なスタイルは、これからも大舞台でも怖い存在になるだろう。

アサヒライジングは馬場の良いところを通り、マイペースで逃げを打つことができた。春の2走はレースの流れに乗れず惨敗を喫していたが、本来スタミナのある馬だけに、これだけ楽にレースの流れに乗れれば渋太い。欲を言えば、もう少し速いペースで引っ張って、後続に脚を使わせるレースが理想であった。柴田騎手としては、前2走が惨敗しているだけに、極めて慎重に乗ったのだろう。

最も悔しい思いをしたのは藤田騎手ではないだろうか。デアリングハートの脚質を考えると、もう少し前の位置取りをすべきであったし、後ろから行った分、4コーナーで一瞬前が壁になってしまった。この馬自身、33秒4で上がっているだけに、もうワンテンポ早く仕掛けていれば勝っていたかもしれない。後ろの有力馬を意識したレースが、結果的には凶と出てしまった。

スウィープトウショウは大外を伸びかけたが、前が止まらない展開が堪えた。池添騎手を振り落としたり、ゲート入りをゴネてみたりと、相変わらずのお転婆ぶりであったが、掲示板を外した今回はレースに行っての集中力にも欠けていた。これまではレースに行けば走ってきた馬だけに、精神面での翳りを感じたのは私だけではないはずだ。

サンデーサイレンス産駒のディアデラノビア、アドマイヤキッスは、どうしても突き抜けるだけのワンパンチが足りない。ジョリーダンスはメンバー最速の上がり32秒9の脚を使っているだけに、外枠でなければと思わせる内容であった。

1番人気に推されたカワカミプリンセスは、スタートから流れに乗れず、惨敗を喫した。馬がまともに走られる状態になく、前が詰まったりと、武幸四郎騎手はなす術がなかった。西浦調教師は「馬は言うことないくらい最高だった」とコメントしているが、果たしてそうだろうか。パドックから馬が苦しがって入れ込んでおり、休み明けでマイルのスピードに対応できるだけの体調にはなかったことは明白である。昨年秋のレースを激走した反動がまだ抜けていなかったのだろう。これで終わる馬ではないので、ぜひじっくりと立て直してから牡馬に挑戦してほしい。

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重馬場の全てが凝縮されたようなレース

Nhkmilec07 by M.H
NHKマイルカップ2007-観戦記-
勝ち時計が1分34秒3、全体の上がりが35秒8という、走破タイム的にはどの馬でも勝つことが出来、まさに馬場適性と展開の綾だけで勝敗が決したレースとなった。それにしても内田博騎手の狙い済ました騎乗には驚かされた。4コーナーを回って最後の直線に向き、包まれながらも、ワンテンポのツーテンポも追い出しを遅らせる。勝つための可能性が1%でもあればそれに賭けるという、地方と中央の垣根を越えた、まさにプロ魂を見た気がした。

重馬場を苦にしない馬たちが上位を占め、そうでない馬たちが揃って惨敗したレースである以上、1頭1頭を振り返ることが無意味にも思われるので、重馬場に対する適性というファクターを中心に回顧してみたい。メルマガ「馬券のヒント」に書いたことがほとんどなのだが、再確認としてお付き合いいただきたい。

第一に、当たり前のことではあるが、「雨が降ると、より多くの馬に勝つチャンスが生まれる」ということ。雨が降る→馬場が悪くなる→勝ち時計が遅くなる→良馬場ではスピードが足りず、勝負にならなかった馬にもチャンスが生まれる。つまり、雨が降るだけで、波乱が起こる可能性がグッと高まるということである。こういうレースで人気馬を買うのはもったいない。

第二に、「フットワークの大きな馬は道悪に弱い」ということ。跳びの大きな馬は、馬場が悪くなると、滑ってバランスを崩しやすい。フットワークが大きいことは走る馬の特徴であるが、道悪の時にはマイナスに作用してしまうのである。フットワークが大きく、府中へのコース替わりがプラスになると評価された馬が揃って惨敗したのは、こういう理由である。思いつくところだけでも、アサクサキングス、ダイレクトキャッチ、シャドウストライプ、トーホーレーサーはこれに当てはまる。

第三に、「力の要る馬場を得意とする血統がある」ということ。馬場が変われば、勝ち馬も変わる。力の要る馬場に変われば、スピードと切れ味ではなく、パワー優先の血統の馬が活躍するのである。具体的な血統に関しての詳細はこちらに譲る。

最後に、「重馬場、不良馬場でこそ、騎手で買え」ということ。雨が降って、馬場が悪くなると、馬はハミを頼って走ろうとする。騎手も馬が脚を取られないように、ガッチリとハミを掛けながら、馬場の良いところ選んで走らせる。つまり、馬場が悪くなればなるほど、コース取りや、ハミを通して馬を操縦する技術が問われることになるということ。

こちらにも書いているが、騎手の巧さというのは勝率に表れ、2006年の内田騎手の勝率は0.138、藤田騎手は0.141という極めて高い数字を誇っていて、これは岩田康誠騎手よりも上である。全く乗り方の違う地方競馬と中央競馬を股にかけてのものだけに、内田博幸騎手の勝率の高さは数字以上のものがあることは言うまでもない。

まさに重馬場の全てが凝縮されたようなレースであった。

追記
「ヴィクトリアマイルを予想する前に知っておくべきこと」はサンプル数が少ないため、今回のエントリーはありません。個人的には、今回の雨の影響で馬場がどのように移り変わるかが気がかりです。今年は暖冬の影響もあって、野芝がしっかりと根付いているはずなので、昨年のような力の要る馬場にはならないはずですが、果たして。

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怪力サムソン復活

Tennosyoharu07 by@84Photo Gallery

ユメノシルシが淀みのないペースでレースを引っ張り、前半はこれでもかと言うくらい11秒台ラップが続き、緊迫感のある引き締まったレースとなった。昨年のディープインパクトには及ばないが、マヤノトップガンが制した10年前の天皇賞春を超える高速決着であった。前が止まらない馬場とはいえ、このペースを早めにマクって、4コーナーほぼ先頭で押し切った勝ち馬は強い。

勝ったメイショウサムソンは、精神的に復調してきたこともあって、先行集団からポツン離れた中団をリラックスして走り、道中はピタリと折り合いがついていた。ラスト4ハロン(800m)地点で石橋騎手のムチを振り上げる仕草にグっと反応して、一気に先行集団との差を詰めた時点でほぼ勝負があった。坂がないコースで最後はヒヤヒヤさせられたが、ゴールまでなんとか踏ん張ってみせた。どんなレースでも、コンスタントに34秒台で上がって来られる安定感は王者に相応しい。

やはり、昨年の菊花賞を含めた秋一連の凡走は、血統や馬場ではなく、ダービーを制した(それまでの過程も含む)精神的な疲労が抜け切っていなかったからであろう。放牧を機にリフレッシュされたようで、再び勝負強い怪力サムソンが戻ってきた。アドマイヤムーンとの対決が期待される宝塚記念では、さらに強いレースを見せてくれるはずである。それだけでなく、ぜひメイショウサムソンには凱旋門賞に挑戦してほしい。こういう血統的背景を持ち、肉体的、精神的に屈強な馬こそが、「凱旋門」という舞台に立つべきなのである。

気性に問題を抱えるエリモエクスパイアにとっては、被されたり揉まれたりしない外枠が有利に働いた。馬に気に沿って、折り合いだけに集中した福永騎手の好騎乗もあり、道中とても気持ちよく走っていた。4コーナー手前で追い出しを遅らせたのもまた好プレーで、最後はあわや差し切るかというまでに追い詰めたが、ハナ差だけ凌ぎ切られてしまった。この時計で走っている以上、外枠だけが好走の理由ではなく、この馬も強い。今回は相手が悪かった。

トウカイトリックはゲート入りに手こずったが、レースでは力をいかんなく発揮した。池添騎手の積極的な騎乗で好位を進み、理想的な競馬ができたのではないか。4コーナー手前で、下がってくる馬がいて動けなかったが、あそこで脚をタメられたことが最後の伸びにつながっている。それでも、最後は止まってしまっているように、上位2頭とは僅かながら力差があった。それでも、ここに来て差す競馬が出来るようになり、幅が広がっているだけではなく、ステイヤーとして着実にと力をつけてきている。

アイポッパーにとっては、スタートで立ち遅れてしまったことよりも、ペースが落ちた向こう正面で、左右の馬に前をカットされてしまい、先行集団との差を詰められなかったことが痛かった。それでも安藤勝己騎手は動きたい4コーナー手前で我慢に我慢を重ね、最後の直線の可能性に賭けたが、やはり前が止まらなかった。3200mを走ってタイム差わずか0.1秒という厳しい勝負の世界を前に、アイポッパーの夢は潰(つい)えた。

デルタブルースは、展開うんぬんよりも、これだけ速い時計の決着になっては出る幕がなかった。

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素直におめでとう

Satuki07 by ruby
皐月賞2007-観戦記-
1コーナー過ぎから、我慢できないという感じでハナを奪ったヴィクトリーが作り出した絶妙な流れに、どの馬も金縛りにあったように最後まで動くことが出来なかった。特に、向こう正面に入ってからの12.3-12.3-12.3という、計ったようなペース配分により、ヴィクトリーは後続に差を詰められることなくスタミナを温存できた。スパイラル状の3~4コーナーには傷みが目立ち、後方に位置した有力馬も、追い上げたくても追い上げられないという展開であった。

勝ったヴィクトリーは展開の利を得たことは確かだが、最後の最後まで踏ん張ったのは地力があればこそである。若葉Sでもそうだったように、こういう上がりの掛かる、スタミナとパワーで押し切るレースに滅法強い。まだまだ体つきや精神面に幼いところがあるが、それを差し引いても、その器が既にG1級に達してしまったということだろう。自分でレースを作って、この時計で勝ったことは実力の証明であり、馬群に揉まれるなどして気性的なマイナスが表出されない限り、ダービーでも間違いなく勝ち負けになるはずである。

田中勝春騎手が15年ぶりにG1レースを勝った。陣営から抑える指示が出ていたようだが、第1コーナーで馬の気に逆らうことなく、アウトインアウトのコーナリングで、ためらわずに逃がしたことが最大の勝因である。あの時点で躊躇してしまっていれば、今回の勝利はなかっただろう。ハナを奪い、ヴィクトリーの耳が立ってフッと力が抜けた瞬間、もしかしたら今日はイケルかもという感覚を得たのではないか。ゴール前は、騎手の気力がヴィクトリーに燃え移っての差し返しであった。15年という年月は想像を絶するが、長かったからこそ得るものも多い。素直におめでとうと言いたい。

2着に食い込んだサンツェッペリンは、ヴィクトリーの激走の漁夫の利を得た感はあるが、松岡騎手の思い切った騎乗が功を奏した。ヴィクトリーと後続の間のポケットに入って、前に馬を置きながら、なおかつ逃げているような走りができたことが大きい。もちろん、ホープフルSや京成杯で見せたスタミナがあってこそで、気持ちよく行ければ本当に渋い馬である。

フサイチホウオーにとっては、何とも口惜しいレースであった。スタートしてから行き脚が付かず、道中のポジショニングが悪く、最後の最後までヴィクトリーとの差を詰めることができなかった。直線で外に出してからは怒涛の追い込みで、脚が余っていただけに、もう少し前に位置できていれば、もう少しスムーズに外に出せていれば突き抜けていただろう。俊敏さに欠ける馬だけに、中山2000m小回りというコース設定に負けたといっても過言ではない。もちろん、このまま順調に行けば、ダービーでの好走は約束されたと言ってもよい。

4着に敗れたアドマイヤオーラも、スタートから行き脚が付かなかったように、弥生賞からの精神的な反動からか、気持ちが走る方向に向いていなかったように映った。武豊騎手も、フサイチホウオーをマークしていたことや、隊列がピシッと決まったことにより、道中で動くに動けなかった。それでも、フサイチホウオー同様、ラスト3ハロンを33秒9で上がってきているように、次のダービーへなんとかつながるだけの脚は見せた。

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天命

Oukasyo07 photo by gradeone
桜花賞2007-観戦記-
まるでチューリップ賞を再現したかのような後傾ラップで、前半47秒8→後半45秒9という極端なスローペースの瞬発力勝負となった。これは新阪神1600mコースの特徴といってもよく、旧来のゴチャつきやすく紛れの多いコースを補正した結果、上がり勝負の淡白なレースを増やしてしまったという残念な現状である。ラスト2ハロン目の10.6というラップの速さは、逆に言うと、G1クラスのレースとしては遅すぎるくらい遅いペースだったということを意味する。

とはいえ、安藤ダイワスカーレットと四位ウオッカの直線での意地のぶつかり合いには見るべきものがあった。両者の勝敗を分けたのは、最後の直線に向いた時の手応えの差であろう。チューリップ賞の時のそれがウッカにはなく、四位騎手が焦って追い出した結果、ダイワスカーレットが寄ってきたこともあり、大きくヨレてしまった。もっと言えば、直線に向いての、鞍上ふたりの心の安定が直線での差を生んでしまった。

最後の急坂で他馬が止まる中、1頭だけ最後まで脚を伸ばし続けたダイワスカーレットは、まさに完勝といってよい。アストンマーチャンが掛かって行ってくれたことで、途中から外目をスムーズに先行出来たことが好走につながった。前走のように逃げる形よりも、目標を置いて先行してこそ、能力が発揮できる馬である。兄ダイワメジャー同様に、どこまでも止まらない地脚の強さは牡馬顔負けで、外々を回され、見た目以上の距離ロスがあってのものだけに、今後の距離延長も全く心配はないだろう。

それにしても、安藤勝己騎手の馬を抑える技術には恐れ入る。今年に入ってから、手綱を少し短く、ハミをガチっと掛けながらも抑える取り組みをしているが(ダイワスカーレットだけではなく)、今回はそれが見事に実を結んだ結果となった。直線に入ってからの、ウオッカに馬体を併せにいくテクニックもまた見事であった。早めに動こうとしたこと以外、前走のチューリップ賞から特に変わったことをしているわけではないのだが、最善をつくして天命を待つといった完璧な騎乗が勝利を呼び込んだといってよいだろう。

ウオッカには本来の伸びがなかった。確かにダイワスカーレットも強かったが、この馬が普通の体調にあれば、これぐらいの上がりは差し切れていたはずである。そういう意味からは、ダイワスカーレットが勝ったというよりも、ウオッカが負けたレースとも言えるだろう。体調が悪かった理由は今後の「馬券の失敗学」に譲るが、四位騎手は4コーナーまできっちりと乗ってきているだけに、なんとも不本意なレースであったろう。

スピードタイプのアストンマーチャンにとって、道中で脚をタメたかっただけに、外枠からの発走は大きく不利に働いた。終始、内に入れることができず、馬群の外々を掛かるようにして回っていきながら、かなりの距離ロス・スタミナロスがあり、そして最後の急坂でパタリと止まってしまった。決してマイルが長かったというわけではないので、NHKマイルカップに出走してくればチャンスは十分にあるはずである。

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武豊の逆襲

Takamatumiya07高松宮記念2007-観戦記-
道中の位置取りよりも、内外のコース取りが着順を大きく左右したレースとなった。降雨の影響で、最終週の馬場の内側が傷み、内2~3頭分を通らされた馬はスタミナを失い、外側をスムーズに追走できた馬が好走するという、典型的なトラックバイアスが出現していた。

勝ったスズカフェニックスは、直線に向かう手前で、早々に先行馬群を飲み込んでの圧勝であった。阪急杯は外を回したことにより追い込む形となったが、今回は初めてのスプリントの流れにも戸惑うことなく、楽に追走していた。重い馬場で他馬をスタミナと底力でねじ伏せた印象を受けるが、たとえ良馬場でも抜群の瞬発力で差し切っていたはずである。まさにスプリント適性を証明した形となったが、それゆえ、かえって距離延長に対しては不安を抱かせる。この後、G1レベルのマイル戦、つまり安田記念に参戦してくるようであれば、厳しい戦いを強いられるはずである。

また、武豊騎手の勝負に対する冷徹さが垣間見えたレースでもあった。良馬場であれば内でジッとしていたのだろうが、スズカフェニックスの切れ味が削がれる重い馬場になった時点で、傷んでいない馬場の外目を通り、早目に先団に取り付く作戦にチェンジしたのだろう。好スタートを決めるや、外からマイネルスケルツィを内に閉じ込めるような形で上がって行き、4コーナーのきつい曲がりにも躊躇することなく突っ込んでいった。この少し強引に見えた仕掛けには、おそらく安藤勝己騎手のプリサイスマシーンを早目に潰しておきたいという意図があったに違いない。一気に外から来られた安藤勝己プリサイスマシーンは、4コーナーで取りたかった進路を塞がれて、もはやなす術がなかった。相手に打つ手を与えず、完膚なきまでに打ちのめした騎乗には恐ろしさすら感じた。今年はスタートで出遅れているが、武豊騎手の逆襲はもう始まっている。

あっと驚く2着に入ったペールギュントは、外枠から馬場の良いところを通り、スムーズに追走できたことが大きい。勝ち馬の後ろを付いていったら、ゴール前では他の馬が勝手に脱落していたといったレースであった。スズカフェニックスが早目に動いたということ、外目の馬場を通ることが出来たという2点が、好走の最大の理由である。もちろん、G1レベルのレースでは底力に欠けるこの馬にとって、距離短縮は好材料であり、またスプリント戦の速い流れに刺激を受けて、いつも以上に集中して走ることができていた。

プリサイスマシーンは前進意欲満々で、道中は勝ったかと思わせる抜群の手応えであった。誤算としては、スズカフェニックスが強すぎたことと、4コーナーで早目に来られてしまったことである。もう少しスズカフェニックスの仕掛けが遅ければ、連対は楽に確保していたに違いない。それにしても、8歳にして最も油が乗り切った走りができることには驚かせられる。パドックでも畏怖堂々と歩いていた。

マイネルスケルツィは好仕上がりであったが、道中で外からスズカフェニックスに閉められ、最後まで理想的なレース運びができなかった。そもそも、スプリント戦に対する適性は疑問であり、一本調子なところのあるこの馬にとっては、もう少し距離は長い方が合っているのだろう。

エムオーウィナーは、理想的な位置取り・コース取りで、自身の力は出し切っている。多少上がりのかかる馬場状態も、この馬には合っていたはずである。それでも、最後まで伸び切れなかったのは、G1レベルの実力がなかったということである。

special photo by fake Place

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超絶技巧

Febs07 by gradeone
フェブラリーS2007-観戦記-
水が表面に浮くほどではなく、脚抜きの良い、ダートとしては最も走りやすい馬場でレースは行われた。前半4ハロンが46秒6と、この馬場にしてはそれほど速いペースではないが、最初のコーナーまでの距離が長いため、行きたがった先行馬が折り合いつけるのに苦労していた分、中団以降でスムーズに追走できた馬たちにとっておあつらえ向きの展開となった。

サンライズバッカスは、立ち遅れたもののすぐさま中団に取り付き、抜群の手応えで4コーナーを回り、直線に向くやアッという間に他馬を飲み込んだ。道中の流れや、平安Sからの距離短縮など、全ての要素がこの馬にプラスに働き、終わってみればまさに楽勝であった。この距離とコースでカネヒキリを下しているように、ハマった時の強さはG1ホースに相応しい。4歳時には目に付いた腰高の馬体も、少しずつバランスが良くなってきているように、ここに来て大きく成長している。

安藤勝己騎手の好騎乗も見逃せない。気性に難しい面のあるクセ馬サンライズバッカスを、スタートからゴールまで、まるで何事もなかったかのように導いてみせた。ハミを終始きっちりとかけて、最後までサンライズバッカスに気を抜かせずに走らせたのだが、それ以外の技術的な部分については、私などには到底分からない領域にある。ダイワメジャーに代表されるように、馬を手の内に入れて、能力を100%引き出してしまうその手綱さばきは、まさに超絶技巧と言ってもよいのではないだろうか。

ブルーコンコルドは最後まで良く伸びているが、勝ち馬を追い詰め切れなかった。前走の東京大章典でも道中から手が動いたように、年齢的なものか、多少なりともズブさが出てきていることも敗因のひとつである。勝ち馬が動いて行った時に、スッと付いて行くことが出来なかった。内にモタれたのは、左回りだからではなく、中央の厳しく激しいレースで苦しかったからだろう。スピード負けした感があるとはいえ、この速い時計で走っているように、本当に強い馬である。

ビッググラスは外枠からレースの流れに乗って、ほぼ完璧な走りで能力を出し切った。今回は相手が悪かったが、距離が長くなって更に良さが出てきたし、体調も良かったのだろう。晩成の血統だけに、ダートの短距離界では中心的な存在になっていくだろう。

シーキングザダイヤはレースの流れに乗っていたように見えたが、追い出してからもさっぱりで、ダート戦にしては初めての惨敗を喫してしまった。本来はスピードタイプの馬が、年齢を重ねてズブさが出てきたことにより距離が持つようになったのだが、かえって今回は距離が短いことに加え、脚抜きの良い馬場になったことにより、スピード競馬に対応できなかった。

上がり馬のメイショウトウコンは、初めて体験する速い流れに付いていくだけで精一杯で、道中で末脚を失ってしまった。雨で馬場が締まった影響がなければ、サンライズバッカスとの比較からも、もう少し好勝負になったはずである。フィールドルージュは懸命に追い込んではいるが、この馬にとっては全体の時計が速すぎた。シーキングザベストはリズム良く走ったが、この距離をこのメンバー相手に押し切るには、スタミナが足りなかった。

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Best ever and forever

Arima06 by M.H
有馬記念2006-観戦記-
アドマイヤメインが速いペースでレースを引っ張り、後続も縦長の展開となり、全体的には引き締まったレースとなった。昨年と同タイムでの決着となったが、前半が淀みないラップで流れた分、今年の方が力のある馬しか来られない厳しいレースであった。

勝ったディープインパクトにとってはおあつらえ向きの展開となったが、それでも全体の上がり3ハロンを1秒6も上回る末脚は、まさに他馬が止まって見えるほどに爆発的であった。特に4コーナーを回って行く時の速さには、一流馬たちさえをも瞬間的に飲み込んでいく、ある種暴力的なものを感じた。これだけ足が速ければ、どこからレースをしても簡単に勝ってしまう。もちろん分かっていたことではあるが、最後の最後にもう一度ディープインパクトの凄さを再確認させられた。これだけの脚を使う馬はこれまでも見たことがなく、おそらくこれからも見ることはないだろう。

ポップロックは最内枠を利した位置取りで、終始余裕を持った走りであった。最後の直線入り口で一瞬ブレーキを掛けてしまったことが大跳びの馬だけに惜しまれるが、立て直されてからは最後まで良く伸びている。ここに来てグングンと成長しており、またオセアニアの力を要する馬場よりも、日本の馬場の方がこの馬には合っているのだろう。そして、海外遠征を挟んでいたものの、馬体は全く痛んでおらず、かえって秋3走目の今回が最も良い状態で臨んできていた。有馬記念はどちらかと言うとステイヤーの活躍できる舞台であり、メルボルンカップから直行というローテーションを取る馬が今後も出てくるはずである。

前半が速いためスタミナを奪われ、中盤はペースが落ちて走りにくく、最後はディープインパクトに一気に来られる最悪の展開にもかかわらず、ダイワメジャーは良く走っている。最後までドリームパスポートに抜かせなかったことが、この馬のこの秋の充実振りを象徴していた。適距離の2000m前後であれば、現役トップの座にあることは間違いない。

内田博幸ドリームパスポートは、道中もほぼ完璧にレースを進めていた。最後の直線で馬群から抜け出すのに手間取ったことも、一瞬の脚しかないこの馬にとっては、仕掛けのタイミングを遅らせることになり、かえって好都合であった。ジャパンカップよりも道中が厳しかった分、最後の脚をいつの間にか失っていた。やはり、この馬にとっては2500mの距離は少し長い。

こういった馬場が得意なメイショウサムソンだが、最後まで見せ場すら作れなかった。春当時の闘争心が感じられず、精神的に燃え尽きた感が強い。ダービーを制した馬によくある燃え尽き症候群であり、たとえ復活するにしてもかなり長い時間を要するだろう。

メルボルンカップ優勝馬のデルタブルースは、前半が速く流れたことにより、主導権を取るための位置取りを確保することが出来なかった。自ら動きたかったのだろうが、レースの流れ、小回りのコース設定に、持ち味を殺されてしまった。

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Believe me.

