ハービンジャーはサンデーサイレンスのよう

前回の「素質馬の見極め方」で取り上げたダノンメジャーが、早速、野路菊S(オープン)で2勝目を挙げた。極端なスローペースを後方2番手で進み、最後は上がり33秒1の脚で差し切った。着差以上に強い内容であったし、つきすぎるぐらい折り合いがついたことも、今後のレースにおける選択肢の幅が広がったと考えることができるだろう。2戦目になると、デビュー戦と違って、レースの苦しさや厳しさを馬も少しずつ分かってくるため、レースを早く終えようとして(逃げようとして)、行きたがるようになる馬は多い。その点においては、ダノンメジャーはレースに行くと落ち着いて、冷静に走ることができるのは最大の強みである。

ただ、ラストの3ハロンで33秒台の脚を使ったように、こうした極端な競馬をした後は反動が出ることが多い。楽に勝ったように見えても、実は一気に脚を使った方が肉体的な負担は大きい。2歳戦は得てして超がつくほどのスローに流れてしまうことが多いため、ジョッキーは折り合いをつけることを教えつつ、あまり極端な脚を使わずにすむようなポジション取りが求められる。今回の乗り方は、やや折り合いをつけすぎて、勝つためにダノンメジャーに負担を掛けてしまった印象が強い。このままレースを使うと、次は思いもよらない凡走をする。今は無理をせずに、ゆっくりと立て直して、来年に備えてもらいたい。

さて、その後、新たに2頭の素質馬が登場したので、ここに紹介したい。まず1頭目は、9月14日のメイクデビュー阪神(芝1600m)を勝利したサトノフラムである。終始、余裕のある手応えで追走し、最後の直線で外から他馬に並ばれるとあっと言う間に突き放した。ムチを入れることなく反応したのは素晴らしく、ゴール前では耳が立っているように、騎手が本気で追えば、もっと伸びているはずだ。母の母がウェルシュマフィン(タイキシャトルの母)という良血であり、馬体もがっしりとしていて力強い。父はマンハッタンカフェだが、胴部が詰まっていて、勝気な気性だけに、距離はマイル前後がベストだろう。短距離系の馬を育てるのが上手い安田隆之厩舎だけに、来年のNHKマイルCあたりが面白い。

もう1頭は、10月4日、メイクデビュー阪神(芝1800m)を勝ち上がったスティーグリッツである。ゴール前の写真を観るだけで、大物誕生を予感させてくれる馬だ。手脚が長く、胴部には薄さがある。性格もおっとりしているらしいので、距離はさらに延びて、この馬の良さが出るだろう。これでハービンジャー産駒は8頭目の勝ち上がりになるが、どの馬にも共通して言えることは、手先が軽く、良い意味での緩さが馬体にあって、まるでサンデーサイレンス産駒のようだ。多くのヨーロッパの一流種牡馬が日本では失敗に終わるのは、手先に軽さがなく、馬体に重厚感があるため、日本の軽い馬場に対応できないからである。それがハービンジャーにはない。自身も4歳になって大成したように、晩成型の馬であり、単なる早熟血統ではないことが窺い知れる。だからこそ、この時点で8頭も勝ち上がっていることが末恐ろしい。そのハービンジャー産駒の中でも、最も資質が高い馬の1頭がスティーグリッツであり、順調に行けば、来年のクラシックが楽しみだ。

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素質のある若駒の見分け方

夏競馬が終わりを告げ、いよいよ秋競馬が始まろうとしている。すでに多くの2歳馬がデビュー戦を迎え、勝ち上がった馬もいれば、そうでない馬もいる。札幌や新潟、小倉競馬場まで輸送してでも、できるだけ早めに賞金を獲得しておくことを念頭に、前倒しで調教は進められる。まだデビューできていない馬は、体質が弱かったり、アクシデントや怪我があったりして、これまでの過程で一頓挫あった馬だろう。つまり、現時点でデビューできて、しかも勝ち上がっている馬たちは、素質があり、なおかつ健康であることを意味する。

そんな健康で素質がある馬たちの中でも、飛び抜けて走る能力を持った馬がいる。これから先、クラシック戦線に乗って、同世代のピラミッドの頂点を目指していく素質馬である。そういった馬は、比較的早い段階で、素質の片鱗を見せることが多いため、メイクデビュー戦や未勝利戦などをしっかりと観ておくことで、いち早く才能を見抜くことができる。いわばクラシックホースの青田買いである。

