9月競馬を攻略する2つのポイント

September夏競馬が終わり、ようやく開催が中央に戻ってきた。もう来月にはG1シリーズが始まるのだから、サラブレッドたちも忙しい。この9月いう時期は、秋のG1シリーズに向かうにあたっての過渡期にあたるシーズンである。そこで、期間限定ではあるが、9月競馬の攻略法について少し考えてみたい。

まずは、休み明けの馬よりも夏競馬を使ってきた馬を狙うということだ。この時期はまだまだ暑く、休み明けの馬にとっては調整が難しく、レースに行っていきなり能力を発揮しづらい。ところが、休み明けの馬は実績のある馬であることが多いため、たとえ仕上がりが悪くても、どうしても人気になってしまう面は否めない。私たちは春競馬での強い姿を覚えているので、ある程度の期待と幻想を持って、休み明けにもかかわらず実績馬を人気に祭り上げてしまうのだ。

実績馬がひと叩きされた後(10月以降)では、夏競馬を使ってきた馬の力関係は逆転する。夏に酷使された馬たちは力を使い果たし、夏を休養にあてていた実績馬たちの体調が上向いてくるということだ。つまり、9月いう時期は秋のG1シリーズに向かうにあたっての過渡期にあたるシーズンではあるが、厳密にいうと、夏競馬の延長線上にあるということになる。確かに休み明けの実績馬の取捨は難しいが、人気的な妙味を考慮すると、夏競馬を使ってきた馬を狙う方が妙味だろう。

さらに、前に行くことの出来る逃げ・先行馬を狙うということだ。普段は酷使されることの多い阪神競馬場や中山競馬場の芝だが、この時期だけは夏の間にしっかりと養生されたことで、芝がしっかりと根を張った野芝100%の状態になっている。どの馬にとっても走りやすい絶好の馬場であり、それゆえ速い時計が出やすい高速馬場でもある。マイル戦で1分32秒台の時計など当たり前で、全馬の上がり3ハロン時計が33秒台であるレースも珍しくない。

このような極めて速い上がりで決着するレースにおいては、多少のハイペースで道中が流れたとしても、前に行った馬はなかなか止まらない。たとえ後ろから行った馬が32秒台の強烈な脚を使って突っ込んできたとしても届かないということが頻出する。さすがにサラブレッドの使える脚には限界があるので、後ろから行ってしまうと物理的に届かないということである。もちろん、前有利をジョッキーたちが意識しすぎてオーバーペースになり、前崩れが起きることもあり得るが、それでも、私たちが思っている以上に、スムーズに前に行くことの出来る馬に妙味がある。

以上2つのポイントは、ごく当たり前のことではあるのだが、どんなテクニックよりも9月競馬においては効果的なので書き留めておくことにした。私たちが思っている以上に、休み明けの馬よりも夏競馬を使ってきた馬の方が優勢であり、また前に行くことの出来る逃げ・先行馬に有利であるということだ。これらのポイントを頭のどこかで意識しておくことで、危険な人気馬や意外なダークホースを見つけることが出来るかもしれない。競馬は私たちが考えるよりも複雑なゲームであるが、意外と単純な文脈から結果が出ることもあるのだから不思議である。

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2歳戦のツボ

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競走馬の持ち時計を参考にして予想をする人など、今や珍しいだろう。今まで速いタイムで走ったことのない馬(持ち時計のない馬)が、条件が違えばあっと驚くタイムを出してしまうことなどよくある話だ。レースの全体時計に差が生まれにくいスプリント戦であっても、たとえば今年の高松宮記念馬であるファイングレインは、持ち時計をなんと2秒も縮めて勝利した。距離が伸びれば、もっと簡単に大きな差が生まれるのは自明の理である。つまり、レースの全体時計は道中のペースや馬場などによって大きく違ってくるため、持ち時計はほとんど参考にはならない。

それでも、持ち時計を唯一信じることのできる時期がある。2歳馬、特に2歳の牝馬である。なぜ2歳牝馬かというと、この時期の牝馬は特に、レースの駆け引きなどは一切関係なく、スタートしてからゴールするまで、一本調子でバテるまで一生懸命走るからである。手を抜いて、常に楽をして走ろうと考えている古馬とは大違いなのである。だからこそ、2歳馬、特に2歳牝馬は、持ち時計が純粋にその馬のスピード能力の証明であることが多い。

さらに、この時期の牝馬は早熟であり、牡馬に比べて7分の調教で仕上がる。桜花賞の頃になればどの陣営も悩まされるフケの心配もまだない。幼さゆえのポカがある牡馬に比べ、この時期の牝馬は早熟であるがゆえに、安定して力を発揮することが出来るのだ。秋以降になると、素質馬が台頭してくることによって尻すぼみになることも多いのだが、この時期に限っては牝馬に注目すべきであろう。

夏競馬は2歳馬のデビューの舞台でもある。ここ最近、素質のある2歳馬は早々と夏にデビューする傾向がますます強くなっている。調教施設の充実や調教技術の向上によって、現役で活躍する馬の数が多くなり、それに伴い、2歳馬も早くから使わなければクラシックに間に合わない状況になってきているのである。

もちろん今年も例外ではなく、素質に溢れる2歳馬たちが今週の新潟2歳S、小倉2歳Sで鎬を削ることになるだろう。レコード決着を制した実績を持つガンズオブナバロンやツルマルジャパンなどの牡馬に、強い内容で新馬戦を圧勝したダイワバーガンディやデグラーティア、エリモプリンセスなどの牝馬が、どう勝負を挑んでいくのか見所は尽きない。個人的には、私のPOG馬であるガンズオブナバロンや、センス溢れるレース振りに大いなる素質を感じさせるデグラーティアを応援したいと思う。

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夏競馬は内国産馬を狙え

Natukeibanaikokusannba_320世紀の後半、世界の血統勢力図をもの凄い勢いで塗り替えたノーザンダンサーは、夏は高温多湿で、冬は氷点下30度前後まで冷え込むというカナダの牧場で生まれ育った。それだけでなく、神経をイラつかせるハエやアブにたかられるため、特に夏は炎天下の狭い馬房の中に閉じ込められて過ごさざるをえなかった。もちろん、エアコンや扇風機のようなものはない。そんな過酷な環境の下で育ったノーザンダンサーが、並はずれた精神力や環境への適応能力を身につけていったのは当然のことである。

ノーザンダンサーの血を持つ馬は夏競馬に強いと言われるが、私に言わせると少し違う。暑さに強いのでもなく、パワーを要する馬場に強いのでもなく、他の系統の産駒たちが暑さや力の要る馬場を苦手とする中で、総じてノーザンダンサー系の馬はそれらを苦にしないということである。ノーザンダンサーの血を引く馬たちは、芝、ダート、道悪馬場、スピードの出る硬い馬場、小回りコースなど、いかなる条件にも適応できる万能性を持っている。だからこそ、ノーザンダンサーの血は世界をあっという間に席巻することが出来たのだ。

サンデーサイレンスの血もこれと同じような万能性を持っている。どのようなコース、馬場、展開であろうが、ありとあらゆる条件を克服し、圧倒的な結果を出してきた。もちろん夏競馬にも強い。サンデーサイレンスのあら探しをする血統予想家がいつも恥をかかされるのは、この万能性ゆえである。後継種牡馬を通して、これから世界へと広がっていくサンデーサイレンスの血が、どれだけの影響力を持つことになるのか、今から楽しみで仕方がない。

夏競馬における内国産の種牡馬についても、これと同じような論理が当てはまる。内国産の種牡馬は、厳しい日本の夏を経験したうえで、選抜されて種牡馬になっている。日本の気候風土に順応し、猛暑にも耐えて生き残ってきたエリートたちである。夏に弱ければ、自分自身の代で淘汰されてしまうか、もしくは運よく生き残ったとしても、自分の仔の代で息が絶えてしまうことになるだろう。だからこそ、外国産馬や父外国産馬と比べ、内国産馬は厳しい暑さに耐えられる強さを備えているのである。

たとえば、サクラユタカオーの後継種牡馬であるサクラバクシンオーの産駒は、夏競馬になると圧倒的な力を発揮し始める。スピードを生かせる馬場や小回りコースが合っているのも確かだが、蒸し暑い夏を苦にしないという点も代々受け継いでいるのだろう。函館スプリントSを2連覇したシーズトウショウの強さは忘れられないし、最近ではカノヤザクラがアイビスサマーダッシュで復活した。

また、サンデーサイレンス系ということであれば、フジキセキがその筆頭格であろうか。もっともフジキセキを経由したサンデーサイレンスの血は、今年サンクラシークがドバイシーマクラシックを制したように、日本の夏競馬を飛び越えて、既に世界へと広がっているのであるが。

8月も半ばになったが、うだるような暑さはまだまだ続く。そんな暑さを吹き飛ばすためにも、暑い夏は内国産馬を狙ってみたい。

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踏み込みの深さが意味するものは?