Japancup06 by photostud
ジャパンカップ2006-観戦記-
前半1000mの通過タイムが1分1秒1という、超が付くほどのスローペースで道中は流れ、最後の直線での瞬発力勝負でレースは決した。これだけのスローだと、少しでも前に位置した馬にとって有利になるのだが、上位3頭は秀でた瞬発力を生かして他馬を封じ込めた。特に、最後方から外々を回り、ラスト3ハロンを33秒5の脚でまくり切ったディープインパクトは、目に見えない着差以上の強さで、遂にその鬱憤を晴らした。

ディープインパクトの勝因は、フランス遠征を経て、馬に走る気力が蘇っていたことに尽きる。今年に入ってからは、調教で動かなくなるなど、厩舎での生活や走ること自体に嫌気が差していたが、環境の変化や馬にとってはストレスの少ないフランスでの生活が、ディープインパクトに再び英気を養わせたのだろう。帰国後は走りたくて仕方ないと言わんばかりの動きで、遠征後のレースにもかかわらず、久しぶりに絶好調といえる出来での出走であった。

武豊騎手も、ディープインパクトを信じて、スタートから折り合いを付けることだけに専念していた。直線で他馬にも脚が余っていただけに、一瞬ヒヤッとした場面はあっただろうが、最後まで冷静に馬を伸ばし続けた。武豊騎手といえども、ディープインパクトという馬を通して学び得たことは多く、道中でブレない心や、勝負どころでの馬の動かし方など、さらに磨きが掛かっている。勝つことが使命づけられていたレースだけに、陣営にとってはひと安心というところだろう。

あわやという場面を作ったドリームパスポートは、ここに来て走る気力と体力が実に充実している。スタートから手応え十分で道中を回り、少し力んで走っている場面もあったが、全体としてはほぼ完璧な内容であった。岩田騎手もギリギリまで仕掛けを我慢して、ドリームパスポートの一瞬の脚を生かした騎乗であったが、今回だけは相手が悪すぎた。この後は有馬記念に向かうが、叩いて調子を上げていく馬だけに、次走も良い状態で出走できるはずである。今回のように、無理をせずに好位を進むことが出来れば、チャンスは十分にあるだろう。

ウィジャボードも、勝つまでは行かなかったが、さすがという競馬での3着であった。位置取りと回ったコースを考えると、ドリームパスポートと同じぐらい走っている。ブリーダーズカップを勝った上で臨んできたことを考えると、末恐ろしい牝馬が世界にはいるものだと感じざるを得ない。現時点では、プライドと肩を並べるだけの実力を持つ最強牝馬であることに、全くもって異論はない。

ハーツクライは好位を進んだにもかかわらず、4コーナーでは既に手応えが悪くなって惨敗を喫してしまった。ノド鳴りの影響というのが大方の解釈だろうが、それだけではないはず。あれだけ緩いペースで行っていながらも手応えを失っているということは、複合的な要因が考えられる。二度に渡る海外遠征による目に見えない疲労、そして何よりも、キングジョージで差し返されて負けた精神的ショックもあるのではないだろうか。とはいえ、引退が決まった今となっては、あくまでも推測の域を出ない。府中の長い直線で、ディープインパクトと火の出るようなデッドヒートを期待しただけに、非常に残念な結果であった。


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刃こぼれなし

Jcdurt06 by fake Place
JCダート2006-観戦記-
外国馬の参戦がなかったことも影響したか、全体的に緩やかにレースは流れた。各馬に手応えが残っていたために、最後の直線がゴチャついて力を出し切れなかった馬も多く、また後ろから行った馬にとっては、前の止まらない厳しい展開となった。

そんな中、勝ったアロンダイトは、出たなりで好位をキープし、自分のリズムを最後まで崩すことなく走り切ることが出来た。体が大きく、また跳びも大きいため、伸び伸びと走ることの出来るポジショニングが必須であり、そういった意味で、シーキングザダイヤの後ろの馬群のポケットで終始走ることが出来たことは大きかった。そして、何と言ってもラッキーだったのは、武豊騎手も指摘しているように、最後の直線で内がポッカリと開いたことだろう。アロンダイトのように跳びの大きい馬は、スッと馬群を割るのは難しく、一旦ブレーキを掛けてしまうと、もう一度加速するのに時間がかかる。あの時点で、ブレーキを掛けなくても良かったからこそ、この馬の力を最大限に発揮することができたと言っても過言ではない。

とはいっても、アロンダイトの素質の高さはこのメンバーに入っても一目瞭然で、パドックでも筋骨隆々の惚れ惚れさせられる馬体で周回していた。まさにエルコンドルパサーの産駒らしい成長力で、3歳の秋を迎えて、驚くべきパワーを付けてきている。あとは、どのようなレースにも対応できるだけの器用さを身に付けていけばいい。これからも、まだまだ成長していきそうな予感をさせる、ダート界の新星の誕生である。

シーキングザダイヤは、スタートから1コーナーまでの走りが抜群で、あの時点で武豊騎手もほぼ勝利を確信していたに違いない。道中も思っていたとおりの位置取りで、人馬ともに最高のレースをすることが出来たのではないだろうか。それで負けたということは、この馬に勝ちきるだけの力がなかったということである。

フィールドルージュは、最後まで伸びてきているが、いかんせん位置取りが後ろ過ぎた。ひと叩きされ、前走から距離が伸びて好走の材料は揃ったが、展開と枠順に恵まれなかった。ここに来て力を付けてはいるが、もう少し前で競馬が出来るようになれば、さらなる活躍が期待できる。

サンライズバッカスは出遅れたり、最後の直線でもフラフラしたりと、気性の悪さを露呈してしまった。力強い末脚を持っているだけに、もう少しスムーズな競馬が出来るよう、精神面での成長が望まれる。

ブルーコンコルドの体型は、マイラーのそれであり、道中のペースの違いにも戸惑っていた。道中掛かり気味の追走で、直線では前が完全に詰まってしまい、万事休す。運に恵まれなかった印象は強いが、それでも最後は伸びてきていないように、前が開いていても勝つまでは難しかっただろう。


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土付かず

Milecs06 by mighty
マイルチャンピオンシップ2006-観戦記-
降り続いた雨の影響もほとんどなく、ほとんど良馬場でレースは行われた。前半の半マイルが46秒という、馬場を考慮に入れると平均よりもやや速いペースで、最後は力と力がぶつかり合う激しいレースとなった。勝ったダイワメジャーは、自らレースを作り、まさに横綱相撲での勝利であった。

この秋、3連勝でマイルのG1レースまで制したダイワメジャーだが、その最後の直線での走りは非常に興味深い。パトロール映像で見ないと分かりにくいのだが、ほとんど体当たり気味に、ダンスインザムードに対して馬体を併せに行っているのである。安藤勝己騎手がわざと寄せているわけではなく、ダイワメジャーが寄って行っているのだ。

まず、毎日王冠では、ラスト400mに差し掛かる手前。
→【映像はこちら】

そして、天皇賞秋では、ラスト400mを過ぎた時点。
→【映像はこちら】

さらに、マイルCSではゴール前。
→【映像はこちら】

3レース共に、場所(時点)こそ違え、最後の直線で、ダイワメジャーがダンスインザムードを外に弾き飛ばしていることが分かる。ダンスインザムードが外から手応え良く来た瞬間と、ダイワメジャーが手前を替えるタイミングが一致してのものではあるが、ただそれだけとは思えない。まるでダンスインザムードにターゲットを絞ったかに見える、執拗な体当たりである。弾き飛ばされたダンスインザムードは、毎日王冠こそ最後まで走り続けているが、天皇賞秋、マイルCSに至っては、ダイワメジャーに寄られて以降は、あれほどの手応えで来ていたにもかかわらず、パタリと止まってしまっている。

サラブレッドには、他馬に抜かれたくない、先頭に立ちたいという本能がある。抜かれまいとして、併走している馬に噛み付く馬だっている。後ろから勢い良く来る馬に負けまいとして、体当たりをすることは不自然ではない。騎手は馬を真っ直ぐに走らせることが美徳とされるが、サラブレッドにとって、体をぶつけ合って先頭を争うのは日常的な行為なのである。競馬は整備されたコースで競走するのだが、サラブレッドにとって、最後の最後は己の生存を賭けたサバイバルレースなのだ。そんなことを改めて考えさせられる、ダイワメジャーの勇敢かつ獰猛な走りであった。

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ぶっ飛んだ

Asahifs06 by gradeone

断然人気のオースミダイドウがハナを切る、まさかの展開でレースはスタートした。なかなか前が止まりづらい馬場であったにもかかわらず、最後方からレースを進めたドリームジャーニーが、他馬とは1秒以上も違う、衝撃的な末脚でラスト3ハロンを駆け抜けた。

ドリームジャーニーの気持ちが入ってからの脚力は半端ではない。父ステイゴールド譲りの気の強さと、母父のメジロマックイーンの底力が見事にマッチしている。前走は道中でガツンとスイッチが入ってしまい、ブレーキを踏みながらアクセルをふかすような走りになってしまったが、今回は実質ラスト3ハロンだけを真剣に走って、あっと驚く結果を出してしまった。とはいえ、見た目にはかなり強く映る勝ち方だが、この馬の個性がレースにピタリと嵌ったという印象は強い。距離延長は問題ないが、このようなレースが次にもう一回出来るかどうかは疑問である。

蛯名騎手の緻密かつ大胆な騎乗も光った。勝ちたいという意識を完全に捨て去り、スタートから折り合いを付けるということ一点に専念していた。道中であれだけ離されてしまうと、少しでも差を詰めておきたいという気持ちが騎手には生じるものだが、今回の蛯名騎手の腹は最後の最後まで据わっていた。ステージチャンプでライスシャワーにハナ差まで迫った、あの天皇賞春を思い出させられる蛯名騎手らしい騎乗振りであった。

ローレルゲレイロは勝ったレースを落としてしまった感が強い。正攻法でレースを進め、オースミダイドウを退けた瞬間に、外からの驚異的な末脚に屈してしまった。2着とはいえ、ほとんど勝ちに等しく、ここにきて急激に力を付けてきている。父キングヘイロー産駒特有の我慢強さとスピードを持ち合わせているので、これからも順当な活躍が見込まれるはず。

オースミダイドウについては、逃げる形になってしまったことが全てである。あれだけレース前に気持ちが入っている馬を、ゲートを出てから、ペリエ騎手が少し仕掛けてしまったことが悔やまれる。馬の気に任せて行かせるのは簡単だが、逃げる形になってしまっては、デイリー杯で差す競馬を覚えさせた意味が全くなくなってしまう。引っ掛かっている馬の力を抜いていく技術はさすがだが、「どのようなレースをすべきか」というコンセプトが陣営のそれと一致していなかったのではないだろうか。武豊騎手であれば、口を割ってでも押さえようとしていたはずである。

フライングアップルは堅実に走って、現時点での能力を十分に発揮できた。気性も素直な馬なので、どんなレース展開にも対応出来るということは、今後この馬の強みとなるだろう。マイネルレーニアは中途半端なレースになってしまったが、このメンバーではまだまだ力不足か。マイネルシーガルは、中間の調整を手加減した分、馬体が完全には仕上がっていなかった。


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抱きしめたいほどに強い

Hansinjf06 photo by echizen
阪神ジュべナイルF2006-観戦記-
好スタートを切ったルミナスハーバーがそのまま先頭に立ち、淀みのないペースでレースを引っ張った。かなり速いペースで行っているのだが、前もなかなか止まらないという開幕週らしい展開で、後ろから行った馬たちは厳しいレースを強いられた。

勝ったウォッカは、出たなりの好位でレースを進め、しかも内埒沿いの走りやすい経済コースを進むことができたように、結果的には全てがうまくいった。直線で外に持ち出されると、豪快なフットワークで一完歩ずつアストンマーチャンに迫り、ゴール前では見事に差しきった。跳びの大きなこの馬にとって、新しい阪神1600mのコースは走りやすかったに違いなく、またマイル以上の距離を経験してきたことも、最後の最後にプラスに働いた。牝馬離れした頑強な馬体は父タニノギムレット譲りで、距離の延長も全く問題ないだろう。新生阪神から生まれた初めてのヒロインは、来年のクラシックにもつながっていく予感を久しぶりに抱かせられた。

圧倒的な1番人気に応えられなかったアストンマーチャンだが、好スタートからほとんど折り合いを欠くこともなく、ルミナスハーバーを見ながら追い出して、最後の最後まで脚を伸ばしている。この馬の良さを新しい阪神1600mコースで最大限に生かした、武豊騎手の文句のつけようのない騎乗であった。負けるべくして負けた感はあるが、マイル戦でこれだけの走りが出来たことは、アストンマーチャンの素質の高さの証明に他ならない。3着以下との差も3馬身とあるように、今回は勝った馬が強かった。

陣営の不安が小牧騎手の騎乗に乗り移ってしまったかのような、ルミナスハーバーの負け方であった。馬自身も入れ込み気味で、さらに前走で外から被せられて引っ掛かっていることも頭にあって、小牧騎手は仕方なく逃げさせたのだろう。とはいえ、アストンマーチャン以下の有力馬の目標になったことは明らかで、結果的にはこの馬の武器である末脚を殺してしまった。よほどノーマークのスローにならない限り、新しい阪神のマイルコースを逃げて勝つことは難しい。いずれにせよ、ルミナスハーバーと小牧太騎手が勝つには、まだまだ力不足であった。

ハロースピードはゲートのタイミングが合わず、後ろから末脚勝負に徹さざるを得なかった。最後は伸びているが、あの位置からではとても届かない。イクスキューズは出脚がつかず、道中がチグハグな競馬になってしまったことが悔やまれる。パンチ力が足りないのが現状だが、乗り方次第ではもう少し上位に来てもおかしくはない。


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悲劇のプリンセス

Elizabeth06 by mighty
エリザベス女王杯2006-観戦記-
誰がこんな結末を予想しただろうか。もちろん、カワカミプリンセスの降着のことである。スパッと切れる馬ならともかく、カワカミプリンセスがジワジワと伸びる馬だけに、本田騎手も進路が狭くなりそうになって平常心を失ってしまったのだろう。コース取りから馬の追い方まで、誰の目にも乱暴に映り、降着の判断は妥当と言わざるを得ない。

基本的に馬は苦しくてヨレる。カワカミプリンセスもそうだったのだろう。しかし、それでも前へ前へと進もうとする強い心には改めて驚かされた。こういう形で無敗記録は途切れてしまったが、どの馬にも先着されていないという事実には変わりはなく、エアグルーヴに並ぶだけの力を持った名牝の誕生を感じさせられたのは私だけではないはずだ。

結末も意外なら、ペースも意外であった。シェルズレイが暴走気味に飛ばし、さらにスローと読んでいた武豊アドマイヤキッスも積極的に前に行ったことにより、2番手以降の馬群も縦長の超ハイペースとなった。ラスト3ハロンの上がり時計36秒7は、トゥザビクトリーが勝ったあの平成13年のレースよりも掛かっていることになる。

この上がりの掛かる展開は、カワカミプリンセスにはおあつらえ向きであった。さらにハイペースで馬群が縦長になったことにより、外々を回されることもなく、直線での斜行以外は全てが上手く行ったレースであった。ヨーイドンの瞬発力勝負のような生ぬるい展開ではなく、今回のレースのようなスタミナと底力を必要とされる展開でこそ、この馬の真の強さが発揮される。見た目も血統も地味な馬であるが、スピードとスタミナを兼備していて、追えば追うだけ伸びる、底知れず神秘的な力を秘めている。

まさに棚からぼた餅の勝利を飾ったフサイチパンドラであるが、この馬にとっても、上がりの掛かる展開が向いた。後方から自分のペースを守ってレースを進め、直線でムチを使わないという福永騎手の好判断もあって、最後までこの馬の力を出し切った。2着以下でも以上でもない内容ではあったが、少しずつ肉体的な資質に精神面が追いついてきているのは間違いない。

昨年とペースこそ180℃違え、スウィープトウショウにとっても悪くない展開であった。この馬本来の体調であれば突き抜けているレースだが、直線でも全く伸び切れていない。天皇賞秋での馬体減や中1週というローテーションの問題もあったのかもしれないが、もしかすると競走馬としての翳り(かげり)の兆候が見えてきているのかもしれない。

ディアデラノビアは内々で我慢して、最後の直線でもしっかりと伸びている。もうワンパンチ足りないのが現状だが、この馬なりには力を発揮しての結果である。

アサヒライジングにとっては少しペースが速すぎた。遅すぎて瞬発力勝負にもしたくなかったが、ここまで速いと後ろから来る馬にはかなわない。それでも最後まで粘り通しているように、いつでもG1クラスで勝ち負けになるだけの実力を身に付けていることを証明した。

アドマイヤキッスは積極的に勝ちにいったことが、ハイペースとなったことにより、結果的には裏目に出てしまった。道中はゆったりと行きたいタイプだけに、今回は展開が向かなかった。厳しい展開を走りきるだけの能力が、まだまだ足りないということだろう。


競馬はスポーツの王様ですね。
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チョットやソットじゃ

Tennosyoaki06 by M.H
天皇賞秋2006-観戦記-
果敢に逃げたインティライミを目標に、安藤勝己ダイワメジャーがレースの主導権を握り、平均よりも少し早目のラップで道中は流れた。ほぼレース前より想定されていた通りの展開となったため、各馬ともに自分のポジションでレースを進め、力を発揮することが出来たレースとなった。

勝ったダイワメジャーにとっては、まさに計算どおりのレースであった。全体の時計が1分58秒8で、レースの上がりが35秒6という、後続の瞬発力を封じつつ、自身の地脚の強さを生かしきるには最高の流れと上がりに持ち込むことができた。しかし、それ以上に、安定して最後まで走り抜くことが出来るようになったダイワメジャーの精神面での成長が大きい。東京競馬場のように、直線が長く、坂があるコースで、これだけ力強い末脚を繰り出すことが出来るのであれば、チョットやソットのことでは他馬に先着を許すことはないだろう。

前走の毎日王冠で、トップスピードに乗った直線でダンスインザムードを差し返す離れ業を演じたが、本気で走ったダイワメジャーに安藤勝己騎手自身も相当な能力を感じていたに違いない。また、ムチを使わずに手綱だけで追った方が、この馬にとって最適であることも掴んでいたのだろう。後続から差を詰められても、慌てず騒がず、ダイワメジャーをファイトさせ続けることだけを心掛けた、安藤勝己騎手のベテランらしい落ち着いた騎乗であった。

2着に差し込んだスウィフトカレントは、横山典弘騎手の立ち回りの巧さが光った。最後は底力の差を見せ付けられた形となったが、内々を立ち回り、4コーナーでもギリギリまで仕掛けを遅らせて、この馬の能力を最大限に出し切っている。横山典弘騎手は2着というイメージが定着してしまった感があるが、実際は上手く乗っての2着と下手に乗っての2着の両方がある。先週の菊花賞は後者であるが、今週のスウィフトカレントは前者である。

アドマイヤムーンは最後の直線で行き場を失くしてしまったのが残念だが、古馬の一戦級の中でよく走っている。ワンパンチ足りない感はあるが、最後まで伸びてきているように、直線で真っ直ぐ走ることが出来るようになればG1のタイトルにも手が届くかもしれない。

1番人気のスウィープトウショウは、本来の伸びを全く見せず惨敗してしまった。差して来られる展開でこれだけ伸びを欠いたのは、明らかに体調が万全でなかったからである。心配されていた返し馬はスムーズに出来ていたが、やはり休み明けの前走であれだけの走りをしてしまった反動が出てしまった。能力は高いが、精神的に難しいところのある馬だけに、次走に向けて、どこまで立て直していくことができるだろうか。

同じく人気になった牝馬のダンスインザムードは、追い出されるやズルズルと後退してしまった。スタミナと底力が問われる流れになってしまったことにより、牡馬との差が出てしまった。また、前走の毎日王冠で、ダイワメジャーにぶつけられて、さらに差し返された精神的な影響も少なからずあったのかもしれない。そう思わされるほど、外からダイワメジャーに馬体を併せようとした途端、外に逃げ、走る気を失ってしまっていた。


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最後に吹いた一陣の風

Kikka06 by M.H
菊花賞2006-観戦記-
1000mの通過ラップが58秒6という、とても長距離戦とは思えないハイラップで、武豊アドマイヤメインがレースを引っ張った。もちろんこのラップはアドマイヤメインのものだが、後続の馬たちも速すぎるくらいのペースで進んでいたことになる。穿った見方をすれば、武豊騎手が刻んだラップだけに、人気馬に騎乗したジョッキーたちが盲信してしまった結果ともいえるだろう。

勝ったソングオブウインドは、有力馬の動きを度外視して、自分のペースでレースを進めていた。前走で多少引っ掛かったこともあり、武幸四郎騎手も前半は折り合いをつけることに専念する意識が強くあったのだろう。ハイペースになって隊列が長くなったことにより、大外枠を引いたことも、かえって幸いした。展開がハマったことは確かで、無欲の勝利とも言えるが、このレコードタイムで走りきった潜在能力は計り知れない。エルコンドルパサーの産駒は、この菊花賞に4頭も出走させてきており(うち3頭は母父サンデーサイレンス)、今後は見ることのできないこの配合の成長力を目の当たりにした。