ところが、これだけレース数が多いと、さすがに全てのレース(若駒戦)を観るわけにはいかないという競馬ファンも多いだろう。そんな忙しい競馬ファンにも可能な、素質馬の見分け方がある。それはゴール前の写真を見ることだ。「Gallop」でもいい、「競馬ブック」でもいい、特に最近は、メイクデビュー戦や若駒戦のレース写真は大きく掲載される傾向にある(カラーの場合もある)。勝負が決するゴール前は、その勝ち馬の本質が最も出やすい場面だけに、よく観察する必要がある。

見るべきポイントは、耳と表情と脚の使い方である。耳は前方に向けて立っている方が良い。馬が遊んでしまっている(物見をしてしまっている)と解釈する人もいるだろうが、基本的には、余力があるからこそだと考えるべきである。たとえ僅差であっても、耳が前方に立っている場合は余力があるので、着差以上の力があると見てよい。その逆も然りで、引き離して勝っていても耳を後ろに絞っていれば全力を出し切っての着差である。

ゴール前の表情を観れば、その馬の性格や気性がある程度分かる。目が血走っていたり、口から泡を吹いていたり、舌が出ていたりなどがあれば、どこかに苦しいところがあるのか、もしくは精神的に余裕がない馬のかもしれない。凛とした表情で、大きく輝く瞳でフィニッシュしていれば、騎手の指示に素直に従う素直さがあり、馬群に包まれても我慢できる賢い馬だと考えることができる。

脚の使い方に関しては、前脚が前方に良く出ていて、後ろ脚の踏み込み(着地点)が深いかどうかを観る。一枚のゴール写真では分からないこともあるが、才能のある馬の走りは写真から伝わってくることが多い。たとえば、昨年はいちょうSにおけるイスラボニータのゴール前の走る姿(フィニッシュ)を見て、この馬の素質を見極めることができた。前脚が実に遠くまで伸びて、収縮性の高い、才能のある馬にしかできない走りであった。*いちょうSのゴール前写真ではないが、イスラボニータの前脚の伸びの素晴らしさが分かる写真はこちら

今年の2歳馬の中で、ゴール前の写真を見てあっと思わせられたのは、今のところ、レトロロック、ポルトドートウィユ、ダノンメジャー、レッツゴードンキの4頭である。どの馬たちも耳を前方に立ててフィニッシュしており、実に賢そうな表情をしていて、気性面での問題もなさそう。脚の使い方については、レトロロック、ポルトドートウィユ、ダノンメジャーの3頭は素晴らしい。特にレトレトロロックとポルトドートウィユの踏み込みは、育成段階からの訓練の賜物であろう。実は札幌2歳Sで狙っていたレッツゴードンキはいきなり負けてしまったが、牡馬に混じっての3着だけに好走と考えたい。全てのレースを観なくても、ゴール前の写真を観るだけで分かることはたくさんある。素質馬の見分け方のひとつとして、知っておいて損はないだろう。

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シンメイフジは牡馬顔負け

Makereviewimg_2先週行われた3つの2歳重賞のうち、まずは札幌2歳Sから振り返ってみたい。勝ったサンディエゴシチーは、これでデビューからの連勝を3と伸ばした。内枠発走から迷うことなく好位を奪い、前走同様に道中は引っ掛かる素振りを見せたが、許容範囲内であった。最大の勝因は、藤岡佑介騎手の積極的なポジション取りと、他馬が仕掛けた最終コーナー手前で脚を溜められた(溜めた)ことにある。ロスのない走りで距離不安をも一掃した。馬体重は6kg減っていたが、デビュー時よりも18kgも増加しての勝利だけに、この夏の充実と成長が著しい。

その他、注目していたロードシップとマイネルアロマは4コーナーで自ら動いたものの、直線に向くやあっという間に失速してしまい、9着、12着と惨敗を喫してしまった。新馬戦の内容からも、これほど負ける馬ではないのだが、今回に限って言えば、休み明けで太目残りであったことは否めない。新馬戦後、一度放牧に出されて馬体を緩めているため、仕上げているつもりであっても中身が出来ていなかったということだ。一度叩いてから臨んできたサンディエゴシチーとは、このレースに賭ける想いが違っていた。同じことは1番人気に推されたダノンパッションにも当てはまる。そう考えると、外々を回りながらもよくぞ4着まで走っている。