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パドックでよく言われる、「後肢(トモ)の踏み込みがいいから、この馬は調子がいいですね~」という馬の見方がある。踏み込みの深い馬=調子の良い馬という等式は、かなり昔から、まるで定説のように信じられてきた。

しかし、私はこの定説に少し疑問がある。なぜなら、パドックでは馬はみな興奮しているので、普段よりも脚は大きく出るものだからだ。踏み込みのときに、いかにも力が入っているように見える馬は、興奮しているだけで、かえって良くないのではないかと思う。G1レースに出てくるような馬を見てもらっても、それほど力強くは映らないのではないだろうか。また、飛節の角度が大きい馬は自然と踏み込みも深くなるので、踏み込みが深い馬がいいとは一概に言い切れない。

それよりも、後肢の踏み込みの深さは、距離適性と密接な関係にある

スプリンターは前肢よりも後肢が発達しているので、後肢を深く踏み込み、一完歩一完歩に力を使いながら歩く。これで全力疾走すれば、短距離はなんとかもっても、距離が長くなってしまうとスタミナが続かないということになる。それに対して、ステイヤーの踏み込みは、後肢が深くなくても、リズミカルに踏み出され、返しもスムーズで無理がない歩き方をする。このように、スプリンターとステイヤーでは、踏み込みの深さや力強さが違うのである。

つまり、踏み込みの深さから分かるのは、調子の良さではなく、短距離適性なのである。もし短距離戦のパドックで踏み込みが深く力強い馬を見つけたら、スプリンターの資質が表れているということで狙ってみても面白いだろう。しかし逆に、もし長距離戦のパドックでそういう馬が歩いていたら、道中で引っ掛かってしまう、もしくは最後の直線でスタミナ切れを引き起こしてしまうのではないかという心配をしたほうがいい。

さらに、パドックで馬の動きのどこを見るかと問われれば、後肢の踏み込みよりも、前肢の出ではないかと私は思う。パドックで馬の調子を見極めるのは非常に難しいので、私は多くは語れないが、前肢が綺麗に(スムーズに)出ているように見える馬は好走する率が高いと思う。騎手にとっても、後肢よりも前肢の出が気になるという。乗馬経験のある方ならよく分かるのだが、前が窮屈だったり、硬かったりする馬は、乗っていても気持ち悪いものだ。

もっとも、前肢の出が綺麗か(スムーズか)どうかということを見極めるのも、また難しいのであるが…。

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カミソリとナタと

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カミソリやナタなどと物騒なタイトルたが、何てことはない、競走馬の末脚の切れ味のことである。「コダマはカミソリ、シンザンはナタの切れ味」という武田文吾調教師のコメントが由来だが、競馬界では日常的に使われている表現のひとつである。

まず、カミソリとナタとはどちらも切れるのだが、その切れ方が違う。カミソリはスパッと切れるのに対し、ナタはザクッと切れる。つまり、カミソリの方がナタよりも鋭く切れる。かといって、カミソリの方が切れ味が良いかというと、そうとは限らない。たとえば大きな木をカミソリで切っても切れないように、切る対象物によっては、カミソリよりもナタの方が切れる。カミソリが鋭く、ナタが鈍いということではなく、あくまでも切れ方が違うのである。

これをそのまま競馬に当てはめてしまうと、カミソリの切れ味とは、一瞬で鋭く切れる末脚のことで、対するナタの切れ味とは、良い脚を長く使える末脚ということになる。確かに間違ってはいないのだが、これだけではあまりにも抽象的で分かりにくい。もう少し具体的に、かつ厳密に述べると、以下のようになる。

カミソリとナタとの違いは、“スピードがスタミナに裏打ちされているかどうか”である。分子がスピードで、分母がスタミナとすると分かりやすい。その馬のスピードに対してのスタミナの比重が軽ければ、末脚はカミソリの切れ味となり、スピードを支えているスタミナが豊富であれば、末脚はナタの切れ味となる。

たとえば、総合力は同じだが、スピードとスタミナのバランスが違う2頭のサラブレッドがいるとする。Aという馬はスピードが勝っていて、そのスピードを後半の末脚に生かすタイプであり、Bという馬はスタミナが豊富で地脚が強いタイプである。この2頭が1000mのレースをすると、以下のラップが刻まれる。

A 10.9→10.9→10.8→10.6→10.0
B 10.8→10.8→10.8→10.4→10.4

結果としてタイムは同じなので同着であるが、レースでの末脚の切れ方は異なる。Aがラストの1ハロンで10.0という一瞬の鋭い末脚を披露したのに対し、Bは良い脚をコンスタントに2ハロン続けて使っていることが分かる。言うまでもないが、Aがカミソリの切れ味で、Bがナタの切れ味である。

Aは一瞬にしてスピードを爆発させスタミナを消費してしまうので、ゴーサインを出すタイミングが難しい。早く仕掛けすぎると、ゴール前でガス欠を起こしバタバタなんてこともありうる。このようなタイプは直線が短いコースの方がレースはしやすい。直線に向いてから仕掛けて、そのままゴールとなるからだ。

Bは豊富なスタミナを支えにしてスピードを持続させるので、実はこれもゴーサインを出すタイミングが難しい。仕掛けが遅すぎると、脚を余してしまうなんてこともありうる。このようなタイプは直線が長いコースの方がレースはしやすい。直線の短いコースでは、4コーナーを回る時点から仕掛けなければならず、スムーズなコーナーリングを妨げることになるからだ。

ところで、カミソリとナタとの違いは、“スピードがスタミナに裏打ちされているかどうか”と前述したが、そうすると、たとえ同じ馬の末脚であっても、距離によってはカミソリの切れ味にもなり、ナタの切れ味にもなるということにはならないだろうか。

マイルCSを連覇したデュランダルは、現役屈指の末脚を持ち、スピードとスタミナのバランスの取れた名マイラーである。この馬の末脚の切れ味はカミソリなのだろうか、それともナタなのだろうか?大方の見解としては、デュランダルの末脚はカミソリの切れ味ということになるだろう。他馬が止まって見えるほどに、その末脚は鋭いからだ。

しかし、私の見解は多少異なり、カミソリかナタかはレースの距離によって変わってくると考える。正確に言うと、デュランダルの場合、1200m戦ならばナタの切れ味で、マイル戦ではどちらとも区別は難しく、2000m戦ではカミソリの切れ味となるだろう。1200mのレースにおいては、他馬と比べてスタミナの比重が重いため、追っつけて追っつけて最後に差しきるというナタの切れ味になる。それに対して、2000m以上のレースにおいては、ジックリと溜めて最後に末脚を爆発させるというカミソリの切れ味になる。

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つまり、その距離において、どれだけのスピードがどれだけのスタミナに支えられているかによって、末脚が一瞬の爆発的なものになるのか、長く持続されるものになるのかが決する。この馬はカミソリで、あの馬はナタと一概に決め付けることはできないのだ。

「コダマはカミソリ、シンザンはナタの切れ味」という武田文吾調教師のコメントは、そういった意味では的確ではない。コダマの末脚も、距離によってはカミソリにもなり、ナタにもなり得るのだ。親切心から付け加えさせてもらうとすれば、「“ダービーの2400mを走るとすれば”、コダマはカミソリ、シンザンはナタの切れ味」となるだろうか。


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チークピーシズ

先週の日経新春杯で1、2着したアドマイヤモナークとダークメッセージが、共に「チークピーシズ」という馬具を着けていたのをご存知だろうか?2002年のジャパンカップでイギリスのストーミングホームが着けていたことが話題になり、日本でも少しずつ普及し始めたのだが、最近ではオープン馬でも装着してくることが珍しくなくなってきている。

Cheek
Service

チークピーシズは頬(チーク)の部分に装着する馬具で、素材はシャドーロールと同じものである。後方への視界を遮るため、周りを気にしたり、怖がったりして集中できない馬をレースに集中させる、浅いブリンカーとほぼ同じ効果が見込まれる。また、ブリンカーと違い、チークピーシズは事前に装着の届出をしなくてもよいため、その時の馬の状況に応じてチークピーシズを使うかどうかの判断が出来る。