2着のドリームパスポートは、実に惜しい競馬をした。勝ちを意識したばかりに、有力馬を深追いしたことが裏目に出てしまった。ドリームパスポートの末脚を最大限に引き出すとすれば、もう少しこの馬のペースで走らせてあげるべきであったのではないか。自分の馬のリズムを貫くことのできる大胆な横山典騎手にしては珍しい、騎手の意識が先行してしまった騎乗であった。とはいえ、ドリームパスポート自身は最後まで伸びており、春よりも長く良い脚を使えるように成長している。

レースをエキサイティングに演出したのは、アドマイヤメインのスピードの持続を極限まで引き出した武豊騎手の騎乗であった。結果的にはバテてしまったが、この馬の良さを最大限に引き出したのではないだろうか。体調もまだまだ完全ではなく、ここまで粘り切れたのは潜在能力の高さゆえである。これからゆっくりと調整をすれば、G1の一つや二つは取れるだけの能力は秘めている。

3冠がかかったメイショウサムソンは、直線で力尽きてしまった。夏場を自厩舎で過ごし、馬体を緩めずに調教をしてきたのだが、それでもピークであったダービーから4ヶ月で本番を迎えるという調整の難しさはあったに違いない。馬体重がさらに増えていたように、絞りきれない部分も少なからずあったのだろう。しかし、この敗北でメイショウサムソンの評価が下がるわけではない。極限のスピードとスタミナが要求された今回のレースで、勝たなければならない使命を背負い、自ら動いていったメイショウサムソンと石橋騎手の勇敢さに拍手を送りたい。

天皇賞秋からこちらに回ってきたマルカシェンクは、極限のスタミナを問われるレースになって、本来の伸びを欠いてしまった。調教師としては2000mの方に適性があると考えていただけに、関係者にとっては非常に悔いが残るレースであったろう。


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いざ真の女王へ

Syuka06 by echizen
秋華賞2006-観戦記-
大外枠からトシザサンサンとコイウタが逃げる展開で、前半の1000mが58秒4というハイペースでレースは流れた。とはいえ、前の2頭は暴走気味で、実質的にレースの主導権を握っていたのは、離れた3番手を追走したアサヒライジングということになる。アサヒライジング以下のグループは、全体的に平均よりもやや速い程度のラップで道中を進んだ。

勝ったカワカミプリンセスは、こういったスピードの持続を求められるレースに滅法強い。京都の2000m内回りは、瞬発力ではなく、スピードの持続力を問われるレースになることが多く、まさにその典型的な流れにカワカミプリンセスの個性がドンピシャに当てはまった。オークスと同じく、平均的に速い流れを追走し、直線に入ってからさらに伸びるという離れ業を演じてみせたのだ。プラス8kgの馬体重は、成長分を含めても多少の太め残りに映ったが、そんなことを微塵も感じさせないレースぶりであった。これで無傷の5連勝となったわけだが、あと残された課題は極限の瞬発力勝負に対応できるかどうかだけである。その答えは、エリザベス女王杯で明らかになるだろう。

カワカミプリンセスの強さが目立ったレースだが、本田騎手のファインプレーも見逃せない。3コーナーから4コーナーにかけて、カワカミプリンセスが自ら動いて勝ちに行ったことが、結果的には勝敗を決したことになる。武豊騎手が騎乗する1番人気のアドマイヤキッスと、安藤勝己騎手のキストゥへヴンを後ろに置いて、あの時点から自ら動いていったその度胸には驚かされた。後ろを気にして、あと少し仕掛けが遅れていれば、もしかするとアサヒライジングを捉えられなかったかもしれない。カワカミプリンセスがいくら地脚の強いタイプとはいえ、切れる人気馬2頭を意に介さない積極的な仕掛けは、愛馬の力を信じたベテランジョッキーらしい腹の括り方であった。

Syuuka06 by fake Place

あわやという瞬間を作ったアサヒライジングも、地脚の強いタイプで、こういった瞬発力を問われないレースが向いた。柴田騎手の外枠を利したコース取りや位置取りも、文句のつけようがない好騎乗であった。追ってそれほど伸びるタイプでもないので、最後の仕掛けのタイミングもあれがベストだろう。馬も騎手も、完璧なレースをして力を出し切っている。まさに勝った馬が強すぎた。

3着に入ったフサイチパンドラも、現時点での持てる能力はほぼ発揮できている。惜しむらくは、内枠に入ってしまったことにより、この馬のフットワークで走ることが出来なかった箇所があることだ。外枠からの発走であれば、もう少し勝ち馬との差はきわどかっただろう。それにしても、最後まであきらめることなく走り切れたように、精神面での成長が見て取れたレースである。

1番人気に押されたアドマイヤキッスは、後方を馬なりで追走するも、直線では意外に伸びず4着と惨敗した。平均的に速いペースを追走して、脚をなし崩し的に使ってしまった感が強い。京都の2000mはこういったペースになりやすく、道中ゆっくりと行って、瞬発力で勝負したいサンデーサイレンス産駒には今年の秋華賞は向かなかった。とはいえ、精神的にも肉体的にも安定してきており、もし次走でエリザベス女王杯に出てくることがあれば、自慢の瞬発力を発揮することができるはずである。

キストゥへヴンは内埒沿いを引っ掛かりながら進み、直線でも弾けるところがなかった。マイナス6kgの馬体重も、もしかするとまだ太め残りだったのかもしれない。それとも、前走で落馬に巻き込まれたことによる精神的な影響が少なからずあったのかもしれない。いずれにせよ、はっきりとした理由が分からないほどの凡走であった。次走以降のレースについては、少し様子を見るべきである。


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条件戦のような国際G1レース

Sprinters06 by M.H
スプリンターズS2006-観戦記-
多少なりとも緩くなった馬場を考慮しても、G1のスプリント戦としてはスローな流れとなった。終わってみれば、テイクオーバーターゲットただ1頭の力が抜けていたということになる。後続の馬たちにはまるで伸びる気配すらなく、まるで条件戦のようなあっさりとしたレースであった。

今年から国際G1レースへと昇格したものの、「G1レースを当たるために」でも書いたように、マイラーとスプリンターの分極化による日本馬のレベルの低下は否定しがたい。このまま「グローバル・スプリント・チャレンジ」に飲み込まれてしまっても、短距離馬の層が厚い香港馬やオーストラリア馬に掲示板を独占されてしまう日も近いのではないか。

勝ったテイクオーバーターゲットの適応力と回復力には驚かされた。初コースや小回りコースをモノともせず、サイレントウィットネスと競り合ったように見えて、実はスタートから終始自分のペースでしたたかにレースを進めていた。さらに、よほど日本の水が合ったのか、馬体が絞れていながらもプラス体重で出走してくるという、外国馬としては過去に例のない回復力を示していた。大型馬ながらも器用なレースが出来るため、この後に控える香港スプリントで100万ドルのボーナスを手にすることももはや夢ではないだろう。

メイショウボーラーは、枠順やコース取り、ポジショニングの全てが上手くいっての結果だが、ここにきて復調を示していたように、大駆けの下地は整いつつあったということだろう。福永騎手もポンと出たメイショウボーラーを抑えて、力のある外国馬2頭の後ろという絶好のエアポケットでレースを進める好騎乗であった。

タガノバスティーユは、この展開をよくぞ追い上げてきている。大外を回していれば間違いなく中団に沈んでいるが、前が詰まったら仕方ないと腹を括った勝浦騎手の大胆な騎乗が功を奏した。

サイレントウィットネスは潜在能力を示してくれたものの、やはり全盛期の勢いはなかった。中間の追い切りや動き、そして当日の雰囲気を見ても、まだまだ昨年ほどの輝きを感じることはできない。こういったマッチョなタイプは、一旦調子を崩すとなかなか立て直すのが難しいだけに、果たしてどこまで復調できるだろうか。

サマースプリントチャンピオンのシーズトウショウは、追い出してから全く伸びず8着に敗れた。セントウルSで100%に仕上がっていただけに、目に見えない疲れが本番で噴出してしまったということだろう。今年は力を抜いてリラックスした走りが出来ていただけに、本番前にセントウルSを使ってしまったことが非常に悔やまれる。

オレハマッテルゼは4コーナーで見せ場は作ったが、9着と振るわなかった。休み明けが主な敗因だが、一瞬の集中力でしか走らないこの馬を、外々を回すという柴田善臣騎手の拙騎乗にも敗因はある。阪急杯と同じパターンの負けを、柴田騎手はどう捉えているのだろうか。


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これがヨーロッパである

ハーツクライが欧州最強の2頭に差し返された瞬間、これがヨーロッパであると改めて感じた。あのハーツクライが、後ろから差されたのである。日本であれば考えられないことである。ルメール騎手の仕掛けは、決して早くはなかった。ヨーロッパには、ハーツクライ以上に、最後まで脚を伸ばし続けることが出来る馬がいるということである。

実を言うと、私たち競馬ファンが思っている以上に、ハーツクライがキングジョージを制することは難しいだろうと考えていた。その理由を述べてしまうと、ディープインパクトの凱旋門賞にも水を差しかねないのでここでは黙っておくが、ハーツクライの体調がベストではなかったということ以上に、もっと単純明快で根本的な理由である。ヨーロッパの壁は、私たちが思う以上に厚くて高いのだ。

だからこそ、ハーツクライの健闘には心を打たれた。先頭に立った瞬間は、奇跡が起きたかと思ってしまった。結果が全てではないと思う。挑戦して、敗北したことから生まれることの方が実は多いのかもしれない。関係者には最大級の賛辞を贈りたい。間違いなく、世界競馬における今年のベストバウトのひとつである。

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Who's Gonna Beat Me?

Takaraduka06

直前から降り始めた大雨の影響で、芝は剥げ、泥でぬかるんだ、最悪の馬場でレースは行われた。勝ち時計などほとんど参考にならない不良馬場で、道悪に対する巧拙が着順を大きく左右したレースとなった。

そんな中、勝ったディープインパクトだけは、道悪などモノともせず、力の違いをまざまざと見せ付けた。ディープインパクトは、本当に強い馬であれば、どのような条件でも克服してしまうことを見事に証明してくれた。ディープインパクトのような跳びが大きくて綺麗な馬は、下(馬場)が悪いと、どうしても滑りやすく、そのスピードを半減させられてしまう傾向がある。おそらく、いつものディープインパクトのフォーム(走り方)では、今回の宝塚記念は上滑りしてしまう馬場であった。

しかし、ディープインパクトは一完歩一完歩に力を入れて、緩んだ馬場をしっかりと捕らえて走っていた。そして、実は、ヨーロッパの深い馬場でも、一完歩一完歩に力を入れて走ることが求められるのだ。意味がないように思われていた今回の宝塚記念出走で、大雨が降ったことにより、奇しくもヨーロッパ向きのフットワークの予行演習ができたのである。10月1日の大仕事に向かって、あとはとにかく無事に行ってほしい。

2着に入ったナリタセンチュリーと、3着に粘ったバランスオブゲームは、このメンバーの中で、最も道悪を苦にしない2頭だったということだろう。道悪が得意な馬などいないが、この2頭はほとんど良馬場と同じようなレースが出来たということである。

リンカーンは好位につけて、道中は理想的なレースをしていたが、直線で追ってからサッパリであった。道悪が大きな原因だろうが、勝った馬と比べてしまうと、何も言い訳はない。

コスモバルクも、本来は良馬場のスピード競馬を得意とする馬で、これほどの不良馬場は不向きであった。パドックでも落ち着いていて、遠征帰りの影響は感じられなかったが、馬場に殺されてしまった。


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アジアンマイルキング

Yasuda06 by M.H
安田記念2006-観戦記-
前半と後半の800mが0.2秒しか違わない、このメンバーとしてはスローに近いペースで流れたことにより、直線に向いてからの瞬発力が問われる上がりの競馬となった。こういったヨーイドンのレースでは、エンジンが掛かってから前をカットされることは致命傷につながる。直線でゴチャついたこともあり、全力を発揮できなかった馬も多く、馬群を上手く縫えた馬が上位を占めた印象が強い。その他、道中での不利を受けた馬も多く、後味の悪いレースとなってしまった。たとえ国際レースとはいえ、まともに真っ直ぐ走れない馬を連れてくる必要はないのではないか。もし故意によるものであれば、国際化の大きな障害にすらなりえる許されない行為である。

そんな中でも、勝ったブリッシュラックの力は一枚も二枚も抜けていた。ゲートからの最終追い切りでは遅かったスタートも、本番では抜群の出で、なんと中団に付ける積極的なレースを見せた。周りに馬がいると燃えるタイプなのか、ブリッシュラック自身も行く気になっていたし、前が止まりにくい馬場状態を考えると、ブレブル騎手としても作戦通りといったところではなかったか。あとは直線に向いて追い出すだけで、馬群から外に持ち出されると、グイグイと大きなフットワークで最後まで伸び、ゴール前は抑える完勝であった。

ブリッシュラックは、手脚の異常に長い、日本ではあまり見かけないタイプの馬である。マイル戦で結果を残しているが、おそらくは2000mまでならビクともしないスタミナも兼備しているはずで、そういった意味でも、府中のマイル戦はまさに適鞍だったといえるだろう。そして、こういった体つきの馬は好調が長続きすることも特徴のひとつで、前走のピークの状態をそのまま維持していた。昨年はハットトリックが香港に遠征してG1レースをもぎ取って帰ってきたが、今年はブリッシュラックという香港馬によって、見事に借りを返される形となってしまった。

アサクサデンエンは、昨年のディフェンディングチャンピオンとして、日本馬の中で唯一気を吐いた。とはいえ、ドバイ遠征帰り初戦ということもあってか、昨年ほどの積極的な騎乗ではなかった。2着狙いということではないのだが、この馬のリズムで走らせることだけに道中は専念し、結果として最もスムーズな競馬が出来たということになる。それでも、最後の伸びは際立っており、なんとか意地を見せてくれた。

ジョイフルウィナーは、外々を回してしまい、最後は力尽きてしまった。ブリッシュラックと比べると、スタミナに欠けるきらいはあるが、もう少しロスのない競馬が出来ていれば、最後まで伸び切っていたに違いない。この馬にとっては枠順が災いした結果となったが、それがゆえに、香港の馬の強さをまざまざと実感させられた。

ダイワメジャーは、最後まで踏ん張っているように、この馬の力は出し切っている。安藤勝己騎手もギリギリまで追い出しを我慢していたが、ゴーサインを出してからの瞬発力があまりにも違いすぎた。府中のマイル戦は得てしてこういうレースになってしまうことが多く、スピードと力で押し切るこの馬の得意パターンに持ち込むことが出来なかった。
ダンスインザムードも道中でゴチャついたことにより、前走に比べるとスムーズなレースが出来なかった。直線でスペースはあったが、残念ながら、そこを突いて抜け出すだけの精神力がこの馬にはなかった。

1番人気に押し出されたオレハマッテルゼは、道中で後ろから乗っかられて引っ掛かってしまった。もう少しスムーズに運べていれば結果は違ったはずだが、いずれにせよ、この馬にとっては距離が長かったことは否めない。

テレグノシスはスタートこそ五分に出たが、二の脚がつかず、最後方からの競馬を強いられた。武豊騎手としては、勝ち馬(ブリッシュラック)がしたような競馬をイメージしていたはずだが、馬が動かなかった。この馬もすでに7歳馬であり、得意の条件で全く伸びを欠いたように、衰えもあるのかもしれない。同じ7歳馬ながら、騸馬であるブリッシュラックとの勢いの違いが如実に表れてしまった結果となった。

カンパニーは、道中で再三不利を受けてレースにならなかった。しかし、馬体が少し太く見えたように、仕上がりが良くはなかったように映る。中山記念から中途半端に間が空いてしまうことにより、仕上げが難しかったのだろう。今後も、ローテーション的に中山記念組は狙いにくい。

ハットトリックは、直線で内を突いて伸びかけたが、前が塞がってしまった。そこから、もう一度伸びる脚が残っていなかったように、昨年の絶好調時にはまだまだ遠い。前に位置しようという岩田騎手の試みは見えたが、馬がそれに応えられるだけの出来になかった。


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死ぬほど悔しいけど、おめでとう。

Derby06 by Ken
ダービー2006-観戦記-
アドマイヤメインが刻んだ前半1000m62秒5というラップは、稍重という馬場状態を考慮しても、典型的なスローペースである。最後の直線に向くまでほとんどラップが上がることもなく、また馬場が渋っていたため後ろからは追い込みにくく、差し追い込み馬にとっては非常に厳しい展開となった。

勝ったメイショウサムソンは、スタートからフィニッシュまで、ほぼ完璧なレース運びでダービー馬に輝いた。この馬が勝つために今年のダービーはあったのか、と思わせるほどの完勝劇であり、まさに勝つための全ての条件が向いたといってよいだろう。

まずは、前日からの降雨によって馬場が渋ったことが、この馬にとっては最大の幸運であった。後ろから切れる脚を使う馬が持ち味を殺されたことにより、自信を持って前の馬を捕まえにいくことが出来たからだ。さらに、内枠を引いたことにより、折り合いがつき、馬場の良い経済コースをロスなく進むこともできた。

とは言っても、このお膳立てを生かすことが出来たのも、メイショウサムソンのもつ肉体的・精神的な強さがあってこそである。皐月賞後に一旦は疲れを見せていたが、ダービーの最終追い切りの頃にはグングンと勢いを取り戻していたように、肉体的に非常に健康である。また、普段は牛のように大人しいのだが、レースにいくと闘志をむき出しにするのはまるで闘牛のようでもある。あとこの馬に望むとすれば、高速馬場になって問われる手脚の軽さだけである。同じオペラオハウス産駒のテイエムオペラオーが、古馬になり、軽さを兼備してから最強馬となったように、メイショウサムソンがこれから勝ち続けるためには軽さが必要となるだろう。ひとまず休養して、秋にどのような成長した姿を見せてくれるか、今から楽しみである。

「皐月賞より3倍長く感じた」と石橋守騎手はコメントしているが、アドマイヤメインを交わして、後方から誰も来ないことを確認しながら馬を抑えているように、レースの全体像がはっきりと見えていたのだろう。枠順を生かしたコース・位置取りは見事であったし、自分の馬の能力や馬場状態、そして他馬の末脚を見切っていたようで、ほぼ完璧な追い出しのタイミングであった。これまで数々の修羅場をくぐってきたベテランらしい、落ち着いたソツのない騎乗が光った。馬券は外してしまって悔しいけど、素直におめでとうと言いたい。

アドマイヤメインは、馬場に持ち味を殺されてしまった。跳びの大きくて綺麗な馬だけに、今回の馬場は走りにくかっただろう。最後は力でねじ伏せられてしまったが、それでも2着に粘っているように、極めて能力は高い。パンパンの良馬場で軽快に逃げることが出来ていれば、もしかするとこの馬の圧勝劇もあったのかも知れないと思わされるほどの充実ぶりである。

ドリームパスポートは、やはりこういった馬場を得意とするようで、メンバー最速の34秒9の末脚でスローペースを追い込んだ。一瞬の素晴らしい脚を使うのだが、その持続力という点において、勝ち馬にどうしても劣ってしまう。外枠は不利だったが、体調も最高潮で、持てる力は存分に発揮した。

マルカシェンクも厳しい競馬を強いられたにもかかわらず、最後まであきらめず、よく走っている。成長力という点では疑問があるが、潜在能力は高いことを証明した。

アドマイヤムーンは、スタートで行き脚がつかず後手に回り、道中はスローの団子状態で動けず、馬場の悪いところで揉みくちゃにされた。武豊らしくない騎乗であったが、レースの綾でもあり、仕方ないといったところか。とはいえ、距離的な限界があったのか、道中で嫌気をさしてしまったのか、アドマイヤムーンは最後の直線でも伸びる気配を全く見せない完敗であった。

フサイチジャンクの最大の敗因は、自身の体調が下降線を辿っていたことに尽きる。それに加えて、大きなフットワークで走るこの馬にとって、今回の馬場は向かなかった。2つの原因が重なってしまったことにより、この馬の力を全く出し切ることが出来ていない。肉体面や精神面において将来性が非常に高い馬なので、夏の間にもう一度立て直して、秋にはパワーアップしたフサイチジャンクの活躍を見てみたい。


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チョッとやソッとじゃ止まらない

Oaks06 by Ken
オークス2006-観戦記-
ヤマニンファビュルが1000m58秒1という暴走ラップで飛ばしたが、この時計に惑わされてはいけない。アサヒライジングが実質逃げる形になったため、2番手以降は、この馬場にしては平均からスローペースで流れた。全体的には緩やかなラップで流れたにもかかわらず、最後はどの馬も脚が上がってしまっていたように、最後は我慢比べのレースとなった。

勝ったカワカミプリンセスは、そんな我慢比べの競馬を見事に凌ぎ切った。初戦は逃げ切りで、2戦目は追い込んで勝ったように、レースに行っての柔軟性がある。父譲りの頭が高い走法のためスパッとは切れないが、ヘコたれることなく最後まで伸び切る精神力には頭が下がる。気性的にはまだ幼い部分を残しており、また、肉体的にも伸びしろがある馬なので、今後どのような成長を見せてくれるか楽しみである。

本田騎手も、カワカミプリンセスを100%信頼した積極的な騎乗であった。スタートから馬任せで好位を確保し、4コーナー手前では早目に動いて勝ちに行った。横綱相撲というべきレース運びは、チョッとやソッとのことでは止まらないであろう愛馬の能力を把握していたからこそ、成しえた芸当である。

フサイチパンドラは、広々とした東京コースが合っていたのだろう。また、福永騎手の外に出すタイミングも絶妙であった。調教では古馬を圧倒するように、元々走る能力は持っている馬である。しかし、今回は気分屋な面が良いほうに出たが、次回は凡走してしまうことも十分に考えられる馬でもある。

1番人気を背負ったアドマイヤキッスは、直線で伸びきれずに4着と、桜花賞に続き、またもや人気に応えることができなかった。外々を回る形になったが、跳びの大きな馬だけに、自分のストライドで伸び伸びと走っていた。それでも伸び切れなかったのは、馬体重が大幅に増減していることからも分かるように、まだ体調が安定していないのだろう。秋以降の成長に期待したい。

同じく人気を背負った桜花賞馬のキストゥへヴンも、直線では見せ場もなく敗退した。桜花賞を勝った後に、一旦馬体を緩めたことにより、仕上がり自体が万全ではなかったのではないか。桜花賞を勝った馬にとっては、桜花賞からオークスまでの中途半端に長い期間を考えると、そのままの状態を維持するか、それとも一旦緩めるかという難しい選択になってしまう。今回のキストゥへヴンは後者を選択したのだが、いずれにせよ、この時期の牝馬をピークに仕上げるのは難しい。

コイウタは、3コーナー手前で競走を中止した。最終追い切りも軽めに終始していたように、どこか不安な部分(万全でない部分)があったのではないかと憶測してしまう。一生に一度しかないレースとはいえ、無理して出走してくることは決して良い結果にはつながらない。この馬が競走を中止したことにより、大きな不利を受けて、一生に一度しかないレースで満足いく走りが出来なかった馬もいるのだから。


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Dance,dance again!