次に小倉2歳Sについて。外枠から先行できる牝馬を狙え、という傾向にピタリと当てはまったジュエルオブナイルが勝利を挙げた。気の良い牝馬らしく、好スタートから前を見る形でスムーズに先行し、直線で先頭に立つやそのまま押し切った。デュランダルの初年度産駒ということで、これからも注目を集めるだろう。ただ、今回は全てに恵まれた感があり、この馬が抜けた強さを持っていたわけでは決してない。枠順が違えば、結果も変わっていただろう。

ダッシャーゴーゴーも外枠から無理なく先行できた利を生かしての2着である。1番人気のサリエルはゲートでゴタゴタしたように、レースに行って入れ込んでしまう弱点を露呈してしまった。母シンコウノビーの気性面の難しさが、このあたりに出てしまったようだ。デビューから2、3戦目というのは、競走馬にとって最も苦しい時期でもある。

新潟2歳Sを勝ったシンメイフジは圧巻の走りであった。私の好きだったシンコウラブリイの孫だけに、喜びもひとしおである。この馬の最大の長所は、気性の落ち着きだろう。デビューから2、3戦目という苦しい時期にもかかわらず、普段からおっとりと、競馬場に行っても悠然と歩くことが出来るのは一種の才能である。道中の走りに遊びがあるからこそ、新潟の最長の直線を最後まで伸び切ることが出来る。最後は牡馬と馬体をぶつけ合っての競り合いを制したように、競走馬としての強さも持ち合わせている。牡馬顔負けの走りを見せ付けられた以上、マイルの距離までであれば、この馬が現時点での横綱と考えてよい。このまま順調に行けば、阪神ジュべナイルFの最有力候補ということになる。

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ロードヴィオレットがクラシックロードへの一歩を踏み出した

Makereviewimgすっかり書き溜めてしまったので、今回は8月2日から9日までの4日間の開催についてのレビューを一挙に公開したい。

まずは何と言っても、函館2歳S(芝1200m)を振り返らないわけにはいかないだろう。正直に告白すると、勝ったステラリードは抜けてしまった。勝つとは思っていなかったということだ。早い時期に速い時計で勝ち上がった1番人気の馬は、これまで幾度も人気を裏切ってきたパターンであるし、最内枠という枠順もキャリアの浅い若駒にとっては苦しい条件であったからである。しかし、結果として、ステラリードは岩田康誠騎手に導かれて勝った。

走る能力という点からすると上位の馬たちとさほど変わらないが、私が驚かされたのはその精神力の強さである。多頭数の最内に閉じ込められて終始我慢し、なおかつ最後の直線で馬群をこじ開けてきたレース振りは、とてもキャリア1戦の馬とは思えなかった。普通の2歳牝馬であれば、馬込みで闘争心を失ってしまうか、最後の直線で馬群から抜け出して来られずに終わっていたところであろう。これだけの気持ちの強さとレースセンスを見せられると、阪神ジュべナイルFまでは有力馬の1頭から外すことはできないだろう。

惜しくも2、3着に敗れたキョウエイアシュラソムニアは、私の評価通りの走りは見せてくれた。キョウエイアシュラは前走ほどの伸びはなかったが、それでも確実に末脚を伸ばした。結果論ではあるが、ラベンダー賞は余計だったかもしれない。ソムニアは線の細さこそ否めないが、安藤勝己騎手が大事に乗って3着を確保した。もう少し、体(馬体重)を気にせずにビシビシ稽古が出来るようになると上位2頭を逆転できるだけの素質は持っている。それにしても、今年の新馬戦におけるスウェプトオーヴァーボードとスペシャルウィーク産駒の勢いが、そのままに出た函館2歳Sであった。

もうひとつ新潟7日9R芝1400mで行われたオープン戦ダリア賞。こちらのコーナーで取り上げたシンメイフジサンデージョウが人気になったが、惜しくも2、3着に敗れてしまった。シンメイフジは幼さが残る気性と指摘したとおりの結果であった。スタートしてからは、周りに気を遣ったのか前へ進んで行かず、直線で大外に出されるとようやく伸びた。乗り方次第で、距離は延びてもこなせそうな印象を受けたが、もう少し気性的に成長するとひと皮むけそうな馬である。惜しかったのは、直線で前が壁になってしまい、ラスト100mまで追えなかったサンデージョウ。勝ち馬(プリンセスメモリー)と差は全くといってよいほどない。川田将雅騎手の勝ちに行く競馬が今回は裏目に出てしまった。