たとえば、これはブリンカーの話ではあるが(考え方は同じ)、1997年の安田記念を制したタイキブリザードは、前哨戦の京王杯スプリングCでブリンカーを装着して圧勝していた。本番である安田記念に臨む際、タイキブリザードを管理する藤沢和雄調教師は、再度ブリンカーを着けるかどうかの判断を最後の最後まで迷ったという。1400mの京王杯スプリングCならば、ブリンカーを着けてちょうど良かったのだが、1600mに距離が延びる安田記念で着けると、馬がレースに集中しすぎて、行きっぷりが良く、かえって折り合いを欠いて引っ掛かってしまうのではないかという心配があったのである。

藤沢和雄調教師は、ギリギリまで悩んだ末、安田記念ではタイキブリザードにブリンカーを装着しないことに決めた。結果的にはその判断は正しかったのだろう。タイキブリザードはレースの流れに乗りながら中団を進み、ゴール前では見事にジェニュインを差し切った。もしブリンカーを着けていたら、行きっぷりが良すぎて、道中で折り合いを欠き、最後の最後で伸びを失って負けていたかもしれない。そう考えると、ブリンカーを装着するかどうかは勝敗を左右する重要な判断であったとも言える。

チークピーシズの場合、枠順や馬場状態に応じて装着の判断ができ、極端に言うと、当日のパドックでの馬の様子を見てから、着けたり外したりすることも現状では可能なのである。たとえば、当日、馬に気合が乗りすぎていて、チークピーシズを着けたままだと行き過ぎてしまうと判断すれば外すことも出来るし、また初コースなどの理由で周りに気を遣ってしまっていると思えば着けることも出来る。このように状況に応じて装着の判断が出来るということは、陣営にとっては大きな安心材料となる。そのため、ブリンカーではなくチークピーシズを使う陣営が増えてきているのだ。

それからもうひとつ、これもブリンカーと同じ考え方だが、初めて装着する時の効果が最も大きいということも覚えておきたい(良い意味でも悪い意味でも)。初めてブリンカーやチークピーシズを使う馬が、刺激を受けたことによりまさかの激走(または凡走)をすることがある。しかし、その効果は、馬が馬具に慣れてしまうことにより、次第に薄くなっていく。

アドマイヤモナークもダークメッセージも、今回初めてチークピーシズを装着した馬ではないので、チークピーシズが直接の好走理由ではないだろう。しかし、チークピーシズに一定の効果があることが明らかな以上、当日に装着しているかどうかは、馬券を買う私たちも、少しだけ気に掛けておくべき事実ではないだろうか。


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夏負けしている馬、していない馬

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「普段から気性のカッカしている馬は夏負けしにくい」と、ある調教師がどこかの雑誌で語っていた。気性が大人しい馬ほど、夏は元気がなくなってしまう。総じて牝馬が夏に強いのは、ここにも理由があるのではないか、とのこと。とても興味深く読んだのだが、この話には少し疑問がある。

個体差や牝馬牡馬などの性差を抜きにして言えば、基本的に夏負けするのは、「無駄な動きをする馬」だと思う。普段の運動で突然立ち上がって暴れてみたり、乗り運動の時に乗り手の指示に従わず暴走してみたり、競馬場への輸送車の中でもジッとしていなかったりと、そういう無駄な動きをする馬こそが夏負けしやすいのである。

高齢馬が夏に強いと言われるのはこれゆえである。同じ馬であっても、高齢になるほど夏負けしにくくなるのは、もちろん暑さへの耐性が付いていくということもあるが、気性的に落ち着いて、無駄な動きをしなくなるからという理由が大きい。だからこそ、個体差はあっても、夏には高齢馬を狙えという馬券術には一理ある。

ところで、パドックで夏負けしている馬を見るポイントとして、一般的なところは以下の3つ。
(1)目の周りが黒ずんでいる
(2)大量の汗をかいている、もしくは汗を全くかいていない
(3)牡馬であれば睾丸が垂れ下がってきている

(1)は人間でも寝不足や疲労が重なると目の下にクマが出来るが、そのようなものとイメージしてもらいたい。これは程度問題であって、毛色によっても見分けにくさが違ってくるので、明らかに分かるくらい目の周りが黒ずんでしまっている馬は、夏負けの影響を考えたほうがよい。

(2)は極端に汗の量が多すぎたり、逆に少なすぎたりすることである。夏場だけに、普段より発汗量は多くて当然であるが、異常とも思えるぐらいの汗をかいていたり、反対に全く汗をかいていなかったりする馬は、夏負けを疑ってみたほうがよい。

(3)は牡馬特有の現象であるが、睾丸が普段の2倍以上の大きさに腫れ上がって、垂れ下がってきているということである。わざわざ競馬場まで行って、パドックで馬の睾丸を見るというのも情けない話だが、もし夏場のパドックでこういう馬を見かけたら、夏負けしている可能性が高い。

話を元に戻すと、「普段から気性のカッカしている馬は夏負けしにくい」というのは誤解であって、「普段から落ち着いて無駄な動きをしない馬は夏負けしにくい」の方が正しい。確かに、夏負けしてしまった馬が大人しくなってしまうことも事実なので、おそらくこの調教師が伝えたかったことは、「カッカしているぐらいの馬はまだ夏負けしていない」ということではないだろうか。つまり、普段から大人しい馬と、夏負けして大人しくなってしまった馬の区別はつけ難いが、いずれにせよカッカしているぐらいならまだ夏負けしていないということである。

今年からは、パドックで夏負けしている馬を見分けるポイントとして、(4)カッカしている馬はまだ夏負けしていない、を付け加えて夏競馬に臨みたい。

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どの騎手から乗り替わったのか

Mybestrace今月号の「優駿」で、騎手自身が選ぶ「マイ・ベスト・レース」という企画を読んだ。安藤勝己騎手からペリエ騎手、そして岡部元ジョッキーまで、15人のジョッキーらが自ら騎乗したレースの中でも最高のものを1つだけ選ぶという企画なのだが、私の印象に深く残ったのは、横山典弘騎手が選んだ2006年のフラワーカップである。

キストゥへヴンで勝ったこのレースであるが、横山騎手はこのレースを選んだ理由について、「騎乗前に考えた課題をすべてクリアできた会心のレースでした」と語る。その課題とは2つあって、ひとつは、テンションの高いキストゥへヴンに気持ちをコントロールしながら、折り合いをつけて走ることを覚えさせること。もうひとつは、次の本番である桜花賞に向けて余力を残して臨めるよう、負担をかけないレースをして、なおかつ権利を獲ること。この2つの課題をクリアできたからこそ、横山典弘騎手にとっては会心の騎乗であったというのである。

ご存知のとおり、桜花賞は安藤騎手の手綱によって勝利したわけだが、その勝利は横山典弘騎手が乗ったフラワーカップという伏線があってこそのものであった。騎手は勝たなければならないが、それだけではならない。将来を見据えながら馬に競馬を教え、先々へとつながるレースをしながら、なおかつ勝たなければならないのだ。ひとつのレースは点であるが、その点と点が結ばれながら線となって、その馬を形成していく。ひとつのレースで起こったことは、過去のレースからの集積であると共に、未来のレースへの布石でもある。

つまり、「どの騎手から乗り替わったのか」ということは、非常に大きな意味を持つということである。私たちは馬券を予想する上で、「どの騎手に乗り替わったか」ということに重きを置きすぎる嫌いがあるが、それと同じかそれ以上に、「どの騎手から乗り替わったのか」ということは大切な要素なのである。特に、競馬を覚えていく時期(クラシックシーズン)の若駒の走りを占う上では、どの騎手がどのようなレースをしてきたかという視点を欠いてはならない

明日は牡馬クラシックに臨む精鋭が集う弥生賞が行われる。アドマイヤオーラ、モチ、サムライタイガース、メイショウレガーロと、このレースも本番を見据えた乗り替わりが多い。中でも私は、後藤騎手から乗り替わったメイショウレガーロの走りに注目している。前走の京成杯は、後藤騎手が前半で抑えすぎたように映るが、その時の馬の雰囲気に合わせ、リラックスして走らせることに集中した、まさに先を見据えた騎乗であったと私には思えた。思えば、先週のローエングリンも、田中勝春騎手が差す競馬を根気強く教え続けたからこそ、後藤騎手がバトンを受けた中山記念でも、掛かることなく折り合いがつき、マイペースの単騎逃げを打つことが出来た。後藤騎手が勝たせたように見えても、実は田中勝春騎手が勝たせていたということはある。騎手とは因果な商売なのである。果たして今度は、後藤騎手の騎乗がメイショウレガーロをどのような形で皐月賞に導くだろうか。