Victoriamile06 by gradeone
ヴィクトリアマイル2006-観戦記-
心配された雨も止み、ほとんど良馬場に近い稍重馬場でレースは行われた。府中のマイル戦にしては珍しく、前半4ハロンのラップも47秒5という遅さで、道中で後ろに位置しすぎた馬や、外々を回された馬にとっては厳しい展開となった。

そんな中、1番の絶好枠を引き当てたダンスインザムードは、内々をロスなく立ち回り、桜花賞以来2年1ヶ月ぶりの勝利を手に入れた。元々、肉体的には牝馬として最高レベルにある馬であり、精神的なゆとりを取り戻したことが今回の最大の勝因である。忍耐強く精神面のケアを続けた、関係者の方々の見えない努力がようやく実った。昨年秋からの走りを見ると、完全復調なったと考えて良いだろう。

北村騎手は、昨年の天皇賞秋の悔しい経験を生かし、今回は最後の最後のギリギリまで追い出しを我慢していた。まるで藤沢流の調教を見ているようで、ダンスインザムードという馬を知り尽くした最高の騎乗であった。4コーナー出口であれだけ手応えがあると、早目に抜け出したいというのが騎手の心情ではあるが、そこをグッとこらえることが出来たことは、必ずやこれからのレースに対する自信にもつながっていくに違いない。

ただひとつだけ苦言を呈するならば、ゴール前でのひとムチは必要なかったのではないか。ムチを入れるまでもない手応えの差であったし、馬が伸びきったあの時点でムチを入れても、あれ以上に伸びることはないだろう。勝ちが見えて無我夢中で入れてしまったひとムチではあるが、ダンスインザムードが尻尾を振って嫌がっていたように、せっかく前向きになってきた馬の気持ちを逆撫ですることにも繋がりかねない。北村騎手にとっては、最後の100mだけは反省材料が残るレースであった。

エアメサイアはプラス体重もなんのそので、直線でも良く伸びて勝ち馬に迫った。スローペースの外々を回り、なおかつあれだけの脚を使うのだから、この馬にとっては運が向かなかった。枠順に恵まれていれば、かなり際どい勝負になったのではないか。道中ゆったり行けて、ラストの瞬発力勝負というレースには滅法強いことを、再び証明した。

ディアデラノビアは、いつもよりも前に位置して、4コーナーではあわやという手応えであった。エアメサイアと比べるとパワーで見劣りしてしまったが、この馬もラスト3ハロン33秒8の脚でかなり切れている。今回は道中で引っ掛かることもなく、スムーズに折り合い、岩田騎手も納得の騎乗であったのではないか。

1番人気のラインクラフトの敗因をひとつだけ挙げるならば、やはり距離の問題だろう。1200m→1400mというステップレースを使って、G1レースのマイル戦に臨んできた馬にありがちな直線での沈み方であった。今のラインクラフトに刷り込まれているペースで走ると、府中のマイルは長すぎたということになる。同じ馬でも、使ってくるレースの選択によって、走るリズムが変わってくるのだ。また、古馬になって筋肉が付き、しっかりとした馬体になってきたように、マイル以下の距離で良さを発揮できる本質が表れてきたということでもあろう。いずれにせよ、牡馬に混じって走る今後は、短距離での活躍が望まれる。

ヤマニンシュクルは、直線までいい手応えで来たが、弾けなかった。やはり、前走で久しぶりの勝利を挙げた走りの反動が、少なからず出てしまったのだろう。脚元に不安のある馬は、仕上げることも難しいが、激走した後の反動をセーブすることもまた難しい。


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ロジックを超えた

Nhkmile06 by gradeone
NHKマイルカップ2006-観戦記-
上滑りのする高速馬場で、終わってみれば1分33秒2という速いタイムでの決着となった。やはり、この時期の府中の馬場は、これしきの雨では悪化しない。前に行きたい馬が揃っていたこともあり、全体的にペースが速く、差し馬にとって有利なレースとなった。

枠順を生かし、終始内々の経済コースを回ったロジックが、最後の最後でファイングレインを競り落として、父アグネスタキオンに初のG1タイトルをもたらした。とはいえ、この馬のアグネスタキオン産駒らしからぬおっとりとした気性と、スパッとは切れないがジワジワ伸びる末脚は、母父のサクラユタカオー譲りと思われる。コースや枠順、そして展開にも恵まれたことは確かだが、この馬自身も体が絞れて究極といえる状態にまで仕上がっていた。今回のNHKマイルカップを終えて、橋口調教師と武豊騎手という仕事人コンビの恐ろしさを改めて感じた。

仕事人といえば、横山典弘騎手の好騎乗も光る。引っ張るでもなく、押すでもない、何ともたとえ難い手綱捌きで、流れに乗りつつも、ファングレインのリズムを存分に生かす、非の打ち所のないレースであった。最後は勝ち馬の勢いに屈してしまったが、この馬も最後まで本当に渋太く伸びている。フジキセキ産駒らしからぬ底力は、母ミルグレインを遡ったミルリーフの血を濃く受けているのかもしれない。この馬も馬体を黒光りさせ、最高の状態に仕上がっていた。

キンシャサノキセキは、フサイチリシャールを目標にレースを進め、外から交わした時の脚は勝ったと思わせるだけの勢いがあった。フサイチリシャールが伸びなかったことが大きな誤算で、1頭になってフワッとしてしまった。標的を間違えた安藤勝己騎手としては、悔いの残る騎乗だろう。

フサイチリシャールの敗因は、おそらく精神的なところに求めるべきである。あの手応えで直線を向いて失速してしまうということは、肉体的な限界が来たのではなく、馬自身が走ることを自らやめてしまっているということだ。体型や距離の問題以前の、最後にひと伸びふた伸びする気力の問題である。もう少しスケールの大きな馬であったが、結果的に言うと、朝日杯フューチュリティSを勝つためにビッシリと仕上げて、しかも勝ってしまったことのツケが、ここに来て回ってきているのではないか。

マイネルスケルツィは、前走で仕上がっていた反動からか、追い出してから全く反応しなかった。上滑りの馬場を苦にするとは思えず、時計もほとんど前走と変わらない。この馬のように筋肉質のタイプは、急激に体調が下降線を辿ってしまうことがある。あまり将来性を期待できる馬体ではなく、今後はマイル以下かダート戦に照準を定めるのが妥当であろう。


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To The World

Tennosyoharu06
天皇賞春2006-観戦記-
ディープインパクトが遂に世界へと飛び立つ。京都の坂の上りから一気に上がって、そして一気に下がるというセオリー無視の競馬で、最後は他馬を力でねじ伏せてしまった。個人的には若駒Sでの走りに最も強烈な印象を持っているが、今回の天皇賞春は、それに次ぐインパクトを受けた。「これ以上強い馬がいるのかな、と思うくらい強い」という武豊騎手のコメントにも、素直に頷けてしまう。

しかし、レコードを1秒も更新する驚異的なタイムには、素直には頷けない。計算上では、あのマヤノトップガンよりも6馬身先にいることになるが、それはマヤノトップガンやサクラローレルを6馬身千切ったということを意味しない。そもそも、2着であったリンカーンがマヤノトップガンの3馬身前にいるとは思えず、今回のレコードタイムはディープインパクトの強さの証明ではなく、それだけのタイムが出る馬場であったことの証明に過ぎない。ディープインパクトの勝利に水を差す気はサラサラないが、時計が速いことが必ずしも強さの証明ではないことは、何度繰り返し言っても言い過ぎることはないだろう。

今後は海外遠征へ向けて、陣営も慎重に調整を進めていくに違いない。たとえディープインパクトが数々の常識を破ってきた史上最強馬であれ、あれだけ極限のレースをした後に、疲労が残らないはずがない。馬体重もデビュー以来最低の数字となっており、肉体的にはかなりギリギリのところまできている。もちろん精神面でのケアも必要にはなるだろうが、とにかく、ゆっくりと時間をかけて準備してほしい。海外へ行くことが目的の馬ではないのだから。これから、前人未踏の大勝負が待っているのだ。

リンカーンは、横山典弘騎手のソツのないレース運びで、堂々の2着を確保した。ディープの動きにつられて他馬が動いた中、ピクリとも動かずに脚をタメた騎乗は見事であった。リンカーンも好騎乗に応えられる状態にまで仕上がっていたし、やっとここにきて成長が窺える。昨年暮れまで子供子どもしていた顔つきや馬体の形が、ようやく大人になってきていた。このままの状態を保つことが出来れば、次走の宝塚記念も期待できるだろう。

ストラタジェムは内々を進み、ディープインパクトの後を追うようにして仕掛けられた。前から下がってくる馬を見事に捌きながら、あっと言う間に先団に取り付いてしまった。馬は舌を出してしまい追いづらそうだったが、ボス騎手のコース取りと仕掛けるタイミングは最高であった。

マッキーマックスは、スピードの出る馬場とペースが合わなかったのだろう。この馬も34秒8の上がりを使っているが、前の2頭は圧倒的に速かった。これと同じことがデルタブルースにも言え、今回の馬場やペースでは力を発揮することが出来なかった。


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22年分の幸せと経験をダービーへ

Satuki06 by M.H
皐月賞2006-観戦記-
メイショウサムソンの勝因は、スプリングSと同じく、パワーを必要とされる時計の掛かる馬場になったことである。渋太さが生きたレースとなったが、この馬自身の成長もまた著しい。4コーナーでも1頭だけ手応え抜群で、追い出されてからもヨレることなく、ゴールまで真っ直ぐに坂を駆け上がった。上がりを35秒1でまとめたように、ある程度の時計勝負に持ち込まれてもビクともしないだけの力を付けてきている。もしかするとこのまま2冠も、と思わせるだけの、力強いパフォーマンスであった。

デビューから22年目にしてG1レースを制した石橋騎手には、心から祝福の言葉を贈りたい。スタートから攻めに徹して、まるで1番人気の馬をゴールに導くかのような、正攻法の落ち着いた騎乗であった。腕っ節が強く、馬を御せる騎手として定評はあったが、ようやくメイショウサムソンというピッタリのパートナーを得て、クラシックの舞台を見事に駆け上がった。ダービーではベテラン騎手が活躍する傾向があるが、石橋騎手もぜひこれまでの豊富な経験を生かして臨んでほしい。

ドリームパスポートは、内々に徹した高田騎手の騎乗が見事にハマッた。一瞬は凄まじい脚を使ったが、坂を登り切った瞬間にパタッと止まってしまった。あとワンテンポ待って仕掛けていれば、もう少し際どかったとは思うが、あれだけ直線に向いた時の手応えが良ければ、勝ちを意識してしまったのも仕方ないか。この馬も距離が延びても良い馬なので、一瞬の脚を使うタイミングは難しいが、ダービーでも好勝負になるだろう。

フサイチジャンクは前走で苦手の重馬場を勝ったことによる反動か、マイナス6kgと馬体が枯れていた。道中もリズムが崩れて、本来の走りではなかったように映った。それでも3着に押し上げてくるあたりは地力の証明であるが、ダービーに向けては暗雲が立ち込める内容であった。まずは馬体の回復に努めなくてはならないだろう。岩田騎手は、武豊アドマイヤムーンを意識しすぎた、彼らしくない騎乗であった。

アドマイヤムーンは弥生賞ほどの唸る勢いがなかった。外々を回されたこともあるが、馬自身の体調が下降線を辿っていたことが大きな敗因だろう。春先から素晴らしい状態で使い詰めた結果、皐月賞までオツリが残っていなかった。ダービーまでは少し間隔が開くので、どこまで体調を戻すことができるだろうか。

フサイチリシャールは、4コーナー先頭という勝ちパターンに持ち込んだが、ラスト200mで失速してしまった。その止まり方を見ると、2000mの距離が長かったのだろう。ここにきて馬体に筋肉の量が増えていたのは、母方の血が強く出て、2歳時の伸びのある馬体から、マイラーの体つきに変化していたということである。この後、ダービーではなくNHKマイルカップに進むのは正解である。


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勝つためには勝つ気で乗らないこと

Okasyo06 by Shirley Heights
桜花賞2006-観戦記-
おにぎり型の阪神1600mコースで行われる最後の桜花賞を、外枠の後方からからキストゥへヴンが見事に差し切った。アサヒライジングが引っ張る流れは緩みなく、時計が掛かる馬場ながらも1分34秒台での決着となった。さらに、有力馬が4コーナー手前から動いたため、先行した馬にとっては息の入らない厳しい流れであった。

勝ったキストゥへヴンは、大外を回って、最後は他馬を力でねじ伏せた。まだまだ幼さを残す、力強さに欠ける馬体ではあるが、その分バネの利いた素晴らしい走りが出来るのだろう。ダンスインザムードに次ぐ関東馬の優勝となったが、今回が初輸送だったことを考えても、精神的にも実に強いものを持っているに違いない。

道中は折り合いだけに専念し、終いの脚を生かすことだけを考えた安藤勝己騎手の好騎乗も光る。ハイペースを読んでいたというよりも、馬の気持ちに逆らわないように乗った結果が、たまたま1着だったということだろう。「勝つためには勝つ気で乗らないこと」という安藤勝己の思想を貫いた、まさに無欲の勝利である。人気のない馬に乗った時の安藤勝己騎手は、本当に恐ろしい。

アドマイヤキッスは勝ちに行って負けたレースである。馬体も素晴らしい仕上がりにあり、スタートも抜群、道中の位置取りも理想的であった。4コーナー手前から動いていった分、後ろから2呼吸置いて仕掛けたキストゥへヴンに差されたが、武豊騎手としては一番勝つ確率が高い乗り方をしていた。あれで負けてしまったということは、最後まで凌ぎ切るだけの力がアドマイヤキッスに付いていなかっただけのことである。次走オークスの距離は問題ないが、馬体が減りすぎていたことが少し気になる。

コイウタは道中少し力んで走っていたが、最後は差し返しているように、力は出し切った。使いつつ馬が良くなってきていたが、やはりG1レースを勝ちきるにはもうワンパンチ足りない。これからも牝馬同士のマイル戦までなら、永く一戦で活躍できるのではないか。

アサヒライジングは澱みないペースでレースを引っ張り、最後の最後まであきらめることなく粘った。ここにきて馬が自信をつけてきており、久しぶりにG1レースを勝った柴田騎手の手綱と呼応するように、実にキップのいいレースを見せてくれた。

テイエムプリキュアは、やはり道中の速いラップに付いていくことが出来なかった。重馬場の阪神ジュべナイルFでも道中追っ付け通しだった馬が、いくら時計が掛かるとはいえ、良馬場でのスピード決着となると明らかに分が悪かったか。

フサイチパンドラは、気性面での難しさがモロに露呈してしまった。G1レースのような厳しい流れで、自分のレースをさせてもらえず、レースを自分から投げ出してしまった。


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前が閉まってもオレハカッテタゼ

Takamatumiya06高松宮記念2006-観戦記-
前半3ハロンが33秒7という、この馬場とメンバーにしては緩やかなラップでレースは流れた。そのため、スタートで後手に回ってしまった馬は全く勝負にならない、典型的な前残りの競馬となった。

勝ったオレハマッテルゼは、スタートから無理をすることなく好位を確保し、4コーナーまで柴田騎手の手はピクリとも動かなかった。それだけ馬の気持ちが前向きになっていて、あとは追い出しのタイミングを待つばかりという文句の付けようのない完勝であった。左回りも良かったのだろうが、年齢を重ねるにつれ、長い距離を集中して走れなくなっていたオレハマッテルゼにとって、1200mへの距離短縮はまさに好材料であった。

また、一瞬の脚を見事に生かした柴田騎手の落ち着いた騎乗も見事であった。4コーナーを回った瞬間に空いたスペースに、慌てることなく進入し、ワンテンポ置いてから追い出した手綱さばきは、とても6年ぶりのG1制覇とは思えない冷静かつ精密なものであった。

ラインクラフトは、初めてのスプリントG1にもかかわらず、スタートからスッと好位を確保できたように、やはりスピード能力は高い。追い出してから少しモタついて、オレハマッテルゼを捕らえられなかったのは、休み明けに原因があるだろう。ほとんど仕上がってはいたのだが、G1レースでもうひと伸びして勝ち切れるデキにはなかった。

シーズトウショウは、中京平坦コースの1200m戦が合う。軽快なスピードを生かすことが出来たし、馬体も戻って、状態は悪くなかった。池添騎手が勝ち馬に内を開けたことについては、馬場の良い所を走らせただけで、この馬にとって最善の選択をしたと思う。そもそも、たとえスペースが空かなかったとしても、オレハマッテルゼの手応えからして、外を回してでもラインクラフトは差し切られたはずである。オレハマッテルゼとラインクラフトの首差は、どこまで行っても縮まらない首差であった。福永騎手はもう少し冷静になって、レースを振り返るべきではないだろうか。

プリサイスマシーンは岩田騎手の積極的な騎乗に導かれ、あわやというシーンを作った。本質的にはスプリンターではないが、潜在能力の高さを見せた。

ネイティブハートにとっては、前残りの展開が向かなかった。それでも素晴らしい脚を使っており、後ろから行った馬の中では一番いい競馬をした。休養を挟んで、まるで別馬のように馬がリフレッシュされて、精神的にも肉体的にも全盛期のネイティブハートが蘇っている。

最後に、1番人気に推されたシンボリグランは、スタートから行き脚がつかず、直線も伸びかけたものの、見せ場すら作ることができなかった。体のメリハリが失われていたように、体調も下降線を辿っていたのだろう。さらに、他馬に挟まれて気の悪さを出してしまったように、気性面にもまだまだ課題を残す。

Photo by Suna


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カネヒキリよ、お前に任せた!

feb06 by StudioU
フェブラリーS2006-観戦記-
前半4ハロンのラップ(45秒3)は、不良馬場で行われた昨年よりも速く、良馬場のダートとは思えない1分34秒9という破格の時計での決着となった。メイショウボーラーとトウショウギアの逃げは明らかにオーバーペースであったが、それによって、スピードはもちろんのこと、豊富なスタミナのある馬でないと生き残れない厳しいレースとなった。

勝ったカネヒキリは、言われていた芝部分でのスタートも問題なく、終始理想的な位置取りでの走りであった。また、大型馬の冬場の休み明けだけに太め残りが心配されたが、プラス2kgというほぼベストの状態であった。ハットトリックらをパートナーに、芝コースで強い最終追い切りをかけたことにより、馬体が絞れ、ガラッと変わったのだろう。

少し急仕上げの感は否めないが、あとはどうやってこの状態をドバイまで維持できるかである。フジキセキ産駒にしては、胴にも十分な伸び(長さ)があり、2000mの距離も問題ない。あとはドバイ特有の土のようなダートが、カネヒキリに合うかどうかである。日本の砂の王者カネヒキリが、幾多の日本の名馬が越えられなかったドバイの壁を打ち破る日が、もうすぐそこまで来ているのかもしれない。

シーキングザダイヤは、ハイペースを先行し、最後まで渋太く伸びている。直線でユートピアに噛み付きに行ったのは、この馬自身苦しかったからだろう。精一杯走って、勝ってもおかしくないレースをしているが、今日は明らかに相手が強かった。あれだけ並ぶ間もなく交わされては、力負けを認めざるを得ないだろう。地方競馬に行けば、重いダートに強いアジュディミツオーに頭を抑えられ、中央では圧倒的なスケールを誇るカネヒキリが立ちはだかる。この馬は本当にG1のタイトルに恵まれない。

ユートピアは調教でも素晴らしい動きを見せていたように、状態が抜群に良かった。ここにきて馬群の中でも競馬ができるようになったことも、今回の結果につながっている。そして、何よりも、安藤騎手の好判断が光る。メイショウボーラーと競り合いになりそうになったところで、安藤騎手は躊躇なくユートピアを下げた。行こうと思っていた馬を一旦引くことは、そのまま行かせることよりも勇気の要ることである。人馬共に、いぶし銀の3着である。

ブルーコンコルドは、一瞬アッと思わせる脚を使ったが、最後は止まってしまった。極限のスタミナが要求されるレースにもかかわらず、短距離馬としては最高の走りをしている。馬体も絞れ、状態も最高潮であった。

3番人気に推されたヴァーミリアンにとっては、東京のマイル戦は十分に守備範囲であるが、今回は明らかにペースが速すぎた。ついて行くだけで終わってしまったが、それでも最後まで諦めずに伸びている。これからの成長も考えると、中距離のダート戦線では面白い存在になっていくだろう。

アジュディミツオーはスタートの出遅れが致命傷となったが、たとえそれがなくても、この時計で決着してしまうと苦しい。サンライズバッカスにとってはおあつらえ向きの展開になったはずが、全く弾けなかった。コロンとした体型からも、スタミナを要求される厳しいレースが向かなかったか。


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なぜ飛ばなかったのか?

arima05 by shirley heights
有馬記念2005-観戦記-
タップダンスシチーの逃げは、意外にも前半61秒6と、前年に比べると明らかなスローとなった。前が止まらない馬場を考慮すると、後ろから行った馬にとっては明らかに厳しい展開で、中団よりも前に位置していないと勝負にならないレースであった。

ディープインパクトは、折り合いを欠くこともなくレースを進めたものの、直線で伸びきれずに2着を確保するのがやっとであった。武豊騎手がコメントするように、この馬にしては全く伸びていない。なぜ本来の力を出すことができなかったかというと、古馬の壁という抽象的な理由でもなく、ペース(展開)や輸送という小さな理由でもない。明らかに馬の状態(体調)が悪かったからである。夏を放牧に出すことなく栗東で調整を続けたことや、菊花賞でプレッシャーの中、厳しいレースを強いられたことの疲労が抜け切っていなかったのだろう。

これだけの馬になると、普段の様子や調教の動きから状態の悪さを見て取ることは難しい。なぜなら、動かせば良い動きをしてしまうからである。それは普段から馬を管理している調教師や厩務員でさえ難しい。俗に言う目に見えない疲れであるが、とは言え、ディープインパクトの有馬記念での走りを見ると、ある程度はあらかじめ予測できたのではないかと正直に思ってしまう。今回は残念な結果になってしまったが、これもディープインパクトの伝説のひとつのレースである。いくら強い馬でも、勝ち続けることはできない。あのシンボリルドルフやサンデーサイレンスでさえ、負けることはあるのだから。それが競馬の厳しさでもあり、奥深さ、楽しみでもある。

勝ったハーツクライは、ルメール騎手の思い切った騎乗がピタリとハマッた。これだけの大レースで、今まで後ろから追い込んでいた馬を先行させることは想像以上に難しい。しかも、前走のジャパンカップで負けはしたものの、2着と結果を出している馬の脚質を換えるのであるからなおさらである。しがらみのない外国人騎手だからと言ってしまえばそれまでだが、そうではなく、ハーツクライを「勝たせるため」の騎乗を考え抜いて、実践してしまったことが驚異である。