川田将雅騎手といえば、小倉6日8R芝1800mで勝ち名乗りを上げたロードヴィオレットが楽しみな素質馬である。ステラリードと同じくスペシャルウィーク産駒であるが、こちらは優に500kgを超える雄大な馬体を誇っている。ただ大きいだけではなく、全身から漲る力強さとバランスの良さを感じさせる。まだ荒削りで重々しさも感じるが、これから上手く成長していけば、どんなレースでも力でねじ伏せられる馬になれるのではないか。古馬との調教でも互角に動いていた通り、実際のレースに行っても、まさに横綱相撲での完勝であった。休養を挟んで暮れに復活するようで、ローテーション的にも理想のクラシックロードへの一歩を踏み出した。

小倉5日4R芝1200mを圧勝したファイティングピサの速さが光った。武豊騎手がムチを使わず、どちらかというとブレーキを掛けながら勝ったように、この辺りのクラスではスピードが違う印象を受けた。血統的には短距離馬だろうから、距離延長はプラス材料にはならないが、短い距離であればかなり上のクラスまで行けるだろう。小倉2歳Sに出走してくれば期待できる。

コロナドズクエスト産駒最後の大物との呼び声高いベビーネイルは、1.9倍の人気に応えて、5馬身差の楽勝であった。同じ勝負服で同じ厩舎のカジノドライヴを彷彿させるが、現時点ではそこまでの強さを求めるのは酷だろう。札幌2歳Sに向かうらしいが、母父ブライアンズタイムからダート適性が高いのは明白であり、乗りやすい馬であることを考慮に入れても苦戦を強いられるのではないか。

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1番乗りは誰だ?函館2歳S。

Makereviewimg今回のメイクレビューは、7月18日~26日の4日間の開催から。

まずは新潟初日5R(芝1400m)を勝ったサンデージョウは、最後は抑える余裕があったほどの楽勝であった。グラスワンダー×サンデーサイレンスという血統構成は、昨年のジャパンカップを勝ったスクリーンヒーローと同じ。スクリーンヒーローといえば、体型や折り合いを欠かない気性はステイヤーのそれであり、調教であまり動かない走りを見るにつけ、距離が長ければ長いほど良い馬と私は評価していた。しかし、3000mを超える阪神大章典や天皇賞春を惨敗してしまったように、本質は中距離馬なのであろう。母父にサンデーサイレンスの血が入り込んでいる場合は、3000mを超える距離のレースではパタッと止まってしてしまうことが多い。少し話が逸れたが、要するに、このサンデージョウも距離が延びても心配はないが、さすがに長距離は苦しいということだ。まだまだ先の話ではあるが。

大物感ということであれば、新潟2日5Rを勝ったケイアイデイジーだろうか。スピードが違うといわんばかりの走りを、内田博幸騎手が上手くなだめながら競馬を教えていた。直線に向くや、後続を離す一方で、ほとんど追うところなしの圧勝劇であった。父がクロフネで母父がウォーニングという世界的にも傍流血統であり、これからサンデーサイレンス系の産駒たちにどう立ち向かっていくのか楽しみである。ちなみに、母父ウォーニングは、三大父祖でもダーレーアラビアンの系統に押されがちなゴドルフィンアラビアンの末裔である。マッチェム、マンノウォーと綿々と紡がれてきた血は、ウォーニングを通じて、この日本の地ではサニングデール、カルストンライトオというスプリンターたちに受け継がれていった。つまり、典型的なスプリント血統であり、父クロフネということからも、ケイアイデイジーがダートの短距離の鬼であろうことが分かる。

オープン戦であるラベンダー賞を勝ったのはキョウエイアシュラ。新馬戦は特に目に付く勝ち方ではなかったが、追い切りの本数が不足していながらのものだけに仕方ない。レースをひと叩きされて、確実に良化していた。1頭だけ34秒台の脚を使ったように、とにかく末脚がシッカリしている。どんな展開になっても必ず伸びて来そうな真面目な馬である。そして、三浦皇成騎手の落ち着いた手綱さばきにも感心するが、何よりもスウェプトオーヴァーボード産駒の完成度の高さには驚かされる。2着に粘ったチェリーソウマもよく我慢しているが、切れ負けした印象を受けた。馬体重が12kgも減っていたように、かなりギリギリの状態であったようで、次走(函館2歳S)に臨むにあたっては不安の方が大きい。