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競走馬の分岐点

これは今でも親によく言われることなのだが、私は幼稚園の駆けっこではいつもビリだったらしい。ヨーイドンの合図で、他の子が一生懸命に走り出しても、私だけは一向に走ろうとしなかったという。その頃の私には、誰よりも速くゴールするという競走の意味が分かっていなかったのだ。人としての成長が遅いのは今も同じなのだが(笑)、他の子に比べて物心がつくのが遅かったのだろう。

競走馬のデビュー戦も幼稚園児の駆けっこのようなもので、訳もわからないうちに終わってしまうことが多い。もちろん、物心がつくのが早い馬と遅い馬がいて、デビュー前の調教から好タイムを連発して、新馬戦を圧勝するような馬は前者である。新馬戦では、体の完成度が高いだけではなく、気持ちが走るということに向いているかどうかが問われるのである。

しかし、2~3戦目ともなると話は別で、レースでは他馬よりも速く走らなければならないことを、ほとんどの馬は理解し始める。そして、このあたりが競走馬としての分岐点となるのだ。レースや調教というものを理解して、ようやく競走馬としての本能が目覚める馬もいれば、反対に、レースに行くと目一杯に走らされて苦しいことを知るため、走ることを嫌がるようになる馬もいる。もちろん、後者の方が圧倒的に多いのだが、その苦しさを克服しない限り、能力を発揮できるようにはならない。あのディープインパクトでさえ、ダービーまでは極度のストレスを感じ、入れ込んでいたことは記憶に新しい。

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今週の共同通信杯に、そのディープインパクトの弟であるニュービギニング(父アグネスタキオン)が出走する。ここにきて馬が変わってきているように、非常に奥の深い馬である。兄ディープインパクトは、どこまで強いか分からないという点において奥が深かったが、ニュービギニングには、一戦するごとに競走馬として大きく成長しているという奥深さがある。

正直に言って、デビュー前のその馬体や調教での動きを見る限り、ニュービギニングからは素質の片鱗さえも感じられなかった。兄がディープインパクトであることを知らなければ、誰もが中の下くらいの評価しかできない程度の、どこにでもいる馬であったし、父アグネスタキオンの産駒は総じて大柄に出るが、この馬は440kg台と小柄で、父譲りの迫力にさえ欠けていた。

そんな中、新馬戦を差し返す形で勝ち、続くホープフルステークスも後方一気の末脚で連勝を飾ってしまったのだ。実戦に行って大きく変わり、さらに調教や普段の動きも変わってきた。デビュー前はほとんど動かなかったにもかかわらず、今週の追い切りでは馬なりで併走馬に先着するようになった。ようやく走れる肉体になってきたということもあるが、それよりもニュービギニング自身の気持ちが走ることに向いて、集中出来てきたことが大きい。

デビュー3戦目となる今回の共同通信杯は、ニュービギニングにとっての分岐点となるレースである。苦しんで直線ヨレながらも3連勝を飾ったフサイチホウオーや、ソエの苦しさを克服したフリオーソなど強敵は多く、まだまだ幼さを残すニュービギニングはかなり厳しいレースを強いられることになるだろう。それでも、物心つくのが遅かったものの、競走馬としての意識にようやく目覚めてきたニュービギニングが、今度はレースの苦しさを克服することができるのかどうか。まるで我がことのように、暖かく見守りたいと思う。

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騎手の上手さは勝率に表れる

Kisyunogijyutu日本人ジョッキーの中では、武豊→安藤勝己→横山典弘→岩田康成騎手の順に上手いという仮説を私は持っている。これはあくまでも現在の仮説であるし、「どの騎手が上手いか」という問いは、「どの馬が強いか」という問いと同じくらいナンセンスであることは百も承知である。

しかし、あえてその仮説を証明すべき数字(データ)を色々と探し出してみたところ、最終的には案外と身近なところに落ち着いた。

やはり、騎手の総合的な上手さというのは勝率に表れるのである。

2006年度勝率
武豊 0.225
安藤勝己 0.192
横山典弘 0.171
岩田康誠 0.132

リーディングの順には並んでいないことが分かる。武豊騎手はリーディングも勝率も1位という断然の存在であるが、リーディング4位の安藤勝己騎手が勝率では2位に食い込んでいる。リーディング5位の横山典弘騎手も、勝率では3位にランクアップする。もちろん、ケガによる騎乗数やエージェントの問題も含まれるが、安藤騎手にしても横山騎手にしても600鞍以上を騎乗してのデータだけに、統計学的に考えても、ほとんど誤差のない数字であろう。

そして、勝率という観点から見ると、横山典弘騎手と岩田康誠騎手の間に、実は2人のジョッキーが存在する。藤田伸二騎手と内田博幸騎手である。藤田騎手の勝率は0.141で、内田騎手の勝率は0.138である。こうして見ると、その人間性はカッコで括るとしても、藤田伸二騎手は素晴らしい技術を備えたジョッキーであることが分かるし、全く乗り方の違う地方競馬と中央競馬を股にかけての数字だけに、内田博幸騎手の評価は高くて当然である。もちろん、岩田康誠も中央挑戦1年目であることを考えると、今年はさらに勝率を伸ばしてくることが予想される。

たくさん勝つこと自体は上手さの証明であるし、勝てば勝つほど良い馬を依頼されるので、また勝てるようになるのは必然の流れである。しかし、それだけではないのだ。騎手の技術は、どれだけ馬を上手く走らせることが出来たかに表れるのである。ナンセンスな問いに対する私の仮説は、そんな当たり前の結論に落ち着いた。

追記
当たり前の結論に納得がいかない方は(笑)、「けいけん豊富な毎日」のけん♂さんが、「支持達成率」と「穴馬率」という鋭い切り口で騎手の能力値について書かれていますので、ぜひご覧ください。なかなか面白い結果が出てますよ。

■上位騎手編はこちら→http://90884.blog64.fc2.com/blog-entry-731.html
■中堅騎手編はこちら→http://90884.blog64.fc2.com/blog-entry-737.html
■若手騎手編はこちら→http://90884.blog64.fc2.com/blog-entry-739.html

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全成績から分かること

ドリームパスポートは有馬記念で遂に4着と複勝圏内を外してしまったが、それまではデビュー以来12戦で【3・6・3・0】という、超が付くほどの堅実な走りを見せてきた。【山人の「適当」競馬予想】によると、1000円で複勝コロガシを始めると、デビューから有馬記念までで何と530万6700円になるらしい。ちなみに先日引退を発表した菊花賞馬ソングオブウインドは、デビューから菊花賞までの10戦を複勝でコロガし続けると120万2320円だそうだ。

それはさておき、実はこの【1着、2着、3着、それ以外】という全成績の数字列を見るだけで、その馬の大まかなタイプや強さを把握することができる。

全成績の数字列は大きく4つのタイプに分けられる。
1、逆三角形型
2、三角形型
3、ダイヤ型
4、砂時計型

1の逆三角形型とは、【5・3・2・1】のような数字列である。全成績を縦に並べたとして考えてほしい(通常、馬柱は縦に並んでいるので)。上が一番大きい数字が並んでいて、下に行くにつれ数字は小さくなってきている。こういう逆三角形の成績を残してきた馬は、紛れもなく強い馬である。勝ち切るだけの決め手を持っているし、どんな条件や相手だろうが、その力をいかんなく発揮できる馬である。こういう馬は安心して買ってよい。有馬記念でいうと、ディープインパクトが当てはまる。
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ディープインパクトの有馬記念時の馬柱(一番右が全成績)

2の三角形型とは、【1・2・3・5】のような数字列である。逆三角形型の正反対と考えてほしい。上の数字が一番小さくて、下に行くにつれ数字は大きくなる。こういう成績を残してきた馬は、あまり強くはない馬である。ほとんど勝ち負けに加われないことが多く、よほど条件や相手に恵まれた時だけ好走することが可能である。有馬記念でいうと、デルタブルースが当てはまる。
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デルタブルースの有馬記念時の馬柱(一番右が全成績)

3のダイヤ型とは【2・4・4・1】のような数字列である。上と下の数字に比べ、中の数字が大きいということである。つまり、大きく負けることはないのだが、イマイチ勝ち味に遅いというタイプの馬である。こういうタイプの馬は単勝で勝負するのは危険である。ただし、このような馬には将来性があって、なにかひとつのきっかけで勝てるようになると、あっという間に1の逆三角形のタイプに成ってしまうということもある。そのきっかけとは、休養を挟んで肉体的、精神的に成長したことであったり、脚質を変換したことであったりする。有馬記念でいうと、ドリームパスポートが当てはまる。
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ドリームパスポートの有馬記念時の馬柱(一番右が全成績)