ルメール騎手の馬に負担をかけない騎乗も特筆もので、今回の有馬記念だけを見ても、スタートから最後の直線に至るまで、まるで羽が馬上に載っているような軽さを感じさせる。天性の体(関節)の柔らかさがあるのだろうが、柔らかく馬に乗るということに関してだけ言えば、先輩ペリエ騎手の上を行っているかもしれない。小回りの中山競馬場で、跳びの大きいハーツクライの弱点を見せることなく回ってきた技術の高さは、馬を下りたルメール騎手のあどけなさとはとても一致しない。

もちろん、勝ったハーツクライのここにきての成長も著しい。これまで後ろから行っていた馬が、先行しても最後まで脚を伸ばし続けたということは、馬が相当に充実していて、状態が良かったという証明である。ハーツクライの世代は、キングカメハメハが抜けたことにより手薄になってしまった感があるが、やっとディープインパクトと切磋琢磨できる存在の馬が登場した。

前年の覇者ゼンノロブロイは見せ場なく惨敗した。スタートでぶつけられた影響も多少はあったのかもしれないが、昨年ほどの勢いが感じられなかった。昨年のこの時期と比べると、闘争心が失われているのは明らかで、精神的に燃え尽きてしまっている。デザーモ騎手は悪い時期に乗っているだけで、決してペリエ騎手と比較して技量が足りないということではない。

デルタブルースはスタートからスピードに乗り切れず、後方からの競馬を強いられてしまった。中山2500mの外枠で行き遅れると、終始後方から外を回されることになる。スタートが決まれば理想的な枠であったが、バタバタと走る器用さのないデルタブルースにとっては、今回は外枠がアダとなった。

リンカーンは、横山典弘騎手が外枠の不利を克服して巧く乗ったが、最後の直線で前が詰まり3着と残念な結果となった。勝つまでの迫力はなかったが、直線での不利がなければ2着争いに加われただろう。

タップダンスシチーは理想的なペースで逃げることが出来ての結果で、悔いなく引退レースを締め括ることができた。気持ちの強さで走る馬で、その類まれなる闘争心が、8歳という年齢まで活躍を可能にした原動力となった。金鯱賞の3連覇や計12勝という競走成績も素晴らしいが、やはり記憶に残るのはその地脚の強さで、勝った宝塚記念での3コーナーからのまくりは今でも忘れられない。


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いいとこどり

asahihaifs05 by M.H
朝日杯フューチュリティS2005-観戦記-
レソナルの逃げをフサイチリシャールが追いかける形にスンナリと収まり、思っていたほどペースは速くならなかった。それでも1分33秒7の時計が出たように、今の中山の馬場は速い時計が出やすい。そういった展開や馬場状態を考えると、後ろから行った馬にとっては厳しいレースであった。

フサイチリシャールはスタートこそ遅れたものの、すぐさま2番手を確保するや、あとは自身の脚力のみで勝利を獲得した。レソナルを前に置いていたが、力むところもなく、ほとんど自分が逃げているのと同じような感覚で楽に追走していた。父クロフネがそうであったように、フサイチリシャールも使われながらレースに対する集中力が増してきている。馬体に伸びがあるので、距離延長はプラスに働くであろうし、父クロフネよりも捌きが軽いので芝向きの馬である。朝日杯フューチュリティS馬がクラシックに繋がらなくなって久しいが、この馬ならば順調にさえ行けば来年の活躍も大いに期待できる。

福永祐一騎手の自信に溢れた騎乗も印象的であった。4コーナー手前から仕掛けたのは、福永祐一騎手の好判断である。遅いペースでは後ろの馬も脚が残っているため、あれ以上待っていると、さらに瞬発力のある馬にやられかねない。もちろんフサイチリシャールに手応えが有り余っていたからこそ出来た芸当であるが、ゴールで脚がぴったりゼロになるような完璧なタイミングであった。瞬発力のある強いマイラーが追って来なかったことはラッキーであるが、フサイチリシャールの良さを最大限に生かす積極的な騎乗が功を奏し、結果に結びついた。

スーパーホーネットは、あと僅かのところで勝利を逃した。内々の経済コースを進みながら、有力馬を見てレースをすることができ、最後の直線も内田博幸騎手の叱咤激励に応えてよく伸びている。血統や馬体だけを見ると、とても一流馬のそれではないが、フサイチリシャールをあそこまで追い詰めたのだから走る馬であることは間違いない。

ジャリスコライトは直線で弾けることなく、3着をキープするので精一杯であった。スタート直後に挟まれてエキサイトしてしまったのが誤算だが、道中は引っ掛かったり、4コーナーでフラついたりと、散々なレースをしてしまった。デザーモ騎手が4コーナーでムチを落としたことは、勝敗にはほとんど関係はない。1、2戦目とは別馬のようなレースっぷりで、どこか苦しいところでもあったのだろうか。もしかすると、2戦続けて33秒台の上がりで走った反動があったのかもしれないし、プラス6kgの体重が示すように、万全の仕上がりではなかったのかもしれない。もし後者だとすると、その程度の仕上げでも勝てると踏んでいた藤沢和雄調教師の誤算があったに違いない。

ショウナンタキオンは立ち遅れも許容範囲内で、道中も力むことなく追走していた。直線に向いて思ったほど伸びを欠いたのは、やはり久々の影響もあったのだろう。前も止まっていないのだが、ショウナンタキオンも伸びていない。3ヶ月ぶりで勝てるほど朝日杯フューチュリティSは甘くないということだろう。それでも4着に押し上げてくるあたりはさすがで、この馬の真価が問われるのは来年ということになる。

ダイヤモンドヘッドは内枠を生かして積極的に乗ったが、現時点ではこの結果が精一杯だろう。好馬体はこのメンバーに入っても光っており、うまく成長すれば将来性はG1レベルのマイラーになる可能性も秘めている。


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雨の日もある

hansinjf05 by@84Photo Gallery
阪神ジュべナイルF2005-観戦記-
朝から雨が降り続け、良馬場発表ながらも、十二分に水分を含んだ馬場状態であった。そのため、勝ち時計も1分37秒3と、通常の馬場に比べ約2秒(12馬身)は遅いタイムでの決着となった。この時計であればどの馬でも走ることが出来るため、最後は道悪に対する適性が問われるレースとなった。

勝ったテイエムプリキュアは、道悪でノメることなく、最後までグイグイと伸びた。首を使わないフォームの馬は道悪を苦にしない馬が多く、この馬も例に漏れない。道中は若さからか終始追い通しであったし、フラつきながら走る面も見られたが、熊沢騎手が見事に乗りこなした。これだけ癖のある馬を何事もなく乗りこなしてしまうのは、さすが熊沢騎手である。テイエムプリキュア自身は雨の助けを借りて勝った印象が強く、良馬場で走った時に真価が問われる。

シークレットコードは、道中インの馬込みで我慢して、最後の直線でも良く伸びている。父フサイチペガサスの血統からか、こういった力の要る馬場も苦にしなかった。とても2戦目のレース内容とは思えないレースセンスで、バランスの良い馬体からも、将来性は非常に高い。

フサイチパンドラはキャリア1戦ながらも2番人気に支持されたが、惜しくも3着を確保したに留まった。とはいえ、外々を回りながらのもので、距離ロスを考えると勝ちに等しく、素質の高さは疑いようがない。トモに若干の甘さがあるため、雨が降り、ノメりやすい馬場になったことも痛かった。距離が伸びて良さの出る馬なので、じっくりとクラッシク級の馬に育ててほしい。

1番人気に推されたアルーリングボイスは、レースは後方を進んだが、直線に向いても全く弾けず惨敗した。道悪が下手な馬でもなく、血統的にもこういった力の要る馬場は向いているはずである。それでも勝負にならなかったのは、明確な敗因があるということになる。あくまでも結果論であるが、マイルの距離が長かったということ、もうひとつは、調子が下降気味であったことが敗因であろう。やはり、どんなメンバーであれ、どんなレースであれ、5連勝するということは難しい。ここまで完成度で勝ってきた馬だけに、来年のクラシック戦線では苦しい戦いを強いられるに違いない。

切れ味を生かしたいアイスドールには、馬場も合わず、さらに枠順も外過ぎた。最悪の条件の中、それでも7着に押し上げているので、このまま順調に行けば、来年は面白い存在になるかもしれない。


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2.22.1

japancup05 by ruby
ジャパンカップ2005-観戦記-
馬場の高速化が進む中、16年もの間破られることのなかった2分22秒2のレコードが、デットーリ騎手に駆られた英国馬アルカセットによって、遂に破られた。前半1000mが58秒3というタップダンスシチーの刻んだ激流ラップは、レースを引き締まったものにしたが、前に行った馬にとっては厳しい展開であった。

勝ったアルカセットは、内々を回りながら徐々に好位まで押し上げ、直線では早めに先頭に立ちながら、そのまま押し切ったのだから、相当に強いレースをしたといえる。スピード、スタミナ共に問われる厳しい戦いを制し、これで一気に世界のトップに登り詰めた。日本の硬い馬場が合っていたのはもちろんのこと、アルカセット自身が、ここにきて急激に力を付けている。もし凱旋門賞やブリーダーズカップに出走していたなら、結果を出していたのではないか。これで2400m戦の連対率を依然パーフェクトとし、ゆったりとした気性に支えられた抜群のスタミナをも証明した。あと一戦で引退とのことだが、もし有馬記念に出てくることになれば、ディープインパクトの最大のライバルになることは間違いない。

そして、この勝利をデットーリ騎手抜きに語ることはできないだろう。スタートで立ち遅れるや、切れ込むようにして内を求めた決断は見事であり、さらに最後の直線では、外から襲い掛かるゼンノロブロイから内を突いて差し込んでくるハーツクライへと照準を変えて、最後までアルカセットの闘争心を掻き立てた手綱さばきも特筆ものである。これで3度目のジャパンカップ制覇となったわけだが、いずれもハナ差という紙一重の勝負であり、百戦錬磨の天才ジョッキーの凄みを存分に見せ付けられた。デットーリ騎手の強い気持ち(ハート)が馬にも伝わり、それに応えるようにして馬が頑張り抜く。その神がかり的な芸当は誰にもマネできない。

ハーツクライは超ハイペースを利して追い込んできたが、悔しい2着。こういった時計勝負のレースに滅法強く、さらに、ノビノビと走ることのできる、ゆったりとした造りの東京コースも合うのだろう。若干長いと思われた距離を克服して、力を付けたことを証明した。それにしても、ルメール騎手が乗ると馬がピタリと折り合うし、よく伸びる。直線で追い出しを我慢して内を突いた騎乗もさすがである。

ゼンノロブロイは一瞬勝ったと思わせたが、またもや最後まで伸び切れなかった。昨年のデキにあれば勝っていたかもしれないが、やはり今年は闘争心が失われている。昨年秋の激戦で燃え尽きてしまったようだ。

今年のジャパンカップは、海外からの実績馬が多く参戦したことにより盛り上がったが、結果を出したのはアルカセットのみ。その他の馬は、すでにピークを過ぎていた印象が強い。ジャパンカップはすでに過去の名前だけでは勝てないレースとなった。もし迎え撃つレベルの高い日本馬を倒せるとすれば、ビッグネームではなく、これからビッグネームになろうとしている馬、たとえば今回のアルカセットのような馬、なのではないか。


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なんとか勝った

jcdirt05 by ruby
JCダート2005-観戦記-
各国から一流の騎手が集い、各騎手が積極的な騎乗をしたことにより、スタートからゴールまで緊迫感溢れるレースとなった。勝ちタイム2分8秒0はレコードで、スピードとスタミナを試される厳しい戦いであった。

カネヒキリはなんとか勝ったという感が強い。しかし、クロフネに次ぐ3歳馬としての勝利であり、現時点で歴戦の古馬を凌ぎ切ったことの価値は高い。この馬が今後のダート戦線を引っ張っていくことは間違いないだろう。

サカラート(デットーリ騎手)とタイムパラドックス(ペリエ騎手)を前に見る形で、武豊騎手はレースを進めた。道中は抑え切れない手応えで、武豊騎手も思わず笑みがこぼれたに違いない。あとはどのタイミングでゴーサインを出すかという状況であった。そして、前の馬とカネヒキリとの手応えを比べながら、思い切って4コーナー手前から動き始めた。この時点で、すでに2頭の有力馬(サカラート、タイムパラドックス)との勝負は決していた。あとは直線でどれだけ引き離すかといった雰囲気であったが、やはりというべきか、ダートの鬼たちはそう簡単には勝たせてくれない。内からシーキングザゴールドとスターキングマンが執拗に食い下がり、抜きつ抜かれつを繰り返したのち、最後はカネヒキリがなんとかハナ差出たところがゴールであった。一完歩違えば、勝敗はどうなっていたか分からない。内外のコース取りの差があったにせよ、冷や汗ものの勝利であった。それでも勝ってしまうところに、武豊騎手の強さ、そして武豊騎手たるゆえんを見た。

惜しい2着のシーキングザゴールドは、このハイペースを2番手で付いて回り、直線では差し返してくるのだから、最高の走りをしている。ガンガン飛ばしていくような、淀みのない流れに強いタイプである。横山典弘騎手は、またG1レースで2着。どのレースでも馬の力を引き出しており、念願のG1レースも、すぐ手の届くところまで来ているのではないか。あとはチャンスを待つのみである。

同厩舎のスターキングマンも、デザーモ騎手のソツのない騎乗に導かれた。さすがアメリカのトップジョッキーである。サンライズバッカスも、現時点での実力を発揮した5着で、よく走っている。2番人気に推されたサカラートは、世界のデットーリの手綱をもってしても、連勝した頃の状態になかったのか、直線で弾けることはなかった。

ペリエ騎手は行きたがるタイムパラドックスを無理に抑えることをせず、いつもより前の位置に付け、スムーズな走りをさせた。しかし、あくまでも結果論であるが、行く気に任せるのではなく、ある程度、タイムパラドックスの気持ちに逆らい、怒らせながらレースを進めた方が、最後に伸びるタイプの馬なのかもしれない。直線に向いた時は、いつもと違い、すでに馬自身にファイトする気力が残っていなかった。


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藤沢先生、人生は楽しむものです

milecs05 by Carrot Lunch
マイルチャンピオンシップ2005-観戦記-
1分32秒1というレコードタイムが出たように、レースは淀みのないハイペースで流れた。道中は縦長の隊列となり、各馬それぞれのポジションをしっかりと確保していたことにより、緊張感溢れる展開となった。これだけのハイペースで行ったにもかかわらず、前がなかなか止まらなかったのは、やはり馬場がかなり硬くなっていたからだろう。どの馬にとっても厳しい展開であり、だからこそ、力どおりの決着となった。

勝ったハットトリックは、4コーナーでは届くかどうかギリギリの位置にいたが、最後まで諦めずに素晴らしい脚を使った。スタートで一歩後手を踏んだが、その後はレースの流れに乗り、馬場のいい所を伸び伸びと走っていた。マイルまでなら本当にイイ脚を使う馬で、これでマイル戦を8戦6勝とした。まさにマイルチャンピオンシップに相応しい馬である。今春はマイラーズカップをアクシデントで負けてからリズムが狂ったが、夏休みを挟み、毎日王冠→天皇賞秋を叩いて復調してきていた。精神面も成長し、肉体面と共に最高のデキにあった。そして、今さらながらではあるが、ペリエ騎手の最後までファイトさせる技術はさすがである。

ダイワメジャーは、負けはしたが一番強いレースをした。あれだけのハイペースを3番手で追走し、最後まで伸び切った。マイルのG1レースでは切れる馬が最後に差してくるので、どうしてもダイワメジャーのようなスピードで押し切る馬にとっては苦しい。それでもハナ差まで食い下がった内容は評価できる。最終追い切りで迫力のある動きを見せていたように、ノドの病気も完治し、完全復調とみて良いだろう。

ルメール騎手の冷静な騎乗も光った。好スタートからスッと好位に取り付き、4コーナーでは周りの手応えを見ながら追い出しを2テンポくらい待った。あそこまで待って、それでも差されたのであれば諦めもつくはず。そもそも、あそこまで我慢できる騎手がどれだけいるだろうか。

昨年もこのような外国人騎手によるワンツーは見られた風景だが、もはや偶然ではないだろう。たまたま良い馬に乗っているのではなく、騎乗した馬の最大限の能力を出し切ることによって、勝つチャンスを生んでいるのである。馬を走らせる技術は目に見えにくい部分ではあるが、あまりにも技術力に違いがありすぎる。もしかすると、外国馬に対するレースの開放よりも、外国人騎手に対する免許の開放の方が大きな問題を孕んでいるかもしれないと思わせられたレースでもあった。

マイルチャンピオンシップ3連覇の夢が消えたデュランダルは、いつものように最後方から脚を伸ばしたが、伸び切れなかった。縦長になった展開や速い時計を理由にする向きもあるかもしれないが、そうではなく、デュランダル自身の末脚がいつものそれではなかったということである。そもそもデュランダルにとってハイペースはおあつらえ向きの展開で、ほぼ同じ位置にいたハットトリックが勝っているのだから、展開が向かなかったことは理由にならない。年齢的なこともあるのだろうか、それとも休み明けの前走で走りすぎた(32秒7の末脚を使った)反動なのだろうか、池添騎手の懸命のムチにいつものようには反応しなかった。

ラインクラフトはペースが速かったため折り合いを欠くことはなく、道中もスムーズに走り、コース取り、仕掛けのタイミングもピッタリであった。これで負けたのだから、力が及ばなかったということである。まだまだ3歳の牝馬であり、これだけのメンバーでよく健闘している。


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BE MY LAST

elizabeth05 by@84Photo Gallery
エリザベス女王杯2005-観戦記-
スウィープトウショウが、展開不問の強靭な末脚を使って快勝した。スタートから、少しでも前に位置しようという池添騎手の意志が表れていて、そのために道中はこの馬にしては珍しく引っ掛かっていた。結果的にはこの位置取りが正解だったのだが、道中で馬群にモマれながらもスローペースを我慢したスウィープトウショウの精神面での成長があったからこその勝利である。秋2走は牡馬相手に凡走したが、今回は気迫が全身に漲り、集中力も高く、究極の仕上がりにあった。長距離輸送のない京都で行われたのも良かったのだろう。

それにしても、スウィープトウショウの脚力は牝馬レベルを遥かに超えている。左右にブレないだけではなく、上下動すらなく一気に伸びる末脚は、あのディープインパクトに匹敵するものである。牝馬特有のカミソリのように切れる一瞬の脚ではなく、スタミナと強靭な肉体に支えられたナタの切れ味である。今後、これほどの凄まじき末脚を持つ牝馬は出現しないかもしれない。

それに対し、1番人気に推されたエアメサイアの末脚は不発に終わった。1コーナーでゴチャついた影響もあるだろうし、もう少し前で競馬をしたかったのは確かであるが、勝敗を左右するレベルではなかった。道中で折り合いが付いていた割には、今ひとつゴール前で弾けていないのだ。秋華賞と比べ、当日の馬体がしぼんでいるようにも見え、牝馬の体調管理の難しさもあったのだろう。いずれにせよ、今回はエアメサイアの実力負けということではなく、また古馬に比べて今年の3歳世代が弱いということでもない。

ヤマニンアラバスタも、1コーナーでのゴチャついたことにより、不本意な位置取りを強いられた1頭である。ほぼ最後方から外を回して追い込むという、最悪の形になってしまった。とはいえ、3連勝した時のような前進意欲が感じられず、アクシデントがなくてもせいぜい掲示板止まりであったろう。前走・前々走で33秒台の脚を使った反動か、それとも輸送を克服できなかったのか、今回のエリザベス女王杯は走れる万全の状態にはなかったようだ。

3連覇が掛かっていたアドマイヤグルーヴは、今の実力を出し切った3着である。やはり、京都の2200m外回りという条件が、この馬には合うのだろう。それでも昨年、一昨年と比べ明らかに力は落ちている。スウィープトウショウに並ぶ間もなく抜き去られた瞬間に世代交代は終わりを告げた。

最後に、昨年に引き続き2着を確保したオースミハルカは、一瞬勝ったかと思わせる見事な競馬であった。有力馬が動けなかったことで展開面にも恵まれたが、その積極的な競馬は値千金の走りといってよい。とにかく相手が強すぎた。


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武豊でなければ

kikka05 by Photostud
菊花賞2005-観戦記-
無敗の3冠馬が21年ぶりに誕生した。レース前から異常とも思える注目の中での達成だけに、関係者の方々には最大級の賛辞を贈りたい。

まずスタートから異変が起こった。これまでの6戦全て出遅れ気味のスタートを切っていたディープインパクトが、なんと好スタートを切ったのだ。わざとゲートを遅く出すといった小細工をすることなく、武豊騎手は普通にゲートから出したのだろう。しかし、思った以上にポンと出てしまい、序盤から中団の好位でレースを進めることになる。

このことも原因となっているのだろうが、最初のコーナーからすでに、ディープインパクトが行きたがってしまう。ディープインパクトもこれだけの熱気に冷静ではいられなかったのか、武豊騎手がコメントするように、まさにゴールを勘違いしてしまっていたようだ。スタンド前を通過して向こう正面に至るまで、ディープインパクトは前の馬を抜かそうとして武豊騎手がなだめる、というやり取りが続く。ここが今回の菊花賞の最大のヤマ場であった。

この最大の難局を乗り切れたのは、まさに武豊騎手の技術ゆえである。引っ張り切るでもなく、行かせるでもなく、繊細な手綱さばきを通して、ディープインパクトのはやる気持ちをなだめ、スタミナのロスを最小限に抑えた。正面スタンド前では、少々強引に馬を内に入れたが、まさにこれしかないという正しい選択であった。心中は祈るような気持ちだったろうが、その百戦錬磨の手綱でなんとかディープインパクトを落ち着かせることに成功したのだ。これまでの6戦は、「武豊でなくとも」勝てたレースであったかもしれないが、今回のレースに限っては、「武豊でなければ」勝てなかったレースである。

もうひとつのヤマ場は、4コーナー手前からの仕掛けのタイミングである。向こう正面からはレースの流れに乗ることができたディープインパクトであるが、それまでのスタミナのロスは大きい。長距離戦であれだけ引っ掛かってしまっては、普通の馬ならば、その時点でアウトである。武豊騎手としても、あとどれだけの脚が残っているか、道中は不安な部分もあったに違いない。

しかし、武豊騎手は冷静であった。4コーナーに差し掛かる手前で、先頭に立とうとしていたアドマイヤジャパンとの距離がだいぶ離れていたにもかかわらず、仕掛けをいつもよりふた呼吸ほど遅らせたのである。これで届かなければ仕方ない、いや届くはずだという気持ちで、武豊騎手は直線に向いてからディープインパクトを追い続けた。武豊騎手があれだけ鬼の形相で馬を追うことは、後にも先にもないだろう。ディープインパクトもそれに応えるべく、必死で最後の力を振り絞った。