せっかくなので、明日の函館2歳Sに対する見解を少し。これまでのメイクレビューで取り上げてきた馬たちの中で、この函館2歳Sに出走してきたのはソムニアとノーワンエルス、チェリーソウマの3頭のみ。

ソムニアは内ラチ沿いの経済コースを回れた利はあったにしても、ゴール前では抑える余裕もあったぐらいだから、時計もまだまだ詰まるだろう。さらにこの新馬戦で負かした馬(ダイヤペルセウスとクロガネ)が次走ですでに勝ち上がったように、メンバー的にもレベルの高いレースだったといえる。いかにも牝馬らしい仕上がりの良さだったが、休養を挟んで、馬体が成長していればアッサリもあるかもしれない。スペシャルウィーク産駒は今年も早くから絶好調である。鞍上の安藤勝己騎手も頼もしい。

ノーワンエルスは首が少し高く、力を入れて走る馬だけに、札幌のような力の要る洋芝は得意とするところ。レース振りを見る限り、折り合いもつくし、搭載しているエンジンは素晴らしく、このメンバーに入っても十分に勝負になるだろう。不安材料といえば、内枠を引いてしまったので、道中で揉まれた時にどんな反応をするかということである。ハミ受けに少し難がありそうなので、馬群に囲まれて、この馬のフットワークで走られずに終わってしまうということも考えられる。そこは腕達者の吉田稔騎手が補ってくれることに期待したい。

追い切りの動きを見る限り、キョウエイアシュラは調子落ちということはなさそう。前走で馬群に入る経験をしたとはいえ、外枠を引けたことも大きなプラス材料である。脚質的にも先行馬を見ながら、ドンピシャのポジションを回って来られそうである。末脚が不発に終わることはないだろうが、もし負けるとすれば、早めに抜け出した馬を捕らえ切れなかった場合のみ。そこは札幌連続リーディングの藤田伸二騎手の仕掛けどころひとつ。ラベンダー賞を勝った中央馬が勝てないというジンクスを、果たして破ることが出来るだろうか。

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芦毛の逆襲が始まる

Makereviewimg_2今回のメイクレビューは、7月11日、12日の2日間の開催から、目に付いた馬をピックアップしていきたい。

まずは昨年、ロジユニヴァースが勝った3回阪神の芝1800mの新馬戦から。仕上がりが良くて、今後大きなところを狙おうと思われている逸材が集まりやすい出世レースである。実際に、角居、矢作、藤原、石坂、森、友道という関西の有力厩舎から、素質馬がこぞって参戦した。もちろん、人気もそれらの馬たちが集めたが、勝ったのは8番人気で新人の松山弘平ジョッキーが鞍上のマイネアロマ。しかも、最後の直線で抜け出してからソラを使ったように、若さを見せながらも、余力十分でフィニッシュした。他馬とは3kgの斤量差があったにせよ、いきなりの1800m戦で、牝馬でこれだけの競馬が出来たということに驚かされた。

新種牡馬であるロージズインメイにとって、マイネアロマはJRA初勝利となる。マイネルの岡田総帥にポストサンデーサイレンスの期待を掛けられているだけあって、産駒は瞬発力勝負に強く、距離も持ちそうな印象を受ける。ここ最近は、内国産種牡馬の活躍が目立つが(特にサンデーサイレンス系)、ロージズインメイは輸入種牡馬としてまた新たな風を吹き込むかもしれない。そう思わせるだけの、マイネアロマのバランスの良い走りっぷりと、堂々とした勝ちっぷりであった。また、松山弘平騎手も1年目とは思えない落ち着いた騎乗で、マイネアロマの横綱相撲を導いていた。次走は札幌2歳Sを予定しているようで、素質のある若手をこれからも乗せ続けて欲しい。

札幌7日4R(芝1200m)を勝ったノーワンエルスは、ここではエンジンが違うという力強い走りで、他馬を圧倒した。首が少し高く、力を入れて走る馬だけに、札幌のような力の要る洋芝は得意とする。道悪やダートも難なくこなしてくるはず。ただ、こういう力を入れて走る馬は、距離に限界が来やすく、いきなりパタッと止まってしまうことが多い。1400mまでは強さを発揮できることは保証できるが、それ以上の距離延長に関しては微妙で、マイルまで持つかどうかといったところ。