4の砂時計型とは【4・1・2・4】のような数字列である。上と下の数字に比べ、中の数字が少ない(中が凹んでいる)ということである。能力は高い馬であるが、自分の型に持ち込めないと力を発揮できないタイプで、勝つときと負けるときがハッキリとしている馬である。ある程度の条件が揃えば、好走がかなり期待できる馬ということもある。有馬記念でいうと、ポップロックが当てはまる。
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ポップロックの有馬記念時の馬柱(一番右が全成績)

私は昔、地方競馬巡りをしていたことがあったが、初めて見る、横の関係も縦の関係も全く分からない馬たちのレースを予想する際に、このテクニックは重宝していた。1の逆三角形型は否が応にも人気になり、4の砂時計型は馬券的な妙味があり、3のダイヤ型は人気ほどの期待には応えてくれないことが多く、2の三角形型は馬券に絡まないことが多い。同じような人気になっていれば、1の逆三角形型→4の砂時計型→3のダイヤ型→2の三角形型の順で優先して本命を決める。

もちろん、全ての馬が単純に4つのタイプに区別されていくわけではなく、また各馬の成長によってタイプが変わってくることもあり得る。たとえば、ソングオブウインドは3のダイヤ型であったが、この馬は1の逆三角形タイプになっていくだろう(そう考えていた矢先に引退してしまったが)。それでも、その馬のその時点でのタイプや強さを、大まかではあるが把握することができるのである。おそらく誰もが意識する・しないに関わらず行っていることなのだとは思うが、極めてシンプルで数秒しかかからない作業なので、ぜひ一度試してみて欲しい。

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夏を自厩舎で過ごすこと

Natuyasumi

3冠を目指すメイショウサムソンは、昨年の3冠馬ディープインパクトと同じく、自厩舎で夏休みを過ごした。ダービー後に北海道に放牧に出すことも出来たが、神戸新聞杯から逆算すると、8月中には厩舎で調整を始めなくてはならず、その時期に気温差の大きい北海道から栗東に戻すことは、リスクが大きいと判断したとのことである。

このように、平成12年度より菊花賞の開催が前倒しになったことにより、春のクラシックで実績を挙げた期待馬たち(特にダービー馬)は、夏休みを厩舎で過ごすか、放牧に出すかという選択を迫られることになった。

夏を自厩舎で過ごすことには、メリットとデメリットがある

メリットとしては、先に述べたように、8月の暑い時期に気温差の大きい北海道から栗東、もしくは美浦に戻すことによって、馬が体調やリズムを崩すリスクを回避できるということが一つ。もう一つ、それ以上に大きなメリットとしては、調教師が自分の手元に常に置いて管理できるということである。調教師の目の届くところに置いておくことによって、安心かつ安全で、そして何よりも仕上げが施しやすいのだ。放牧に出してしまうとほぼ完全に馬体は緩んでしまうが、自厩舎であれば馬体を緩め過ぎることがなく、目標のレースに向かって、再度ネジを巻き戻しやすいということである

特にダービーを勝った馬を放牧に出すことには、非常に危険が伴う。なぜなら、ダービーを勝つためには極限の仕上がりが要求されるため、ダービーで全ての力を使い果たした馬を放牧に出してしまうと、その反動で疲れが噴出し、あっという間に体調はどん底まで落ちてしまうのだ。その状態から、4ヶ月で再び100%に戻すことは至難の業なのである。だからこそ、ダービーを勝ったような能力の高い馬であればあるほど、あらゆる意味において、自分の手元に置いて万全を喫したいと考えるのは当然なのである

反対にデメリットとしては、自厩舎で夏を過ごすと、馬はどうしても精神的にリフレッシュされないということである。肉体的にはある程度は緩められるので楽になるが、ずっと同じ環境にいることによって、馬の気が休まることがないのである。もちろん、馬によって差はあるのだが、涼しい気候の中、のんびりと走り回れる牧場と違い、自厩舎で夏を越すことは馬にとってはあまり喜ばしいことではない。知らず知らずの間に、人間にも分からないところで、精神的なストレスが蓄積されていくのだ

精神的にリフレッシュ出来なかったツケは、将来的にいつか回ってくる。途端に調教やレースで走らなくなることもあるし、また精神は肉体と直結しているため、精神的なストレスの蓄積が馬体の細化や怪我にまでつながってしまうこともある。ディープインパクトが3冠を制覇した直後の有馬記念で、あっと驚く敗退をした最大の原因はこれである。ディープインパクトはその後も自厩舎で調整を続けられたため、古馬になってからは調教で走らなくなってしまった。レース本番で結果が出ているため気付かれないが、ディープインパクトの精神的なストレスは測り知れない。このように、精神的なストレスが蓄積すると、将来的にあらゆるところに悪い影響が出てしまうことになる。

メイショウサムソンを管理する瀬戸口調教師は、これら全てのメリット・デメリットを把握した上で、あえて夏を自厩舎で過ごすという選択をした。それは全て、メイショウサムソンが菊花賞を勝って、3冠を獲るという最大目標のためである菊花賞の後のことや、古馬になってから回ってくるであろう将来的なツケを覚悟した上で、それでも菊花賞を勝つことに全てを賭けてきたのである

案の定、瀬戸口調教師の描いたシナリオどおりに、まずは神戸新聞杯を万全の状態で使うことができた。そして、神戸新聞杯後の仕上げもそれほど難しくはなかったはずである。メイショウサムソンは、最終追い切りでも、春と寸分たがわぬ力強い動きを披露している。他馬が牧場で休養を取っている中、夏休みを自厩舎で心身共に緩めず過ごしてきたことにより、メイショウサムソンが菊の栄冠にまた一歩近づいたことは確かである。皐月賞からダービー、そして菊花賞へと続く一本の栄光の直線の上に、勇者メイショウサムソンは独り立ち続けているのだ。

special photo by M.H

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逃げ切るための条件

Nigeuma

競馬は前に行ける馬の方が有利である。特に逃げ馬は、レースの主導権を握り、馬場の良い所を通って最短距離で走ることができ、アクシデントに巻き込まれることもほとんどない。追い込み馬とは比べ物にならないほどのアドバンテージを得て、逃げ馬は逃げることができる。

しかし、その反面、レースのレベルが高ければ高いほど、逃げて勝つことは難しくなっていく。なぜなら、逃げ馬は自然と他馬の目標になってしまうからである。レースで目標になってしまうと、道中は楽に走らせてもらえないばかりではなく、勝負どころでは手応えのある他の馬が次々と襲い掛かってくることになる。余程の力差がない限り、逃げ馬は厳しいレースをを強いられてしまうのだ。

だからこそ、本当に強い馬は逃げて勝つ馬だとも言える。とはいえ、ミホノブルボンやサイレンススズカのように強い逃げ馬ばかりでない以上、逃げ馬のレースでの勝ち負けは、自分の実力の外にある何かによって支配されることは避けられない。

そこで、逃げ馬が切るための4つの条件を挙げてみたい。
1、人気がない
2、突然逃げる
3、トップジョッキーが乗った人気馬が差し馬
4、差してきた逃げ馬の次走

1は基本中の基本だが、人気がなければ、それだけマークもゆるくなるということである。“あの馬を逃がしたらやられる”と思われれば、必要以上に競りかけられたり、早めに捕まえに来られたりするが、“どうせ最後までもたない”と思われれば、楽に逃がしてもらえる。逃げ馬の着順は、力の有無ではなく、人気による騎手の共通意識が創り上げていると言っても過言ではないだろう。つまり、逃げ馬を狙う時には、人気がないことを確認してから買うべきなのである。

2は前もって予測するのが極めて難しいのだが、逃げるはずではなかった馬が逃げたり、これまで逃げたことのなかった馬が逃げたりした時ほど、逃げ残る確率が高い。今年のローズSのシェルズレイのように、レースの途中から突然に逃げたりした場合も同じである。想定外の馬が逃げた場合、その馬をマークするかどうかという騎手の共通意識が働きにくいからだ。各ジョッキーが他の騎手の動きをうかがっている内に、あれよあれよと逃げ切ってしまうのである。

3はレースで目標とされやすいジョッキー(たとえば武豊騎手など)が人気馬に乗るとすれば、その馬は徹底的にマークされることは間違いない。本来であれば、逃げた馬との距離やペースを目安にして仕掛けるところを、トップジョッキーが乗る人気馬に合わせて追い出すことになる。そして、トップジョッキーが騎乗する人気馬が差し馬(後ろから行く馬)だとすると、騎手の共通意識の重点は後ろへと傾く。前を向いてレースをしていても、意識は後ろという感覚である。トップジョッキーが騎乗した2、3頭の人気馬が後ろで牽制し合ったときなどは、どの騎手も最後まで自ら動けないという金縛り状態に陥ってしまうこともある。