ディープインパクトにとっても、武豊騎手にとっても、3冠最後の菊花賞がこれまでで最も苦しかったレースであることは間違いない。3冠制覇という偉業がそれだけ成し難いということであり、様々なプレッシャーを乗り越えて、武豊ディープインパクトのコンビはさらに成長を遂げることだろう。しかし、ここが終着点ではない。もはや国内でディープインパクトに敵う馬はいるはずもなく、これからはディープインパクトにふさわしい王道(チャンピオンロード)を進んでほしい。


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時にはドラマを

tennosyoaki05 by gradeone
天皇賞秋2005-観戦記-
前半1000mが1分2秒4という、超に超がつくほどのスローペースでレースは流れた。7年前に良馬場で行われた天皇賞秋で、サイレンススズカが刻んだ前半1000mのラップは57秒4。単純に比較すると5秒の差、馬身にするとおよそ30馬身くらいの大きな差がある。それほどのスローペースで流れたレースは、牝馬ヘヴンリーロマンスの差し切りという驚くべき結末で幕を閉じた。レースは生き物であることを改めて実感させられた。

ラスト3ハロンの究極の瞬発力勝負になったのは、レースの流れから当然のことであるが、ヘヴンリーロマンスの激走はどう説明すべきだろうか。そもそも、ヘヴンリーロマンスは母父サドラーズウェルズという重い血統で、札幌記念にしても、雨が降って馬場が悪化したことが勝因と考えられていた。その馬が一変して32秒台の瞬発力で勝利してしまうとは。

ひとつだけ言えるのは、ヘヴンリーロマンスがこれでもかという究極の仕上げを施されていたということである。山本調教師と松永幹夫騎手の執念が乗り移った牝馬が、肉体的にも精神的にも自分の能力を超越して神がかり的に走った。時に競馬はドラマを生む。山本調教師と松永幹夫騎手の師弟愛という小さなドラマ。松永幹夫騎手が馬上で深々と頭を下げたシーンが印象に残った。

もちろん、展開の助けがあったことは否めない。あまりにもペースが遅すぎて、大半の有力馬が折り合いを欠いて自滅してしまっていた。馬は速く走らされることは嫌いだが、あまりにも遅く走らされることも嫌う。ほとんどの馬が我慢しきれずにスタミナを消耗し、直線に向く頃にはすでに戦意を喪失していた。

さらに、外枠の馬は道中で外々を回されてしまった。スローペースになると、道中は団子状態で進むため、馬込みを縫って内に進路を変更するのは難しい。そのため、終始馬群の外を回されることになり、距離のロスをしてしまう。こういったスローペースのレースでは、内でジッとして脚をタメておくことが大切なのである。

ゼンノロブロイの2着は、評価すべきかどうか判断が難しい。昨年の年度代表馬として、どんな展開であっても勝って欲しかったし、しかも牝馬に差し切られてしまったのは明らかな失態である。たしかに道中でごちゃつく不利を克服して、よく最後まで我慢して脚を伸ばしている。他の不甲斐ないG1ホースに比べると、どんなレースでも力を出し切るその精神力には頭が下がる。それでも勝って欲しかったと思うのは、私だけだろうか。横山典弘騎手にとっては残念な結果だろうが、これからもますます精進して、必ずやチャンスを掴んでほしい。


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武豊の心理マジック

syukasyo05 by Carrot Lunch
秋華賞2005-観戦記-
秋華賞にしては珍しく、ペースのアップダウンが少なく、道中でもゴチャつくところのないスムーズなレースであった。勝ちタイム1分59秒2、上がり35秒2も平均的で、これによって、全馬が持てる力を発揮することができたフェアなレースとなった。

勝ったエアメサイアは、まるでローズSのゴール前をリプレイしたような差し切りであった。道中の折り合いも抜群で、追い出されてからの伸びは他馬を圧倒していた。オークスであのシーザリオを苦しめた実力馬が、夏を越してさらにパワーアップしたということだろう。普段の調教でも大人しくなり、精神面で余裕が出てきたことも勝利につながった。焦らずにゆっくりと育てた伊藤雄二調教師の采配が、秋に見事に実を結んだ。

武豊騎手の手綱捌きにも唸らせられた。スタートからゴールに至るまで、位置取り、コース取り、仕掛けのタイミング、どれを取っても理想的な乗り方であった。ラインクラフトの福永騎手が勝ちを焦ったのに対し、武豊騎手はエアメサイアのリズムを最後まで守り、この馬の力を最大限に発揮させることに成功した。まさに一つのミスもない完璧な騎乗であった。

ラインクラフトは負けて強しとも言えるが、負けるべくして負けている。ハミ受けが悪くなっているのが原因だろうか、道中では力を入れて走り、抜け出してからはフッと力を抜いてしまっている。能力だけで2着を確保したが、騎手の意志を伝えにくい状態になっていることは確かである。2歳時に阪神ジュべナイルFで負けた時もハミ受けが悪かったように、この馬の調子の悪い時の癖なのだろうか。春に激走した目に見えない疲れが残っているのかもしれない。

何よりも、福永騎手の焦りが目立ったレースであった。スタートはゆっくりと出られて、道中の引っ掛かりも許容範囲内であったろう。しかし、惜しむらくは、4コーナーでの仕掛けのタイミングが早すぎたことだ。福永騎手としてはセーフティーリードを取る計算だったのかもしれないが、レースを全体として見れば、もう少し仕掛けを待つべきだった。直線が平坦で短いことを考慮に入れても、結果論ではなく、強引な乗り方と言わざるを得ない。いくらラインクラフトに力があろうとも、あれで勝てるほどG1レースは甘くはない。もしかすると、早仕掛けはエアメサイア武豊を過剰に意識したことに因るものかもしれないが、そうであれば、ある意味で武豊騎手の作戦勝ちともいえる。


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勇ましき英雄

sprinters05 by Ken
スプリンターズS2005-観戦記-
勝ったサイレントウィットネスは、前半32秒9、後半34秒4という前傾ラップを3番手で追走し、横綱相撲で押し切った。1分7秒3という全体のタイムも速く、非の打ち所のない、着差以上の力差を示した完勝である。ゴール前からすでに耳を立ててリラックスするふてぶてしささえも、香港の英雄に相応しく思えた。

サイレントウィットネスにとっては、元々はスピードの違いで逃げていただけであって、今回のように好位から抜け出す競馬が理想形である。というよりも、このような理想的な競馬ができるからこそ、17連勝という大記録を打ち立てることができたのである。生粋のスプリンターで、抑えが利いて先行できる馬は意外と少なく、全盛期のサクラバクシンオー(最初の頃はスピードに任せてガムシャラに突っ走る馬であった)か、牝馬のフラワーパークぐらいしか思い浮かばない。サイレントウィットネスも、この2頭と並ぶ超一流のスプリンターであり、もしかするとそれ以上の器なのかもしれない。スピードとパワーを兼ね備えた伝説の名馬である。

デュランダルは32秒7という鬼脚を使ったが、昨年同様に届かず2着。今年は勝った馬が強すぎた。それにしても、コンスタントに追い込んでくる柔軟な末脚にはいつも驚かされる。持病の裂蹄を克服して、なんと10ヶ月ぶりのレースだけに価値は高い。まさに歴史に残る末脚を持った馬である。ただ、次のマイルCSに出走してくれば人気になるだろうが、反動が心配である。今回のレースで-7kg体重を減らしていたことや、32秒台というサラブレッドとして限界の脚を使ったことによる反動が出てしまうのではないか。

アドマイヤマックスは、中間から良い動きを見せていたように、絶好の仕上がりにあった。この馬も馬体が減っていたが、これくらい絞れた方が走りやすいのではないか。心配された右回りにも、ほとんどモタれる素振りもみせず、最後までしっかりと伸び切った。武豊騎手も落ち着いたレース運びで、この馬の力を十二分に発揮させた。

香港からのもう一騎ケープオブグッドホープは、見せ場なく馬群に沈んだ。ブリンカーを装着していたり、舌がハミを越して走る癖があるように、気分屋なのだろう。実力負けではないが、今回は本来の力を発揮することができなかった。

プレシャスカフェは、良かった頃とは別馬になってしまっている。勝てるレースであった高松宮記念を落としてから、肉体的にも精神的にもリズムが狂ってしまったのだろう。

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ゼンノロブロイに託された夢は

zennorobroi02ゼンノロブロイがインターナショナルSで2着に敗れてしまった。レースでは、道中も折り合いを欠くことなくスムーズに走り、最後の直線で一瞬だけ前が塞がったが、ほとんど影響はなかった。勝った相手(エレクトロキューショニスト)が強かったということであり、ゼンノロブロイの力は出し切っている。

武豊騎手のコメントに、「勝負どころで何回か、終わりかな?と思うシーンがあったのですけど、その都度踏ん張りを見せていました。本当に何度も踏ん張る馬ですね。」とあるように、ゼンノロブロイは叱咤激励されて伸びる馬である。あの武豊騎手がムチを振るいすぎて騎乗停止になったくらい必死に追っていたが、着差を考えると、もしペリエ騎手が乗っていたらと想像してしまう。武豊騎手もほぼ百点満点の騎乗をしているのだが、あと一歩及ばなかった。

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Cesario Dominates American Oaks Field

シーザリオがアメリカンオークスを勝ちました。

日本のオークスでは相当に厳しいレースを強いられ、その後ほとんど休む間もない挑戦でしたので、体調面が唯一の心配材料でした。力を発揮できる状態にまで短期間で立て直した角居調教師、グリーンウッドのスタッフには最大級の賛辞を送ります。

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牡馬一掃

takaraduka05 by M,H
宝塚記念2005-観戦記-
絶好の馬場状態を考慮すると、1000m通過59秒9というタイムは決して速くはない。それでもタップダンスシチーが失速してしまったのは、体調が本物ではなかったことが原因であろう。前走の金鯱賞で、59kgを背負いながらラスト3ハロンで33秒8の脚を使ってしまったことの反動が噴出してしまった。中間も緩めることなくビシビシと鍛えてきたため、反動は皆無かに見えたが、やはり怪物タップダンスシチーとはいえども目に見えないところに疲れが溜まっていたようだ。

佐藤哲三騎手が4コーナーで先頭を奪いに行ったのは、決して自信過剰気味に行ったのではなく、直線で内埒沿いを走らせないとタップダンスシチーは伸びないからである。昨年と違ったのは、押せども押せども馬が全く動いてくれなかったことである

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オトコになった

yasuda05 by M,H
安田記念2005-観戦記-
十中八九逃げるだろうと思われていたサイレントウィットネスが控えたことによって、道中はこのメンバーにしてはスローに流れた。直線に入ってからヨーイドンの競馬で、位置取りが後ろすぎた馬、瞬発力に欠ける馬にとっては、厳しい展開となった。

勝ったアサクサデンエンは好スタートを決めると、中団馬群のポケットをスムーズに追走し、4コーナーでは抜群の手応えで先行集団を射程権に入れていた。直線で進路を一瞬カットされ、追い出しがワンテンポ遅れたことにより、外から一気に来られそうになったが、そこから怯むことなく差し返して勝利をもぎ取った。馬の充実と騎手の気迫が伝わってくるような見事なレースであった。

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ふたりでPARISに行こう

derby05 by Ken
ダービー2005-観戦記-
ダービー史上最高の支持を受けたディープインパクトが、スタートからゴールまで危なげなく駆け抜け、圧勝した。スタートで立ち上がるような形になり遅れたが、それも武豊騎手にとっては想定内のことであろう。レース全体が淀みのないペースで流れたため、道中も折り合いに気を遣うことなく伸び伸びと走り、3コーナー過ぎて、スムーズに外に持ち出せた時点で勝負あった。あとは直線に入って、目一杯追うだけ。ラスト2ハロン目が11秒0という時計が、ディープインパクトの加速がいかに凄まじかったかを物語っている。人馬ともに、付け入る隙を与えない完勝であった。ぜひ無敗の3冠馬を目指して、無事に夏を越して欲しい。

ディープインパクトの強さと同様に、インティライミを操った佐藤哲三騎手の積極性も際立っていた。引っ掛かる不安もあったろうが、スタートしてから少し気合をつけるようにして好位を取りにいき、4コーナーで内を突きながら早目にスパートをかけた。結果的には歯が立たなかったのだが、ディープインパクトを負かすにはこれしかないという最高の騎乗であった。京都新聞杯から中2週のため完調ではなかったはずだが、インティライミもいい脚をかなり長く使っている。自分で勝ちに行っての2着だけに価値は高く、この馬の将来も非常に明るい。

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最悪のシナリオゆえに価値あり

oaks05 by gradeone
オークス2005-観戦記-
圧倒的な人気を背負ったシーザリオにとっては、これ以上ない苦しい競馬であった。武豊騎手だけではなく、他の16人の騎手が、そう易々と福永祐一騎手に勝たせてなるものかという気迫がレース全体を通じて伝わってきた。これほど隙のない、緊迫感のあるレースは久しぶりに見た。

福永シーザリオは、スタートで僅かに立ち遅れた隙を突かれ、武豊エアメサイアに進路を閉められただけではなく、1コーナーでもゴチャついて前が詰まり、次々とポジションを下げてしまった。外に持ち出したくても、スローの団子状態では前後左右に馬の壁があり、道中はまさに金縛り状態。フットワークの大きな馬が、狭いスペースに押し込められ、明らかにぎこちない走りになっていた。4コーナーを回り、直線に入っても前が塞がり、やっと外に出して追えたのはすでに直線の半ば。そこから一完歩ごとに差を詰めて、ゴール前できっちりと他馬を差し切ってしまった。

騎手はレースに臨む際に様々な展開や状況をシュミレートするが、おそらく今回は、福永騎手が考えていた中でも最悪のシナリオであったはず。それでも勝ってしまったことに、シーザリオの絶対的な強さと、福永祐一騎手の勝負強さを認めないわけにはいかない。すんなり流れに乗っていれば楽に勝てたレースではあるが、人馬共に苦しんで苦しんで勝ったことに大きな価値がある。

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強かに(したたかに)

nhkmilecup05 by o-uma.net
NHKマイルカップ2005-観戦記-
逃げると目されていたビッグプラネットが控え、スローペースでレースは終始流れた。掲示板を占めた5頭ともに33秒台の脚を使っており、まさにヨーイドンの競馬となった。後方からレースを進めた馬や瞬発力に欠ける馬にとっては、非常に分の悪い展開であった。

そんな中、桜花賞と同様に、スタートしてから馬の行く気に任せて好位置にポジショニングされたラインクラフトが、直線でも力強い末脚を伸ばして快勝した。桜花賞→NHKマイルカップという変則ローテーションであったが、初輸送、初の牡馬との対戦という不安要素を吹き飛ばす、横綱相撲での勝利であった。結果的には、このメンバーであれば力が一枚上であった。

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この人を見よ!!

tennosyoharu05 by gradeone
天皇賞春2005-観戦記-
力差の拮抗したメンバー構成のみならず、直前には雨も降り出して、どの馬が勝っても不思議ではない横一線の状況でスタートが切られた。結局、勝ったのは安藤勝己騎手の操るスズカマンボで、レース内容を見れば見るほどに、安藤勝己の卓越した技術による勝利であることが明らかになる。

コース取りが抜群であったことは言うまでもない。好スタートを決めるや一瞬のうちにインコースを確保して、あとはピクリとも動かない。4コーナーでも、外に振られるロスを少しでも避けるため、一呼吸置いてゆっくりと追い出す。ここまでは、まさに教科書通りの騎乗である。

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あとは無事に行ってくれ

satuki05 by ken
皐月賞2005-観戦記-
ディープインパクトの強さは本物であった。4コーナーで叱咤激励のムチが入ると、初めての経験に驚きながらも、上体をさらに深く沈めながら加速し、一瞬にして他馬を引き離した。最後方からスローペースをマクったように、かなり長く良い脚を使っている。間違いなく、ダービーまで計算できる脚である。これだけ派手な芸当を、圧倒的な人気を背負ったG1レースで行ってしまうのだから恐れ入る。皐月賞に限っての最大の勝因は、外枠を引いたことである。フットワークの大きなこの馬にとっては、自分のリズムを崩すことなくスムーズな競馬ができたことが大きい。

ダービーに向けてひとつだけ懸念されることは、ディープインパクト自身の精神状態だろう。

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これぞ福永流殺陣(たち)回り

okasyo05 by shirley heights
桜花賞2005-観戦記-
心配された雨も降ることなく、レコードが記録されるほどの絶好のコンディションでレースは行われた。ハイペースの割には各馬が団子状態で進んだため、終始外々を回された馬や、ゴチャついてスムーズなレースが出来なかった馬など、レースの綾が結果を大きく左右した。

そんな中、勝ったラインクラフトを操った福永騎手の積極的な騎乗が光った。前哨戦のフィリーズビューでは本番を意識して末脚を生かす競馬を試していたが、本番の桜花賞で17番枠を引くや、一転して先行策に切り替えた柔軟な大胆さには恐れ入る。もちろん、外枠からスッと先行できたのも、他馬の追撃を最後まで凌ぎきったのも、ラインクラフトの能力があってこそではあるが。暮れのG1阪神ジュべナイルフィリーズでは本調子にはなかったが、今回は最後まで集中力を欠くことなく力を出し切っての勝利であった。

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スプリント戦の怖さ

takamatumiya05 by special days
高松宮記念2005-観戦記-
スプリント戦は勝ちタイムの誤差が少ない。そのため、大きく出遅れたり、大外をブン回したりしてしまうと、物理的に間に合わないことになる。わずかなミスが命取りになり、スタートと位置取りが、勝ち負けに大きく作用するレースである。

今年の高松宮記念は、スタートの良し悪しが勝負を決した。好スタートを決め、大外から無理なくレースを進めたアドマイヤマックスと、出遅れを挽回しようとトップギアに入れてしまい、ガス欠を起こしてしまったプレシャスカフェ。スタートのタイミングひとつで、これだけ明暗が分かれてしまうスプリント戦の怖さを知らされたレースであった。

勝ったアドマイヤマックスは、全てがうまく噛み合ったという印象が強い。

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ザッツ・アメリカン!

febs05 by gradeone
フェブラリーS2005-観戦記-
雨を適度に含んだ馬場は、ダートとしては最も脚抜きが良く、最高に走りやすいコンディションであった。そのため、芝並みの高速タイムでの決着となり、時計勝負に対応できないスピード不足のダート馬にとっては厳しいレースとなった。

勝ったメイショウボーラーはスタートこそフワッと出たものの、スピードにのるや、前半の1000mを57秒8という驚異的なラップを刻んでの逃走劇となった。最後は筒一杯になってしまったが、結果的には、この時計について来られる馬が他にいなかった。フェブラリーSの勝利は馬場コンディションの恩恵によるところが少なくはなかったが、これで1200m→1400m→マイルという階段をわずか1ヶ月半できれいに駆け上がった。

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馬の恩返し

arima04 by gradeone
有馬記念2004-観戦記-
有馬記念はコーナーを6つも回らなければならないことからスローペースに陥りやすく、ステイヤータイプの馬が活躍する傾向があるが、今年はスピードを武器にする馬がレースの中心を形成した。

立ち遅れ気味のスタートを切ったゼンノロブロイに気合をつけて、ペリエ騎手が普段よりも前々に位置することを選択したのは、以下2点を踏まえた上での判断だろう。
1、当日の中山競馬場の馬場は、前に行った馬が止まりにくい高速馬場であった。
2、力のあるタップダンスシチーを楽に行かせてはならない。

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自信に溢れた騎乗

asahifs04 by gradeone
朝日杯フューチュリティS2004-観戦記-
雨による馬場悪化の心配も全くなく、内外の有利不利のない絶好の馬場でレースは行われた。前半800mが45秒4、1000mが57秒4というハイペースで流れ、実力の差が歴然と出てしまう厳しいレースとなった。

勝ったマイネルコレクトは、2着以下に2馬身もの差をつけ、さらにグラスワンダーの持つレコードを更新した。このことだけでもマイネルレコルトの非凡さが窺い知れる。この馬の良さは、柔軟性に富んだ肉体と、力みのないリラックスした走りができることである。道中での遊びが、追ってからの加速力につながっている。現時点では文句のつけようがない完成度を誇り、他のメンバーとは一枚も二枚も力が上であった。

後藤浩樹騎手の自信に溢れた騎乗ぶりにも好感を覚えた。 

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スキなし、ソツなし

japancup04 by gradeone
ジャパンカップ2004-観戦記-
ペリエ-ゼンノロブロイの圧勝で今年のジャパンカップは幕を閉じた。前半は11秒台のラップが4ハロン続いたが、中盤で一気にペースが緩み、最終的にはラストの瞬発力勝負になったことが、ゼンノロブロイにとっては功を奏した。メンバー中最速の上がり(34秒3)で一気に他馬を突き放しての完勝である。この後、有馬記念に駒を進めるらしいが、これだけ隙のないレースができるのであれば、タップダンスシチーに一矢報いることもできるかもしれない。

これで天皇賞秋からのGⅠ連勝となったが、あれだけ勝ち切れなかった馬が、騎手によってこれだけ変わるものだということを実感させられた。
 

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敵は内にあり

jcdirt04 by sinya
JCダート2004-観戦記-
圧倒的な1番人気に推されたアドマイヤドンだが、2着を確保するのが精一杯という内容で敗戦を喫した。道中は自然な形で中団の外目を進み、直線に向いてあとは追い出すだけという定石通りのレースであったが、安藤勝己騎手からのGOサインに対して、アドマイヤドンはスッと反応することなく、叱咤激励されながら渋々伸びるといった体たらくであった。特に今年に入ってから目立ち始めた「レースでも手を抜く癖」が、顕著に現れてしまったことになる。2歳時から高いレベルの競争で全力を出し続けてきたことによる、精神面での消耗が噴出してきているのかもしれない。こうなってしまうと立て直しは難しく、引退も考えなければならないだろう。

ダートの一線級で戦い続けてきたタイムパラドックスは、武豊騎手の渾身の騎乗でついに栄冠を手にした。

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お前ら男だ!!

milecs04 by gradeone
マイルCS2004-観戦記-
 デュランダルは、今年に入り休み明けの2戦共に惜しい競馬が続いていたが、一叩きした今回はまさに磐石といった形での楽勝であった。この馬の最大の長所は、スタミナに裏打ちされた息の長い、ペースに左右されない安定した末脚である。短距離馬としては一見華奢に見える体型も、実はこの馬のスタミナの豊富さ、器用さを物語っている。さらに、レースに行って無駄な動きをしない操作性の良さ特筆ものである。これらの要素が全て絡み合って、ニホンピロウィナー、タイキシャトルに次ぐ3頭目の、マイルチャンピオンシップの連覇が可能となった。

 スプリントからマイルぐらいまでの距離のG1レースにおいては、安定した末脚を武器に後ろからレースを進められる馬の方が有利になる。
 

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柔らかく

elizabeth04 by special-days
エリザベス女王杯2004-観戦記-
 スタートからゴールまで、武豊騎手の完璧な騎乗であった。今年に入ってからのG1戦線では、外国人ジョッキー、地方競馬出身のジョッキーに押されがちであったが、これで日本のトップジョッキーが一矢報いる形となった。アドマイヤグルーヴのような乗り難しい馬を、いとも簡単に乗りこなしているように見せるのは、武豊騎手の「当たりの柔らかさ」を持ってこそ初めてなし得るのである。特に注目してほしいのは拳の位置である。拳の位置を下げて馬のハミに余計な動きを伝えないようにしながら、拳の握りだけで微妙な感覚を馬に伝えている。騎手の動き、感覚に敏感に反応してしまう馬に乗せるならば、世界中を探しても武豊騎手の右に出る者はいないかもしれない。