ところで、このノーワンエルスがそうということではないが、これからは芦毛の時代が到来すると予感している。というのも、私が競馬を始めたころは、芦毛の超がつく一流馬が結構いた。たとえば、オグリキャップ、タマモクロス、メジロマックイーン、ビワハヤヒデなど、各世代を代表する芦毛馬が堅実無比な強さを見せていた時代であった。ところが、サンデーサイレンスの血が日本に入ってきた途端、私の記憶ではセイウンスカイを最後に、芦毛の大物が全くと言ってよいほど誕生しなくなってしまったのだ。

しかし、サンデーサイレンス亡き今、そろそろ芦毛の逆襲が始まるのではないか。とはいえ、やはりサンデーサイレンスの血は偉大なので、大物が出てくるとすれば、サンデーサイレンスを母の父に持つ芦毛馬ということになるだろう。当然のことながら、チチカステナンゴ、クロフネ、アドマイヤコジーン、シルバーチャーム、そしてノーワンエルスの父であるスウェプトオーヴァーボードなど、芦毛の種牡馬との組み合わせには注目しておきたい。と思っていたのも束の間、今年春のヴィクトリアマイルでも父クロフネ、母父サンデーサイレンスのブラボーデイジーが早速好走した。個人的には、メジロマックイーンの急逝が惜しまれ、ビワハヤヒデにはこれを機にぜひとも復活してもらいたい。

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後光が差していたマンハッタンカフェ

Makereviewimg_2今回のメイクレビューは、6月27日~7月5日までの4日間から、目に付いた馬をピックアップしていきたい。

まずは阪神第3日4R(芝1400m)を勝ち上がったツルマルジュピターから。レースに臨むにあたっての調教内容が質量共に良く、「まだソエを気にしていた」(武豊騎手談)ながらも、1.4倍という圧倒的な人気に応えた。スッと抑えられたように、レースセンスがある。ただ、レース振りを観る限り、スピードが勝っているだけにマイルは若干長いかもしれない。馬体に関して言えば、肩から首にかけて少し細く映る。パワーを要求されるような馬場よりも、高速馬場の方が合っているはず。

また次走以降、ツルマルジュピターの最終追い切りにおける追われ方には注目しておきたい。特にこの時期の若駒はソエが出やすいので、レースに行って問題ない程度なのか、それとも力を発揮できない可能性があるのかを見極めておかなければならない。ソエを痛がって満足な追い切りが出来ない場合も、調教不足や太目残りで思わぬ惨敗を喫することもある。

以下は、ツルマルジュピターの新馬戦に臨むにあたっての最終追い切りである。

6/24(水) 栗坂 重 助手55.1-41.5-26.7-12.8 ゴール前強め

重馬場のため、全体の時計は掛かったが、ゴール前では強めに追われている。もしソエで脚元が不安な状態であれば、最終追い切りでは馬なりで流したはずである。強めに追ってきたということは、前走は問題ない程度のソエだったと判断できる。つまり、次走以降で、ツルマルジュピターが最終追い切りを馬なりにとどめてきた場合、脚元の不安による危険信号を発していると判断してよい。かなり危険な人気馬になるだろう。

札幌第4日3R(芝1200m)を勝ったソムニアは、いかにも牝馬らしい好仕上がりにあった。デビューしたてのサラブレッドは、まだ手を抜くことを知らず、スタートからゴールまで一生懸命に走り切る。その中でも特に牝馬は、きちんと能力を出し切るので、勝ちタイムや勝ちっぷりの良さは、そのままその馬の能力を反映する。スペシャルウィーク×エルコンドルパサーという、奥が深そうな晩成血統の馬だけに、この先も十分楽しみがある。ただ、412kgという馬体の線の細さは否めないので、休養を挟んで馬体の成長を待ちたい。

阪神6日4R(芝1200m)の勝ち馬シンメイフジは、レディミューズの仔、つまりあのシンコウラブリイの孫娘にあたる。シンコウラブリイは、実は私が最初に好きになった牝馬であり、引退レースのマイルCSにおける美しい引き際は今でも記憶に残っている。余力を残してターフを去ったシンコウラブリイからどんな仔が誕生するのか楽しみで、その産駒たち(特にロードクロノス)の走りには一喜一憂した。孫シンメイフジのレース振りは、荒削りというか、よくこれだけ他馬を気にしながらも勝ったなという印象を受けた。まともに走ったのは最後の200mぐらいだろう。秘めた能力は相当なものなので、幼さが残る気性が解消してくれば先々楽しみである。応援していきたい。