4はオマケであるが、何らかの理由があって、逃げることが出来なかった(自分の型に持ち込めなかった)にもかかわらず、最後は差してきた逃げ馬は評価すべきである。そういうレースが出来た逃げ馬は、調子が良く、精神的にも成長している。もし次のレースで逃げることが出来た(自分の型に持ち込めた)場合は、かなりの確率で好走が見込まれる。

上に挙げた条件のうち、ひとつでも当てはまるものがあれば、その逃げ馬は実力以上に好走する可能性は高い。もちろん、2つ3つと条件が重なることがあれば、その馬が逃げ切る条件は揃ったといってもよいだろう。にもかかわらず、私たちは意外とそのことに気付かないことが多い。なぜなら、その馬は人気がなく、マークされていないからである。

今年の秋華賞は、果たしてどの馬が逃げ切るのだろうか。


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斤量がこたえるぜ

Kinryou_1 by Photostud

万国共通のモノサシとして、芝のマイル戦では1kgの斤量(負担重量)増は1馬身のロスになるとされる。たとえば、マイル戦で56kgを背負った馬と59kgの馬が同着したとすると、本来であれば、この2頭の馬の間には3馬身の力差があるということになる。もちろん、各馬の個体差があるので一律には扱えない部分はあるが、あくまでも一般的な統計として、芝のマイル戦では1kgの斤量増=1馬身のロスということである。

実を言うと、この斤量についての考え方には応用編がある。たとえ同じ1kgの斤量増でも、条件の違いによって、馬にとっての斤量増に対するこたえ方が違ってくるのだ。条件の違いとは以下の4つである。

(1)背負う斤量が重ければ重いほどこたえる。
(2)距離が長ければ長いほどこたえる。
(3)芝よりもダートの方がこたえる。
(4)斤量が馬体重の12%を超えるとこたえる。

(1)は50kgからの1kg増と、60kgからの1kg増では意味合いが違うということである。前者はほとんど影響がないが、後者はかなりの影響がある。たとえば私たちでも、軽いものを持っている場合には少々重くなろうと大して感じないが、重いものを持っている場合は少し重くなっただけでも苦痛に感じる。

(2)は一瞬にして決着が付いてしまう短距離とそうでない長距離の1kg増では、後者の方が影響は大きいということである。たとえば私たちでも、短い距離・時間であれば我慢できても、距離・時間が長くなればなるほど、ジワジワと感じる重さは増していく。

(3)は芝よりもダートの方が斤量増の影響は大きいということである。これは、力の要る馬場の方が斤量増の影響は大きいということを意味する。たとえば私たちが、重いものを持って、砂浜を走ることを想像してみてほしい。

(4)は斤量泣きする馬、しない馬がいるので、一概に全ての馬に当てはまるわけではないのだが、12%という数字はあくまでも目安として考えてほしい。たとえば、500kgの馬であれば60kgまでならば、ギリギリ我慢できる斤量だということである。それ以上の斤量を背負うと、1馬身どころか、途端に走れなくなるのだ。

これまで、ディープインパクトの背負ってきた最高重量は58kgである。馬体重の12%を目安とすると、ディープインパクトにとっては54kgが分岐点である。国内では圧倒的な能力を誇るためほとんど無視されてきたが、ディープインパクトにとって58kgはすでに酷量であった。そこからさらに1.5kgの上乗せは、馬体重の軽いディープインパクトには相当に厳しい条件となる。

さらに、高低差10mもあるアップダウンの激しいロンシャン競馬場の2400mは、日本の競馬場の2400m以上の距離感を強いられるだろう。そして、ダメ押しのように、ヨーロッパの芝は深くて重い。阪神大章典や雨が降った宝塚記念とは比較にならないほど重いのだ。

斤量については、まるで絶望的な条件が揃ってしまった感がある。ヨーロッパの馬場や斤量に慣れた他の有力馬たちと比べ、ディープインパクトにとっては、これまでのレースとはあまりにも条件が違いすぎる斤量増がこたえる条件の全てが、この凱旋門賞で揃ってしまうからだ。もしかすると、ディープインパクトにとっての最大の敵は、ハリケーンランでもなくシロッコでもなく、59.5kgという酷量なのかもしれない。


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一完歩を10cm長く走らせる

Ikkannpo by M.H

サラブレッドのスピードは、「一完歩の長さ(ストライド)×頻度(ピッチ)」で決まる。もちろん、疲労してバタバタになった馬は脚が伸びないように、同じ馬でも状況によって一完歩の長さは変わるが、走る頻度(ピッチ)が同じであれば、当然、一完歩(ストライド)を長く走った馬の方が先にゴール出来る。

一完歩の長さ(ストライド)は馬の持って生まれた肉体的特徴によるところが大きいのだが、数センチ位の長さであれば、実は騎手の技量によって補うことが出来るのだ。ゴール前1ハロンの完歩数は平均27完歩であり、もし一完歩が10cm長くなったとすると、27完歩×10cm=270cmで2.7m。つまり、ゴール前1ハロンだけで、なんと1馬身の差が生じることになる。このことからも、一完歩を少しでも長く走らせることが、一流騎手の仕事だといっても過言ではないだろう

日本のジョッキーでは、やはり武豊騎手が、この一完歩を少しでも長く走らせる技術に長けている。たとえば、ロジックを勝利に導いた今年のNHKマイルCのラスト1ハロンには、武豊騎手の馬を伸ばす技術が凝縮されているといってよい。あれだけの接戦の中で、ほとんど鞭を使うことなく、馬の走るリズムに合わせて、ストライドを少しでも長く走らせることに集中している。そのストライドのわずかな差が、ゴール前のクビの差に結果的につながっているのである。もし他の騎手であったら、負けていても不思議ではなかったレースである。

日本では馬を「追う」というが、海外では「押す(PUSH)」という。馬を「追う」とは、ムチでビシバシ馬を叩くことではなく、手綱を通して馬を「押す」ことである。もう少し具体的に描写すると、馬が着地する時に、もう何センチか先につかせることによって、一完歩を長く走らせるのである。そのためには、馬の走りのリズムに合わせて手綱を引きつけ、タイミング良く解き放つことによって、馬体を最大限に収縮させなければならない。馬のリズムを崩さないように、少しずつ重心を下げて、ストライドを長く伸ばして走らせるのである。武豊騎手は追えないという筋違いの評価があるが、全くの誤解である。あえて言うならば、武豊騎手は「押せる」騎手なのである。

ちょっと余談
このCMシリーズはJRAの最高傑作だと思う。全力で追っていないため、馬を「押す(PUSH)」感覚は伝わってこないと思うが、武豊騎手の長身を馬の背に折畳んだ美しいフォームや、華麗な鞭捌きを堪能して欲しい。小田和正の歌声も最高!


やっぱり1位になりたい↓

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苛酷なハンデはジョッキーにとってもハンデ

Hadicap01コスモバルクが62kgの負担重量を背負って、今週の札幌日経オープンに出走する。まさに酷量であるが、この苛酷なハンディキャップは、サラブレッドにとってだけではなく、実は騎手にとっても大きなハンデとなる。

コスモバルクに騎乗する五十嵐騎手の体重は、過去の騎乗歴から推測すると、おそらく40kg後半を維持しているのでは思われる。もちろん、食事制限や汗取りなどの苛酷な減量をして、ようやく維持している体重であろう。

そこで、たとえば五十嵐騎手が47kgの体重だとして、コスモバルクに62kgで騎乗するとすれば、なんと単純計算で15kg分の大きくて重い鞍をつけ、ナマリを背負って乗らなければならない。鞍に全てのナマリを入れてしまうと、直接に馬への負担が大きくなってしまうので、ジョッキー自身も普段より数kgほど重いナマリを装着することになる。

たとえば、3kgのナマリを体に装着することを想像してみてほしい。相当に動きは鈍くなるだろうし、体が重く感じるだろう(実際に重い)。私たち以上に、減量で疲労残りのジョッキーの体には数kgの重さはこたえる。そんな状態で、道中では行きたがるコスモバルクを御し、直線では最後までバテさせないように追い続けなければならないのである。

さらに、馬の負担を最小限にするため、少しでも軽く乗らなければならないという心理面でのプレッシャーも相当なものである。ジョッキーがナマリを背負うのは、自分のバランスの取り方いかんで、もしくは関節をサスペンションのようにして重さを逃がすことによって、馬が感じる重さを少しでも軽くすることが出来るからである。馬の体感重量を少しでも軽くすることも、上手い騎手の技のひとつである。

このように、苛酷なハンデは、肉体的にも精神的にも、ジョッキーにとっても大きなプレッシャーになってしまうのである。ハンデは馬だけに課せられたものではないのだ。

それに加え、今回は札幌競馬場でレースが行われることもあって、当日は多くのコスモバルクファンが競馬場に詰め掛けることになるだろう。道営の人気者だけに、出走する以上は勝ちが求められるのは当然である。そんな三重苦ともいえるプレッシャーの中で、コスモバルク五十嵐冬樹のコンビは、どんな走りを見せてくれるだろうか。国際G1馬とその主戦ジョッキーの意地をぜひ見せてほしいものだ。

Photo by M.H

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踏み込みの深さが意味するものは?

