
最後のお手紙ありがとうございました。そして、1年半の長い間、本当にありがとうございました。お子さんと遊ぶ大切な時間や睡眠を削ってまで、競馬に対する愛情を綴っていただいたことに感謝しております。深夜に届くお手紙を拝見して、100キロ離れていても、気持ちはつながっていることを深く感じておりました。無理を言ってお願いしたやりとりですが、楽しかったと最後に言っていただけたことを嬉しく思います。最後のお手紙をアップする時、さすがにジーンときてしまいました。
私だけではなく、たくさんのルドルフおやじファンがいましたね。ルドルフおやじさんから私たちが教えてもらったことはたくさんありますが、その中でも一番の教えは、競馬はがっはははははと笑って楽しむものだということです。競馬は負けることの方が多いですもんね。あの武豊騎手でさえ、競馬は負けることの方が多いので楽しんで乗ることが何よりも大切と言っていました。勝とうと思えばこそ負けることの方が多く、それでも勝っても負けてもがっはははははと楽しめるようになりたいと思います。それでこそ、初めて競馬が好きだと言えるのかもしれませんね。
それからもうひとつ、ルドルフおやじさんには血統の奥深さを教えてもらいました。特にサラブレッドの母系に流れる大河のような血脈を、これほどまでに分かりやすく、面白く教えてもらったことは初めてでした。たとえ血統の奥行きを知らなくても馬券は当たるかもしれませんが、知ることによって1頭1頭の馬の輪郭がよりハッキリと見えてくるものですよね。包み隠さずに言うと、それまで私が持っていた血統の知識がどれだけ浅はかなものだったかも思い知らされて、ひとり赤面したものです。
最後にこれまで頂いていたお手紙をもう一度読み直してみました。宝塚記念の◎アドマイヤムーンや今年の菊花賞の3連複はお見事でしたね。誰もルドルフおやじさんの印が冗談だとは思っていませんよ。私の知っている方がこんな賭け方をしていたそうです。ルドルフおやじさんの本命と私の本命とその方の本命でボックス馬券を買うそうです。当たったことはあるのかなあ?まあそんなことは大した問題じゃありませんよね。
お手紙を読み直してみて、私の勝手ですが、ルドルフおやじの名言集を作ってみました。この他にもたくさんありましたが、私の心に残った名言をピックアップさせていただきました。
「綾のあるゲーム」
実力があっても負けることはあるものです。だから競馬がギャンブルとして成立しているわけです。日本の競馬場がギャンブルという要素によって支えられていることは忘れてはいけません。ここに競馬の胡散臭さがあります。失礼、魅力があります。一言いっておきます。競馬は綾のあるゲームです。
「2強3強について」
2強とか3強といって、レース前によく煽り立てられることがありますよね。レースの綾が出るのは2強と言われたときですよ。互いを意識して、自分のレースができないからですね。(中略)馬券というものは、それほど無理して当てるものではないので、黙って見ておくのが競馬の神様仏さまというものです。
「メイショウサムソンについて」
サムソンを皐月賞馬にしたのは、父オペラハウスのタフネスではなくこの鋭さです。この鋭さはエールのブルードメアサイアー、フォルティノからきているんだろうなあ、と想像しています。フォルティノは、マンノウオー系レリックの肌馬に快速馬グレイソブリンというとても分かりやすい配合で生まれた名馬です。フォルティノ系は確実に切れ味を代々伝えることによって、世界的血脈になっています。日本にいた種牡馬で、これほどの血の広がりをみせた馬はいませんね。
「ウォッカについて」
来年のクラシックということになると、この馬に注目です。力のある馬だと思います。母系は名門シラオキです。シスタートウショウ、シーズトウショウが血統的に近いところにいます。女の子にウォッカという名前、おもしろいですねえ。バクシンヒロインなんていう勇ましい女の子も出走しますが、こちらもシラオキ系、メイショウサムソンの近親です。今年はシラオキ復活年、実にめでたい年だったんですね。
「シメシメ馬券について」
クラッシクロードが続いていきます。本番までわたしはいつもシメシメ馬券を小額買って馬を見るようにしています。やはり馬券を買ってレースを見るのと買わずにみるのとでは違いますなあ。どんなに人気薄でもシメシメと思えば買って観戦する。小額ですよ、あくまで。ほとんど外れますが、時にシメシメの馬たちの中におもしろい発見をすることがあるんです。この発見が競馬をするわたしの喜びのひとつになっています。
「記憶というものは」
だいたい記憶というものは、おおよそ25年ほど過ぎれば美しくなるということが、最近わかってきました。30年前ひどい目に遭ったあの馬この馬、今ではすべてこのおやじの名馬か、愛馬であります。競馬ファンをながくやろうと思えば忘れっぽくならなくてはいけません。
「ラップについて」
慣れないラップを見ましょうか。このおやじがついていけてたのはレゲーのボブ・マーレーまでで、どうもラップは苦手なんですなあ。Everything gona be all right!
