まずは己と向き合え。

誤解されるかもしれないのであらかじめ言っておくと、これは有馬記念ではなく、ジャパンカップの馬券である。ローズキングダムとヴィクトワールピサのハナ差は、あらゆる意味で大きな鼻の差であった。もしローズキングダムが不利を受けた後に、ヴィクトワールピサをも交わすことなく、3着に敗れてしまっていたとしたら、果たしてどんな結末になっていただろうか。それでもブエナビスタは降着となり、2着のヴィクトワールピサが繰り上がって優勝となれば、私の単勝馬券はなんと28万2000円に化けていたはずである。
でも、自分で言うのもなんだが、そんな結末はどうもしっくり来ない気がする。棚からぼた餅というか、負けたのに勝ったということになってしまったという感覚。ルールならば仕方ないが、勝負には負けたということになる。スポーツとしては楽しくないのである。
今回の降着について様々な意見があったが、最も多かったのは、裁決の基準をもっと透明化してほしいという意見ではなかったか。グレーな部分があるから審議にも時間が掛かり、ファンも決定に納得しないのだという論である。確かにその通りだと思う。数値化された基準や明確にグローバルスタンダードがあれば、白黒はつけやすい。
ただし、グレーな部分があるということにも大きな意味がある。競馬をスポーツもしくはブラッドスポーツとして考えた場合、そのレースにおける強い馬が勝つことに価値があり、強い馬が歴史に名を残すべきである。もし単純な基準だけではアウトになってしまうケースでも、被害を受けた馬への影響が少ない、もしくは不利がなくても着順は変わらないと明らかに判断される場合には、セーフとするのが正しい判断だと私は思う。単一のルールによって、世の中の全てが白か黒かを決められてしまうほど恐ろしいことはない。杓子定規ではなく、本当の意味で正しい総合的判断をするには、人間的(グレー)な部分も必要なのではないだろうか。
たとえば2008年のオークスにおけるトールポピーの裁決と今回のそれを比較することは、ナンセンスだと思うのだ。文脈が違う2つのレースを比較してはならない。大まかに言うと、トールポピーのオークスにおける斜行は、被害馬に乗っていたジョッキー達から、馬の能力発揮には影響はなかったという見解が発せられていた。実際のレースに乗っている者にしか分からない感覚もある。そういう意味で、関係者に事情聴取をするのも当然のことだ。
対して、今回のジャパンカップにおける降着は、被害馬ローズキングダムは能力発揮に大きな影響を受けた(着順が変わった)という見解があってのものである。明らかに脚色が違ったように見えるが、東京スポーツ杯でトーセンファントムを差し返したことのあるローズキングダムのことだから、あそこから巻き返して勝利できた手応えはあったと言われたら否定はできまい。そう考えると、誰にとっても正しい決定などないのかもしれない。
それよりも、私たちにとって、もっと大切なのは、なぜブエナビスタはあそこまでヨレたのか、ということではないか。これまでのレースでは見せたことのない彼女の走りを見て、私たちは何を感じ取るべきだったのか。さすがのブエナビスタにとっても、最後の直線での攻防は意外に苦しかったということだろう。極限を超えていたと言ってもよい。大外枠からの発走のために外を回りつつ、他馬よりも長い距離を走らされ、直線では一気に追い出されて、苦しがったのである。そう考えると、実は薄氷を踏むような危ない勝利だったことが分かる。圧勝したように見えても、ちょっとしたミスやロスがあれば、ブエナビスタが負けていた可能性だって十分あったということだ。
ジャパンカップで1番人気に祭り上げられ、チャンピオンディスタンスを走って一流の牡馬を相手に勝つということには、私たちの想像を超える困難さがあったに違いない。いくら脚が速く飄々としていても、彼女はやはり牝馬なのである。降着に対して痛烈な批判をするのも、ブエナビスタの強さを感情的に称えるのも、降着で馬券が当たることを期待するのもいいが、競馬と向き合うことがまずは必要なのである。己の馬券と向き合って、なぜそういう結末になったのか、もう一度考えてみようではないか。そうすることでこそ、私たちは未来(有馬記念)とつながることができるのだから。
























































アルカセットの前日売りオッズには、思わず目を疑った。L・デットーリ騎手が騎乗するから人気にはなるだろうと予測はしていたが、まさかこれほどまでとは。サンクルー大賞を勝っているものの、その後の2戦は敗れており、他の外国馬と比べても実績不足は明らかである。そもそも、肝心の実力や日本の軽い芝に対する適性など、未知の部分が多すぎるではないか。その証拠に、2週間前の時点でアルカセットに本命を打っている競馬記者などほとんどいなかったはずである。









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