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メルマガ「馬券のヒント」にて、“踏み込みの深さで分かるのは距離適性”という仮説を立てたが、誤解があると困るので、もう少し詳しく補足しておきたい。

まず前提としてあるのは、パドックでよく言われる、「後肢(トモ)の踏み込みがいいから、この馬は調子がいいですね~」という馬の見方である。踏み込みの深い馬=調子の良い馬という等式は、かなり昔から、まるで定説のように信じられてきた。

しかし、私はこの定説に少し疑問がある。なぜなら、パドックでは馬はみな興奮しているので、普段よりも脚は大きく出るものだからだ。踏み込みのときに、いかにも力が入っているように見える馬は、興奮しているだけで、かえって良くないのではないかと思う。G1レースに出てくるような馬を見てもらっても、それほど力強くは映らないのではないだろうか。また、飛節の角度が大きい馬は自然と踏み込みも深くなるので、踏み込みが深い馬がいいとは一概に言い切れない

それよりも、後肢の踏み込みの深さは、距離適性と密接な関係にある

スプリンターは前肢よりも後肢が発達しているので、後肢を深く踏み込み、一完歩一完歩に力を使いながら歩く。これで全力疾走すれば、短距離はなんとかもっても、距離が長くなってしまうとスタミナが続かないということになる。それに対して、ステイヤーの踏み込みは、後肢が深くなくても、リズミカルに踏み出され、返しもスムーズで無理がない歩き方をする。このように、スプリンターとステイヤーでは、踏み込みの深さや力強さが違うのである。

つまり、踏み込みの深さから分かるのは、調子の良さではなく、短距離適性なのである。もし短距離戦のパドックで踏み込みが深く力強い馬を見つけたら、スプリンターの資質が表れているということで狙ってみても面白いだろう。しかし逆に、もし長距離戦のパドックでそういう馬が歩いていたら、道中で引っ掛かってしまう、もしくは最後の直線でスタミナ切れを引き起こしてしまうのではないかという心配をしたほうがいい。

さらに、補足の補足で、パドックで馬の動きのどこを見るかと問われれば、後肢の踏み込みよりも、前肢の出ではないかと私は思う。パドックで馬の調子を見極めるのは非常に難しいので、私は多くは語れないが、前肢が綺麗に(スムーズに)出ているように見える馬は好走する率が高いと思う。騎手にとっても、後肢よりも前肢の出が気になるという。乗馬経験のある方ならよく分かるのだが、前が窮屈だったり、硬かったりする馬は、乗っていても気持ち悪いものである。

もっとも、前肢の出が綺麗か(スムーズか)どうかということを見極めるのも、また難しいのであるが…。

Photo by fake Place

追記
私がリスペクトするこちらのブログで、先日のエントリー「インサイダー情報の罠」を紹介していただきました。「インサイダー情報」について、私とはまた別の切り口で大胆に述べられていますので、まだ読まれていない方は必読のエントリーです。「競馬がくれるいろいろな楽しみ」をできるだけ多くの人に伝えていきたいというblandfordさんの願いは、私のそれと同じです。秘密馬券クラブも、もうすぐオープンされるようで、非常に楽しみにしています。

「秘密馬券クラブ」について、まだ知らないという方はこちらから。
→【秘密馬券クラブ】
→【秘密馬券クラブ続報】

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ディープインパクトは真面目すぎる

前走の天皇賞春の次元の違う勝ちっぷりを見せられては、どう考えてもディープインパクトが負ける理由が見当たらないというのが大方の見解だろう。力でディープインパクトをねじ伏せられる馬など、それこそ世界中を探してもいるかどうか分からない。それぐらいディープインパクトの力は傑出している。

それでも、今回の宝塚記念で、ディープインパクトは飛ばない(負ける)だろう。その理由は、天皇賞春を境にしてディープインパクトが調教で動かなくなったことからの伏線で、今のディープインパクトはいつガタっと疲れが出てもおかしくない状態にあるからだ。

【ディープインパクトは飛ぶことができるのか?】にて、競走馬が調教で動かなくなることには、大きく2つの理由があると述べたひとつは「体調が悪い」からで、もうひとつは「走る気力が失せている」からである。ディープインパクトは後者の理由が強く、精神的な疲労が抜け切っていないまま天皇賞春を迎えていた。

しかし、並の一流馬ならあっさりと凡走してしまうところを、ディープインパクトは最後の力を振り絞って圧勝してしまった。このように、疲労のサインを発しながらも、レースに行くと走ってしまう馬は、真面目すぎる性格であることが多い。おそらく、ディープインパクトは、私たちが思うにもまして真面目すぎる性格の馬なのだろう。ディープインパクトのように真面目すぎる馬は、人間が気付いてあげないと、限界を超えて走ってしまうのである。

真面目すぎる馬で思い出すのが、3冠馬ナリタブライアンの兄ビワハヤヒデである。頭が大きく、愛嬌のあるルックスからは想像もつかないが、この馬も真面目すぎるほど真面目な馬であった。実はビワハヤヒデも、4歳秋の産経賞オールカマーの頃から、調教で動かなくなった。今から思うと、春の天皇賞→宝塚記念レコード勝利という連戦が堪えたのだろう。夏を越してめっきりと調教で動かなくなってしまったのだが、そんな心配をよそに、産経賞オールカマーはダービー馬ウイニングチケット以下を寄せ付けずに圧勝した。

しかし、本番の天皇賞秋も圧倒的な人気に推されたものの、いつもの手応えはなく、5着に凡走してしまった。レース後には、左前足屈腱炎が判明して、引退が発表されることになった。ビワハヤヒデは真面目すぎるがゆえに、産経賞オールカマーで万全の体調でなかったにもかかわらず、限界まで力を出し切って走ってしまったのだ。もし産経賞オールカマーで頑張らずに凡走していれば、次走の天皇賞秋で引退に追い込まれることもなかったかもしれない。

ビワハヤヒデと同じように、ディープインパクトも最後の力を振り絞って、天皇賞春を走ってしまった。さらに、レコード決着というおまけ付きである。これで反動が出ないほうがおかしく、一度は我慢できても、二度目は我慢することは難しい。今回、ディープインパクトはあっと驚く凡走をすることになるだろう。そして、あっさりと凡走すればまだいいのだが、己の限界を超えて頑張ってしまい、怪我をしてしまうことだけはあってはならない。とにかく無事に負けてくれることを祈る。


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◎アドマイヤムーンが勝つその理由とは

皐月賞では本来の<体調>になかったアドマイヤムーンが、ダービーに臨むにあたって復調している。その根拠とは、集中連載:「馬体重は語る」の【第8回】【第9回】を読んでくれた方はお分かりだろうが、「馬体重が大幅に減った前のレースの数字に戻った時、次のレースからは<体調>が戻ったと判断する」という馬体重の原則があるからである。

アドマイヤムーンは、弥生賞で-6kgという100%の状態に仕上がってしまった反動が出て、皐月賞は4着と凡走してしまった。武豊騎手の、「これまで3回乗ったけど、皐月賞の時だけ走らなかった。あれっ何だろうという感じでしたね。」というコメントからも分かるように、道中の位置取りやコース取りという些細な理由ではなく、アドマイヤムーン自身が走れる<体調>になかったことは明らかである。

しかし、アドマイヤムーンはそのままでは終わらなかった。何と皐月賞の時には、弥生賞で大幅に馬体重を減らす前の馬体重(共同通信杯時の478kg)に戻っていたのだ。何度も言うが、「当日の馬体重の増減が馬の<体調>に影響を及ぼすのは、その日のレースにおいてではなく、レースの後になる」という馬体重の原則に基づくと、この6kgのプラス体重は、皐月賞後の<体調>に影響を及ぼすことになる。皐月賞で馬体重を戻していたからこそ、この中間はビシビシと調教を課すことができたのだ。アドマイヤムーンの<体調>が回復していることは間違いない。