「さあどっちだ」
ムーンは勝つ馬、サムソンは負けない馬、さあどっちだ。
「幸運」なんてものは
「幸運」なんてものはブゼンキャンドルのように意図せぬところから突然やってくるものかもしれないし、ダイコーターのように掴み取ろうとするとするりと逃げていってしまうものかもしれない。競馬が賭け事に過ぎぬものならば、これほど危ういものはありません。
「大種牡馬の大種牡馬たるゆえん」
大種牡馬の大種牡馬たるゆえんは母系の良さを引き出すところにあります。もちろんサンデーも例外ではありません。多様なサンデー産駒のなかにあって特にDメジャーは異質なスピードの持ち主ではないでしょうか。彼の異質なスピードはメジャーの母系で生きているヒムヤー系50年代の傑作クリムゾンサタンに由来するものかも知れません。
「イージーなレースを創ってどうする」
鏡のようなグリーン、絨毯のようなラフの上で毎日戦っている国のゴルファーがジ・オープンを制するなんてジ・オープンの歴史が終わるまでありえないでしょう。タフなコースをつくってタフなレースが行われてはじめて血は鍛えられる。イージーなレースを創ってどうする。おやじは、来年からJCDは買いません。損したなJRA、いいのかい、いいのかい。
「晴雨不問は名馬の条件」
「本格化馬恒常的好走伝説」
さて、最後の有馬記念です。本当に素晴らしいメンバーが揃いました。どの馬にも勝つ理由ある、どの馬からでも馬券が買えるドリームレースですね。たとえ重馬場になろうが、人気があろうがなかろうが、そんなことどうでもいいのです。自分の信じた馬に夢を託しましょう。
私の本命は◎メイショウサムソンに打ちます。重馬場はあまり得意でない馬ですが、なんとかこなしてくれると思っています。晴雨不問は名馬の条件ですからね。それよりも、この馬の唯一の不安は距離に対する適性でしょう。天皇賞秋で武豊騎手がこの馬に初めて跨った時、「思ったよりもスピードがあるのでビックリした」と語っていましたが、そのとおりの楽勝でした。メイショウサムソンは4歳の秋を迎え、胸前からキ甲にかけて、それから体の幅が一段と広くなり、もの凄く力強い馬体に成長しています。そのことがもしかすると距離適性を縮めているかもしれません。
サラブレッドは成長とともに距離適性が狭くなり、その馬の本質的な適距離に近くなりますが、メイショウサムソンの場合、今は2000mという距離がベストになってきているのでしょう。武豊騎手がジャパンカップで少し位置取りを下げて進めたのは、そういうことも考慮に入れてのものだと思います。4コーナーで外を回してしまったことは悔いているはずですが、道中の位置取りはあれで良かったのではないでしょうか。ジャパンカップは負けてはしまいましたが、武豊騎手としては、ロスなく乗れば、中山の2400mならばスタミナ切れは起こさないという手応えを掴んだはずです。
おそらく、今回もガツンと出していくことはないので中団からの競馬をするでしょうが、4コーナーでは先頭に立つくらいの積極的な競馬をしてくるはずです。そうあのオグリキャップがラストランを飾った有馬記念のように。
ただ、そのためには道中がスローからミドルのペースで流れることが条件です。万が一、4コーナーに縦長の馬群で向かうようなハイペースになってしまうと苦しいかもしれません。4角で先頭に立つ形に持ち込めないばかりか、もしかするとジャパンカップ以上のスタミナが要求されてしまうかもしれないからです。どのようなペースになるかは予測しがたいことですが、過去の有馬記念のラップを見比べてみることによって糸口を掴んでみましょう。
過去10年の有馬記念のラップです。
7.2-11.1-11.8-11.8-12.2-12.8-13.5-12.6-11.9-12.4-12.9-12.2-12.4
2:34.8 シルクジャスティス
7.1-12.0-12.9-11.3-11.4-12.5-12.5-12.2-11.6-12.2-12.3-12.5-11.6
2:32.1 グラスワンダー
7.1-12.6-13.1-12.5-13.2-13.4-12.9-12.7-12.1-12.3-12.4-11.0-11.9
2:37.2 グラスワンダー
7.2-12.0-12.5-12.2-12.3-13.0-12.7-11.9-11.3-11.8-12.3-12.2-12.7
2:34.1 テイエムオペラオー