最後は福島6日5R(芝1800m)を勝ち上がったロードシップ。今回の4頭の中では、最もその能力を評価したい馬である。道中の走りにも余裕があり、4コーナーで捲くった時の脚はなかなかの迫力であった。ゴール前でも余力があったように、まだ底を見せていない。先を見据えて、松岡正海騎手がレースを教えながら勝ったことも大きい。欲を言えば、もう少しトモに筋肉がついて、あと拳一個分、馬体に伸びが出てくると良い。この馬も夏を越しての成長に期待をしたい。

それにしても、前回取り上げたサンディエゴシチーに続き、今回もツルマルジュピター、ロードシップと、マンハッタンカフェ産駒の新馬戦における強さは圧巻である。マンハッタンカフェ自身は菊花賞で頭角を現した晩成タイプであり、血統的にもドイツのステイヤーの血が脈々と流れているだけに、産駒の仕上がりの早さには良い意味で裏切られた。個人的な思い出としては、2004年に社台スタリオンステーションに行った際に、最もインパクトを受けた種牡馬の1頭である。その年に種牡馬入りしたということもあったが、黒光りする大きな馬体は神々しく、まるで後光が差しているようであった。アグネスタキオン亡き後、種牡馬リーディングの頂点に最も近いのはこの馬だろう。

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追われてからの反応に見どころがあったサンディエゴシチー

Makereviewimg新馬戦が始まったと思いきや、すでに3週間が経ってしまった。メイクデビューや若駒戦の情報を、出来るだけ新鮮な形でレビュー(回顧)したいと思っているので、駆け足で追いついていきたい。その走りにキラッと光るところのあった馬をピックアップし、未来のスターホースの原石を少しでも早く見つけることが出来れば、これ以上の喜びはない。

まずは阪神、福島、札幌で同時に新馬戦が始まった開幕週から。

3場における初日、2日目の新馬戦の勝ち馬の中で、最も注目を集めたのは、3回阪神2日目4R(芝1600m)のダノンパッションだろう。父は早世したアグネスタキオンで、母系は祖母にウインドインハーヘアを持つ。つまり、ディープインパクトの近親ということになる。厩舎もジョッキーも同じとくれば、ディープインパクトをダブらせないわけにはいかない。レースでは中団を進み、直線では鋭く伸びて、ファンの圧倒的な期待(単勝オッズ1.2倍)に応えてみせた。

しかし、血統的な背景から受ける大物感よりも、口向きの悪さだけが私の印象に残った。舌を縛っているように、調教からハミ受けが悪く、人間の意思が手綱を通して伝わりにくい馬なのだろう。こういう馬を、レースに行って真っ直ぐに走らせるのは至難のワザである。武豊騎手だからこそ、何事もなかったかのような完勝に見せかけているが、並のジョッキーであれば勝てていたかどうか分からない。今回は脚力の違いだけで勝てたレースだったが、レースレベルが上がり、もっと厳しい競馬を強いられた時にモロさを露呈する気がする。

もう1頭の注目馬といえば、2回福島2日目の5R(芝1200m)を制したチェリーソウマ。ノーザンテーストを思い起こさせる大流星の白面で、しかも金髪、魚目(青い目)ときているから、人の目に立たないはずがない。血統表を辿っていくと、やはり父サクラバクシンオーの母父にノーザンテーストがいた。レース振りからは、それほど強さを感じなかったが、夏競馬の間であれば楽しめるはず。ガーネットSを勝ったタイセイアトムの下だけに、もちろんダートも走るのではないだろうか。精神面に不安を感じさせる馬だが、細心の注意を払って育てていけば、来年、再来年のアイビスサマーダッシュで勝ち負けになるかもしれない。

これは余談だが、チェリー○○とつく馬を見ると、チェリーコウマンというダート馬を思い出してしまう。私がまだ競馬を始めた頃、オープンで活躍していた馬で、結構長い間にわたって走り続けていた記憶がある。名前の由来は、母チェリーガールと馬主の有限会社孔馬(こうまん)だが、年頃の私には、どうしても違った意味を持って聞こえたのだ。ゴール前でどう応援してよいか分からず、ついぞこの馬を本命にすることは出来なかった。同じ時代に競馬を過ごした方ならば、今、ウンウンと頷いてくれているはずである。