 勝ったアドマイヤグルーヴは、古馬になり精神面において成長を遂げたことを証明した一戦となった。

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水を得た韋駄天

sprinters04 by gradeone
スプリンターズS2004-観戦記-
 通常よりも3秒近く時計の掛かる、不良馬場でレースは行われた。過去にこのような馬場でレースが行われたのは、平成12年にダイタクヤマトが勝利したスプリンターズステークスが思い浮かぶ。やはり、無理なく先行できた馬にとっては圧倒的に有利になる馬場状態であり、今年のスプリンターズステークスは、それに加え、道悪馬場に対する巧拙も問われるレースとなった。

 カルストンライトオの最大の勝因は、何と言っても不良馬場を味方につけたことに尽きる。

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ラストダンスは私に

takaraduka04.jpg by gradeone
宝塚記念2004-観戦記-
 心配された雨も降ることなく、絶好の馬場コンディションでレースは行われた。前半はローエングリンがレースを引っ張り、3コーナー過ぎからはそれを引き継ぐようにしてタップダンスシチーが先頭に踊り出た。終始息が入らず、淀みのないラップが刻まれたため、実力の差が歴然としてしまう厳しいレースであった。

 勝ったタップダンスシチーは、ローエングリンが途中からペースを落としたため、3コーナーからこの馬にとって自然な形で先頭に立つことになった。

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yasuda04.jpg by gradeone
安田記念2004-観戦記-
 今開催の東京競馬場の馬場は、地盤が硬いのか、雨が降っても時計が全くかからない。稍重馬場にもかかわらず勝ち時計は1分32秒6と速く、道中も速いラップが刻み続けられたため、前に位置していた馬たちにとっては息の入らない苦しい展開となった。

 ツルマルボーイとテレグノシスの勝敗を分けたのは、4コーナーのコース取りというよりも、2頭に内在しているスタミナの差である。テレグノシスの勝浦騎手は4コーナーで外を回したが、ほとんど距離ロスにならないスムーズなコーナーリングであった。東京競馬場の1600mは字ヅラ以上にスタミナを要求されるコースであり、そのため2000m以上のレースを中心に使ってきたツルマルボーイに軍配が上がったことになる。着差は首であるが、どこまで行っても縮まることのない決定的な底力の差であった。

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世界の中心でカメハメハ

derby04.jpg by takinen
ダービー2004-観戦記- 
 世界のどこを探しても、これほど強いサラブレッドは見つからないだろう。このような感慨に浸らせてくれるに十分な、キングカメハメハの最高の走りであった。スタミナ、スピードともに最高の域に至り、パワーに溢れていながらも鈍重さは微塵もない。騎手の意のままに動ける素直な気性と、ゴーサインが出てからはどこまでも走り抜ける集中力と闘争心は類を見ない。最高の賛辞を並べ尽くしても余りある、サラブレッドの完成形がここに誕生した。

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超えてゆけ

oaks04.jpg by gradeone
オークス2004-観戦記-
 オークス史上最高の単勝支持率を集めたダンスインザムードの敗因は、「馬体重が大幅に増加していた(+14kg)」、「入れ込みが激しかった」の2つが考えられる。まず前者については、きっちりと調教を積んできてのものだけに太め残りということはないが、全てが成長分ではなかったことは確かである。なぜこれほどまでに増加したかというと、急激に縮めた馬体は反発(反動)で膨らもうとする性質を持つからである。つまり、前走で完全に仕上がっていた馬体が、知らずのうちに緩んでしまっていたということになる。次に、入れ込みについては、前走の桜花賞に比べ、長距離輸送が無かったにもかかわらず、明らかに激しかった。このことは、馬が精神的に萎えてしまっていて、競走を嫌がっていたことを示す。

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大王手

nhkmc04.jpg by gradeone
NHKマイルカップ2004-観戦記-
 雨の降りしきる中、上滑りはするがクッションの適度に利いた、非常に速い時計の出る絶好の馬場でレースは行われた。勝ちタイムの1分32秒5はレースレコードであり、このタイムで2着以下に5馬身もの差をつけ、余裕を持って勝利したキングカメハメハの能力の高さだけが際立ったレースであった。

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前門のトラ

satuki04.jpg by gradeone
皐月賞2004-観戦記-
 勝ちタイム1分58秒4、上がり34秒4、そして前半の1000mの追加タイムが59秒7という時計だけを見ても、いかに今年の皐月賞が超が付くほどのスローペースで流れたかということが分かる。マイネルマクロスが立ち遅れたことだけではなく、何と言っても、逃げたい馬が揃いペースが間違いなく速くなるだろうという確信めいたジョッキー心理がその手綱を引かせたことが大きな原因である。

 勝ったダイワメジャーはレースの流れに上手く乗り、最後の直線では他馬を引き離し、ゴールまでしっかりと伸びた。

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びくともしない

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桜花賞2004-観戦記-
 藤沢和雄、武豊というトップトレーナー、トップジョッキーのコンビによって、ダンスインザムードが昭和61年以来、18年ぶりの関東馬による桜花賞制覇を成し遂げた。藤沢和雄調教師にとっては初のクラシック制覇となり、それも関西に乗り込んでのものだけに価値は高い。レースは1分33秒6という速いタイムでの決着となったが、道中のペースはそれほど速くはなく、レースが動いたのは3コーナー過ぎからという緩急のあるラップとなった。

 勝ったダンスインザムードは好スタートから道中は馬なりで追走し、早目に動かざるを得ない厳しい展開ながらも、ラストの200mも止まることなくキッチリと伸び切った。

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底知れぬ

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フェブラリーS2004-観戦記-
 標準よりも1秒くらい速い時計の出る馬場でレースは行われたが、道中が極端なスローで流れたため、全体としては標準よりも遅い1分36秒8の時計での決着となった。直線に入ってからヨーイドンの瞬発力勝負になり、末脚に賭けた追い込み馬は非常に厳しい競馬を強いられ、道中の位置取りが明暗を分けた。

 中央G1初制覇となったアドマイヤドンは、着差2分の2馬身以上の余裕を持っての勝利であった。

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超絶の覇者

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有馬記念2003-観戦記-
 コーナーが6つもあるためにスローな流れになりやすいのが有馬記念の特徴であるが、2コーナーですでに抑えが利かなくなったザッツザプレンティとアクティブバイオが作り出したのは、前半1000mが58秒5という有馬記念史上最高のハイペースであった。後半もペースは落ち着くことなく、まさに各馬の力と力がぶつかり合うごまかしの利かないハイレベルの流れであり、どの馬も最後は筒一杯で脚が上がっていた。

 そんな中、シンボリクリスエス1頭だけは、バテることなく最後まで伸び切っていた。後のない究極の仕上げを施されてきたためか、パドックから怖いくらいの研ぎ澄まされた雰囲気を醸し出していたし、道中も無駄な動きをすることなく、4コーナーを回ってペリエ騎手からゴーサインが出ると、空を飛ぶように中山の坂を駆け上がった。良馬場で9馬身という差は決定的なものである。

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One Chance

asahifs03.jpg by ruby
朝日杯フューチュリティS2003-観戦記-
 メイショウボーラーが外枠から思い切って打った逃げは、前半4ハロン45秒8というハイペースであった。全体の時計も歴代3位の1分33秒7という、スピードとスタミナが要求される力通りの決着となった。

 5連勝で2歳チャンピオンを狙ったメイショウボーラは、直線坂上で脚が止まってしまい、人気に応えることはできなかった。前走のデイリー杯とは対照的な前傾ペースで逃げることになったが、これはペリエ騎手の判断によるものであろう。

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勝った馬が強い

hansinjf03.jpg by suna
阪神ジュべナイルフィリーズ2003-観戦記-
 圧倒的な人気を背負ったスウィープトウショウは直線で致命的な不利を受け5着に沈み、審議対象となったヤマニンシュクルは逃げ粘るヤマニンアルシオンを捕えて勝利と、レースの綾というものが、両馬の明暗を対照的に分けた。こういう明らかな不利が生じた場合、もしスムーズな競馬が出来ていたらと考えるのが人の常であるが、競馬という偶然のごとき世界においては、次のように考えるべきであろう。 「不利を受けて負けた馬にはそうなるべき理由(要因)があった。」 つまり、今回のレースにおいて、スウィープトウショウが負けたのは偶然ではなく、必然であったと考えるべきなのである。

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文句なし

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ジャパンカップ2003-観戦記-
 雨は当日午後に降り止んだが、馬場は重のままでレースはスタートとなった。どこを通っても、どの馬にとっても走りにくい馬場であり、ペースうんぬんよりも、一歩でも前に出ようという意志がなければ脱落してしまう厳しいレースとなった。結果的に見ても、力のある馬、調子の良い馬が上位を占めており、もし良馬場で行われていたとしても同じような結果が出ていたに違いない。

 ジャパンカップ史上最大の着差をつけて大勝したタップダンスシチーは、晩年になってから充実し本格化した馬の強さを余すところなく発揮した。

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シービスケット!?

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ジャパンカップダート2003-観戦記-
 雨が降りしきるドロンコ馬場の中で行われたレースは、こういった馬場に対する巧拙うんぬんではなく、弱き者が脱落していくというまさにサバイバルの様相を呈した。雨が降れば、ダートは脚抜きが良くなり走りやすくなるが、これほどまでに降ってしまうと逆に最も走りづらい馬場に豹変してしまうことになる。そんな走りづらい馬場を苦に、日本馬が1頭1頭と戦意喪失していく中、最後まで闘争心を失わなかったフリートストリートダンサーとアドマイヤドンには拍手を送りたい。

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スプリンターズ・ハイ

milecs03.jpg by suna
マイルチャンピオンシップ2003-観戦記-
 縦長の陣型で終始レースは進み、好位を追走した馬やスタミナに欠ける馬は道中でなし崩し的に脚を使わされ、最後の伸びを失ってしまった。勝ったデュランダルは前走のスプリンターズステークスと同様、ラスト3ハロンの脚に賭けることによって、群雄割拠の混戦を切り裂いた。

 1200m→1600mというG1の連覇が難しいのは、道中のペースの違いに馬が戸惑ってしまうからである。

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血脈の火

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エリザベス女王杯2003-観戦記-
 アドマイヤグルーヴがついに母子3代に渡るG1制覇を成し遂げた。ダイナカール(父ノーザンテースト)→エアグルーヴ(父トニービン)を経て、当代最高の種牡馬であるサンデーサイレンスを父とするアドマイヤグルーヴが誕生した。繁殖牝馬が生涯で残すことができる仔の数を考えると、このベストトゥーベストと思われる掛け合わせにおいても母子3代でG1を制覇することは奇跡的なことであり、最初で最後の大記録であると思われる。私としては、エアグルーヴという牝馬の人智を超えた力を改めて感じるとともに、後世に確実に大きな影響を与える血脈であると確信している。

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馬が空を

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天皇賞秋2003-観戦記-
 空前絶後のハイペースでレースは流れた。前半1000mが56秒9(スプリント戦並みのハイラップ!)、そして、レコード決着にもかかわらずラスト3ハロンが37秒1もかかるという、極端な前傾ラップであった。

 このようなレースを作り出したローエングリンの無謀な逃げは、後藤騎手またはローエングリン陣営の作戦ミスによるものではなかったのか。

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こんな騎手もいる

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菊花賞2003-観戦記-
 菊花賞というクラシックレースにおいて、1番人気を分け合う2頭に外国人ジョッキーが乗るということは、騎手にも国際化の波が押し寄せていることをはっきりと示している。つまり、馬乗りが巧く、勝利をもたらしてくれるジョッキーならば、どこの国から来た誰でも構わないのである。新馬戦から手塩にかけて育ててきた馬を、本番のレースでは乗り替わりを命じられ、あっさりと勝たれてしまう騎手の気持ちは如何に。確かに実力、実績が全ての勝負の世界ではあるが、あまりにも目先の勝利に目を奪われていやしないか。そんな忸怩たる思いを吹き飛ばすかのような、安藤勝己騎手の思い切ったロングスパートが決まった。ザッツザプレンティの全てを出し切るにはこれしかないという信念に基づいた、わずかの迷いすらない見事な騎乗であった。

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至上の愛

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秋華賞2003-観戦記-
 メジロラモーヌに次ぐ、17年ぶりの3冠牝馬が誕生した。他馬とは完成度が違うのはもちろんのこと、圧倒的な運動能力と高い精神性がなければ、この3つの難関を全てクリアすることは難しい。

 スティルインラブの最大の武器はスタミナに裏付けされた息の長い末脚と、レースに行って騎手の意のままに動くことのできる落ち着いた気性である。実は私は、紅梅ステークスにおけるレース振りとその体形を見て、スティルインラブをスピードの勝っている馬であると考えていた。能力を発揮できるのは桜花賞までだろうと判断し、オークスでは勝ち切るまではいかないだろうと評価を下げた。しかし、よく考えると、桜花賞での早めの仕掛けからのロングスパートは、この馬の持つ豊富なスタミナを証明していたのであった。オークス、そして今回の秋華賞と、どこまでも伸びて行きそうな末脚をコンスタントに披露できるのは、スタミナの絶対値の高さゆえであり、他馬が最後の直線で太刀打ちできなくなるのも当然である。

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終い良ければ

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スプリンターズS2003-観戦記-
 4コーナーを抜群の手応えで回り、直線でも満を持して抜け出したはずのビリーヴを、デュランダルが大外から矢のような末脚で差し切った。タイムは1分8秒0とG1にしては速くないが、ビリーヴが早めに前を潰しにかかったことや、今の中山競馬場の上がりの掛かる馬場状態を考えると、後ろから差してくる馬にとって有利なレースであった。

 ビリーヴが一旦抜け出してから差されてしまったのは、1頭になって気を抜いたわけでは決してなく、苦しくても最後まで走り切るという気持ちが薄れていたからである。

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勝つことが思想なのだ

takaraduka03.jpg by ruby
宝塚記念2003-観戦記-
 昨年の年度代表馬、G16勝馬、そして本年度のダービー馬と、いつになく豪華なメンバーが揃った春のグランプリは、人気を分け合った前記3強が直線半ばで全滅するという衝撃の結末で幕を閉じた。このような結果を生んだ最大の原因として、上がり3ハロンが36秒9も掛かった超ハイペースの展開が挙げられるだろう。スピードを生かし先行していた馬にとっては、息の入らない厳しい流れになり、最後はバテなかった馬が勝つといったスタミナ勝負のレースとなった。

 これで天皇賞春と宝塚記念を連勝することになったヒシミラクルにとっては、上がりの掛かる展開になり、バテない渋太さを生かせたことが最大の勝因であろう。

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不世出のオールラウンダー

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安田記念2003-観戦記-
 条件クラスのレースでも相当に速い時計が出ていた馬場を考慮すると、前半46秒0というペースは、G1としてはスローということになるだろう。その結果、直線ではヨーイドンといった瞬発力勝負になり、早めに抜け出して粘り込みを図るローエングリンを、武豊アドマイヤマックスが捉えたと思われた瞬間、馬場の真ん中を通ったアグネスデジタルが33秒台の脚を使って、最後は貫禄できっちりと差し切った。

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ネオ=救世主??

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ダービー2003-観戦記-
 サンデーサイレンスの直仔やその孫たちが掲示板を独占するといった、今年のG1レースの流れを象徴するかのようなダービーであった。そんな中でも、第70代のダービー馬の称号を手にしたネオユニヴァースの圧倒的な強さには驚きを隠せない。というのも、今回のダービーにおけるネオユニヴァースの体調は、決して万全ではなかったからである。そのことは、デム-ロ騎手の勝利ジョッキーインタビューにおける、「いつもはふざけようとする馬が、今日は大人しかった。」というコメントからも読み取れる。しかし、いざレースでは着差以上の強さを見せての完勝であり、この馬の奥の深さとともに、何か神秘的なものすら感じた。

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愛は超えていく

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オークス2003-観戦記-
 クラシックに乗るような馬にとって、競馬の苦しさを初めて味わうのは3戦目あたりだと言われる。それまでは楽に走って勝てていたが、メンバーが強化されることにより、騎手に叱咤激励されながら極限まで能力を出し切ることを要求されるからである。競馬の苦しさを知った若駒は、当然の事ながらレースを嫌がるようになる。レースの雰囲気を察すると暴れたり、精神的なストレスから入れ込んでしまったりもする。ゲートに入ることを拒む馬もいるし、その場を少しでも早く終わらせよう(逃げ出そう)として引っ掛かってしまう馬もいる。このように、若駒のメンタリティは現象として表出しやすい。

 アドマイヤグルーヴは、新馬戦とエリカ賞は楽勝して休養に入った(ここまではほとんど追う所なしで、厳しい競馬を体験していない)。

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雨に踊れば

nhkmc03.jpg by sashiko
NHKマイルカップ2003-観戦記-
 開幕週であるにもかかわらず、直前にひと雨降ったことにより、思っている以上に時計がかかり、スタミナを要する馬場でレースは行われることになった。エイシンツルギザンを除いて、最後の直線で伸びてきたのは前走で1800m以上のレースを使っていた馬たちであることが、それを証明している。さらに、新設東京競馬場の長くなった直線を意識したのか、各馬スタートから積極的に行こうとはせず、その状況は4コーナーを回っても変わることはなかった。その中でも自分のペースを貫いたウインクリューガーは、最高の形でレースを運んでいた。

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なんというスタミナ

天皇賞春2003-観戦記-
 大逃げを打ったアルアランが作り出したのは、前半、中盤、後半と偏りのない緩みのない流れで、瞬発力よりも持続力を要されるステイヤ-向きの展開となった。なったというよりも、角田ヒシミラクルがそうした、とした方が適切かもしれない。瞬発力勝負になっては勝ち目のない同馬にとっては、どれだけ中盤のラップを上げ、後半の上がりをかけさせるか(上がり時計を遅くするか)が重要となってくる。スタミナに不安のある馬は道中ジッとしているしかないが、自らのスタミナに絶対的な自信があるヒシミラクルは、中盤からすでに動き始め、レース全体の上がりが36秒1という自らにとって理想的な展開を作り上げることに成功した。

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新次元の証明

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皐月賞2003-観戦記-
 勝負所はスタートしてから1コーナーまでの、わずか数百メートルであった。好位置を取ろうと各馬が1コーナーに向けて殺到する中、出たなりに馬の行く気に任せ、静かに内を進んだネオユニヴァースと、騎手の制止を振り切らんばかりに前へ前へと行きたがったサクラプレジデント。道中で力を温存できたかロスしてしまったかという違いが、わずか頭差という大きな勝敗を分けることになった。スローペースの瞬発力勝負になったことが、このサンデーサイレンス産駒2頭と他馬の力差を浮き彫りにした形となったが、それと同じだけの力差をネオユニヴァースとサクラプレジデントの間にも見た。

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ふさわしい

okasyo03.jpg by sashiko
桜花賞2003-観戦記-
 前半の1000mが58秒4、勝ち時計が1分33秒9というレコードであったように、レースは全体としてハイペースで流れた。それでも、前に位置した馬が総じて上位に残ったのは、コンディションの良い内側のグリーンベルトを通ることができたからである。後ろから差そうとする馬は必然的に外を回らねばならないし、前に行っている馬は馬場の良い所を通っているのでなかなか止まらない。枠順の内外の差、脚質による位置取りの差が顕著に出たレースであった。

 勝ったスティルインラブは、好スタートを決め、内側に進路を取れたことが第1の勝因だろう。

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稀有

takamatumiya03.jpg by echizen
高松宮記念2003-観戦記-
 中京開催8日目にもかかわらず、内外の差もなく、極端に時計が速かったり掛かったりすることのないベストコンディションの馬場でレースは行われた。圧倒的な1番人気を背負ったショウナンカンプを全馬がマークするような展開で、前半の3ハロンが32秒9というハイペースとなった。レースの見どころは4コーナーで、突き放したくても馬が前に進まないショウナンカンプとは対照的に、ハイペースをビリーヴが引っ張ったままという抜群の手応えで回って来た所である。2頭の手応えの差は明らかで、この時点で既に勝負は決していた。

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馬体重を見れば分かること

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フェブラリーS2003-観戦記-
 前日からの降雨により、適度に水分を含んだダートコースでレースは行われた。スマートボーイ、カネツフルーヴのハナ争い→超ハイペース→差し馬有利が大方の戦前からの予想であったが、スマートボーイのダッシュがつかなかったこともあり、1コーナーまでだけではなく、全体としても淡々とした流れになった。中山競馬場ダート1800mという逃げ先行馬が圧倒的に有利なコースで、このような展開になってしまっては、差し追い込み馬にとっては成す術もなかった。脚抜きの良い馬場、前残りの展開など、全ての条件が勝ったゴールドアリュールにとっては有利に働いた。

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夢は終わり、また始まる

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有馬記念2002-観戦記-
 「無敗で有馬記念を制する3歳牝馬」に挑戦したファインモーションは、折り合いを欠き惨敗してしまった。以前から直線で内にササる癖は指摘されていたが、それはスタンドからの歓声に驚いてのものだったのだろう。あのエアグルーヴでさえも、3歳時の秋華賞でパドックでのカメラのフラッシュに驚き、イレ込んでしまって惨敗したことがある。ファインモーションにも、そういった牝馬特有の繊細な面があってもなんら不思議はない。

 ファインモーションの本質的な弱点は、

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最後まで立っていたからこそ

asahifs02.jpg by ruby
朝日杯フューチュリティS2002-観戦記-
 武豊騎手がサイレントディールの気に逆らうことなく行かせ、ペリエ騎手のマイネルモルゲンがそれをマークする形でレースは進められた。ペリエ騎手の武豊マークはよく見られるが、今回のレースではその策が裏目に出てしまった。この2頭が作り出したペースは、前半1000mが56秒9という超ハイペースで、上位に来た馬は前走で1800mを使ってきたスタミナ豊富な馬ばかりという結果になった。

 そんな中でも、3番手を追走して勝ったエイシンチャンプは、スピードとスタミナを高いレベルで兼備していることを証明してみせた。

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強く、そして美しい

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阪神ジュべナイルフィリーズ2002-観戦記-
 阪神競馬場の1600mがフルゲートで行われれば、ある程度のゴチャつきは予測されるが、案の定1コーナーまでの入れ替わり立ち替わりは激しく、不利を被った馬も多く見受けられた。経験の浅い2歳馬、それも牝馬の争いだけに、前半で大きなロスがあると後半にそれが何倍もになって跳ね返ってくることになる。時計的には平均ペースで、展開による有利不利はなかったが、2着以下に関してはどれだけ巧くレースを進められたかによって着差が違った印象が強い。

 ピースオブワールドは、このメンバーでは能力、完成度が共に違いすぎた。

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世界をナメるな!!

japancup02.jpg by sashiko
ジャパンカップ2002-観戦記-
 11年ぶりの外国馬によるワンツーフィニッシュということになったが、それほど驚くべきことではないだろう。某テレビ番組の解説での吉田照哉氏のコメントを借りると、「日本馬だけが強くなったと考えるのは錯覚で、強い馬は世界中のどこにでもいる」のである。勝ったファルブラヴのジャパンカップまでの成績は[7・4・3・1]と、道悪だった凱旋門賞を除けば安定した成績を残しており、どのような条件下でも堅実に力を発揮してきたことが分かる。フェアリーキングを父に持ち、スピード優先の世界的な流れに適応できる最先端の血統でもある。今回のジャパンカップではデット-リ騎手の方が目立ってしまったが、ファルブラヴも国際G1を勝つだけの力を持った一流馬であったことは間違いがない。長距離輸送がないぶん日本馬有利というジャパンカップの傾向はこれからも変わらないだろうが、ファルブラヴのように強い一流の外国馬がやって来た場合には、今回のような結果も覚悟しなければならないだろう。

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動じることなく

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ジャパンカップダート2002-観戦記-
 戦前の予想に反し、スタートから4コーナーに至るまで、レースは非常に緩やかに流れた。これはスマートボーイがアブリーズに絡まなかったこと以上に、どの騎手の脳裏にも「スタートからのハイペースに巻き込まれたくない」という意識が植え付けられていたことの結果である。時としてレースの流れは、このような各ジョッキーの脳裏に描かれた極端なイメージ(偏見)によって大きく影響を受けてしまうことになる。後半は各有力馬が一斉に動いたため速くなったが、誰がこれほどまでの後傾ラップを予測し得ただろう。

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マイル界没落!?