アドマイヤムーンは見た目も血統も決して派手ではないが、共同通信杯や弥生賞で見せた豪脚は一流馬のそれであり、<体調>さえ戻れば必ずや勝ち負けになるはずである。最も問題とされる距離適性についても、2000mまでの距離をこなせる馬であれば、この時期は完成度の方がモノを言うことが多い。実際に、タニノギムレットやキングカメハメハは、2400mの距離をスケールと完成度で押し切ってしまった。そして、パワータイプのこの馬にとっては、重馬場もさほど苦にならないだろう。アドマイヤメインやフサイチジャンクなどの、跳びの綺麗な馬たちにとってマイナスに働く分、アドマイヤムーンにとっては有利になるかもしれない。今年のダービーは、アドマイヤムーンと武豊騎手が勝つと信じている。


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ラインクラフトの口元に注目

ラインクラフトは今年に入ってからの2戦(高松宮記念と阪神牝馬S)、ノーズバンドを外してレースに臨んでいる。ノーズバンド(鼻革)とは、馬の口が開きすぎないように、口の周りをグルっと巻いて締め、口が開かないようにする細い革のバンドのことである。ラインクラフトのように、舌を出したり、口を開きながら走るため、手綱の操作がうまく伝わりにくい馬に効果がある。

舌を出して走ることによるメリットはない。手綱から舌の上にあるハミを通して、騎手は競走馬に意志を伝える。舌を出してしまうということは、ハミを通して騎手の微妙な意志が伝わりにくいということである。そうなると、折り合いが付けにくいだけではなく、勝負所で最後まできちんと追うことが難しくなる。ハミがきちんと掛かっていない馬は、踏ん張らなければならない場面において、集中力を欠き、遊んでしまうからだ。

Noseband
(3歳のNHKマイルカップ~昨年の阪神牝馬Sまで、ノーズバンドを使用した)

そのノーズバンドを外したということは、効果が期待できなかったということもあるのだろうが、それ以上に、今のラインクラフトにはもう必要がなくなったということではないか。事実、前走の阪神牝馬Sでは、道中でほとんど引っ掛かることもなく、最後までシッカリとハミを噛み、集中力を切らすことなく伸び切っていた。ノーズバンドを使わずとも、舌を出したりして折り合いを欠く心配はないだろう、という陣営の判断は正しかったことになる。

しかし、先週と今週の追い切りを見て、ラインクラフトが舌を左側に出して走っていたことが、とても気になった。集中力を欠き、ほとんど真面目に走っていない印象を受けた。レースと年齢を重ねる毎に、この傾向は強くなってきている。追い切りで舌を出して走るのはこの馬のクセではあるが、あまりにも露骨に表れていたので、本番のレースではきちんと走ることが出来るのかと不安になったのだ。レースに行ってきちんと走れば問題ないが、果たしてどこまで調教とレースの切り替えが出来るのだろうか。

舌を出すことなく、しっかりとハミを受けて走ることが出来れば、課題である折り合いも心配ない。折り合いさえキチンと付けば、たとえマイルの距離でも、最後まで押し切ってしまうだろう。さらに、明日のヴィクトリアマイルは馬場の悪化が予想される。馬はハミを頼ることによって、悪い馬場をノメらずに走ることが出来る。舌を出してハミ受けが悪いということは、道悪では不利になってしまうのだ。つまり、ラインクラフトの口元の問題は、この記念すべき第1回のヴィクトリアマイルの勝敗の行方すら決めてしまうと言っても過言ではないのだ。


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ディープインパクトは飛ぶことが出来るのか?

天皇賞春に向けた今週の最終追い切りにおいて、私は見たくないものを見てしまった。それは、ディープインパクトが耳を絞って、走ることを拒否していた姿である。まるでディープインパクトが、「もう走りたくないよ」と言っているように、私には感じられた。

調教パートナーである池江調教助手を背にしたディープインパクトは、DWコースで、6ハロンで3馬身先行したオリエントチャーム(4歳1600万下)を追走する。直線に入り、いざ追い出されると、そのゴーサインに全くもって反応しない。手綱を激しく動かし、肩ムチを入れるものの、本来の伸びはなく、結局、1馬身遅れてゴールインした。

「古馬になってズブくなってきたから」
「調教とレースは違うから」
「変に動きすぎる方が心配」
「相手を見ながら走っている」

ディープインパクトが調教で動かなくなっていることについて、上のような発言で、関係者は問題がないことを強調し、マスコミもそれに追従する。

しかし、<調教で元々動かない>ことと、<調教で動かなくなる>ことは違う。

確かに、<調教で元々動かない>が、レースに行くと素晴らしい走りを見せる馬はいる。このタイプはステイヤーに多く、ステイヤーは総じて調教ではビックリするような時計は出さない。ストライドが大きい走法のためスピードに乗るのに時間が掛かり、気性的にも追い切りのような短い距離(6ハロン程度)をガンガン行くようなことはない。だからこそ、ステイヤーに限っては、たとえ調教で動かなくても、さほど心配することはない。

<調教で動かなくなる>ことには、以下の2つの理由が考えられる。
1、体調が悪い
2、走る気力が失せている

1は、当たり前のことだが、体調が悪ければ調教でも動けない。反対に、調子の良い馬は、自然と調教でも速い時計が出てしまう。調教での動きの良し悪しが、競走馬の調子のバロメーターとなるのは周知の事実である。

2は、精神的に燃え尽きてしまった馬によく見られる現象である。競走馬が一旦燃え尽きてしまうと、まるで別馬のように凡走を繰り返すこともあるし、また、あと一歩の踏ん張りが利かなくなることもある。前者は牝馬に多いケースで、後者は牡馬に多い。

高いレベルの戦いになればなるほど、レースを勝ち切るためには、肉体と精神の限界を超えた戦いを繰り返さなければならない。そんな中で、精神的に燃え尽きてしまっていることは致命傷になる。いくら走る能力がある馬でも、他馬よりも一歩でも先に出るという気持ちが失われていては、ゴールを先頭で走り抜けることは難しい。

ディープインパクトが、<調教で動かなくなってきている>のは事実である。そして、これだけゆったりとしたローテーションで調整している以上、体調が悪いということはあり得ない。そうなると、ディープインパクトの気持ちが問題となる。

デビューからあれだけの注目を集めながら、レースでは常に結果を出し続けてきた。撮影ラッシュは凄まじいものがあるだろうし、関係者たちの極度の緊張も伝わるだろう。牧場に帰ってノンビリすることもなく、1年以上戦い続けてきた。さすがの英雄ディープインパクトであっても、「もう走りたくない」という気持ちが芽生えてきてもおかしくはないのではないか。

私が心配しているのは、今回の天皇賞春の走りではない。気持ちが萎えていても、このメンバーならばあっさり勝ってしまうかもしれないし、もしかすると負けるかもしれないとも考えている。しかし、そうではなく、私が最も心配しているのは、ディープインパクトがこのまま燃え尽きてしまうことである。彼には、この後にするべき大きな仕事が待っているのだ。肉体的にも精神的にも最高の状態でないと、決して成し遂げられることのない前人未到の大勝負である。

私の心配が杞憂に終わることを祈る。


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アドマイヤムーンが負けるその理由とは

アドマイヤムーンの末脚は不発に終わる可能性が高い。もっとはっきり言ってしまえば、アドマイヤムーンは皐月賞で負ける。いや、負けるというよりも、もしかしたら連対すら外してしまうかもしれない。

なぜここまで断言するかと言うと、アドマイヤムーンの体調は下降線を辿っていることが、馬体重から読み取れるからだ。【集中連載:馬体重は語る-第5回-】を読んでくれた方はピンと来るだろうが、馬体重の推移を見れば、弥生賞以降、アドマイヤムーンの<体調>は下がっていくことが予測される。

アドマイヤムーンの共同通信杯での鮮やかな勝ち方を見る限り、当時の478kgという馬体重は太め残りではなく、成長分も含めたベストの馬体重であったことが分かる。そのベストの馬体重からさらに絞って、弥生賞は-6kgという、ほぼ100%に近い、キッチリ仕上げられての出走であった。

馬体重の基本原則をもう一度述べると、

「当日の馬体重の増減が馬の<体調>に影響を及ぼすのは、その日のレースにおいてではなく、レースの後になる」

ということである。

馬体重の増減はその場、その時の馬の<体調>には影響は持たず、レース後の<体調>に影響を与える。つまり、もしレース当日の馬の<体調>を見極めたいとすれば、当日の馬体重の増減ではなく、前のレースまでの馬体重の推移を手がかりとしなければならない。

この基本原則に照らし合わせると、アドマイヤムーンの弥生賞での-6kgというマイナス体重は、弥生賞当日の<体調>には影響を