次走への期待を抱かせたのは、1回札幌2日目の4R(芝1200m)を勝ったサンディエゴシチー。スタートしてから少し追っ付けながら追走し、直線では少しモタれる仕草を見せたが、追われてからの反応に見どころがあった。道中の走りにも余裕があり、気性も素直なので、ジョッキーも乗りやすい。着差以上に、他馬とは力が違った。こういうタイプは、もう少し時計が速くなっても対応できる。父はマンハッタンカフェでも母父にラーイが入っているので、距離が延びて良いとは思わないが、マイルまでは十分にこなせるだろう。

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メイクレビュー

Makereviewimg_3この夏からの新企画として、新馬戦、未勝利戦を勝ち上がった馬を中心に取り上げていく「メイクレビュー」を始めたい。若駒戦における情報や新馬の見方などを知りたいという声も多く、ご要望に少しでも応えられればと思う。ただ、全てのレースをレビュー(回顧)するのはキリがなく、またあまり意味もないと思うので、その走りにキラッと光るところのあった馬をピックアップしていきたい。未来のスターホースの原石を少しでも早く見つけることが出来れば、これ以上の喜びはないだろう。ちなみに、「メイクレビュー」はメイクデビューをもじったものある。

なぜこの夏の時期から始めるかというと、なんといっても近年、有力馬(素質馬)の始動が格段に早まりつつあるからだ。私が競馬を始めてからずいぶん長い間、有力馬(素質馬)は秋にデビューするのが常であった。かなり古い話になるが、7冠馬シンボリルドルフは夏の新潟でデビューを飾ったのだが、当時はかなり珍しいというか型破りなローテーションとされていた。早い時期にレースに使うこと、また使うために早めに仕上げてしまうことで、その馬の成長を阻害してしまうという考え方が多くの競馬関係者に浸透していたからである。

今年のダービー馬ロジユニヴァースは、7月6日、阪神4R、芝1800m戦でデビューした。その後、3ヵ月の休養をはさみ、プラス26kgと大きく成長した馬体で札幌2歳Sを圧勝した。そして、その後はご存知のとおり、皐月賞での大惨敗を乗り越え、ダービーで見事に復活を果たした。2歳夏の新馬戦を制した馬が、およそ1年後、成長のピークが早すぎても遅すぎても勝つことが難しいダービーを勝つのだから、時代は変わったと考えるべきなのだろう。

育成時代の環境が大きく変わり、かなり早い時期からバリバリと乗り込まれて入厩してくるため、どの馬も自然と使い出しのタイミングが早くなる。そうなると、有力馬(素質馬)といえども悠長なことを言っておられず、前倒しのローテーションで勝ちに(賞金を稼ぎに)行かなければならない。たとえ素質が高くとも、何としても勝ち上がりたい馬たちが溢れる秋のレースでは、除外等の憂き目にあってしまうことも少なくないからだ。だからといって、勝つことと成長を促すことのバランスのさじ加減を少しでも間違えると、あっと言う間に早熟馬やクラシックに間に合わない馬が出てしまう。現状で考えうる限りにおいては、ロジユニヴァースのように、夏に1戦だけ走って賞金を追加しておくのがベストであろう。

また、夏でもマイルや1800mの新馬戦が組まれたことも大きい。たとえ馬が既に仕上がっていて、いつでも勝てる状態になっていたとしても、クラシックを目指す馬を1000mや1200m戦でデビューさせることには不安がある。サラブレッドの原体験となる新馬戦で体感したレースのリズムは、その馬の将来の距離適性を規定してしまうことが多いからだ。シンボリルドルフは1000m戦でデビューしたのだが、野平祐二調教師は主戦の岡部幸雄騎手に「1000mのレースだけど、1600mのつもりで乗ってくれ」と伝えたという。現在の番組編成においては、そのような余計な心配をしないで済むようになり、ロジユニヴァースのように1800mという適切な距離でデビューすることが出来るようになったのだ。

このような時代の移り変わりに合わせ、夏からの新馬戦にも注目していきたい。どのような形で始まり、どのような形で終わるのか私にも分からないが、来年のクラシック戦線へとつながる布石を探しつつ、その中で若駒戦の見方や楽しみ方を少しずつ紹介していければと思う。

新馬戦が始まり、新しい競馬の幕が開ける。

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