マイルチャンピオンシップ2002-観戦記-
 今の京都の馬場で1分32秒8ならばそれほど速い時計ではないが、上がり3ハロンで35秒1を要していることから判断すると、先行馬にとっては息の入りづらいハイペースであった。4コーナーまで力を温存できた末脚自慢の馬たちにとっては、その切れを披露するにはおあつらえむきの舞台となり、そのためゴール前横一線という際どい決着となった。

 勝ったトウカイポイントは、道中に悪さを見せずに集中して走ることができるマイルという距離が適していたのだろう。

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眩暈

elizabeth02.jpg by sashiko
エリザベス女王杯2002-観戦記-
 スタートから4コーナーまでに至るまで予想以上のスローペースでレースは流れ、上がりが33秒8という完全な前残りの競馬となった。超スローペースを読み切った武豊騎手は、4コーナー手前から動き始めることによって後続の切れ味を封じ込めることに成功し、まさに他馬に影も踏ませることのない完勝を演じた。2着以下の馬に関しては、道中の位置取りが明暗を分けた。

 6連勝でエリザベス女王杯を制したファインモーションは、いとも簡単に古馬の壁を打ち破ってしまった。

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ギムレットよ・・・

tenaki02.jpg by sashiko
天皇賞秋2002-観戦記-
 前日からの雨による心配も杞憂に終わり、久しぶりに力の拮抗した、高いレベルでの争いを見せてもらった。ペースも極端に速くも遅くもない、どの馬にとっても力を出し切れるレースであり、最後の直線ではまさに力と力のぶつかり合いといった趣きであった。そのようなサバイバルレースから力強く抜け出したのは、最後のクラシックである菊花賞を捨ててまで天皇賞秋に照準を絞ってきた、3歳馬シンボリクリスエスであった。内々の馬場の良い所を進み、最後の直線までジッと我慢をし、馬群の間隙を縫って追い出されるや、外から来る切れ者サンライズペガサス、老兵ナリタトップロードの追撃を振り切ってのゴールであった。

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だから競馬は面白い

kikka02.jpg by shinji
菊花賞2002-観戦記-
 まずはノーリーズンの落馬について述べなくてはならないだろう。競馬場で起こる全てのことには原因がある、と私は思っていて、あのサイレンススズカの競走中止にしても、今回のノーリーズンの落馬にしても、直接的な原因は偶然の産物であるかもしれないが(たとえば石に躓いたなど)、その偶然を呼び起こし、最悪の結果まで一気に導く間接的な原因どこかにがあったはずなのである。こじつけと言われることを承知で敢えて述べるならば、今回の落馬事件はノーリーズン自身の体調が優れなかったことに間接的な原因があったのではないだろうか。

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惚れ惚れと

syukasyo02.jpg by sashiko
秋華賞2002-観戦記-
 ここまで1頭の馬の力が抜けているとレース回顧すら必要ないのでは、と思わせられる程のファインモーションの圧倒的強さであった。この馬の良さは、改めて挙げるまでもないのだろうが、牝馬離れしたパワー、デンヒル産駒に共通するスピード、そして騎手の指示通りに動ける気性の素直さが非常に高い次元で備わっているということであろう。肩と腰回りから尻にかけての筋肉の豊富さ、柔らかさは惚れ惚れするほどで、それら全ての要素が融合され推進力へと変換されている。ただし、気性が前向き過ぎることからも、追ってからそれほど伸びるタイプではないし、距離的には2400mがギリギリといったところであろう。しかし、あくまでもさらに高いレベルでの話であって、牝馬同士のレースではあまりにもエンジンの大きさが違いすぎた。

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To believe or not to believe

sprinters02.jpg by sashiko
スプリンターズS2002-観戦記-
 新潟競馬場ではじめて行われたスプリンターズステークスは、実力馬3頭によるデットヒートの末、1番人気のビリーヴが接戦を制し、4連勝でG1の冠を手に入れた。前半33秒7、後半34秒0という数字だけ見ればイーブンペースだが、G1レースとしては非常に遅いペースであったため、スプリント戦としては珍しい直線でヨーイどんという瞬発力勝負の競馬となった。そのことが3頭の中で最も有利に働いたのがビリーヴであり、着差以上に危なげない勝利であった。

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蘇りし炎

takaraduka02.jpg by sashiko
宝塚記念2002-観戦記-
 大逃げを打ったかに見えたローエングリンが作り出したのは、中盤にゆるみを持った、横山典弘騎手により配合された絶妙なペースであった。馬場が良かったため上がり時計も必然的に速くなり、後ろ位置している馬にとっては戦いにくい展開となった。

 一見ギリギリの勝利のように見えるが、実は着差以上にダンツフレームにとっては余裕のある勝利であった。

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長かったよ

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安田記念2002-観戦記-
 アドマイヤコジーンが再びG1のゴールを先頭で走り抜け、後藤浩輝騎手が初めて中央のG1タイトルを獲得した。同じ場所で、時を同じくして起こったこれら2つの出来事は、私たちの中でいくつもの物語に変わり、そしてひとつの伝説として生き続けるだろう。

 アドマイヤコジーンがロバーツ騎手を背に朝日杯3歳ステークス(現朝日杯フューチュリティステークス)を勝ってから、すでに3年半の年月が流れた。

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運も不運も

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ダービー2002-観戦記-
 今年のダービーは終わり、ひとつの問いが残された。「前走で致命的な不利を受けずにNHKマイルカップを勝っていたら、タニノギムレットはダービー馬となりえたであろうか。」タニノギムレットの関係者、そしてタニノギムレットを支持し賭け続けてきた者たちは、この問いに対して、なんの疑いも抱くことなく「もちろん勝っている」と答えるはずである。タニノギムレットの力を持ってすれば、1分32秒台の時計で並みいる強豪マイラーたちを打ち負かし、その3週間後に、今度はチャンピオンディスタンスにおいて8512頭の頂点に立つという偉業を成し遂げることは可能であると。しかし、本当にそうだろうか。

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ドーベル級爆発力!?

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オークス2002-観戦記-
 心配された雨も前日で止み、なんとか良馬場発表でレースは行われた。それでもパンパンの良馬場というわけにはいかず、ある程度力を要する、時計の掛かる馬場状態であったようだ。予想通りにサクセスビューティーがハナを奪い、ユウキャロットが2番手を進むといった展開で、馬場状態を考慮に入れても平均ペース、どちらかというとスローに近い流れであった。

 勝ったスマイルトゥモローの爆発力には驚かされた。

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これも競馬か??

nhkmc02.jpg by sashiko
NHKマイルカップ-観戦記-
 なんとも後味の悪いレースだった。圧倒的な1番人気に推されたタニノギムレットは、一度ならまだしも、二度にわたる勝負所での不利を受け、そこからなんとか追い上げたものの3着を確保することが精一杯であった。まさにノーチャンスといった内容であった。タニノギムレットが不運だったと言ってしまえばそれまでだが、勝ったテレグノシスの勝浦騎手のラフプレーには大いに問題があるだろう。私がパトロールフィルムで見る限り、あれだけ故意に斜行をして降着にならないのは不思議で仕方がない。広々とした府中コースにもかかわらず、勝浦騎手は何を焦ってあんなにも無茶な乗り方をしなければならなかったのか。勝つためには手段を選ばないというのはおかしい。そして何よりも、本来は勝っていた馬が勝たなかったという動かし難い事実が悲しい。

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未だ頂に至らず

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天皇賞春2002-観戦記-
 これといった逃げ馬が不在の中、スタートから道中に至るまで13秒台のラップが続出する超スローペースでレースは流れた。典型的な上がりの勝負となり、結果、人気馬が上位を独占した。僅差での決着であったため見ごたえのあるレースではあったが、それでもレースのレベル自体は高いとは言えない。タイムにも映し出されるように、全体的に厳しさを欠くレースであった。

 だからといって、勝ったマンハッタンカフェ自身の価値が下がるわけではない。

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Just one reason

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皐月賞2002-観戦記-
 今年の皐月賞は例年になく絶好の馬場でレースが行われた。勝ち時計の1分58秒05は、コースレコードタイという驚異的なタイムである。もちろん道中のペースは非常に速く、息をつく暇もない厳しい流れになった。それでも、前に行っている馬が止まらない馬場であったため、後ろから行った馬は苦しいレースを強いられた。特に、小回りコースの多頭数ということもあり、外々を回さざるを得なかった有力馬らは全く自分のレースをさせてもらえなかった。

 そんな中でも勝ったノーリーズンの強さは際立っていた。

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疾矢のごとく

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桜花賞2002-観戦記-
 心配された雨の影響もほとんどなく、グリーンベルトのできたAコースでレースは行われた。予告どおりサクセスビューティーがハナを切ったが、ペースはそれほど速くはならず、全体として平均的な流れであった。勝ち時計1分34秒03、上がり35秒08も標準的であり、特筆すべきはない。

 アローキャリーは、このメンバーの中ではコース、距離に対する適性がほんの少し上位だったのだろうという印象を受けた。

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完膚なきまで

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高松宮記念2002-観戦記-
 最終週ということもあって、芝の傷みが目立ち、全体的に時計のかかるパワーを要する馬場でレースは行われた。前半32秒9、後半35秒5というラップはハイペースと言ってよく、勝ち時計の1分8秒04も、この馬場にしては優秀なタイムである。ただし、追い込みの利きにくい馬場であったことは間違いがなく、この点は勝ったショウナンカンプにとって有利に働いた。

 ショウナンカンプは速さだけではなく、

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ノンジャンルの極み

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フェブラリーS2002-観戦記-
 まさにダート界における頂点を争うにふさわしいレースであった。標準よりも少し軽いダートで行われたため、平均ペースであったにもかかわらず、勝ち時計は1分35秒1という、フェブラリーSがG1に昇格して以来最も速いものとなった。勝ち時計の速さがレースの優秀さを決める訳ではないが、ダート戦でこれだけのタイムで決着してしまうと、スピード不足の馬にとっては付け入る隙のない、実力が正直に反映されたレベルの高いレースとなった。

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最強から最強へ

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有馬記念2001-観戦記-
 芝が張り替えられた絶好の馬場で行われたため、スローペースで上がりの競馬になったにもかかわらず、2分33秒1という好時計での決着となった。それにしても勝ったマンハッタンカフェの上がり33秒9は凄い。直線での伸びは1頭だけ他馬と明らかに違っていた。

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あの母の仔として

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朝日杯フュ-チュリティS2001-観戦記-
 絶好の馬場状態で行われた今年の朝日杯フュチュリティーSは、グラスワンダーのレコードにコンマ2秒差の1分33秒8という好タイムで決着した。前半の1000mも57秒7と速く、先行した馬にとっては苦しい流れとなった。

 勝ったアドマイヤドンは道中を抜群の手応えで先団を追走し、最後の直線でも他馬の追い出しを待つ余裕さえあった。このペースを7ー4ー3という位置取りで抜け出し、最後もまだ余裕があったように、完全に一枚力が上であった。

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二度あることは

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阪神ジュべナイルフィリーズ2001-観戦記-
 またもやペリエにやられた、というのが大方の感想だろう。ペリエ騎手はこれで3週連続でのG1制覇となったが、その中でも今回の阪神ジュベナイルFは、まさに騎手としての技量の違いをまざまざと見せつけたレースとなった。誰の目にも明らかなのは、ペリエ騎手が馬を追えるということである。馬の動きを邪魔することなく、それでいて全身を使って馬を叱咤激励している。馬を強く追おうとすると、どうしても上体に力が入り、全身のバランスが崩れた状態で力づくで馬を動かそうとしがちである。それでは馬にとっては負担になるだけで、伸びる馬も伸びない。ペリエ騎手をみるとかなりハデなアクションで馬を追っているように見えるが、頭の位置だけは動いていないことに注目してもらいたい。つまり、全身を使っていながらも体の軸はブレていないのである。

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価値観の転倒さえ

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ジャパンカップ2001-観戦記-
 勝った馬を称えるまえに、まずテイエムオペラオーに敬意を示したい。2着に敗れたものの、直線での伸び脚は一瞬勝ったと思わせるものだった。しかし、ジャングルポケットが伸びて差し切ったようにみえるが、実際はテイエムオペラオーが坂を登ったあと止まっているのだ。止まった原因としては、体調によるものではなく精神的なものだと考える。馬自身に最後まで伸びる気力がなくなってきているのだろう。体調が悪いのであれば、抜け出す時のあの瞬発力は使えない。引退まで残されたレースは有馬記念だけとなる。勝って欲しいという気持ちはあるが、テイエムオペラオーがどこまで気力を振り絞って戦えるのだろうか。連対すら外すこともあり得るだろう。いずれにせよ最後まで無事に走り切って欲しいと心から願う。

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G1じゃない!?

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ジャパンカップダート2001-観戦記-
まるでG1レースを観ている気がしなかった。クロフネはまるで条件戦を勝つかのように、G1を勝ってしまったのだ。スタートでワンテンポ遅れたため、後ろからの競馬になったが、向こう正面で先団に取り付き、4コーナーではすでに先頭に立ってそのまま押し切ってしまった。馬群に入れずのびのびと走らせたかったのか、それとも砂を被らせたくなかったのか真意は分からないが、非常にロスのある競馬だったことは確かである。それでも2着に7馬身の差をつけてしまうあたり、ダートにおける一流馬たちと比較してもエンジンが違い過ぎる。距離うんぬんは関係なく、体調が万全であればダートで走っている限り負けることはないだろう。

ウイングアローは自身の持つレコードタイムを更新したが、昨年ほどの迫力は感じられなかった。道中苦しいところに入ったりして、少しチグハグな競馬になってしまった。それでも終い良く伸びているが、勝った馬が強かったということだろう。パドックで見ても分かるように、この馬はダート馬としては線の細いタイプだが、こういったスタミナや底力が必要とされるレースには滅法強い。このレースはパワーとスピードだけでは通用しないことを証明した。

3着に入ったミラクルオペラも、がっちりというよりもスマートな馬体をした馬だ。正攻法のレース振りからも来年のダート界を担うことのできる馬に成長している。ノボトゥルーは早めに仕掛けて見せ場を作ったが、最後は後続の馬たちに差されてしまった。けれども、ノボトゥルーをあそこまで持たせてしまうペリエ騎手の馬を追う技術は日本ではなかなか見られないものであった。

クロフネとの一騎打ちを期待されたアメリカのリドパレスは見せ場なく8着に敗れてしまった。パドックを見る限りでは、筋骨隆々ではあるが伸びのない馬体であった。体調が優れなかったことが大きな敗因だろうが、東京競馬場の2100mという距離自体が少しこの馬には長かったのだろう。あまりスタミナがありそうなタイプではないだけに、もう少し短い距離の方が向いているはず。

ジャパンカップダートが創設された昨年と今年の2回レースを観て、やはりスピードとパワーで押すタイプの、いわゆる典型的なダート馬ではこのレースは勝ち切れないことが分かった。これからも、海外からこのようなタイプの馬が参戦してくるだろうが、余程力が抜けていない限り掲示板に載るのが精一杯だろう。芝だけでなくダートのレースにおいても、地の利がある限りこれからも日本馬中心のG1となることは間違いない。

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グッドジョブ!!

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マイルチャンピオンシップ2001-観戦記-
 今年のマイルチャンピオンシップは実力よりもペース(展開)が大きく勝敗を分けたレースとなった。前半の4ハロン(半マイル)が47秒3という異常ともいえるスローペースで、上がりも34秒4では後ろから行った馬はレースにならなかった。

 勝ったゼンノエルシドはペリエ騎手の積極的なプレーが光った。

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華、花、首、首

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エリザベス女王杯2001-観戦記-
 今年のエリザベス女王杯は、前半1000mが58秒5という今までにないハイペースでレースが進められた。上位を占めたのは後方で待機した差し馬で、先行した馬の中では1番人気のテイエムオーシャンが5着に粘っている。どの馬も力を出し切った素晴らしいレースであった。

 やはりテイエムオーシャンは調教が軽すぎた。

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柔軟という資質

天皇賞2001-観戦記-
 当日の雨によって、滑りやすく重い馬場でレースは行われた。さらに、サイレントハンターが出遅れたことによって、超がつく程のスローペースになってしまった。上がりの3ハロンは35秒9とはいっても、2分2秒0という勝ちタイムと馬場の状態を考えると、まさに最後の直線での瞬発力の勝負になった。重馬場に適性のない馬と瞬発力のない馬は出番がないといったレースであった。

 テイエムオペラオーは、当日の馬体重がマイナス8kgであったように、ほぼ満点に近い仕上がりであった。距離が短いことを意識しすぎた乗り方ではあったが、

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キリンのような馬

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菊花賞2001-観戦記-
 勝った馬には失礼になるが、非常にレベルの低いレースであった。道中のペースが遅いことや、勝ち時計が遅いことが理由ではない。今年の菊花賞は、有力とされていた各馬が、力を発揮できる状態になく、レースをしていないという点においてレベルが低い。

 勝ったマンハッタンカフェは、薄すぎるほど体が薄い、まさに長距離に適した馬体をしている。同じサンデーサイレンス産駒のスペシャルウィークも薄い馬体をしていた馬だったが、脚の長さ、首の細さも手伝ってまさにキリンのような馬である。夏の放牧で減っていた体を回復して以来、札幌で2連勝していたが、セントライト記念であっさりと負けてしまった。ただこのレースに限っては、マンハッタンカフェはかなりの大跳びなので、滑るような馬場で力を発揮できなかったという理由はある。それでも4着に惨敗したのは、まだ力が付き切っていなかったからである。栗東に入厩して輸送時間を減らしたのは、ひとつの工夫であって、レースの結果に対する絶対的な影響力はそれほどないはず。なによりも、中間の時計も1本、最終の追い切りも馬なりという軽い仕上げで菊花賞を勝ってしまったことに驚きを隠せない。

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秋華賞はこうやって勝つ

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秋華賞2001-観戦記-
 まさにテイエムオーシャンの完勝であった。勝つべくして勝ったレースと言ってもいいだろう。前半の1000mが58秒4という、馬場が良いことを考慮しても速いペースでレースは流れたが、テイエムオーシャンは離れた3番手という絶好のポジション取りで、単騎で逃げているのと変わらないマイペースで道中進めることが出来た。本田騎手が前半から積極的な競馬をしたため、馬群に包まれることもなく、逆に内枠のアドバンテージを生かし理想的な競馬をしていた。

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最短距離を最短距離で

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スプリンターズS2001-観戦記-
今年のスプリンターズステークスは、10Rの1000万下条件においても1分7秒4の時計が出たように、非常に速い時計の出やすい馬場で行われた。その結果、トロットスターがサクラバクシンオーのレコードを更新する1分7秒0というタイムで快勝した。

トロットスターの勝因として、前に行っている馬にとっては厳しいハイペースが有利に働いたことが挙げられる。中山1200mというコースは、基本的には先行馬にとって有利なコースなのだが、ことG1レース、つまりスプリンターズSに関しては、道中のペースが速く、厳しいレースになってしまうため、余程の力がないと、先行してそのまま押し切ることは難しい。たとえ1分7秒0という速い時計の決着だとしても、前半3ハロンが32秒5という数字は先行馬にとっては明らかにオーバーペースである。着順からも見て取れるように、メジロダーリングとダイタクヤマト以外の先行した馬たちは、直線の坂で力尽き、後方から末脚に賭けた馬たちに差されている。このレースは快速馬が勢揃いするため、毎年ほぼ確実にハイペースになるし、今年以降もこの傾向は続くであろう。つまり、前に行く馬よりも末脚のしっかりしている馬が有利である。

トロットスターの+24kgは、春後半で減っていたことを考慮に入れたとしても、多少の太め残りであったことは否めない。パドックでも、普段はどちらかというと華奢な体形の馬が、一目で分かるくらい腹袋が立派に映っていた。それでも勝つことが出来たのは、トロットスター自身の持つスプリント戦に対する能力と適性が他馬を圧倒的に凌いでいたからであろう。

2着のメジロダーリングの充実には目を見張るものがある。外から被されるのを嫌い、無理をして先頭に立ち、前半32秒5のハイペースで飛ばしたにもかかわらず、勝ったトロットスターと首差の勝負にまで持ち込んだ。そして、あれだけの厳しい調教をしていながら、前走比+2kgの馬体重で出走してきたように、心身ともに最高の状態であった。牝馬であるにもかかわらず、出走馬中で最も力強さが感じられた。

3着に敗れてしまったダイタクヤマトにとっては、勝ち時計が速すぎたのではないか。瞬発力がある馬ではないので、直線に向くまでにセーフティーリードを取って置きたかったのだが、逃げている馬が速すぎたため、得意の4角先頭の戦法は不発に終わることになってしまった。惜しむらくは、スタートが良すぎたため、すぐにグリーンベルトを確保しに行った結果、二の脚を使ってあとから来たブレイクタイムらに外から被される形になってしまったことである。他馬を内に見る形でレースを進めたかったのだが、包まれてしまい4コーナーまでは普段の行きっぷりが見られなかった。体調自体はマイナス18kgの馬体重が示す通り、このレースの向けて最高に仕上がっていた。

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