6.9-12.0-12.1-12.1-12.7-13.6-13.2-12.6-11.8-11.5-11.3-11.3-12.0
2:33.1 マンハッタンカフェ
6.8-11.5-12.5-12.9-12.0-12.7-12.8-12.3-11.5-11.8-11.4-11.7-12.7
2:32.6 シンボリクリスエス
7.0-11.2-11.2-11.2-11.6-12.3-12.9-12.6-12.2-12.7-11.7-11.7-12.2
2:30.5 シンボリクリスエス
7.0-11.6-11.5-11.7-12.3-12.4-12.0-11.7-11.8-11.9-11.6-11.6-12.4
2:29.5 ゼンノロブロイ
7.0-11.4-11.7-12.1-12.9-13.0-12.2-11.8-12.0-12.3-12.0-11.4-12.1
2:31.9 ハーツクライ
7.1-11.5-11.4-11.3-11.8-12.8-12.9-12.7-12.2-12.8-12.2-11.2-12.0
2:31.9 ディープインパクト
ここで注目したいのは、前半の3ハロン(最初の100mは除く)とラスト5~6ハロン(向う正面)のラップです。大体の場合において、この2つのラップタイムはどちらかが速くなればどちらかが遅くなる傾向があります。つまり、前半が遅く流れたレースでは向う正面で各馬が動き、前半が速く流れたレースでは向う正面での動きは少なくなります。ただし、どちらがより重要かというと、前半の3ハロンのラップです。ここの動きでレースの質が変わってきます。
ちなみに、前回の手紙で紹介したテンポイントとトウショウボーイの有馬記念がありましたよね。このレースを振り返ってトウショウボーイに騎乗した武邦彦調教師(武豊の父)はこう語っています。
「勝負をファンサイドから見ると、直線の攻防がいちばんなのでしょうが、やっているほうから言えばスタートなんです、大事なのは。直線で競り負けるのは、そこまでに脚を使ってしまってるんです。」
トウショウボーイはスタートしてからスタンド前の直線でわずかに引っ掛かってしまっているように、大切な前半3ハロン部分でわずかにロスをしてしまっているのですね。その分、最後の直線でテンポイントに競り負けてしまったということです。
全体のタイムとの比較になるのですが、前半3ハロン部分で、全て11秒台のラップが刻まれているようなレースは前に行った馬にとって厳しいレースです。10年前のシルクジャスティスが勝った有馬記念は、珍しく前崩れが起きて、あのエアグルーヴでも3着に力尽きたレースでした。このレースの前半3ハロンは11.1-11.8-11.8と、時計の掛かる馬場状態であったことを考えると、かなり速いペースだったことが分かります。
また、昨年と一昨年の有馬記念は奇しくも同じタイムですが、前半3ハロンのラップタイムが違います。ディープインパクトが勝った昨年は11秒台が続き34.2、ハーツクライが押し切った一昨年の35.2と比べても1秒も速いラップになっています。昨年の有馬記念は向う正面が緩んでいるので前に有利なレースだったと誤解されることが多いのですが、一昨年に比べると厳しいレースでした。
武豊騎手が「最後の有馬記念が一番強いレースだった」と語るのも頷ける気がします。あれだけのペースで前半を引っ張ってもらえれば、ディープインパクトにとっては最も末脚を炸裂できる展開ですから。逆に言うと、前半を攻めて2、3着したポップロックやダイワメジャーはよく頑張っていると言えます。今年の成績を見ても、なるほどという感じですよね。
何が言いたいかというと、今年の前半3ハロンはどのようなペースで流れるのかということです。出走馬と枠順を見渡してみると、案外、前に行きたい馬は多いですよね。ダイワメジャー、レゴラス、ダイワスカーレット、ポップロック、ロックドゥカンブ、サンツェッペリン、コスモバルク、デルタブルース、もしかしたらチョウサンと半数以上が先行馬です。しかし、もっとよーく見ると、絶対に逃げたい馬というのも見当たりません。どの馬も、行く馬がいるなら抑えてもいいよという柔軟な先行馬たちです。
そうなると、果たしてどの馬が逃げるのでしょうか。もしサンツェッペリンに松岡騎手が乗っていたら、迷わずハナを切って、大逃げをかましていた可能性はあります。しかし、今回は折り合いをつけるのが巧い北村騎手です。強引に逃げるタイプではありません。となると、やはりダイワスカーレットが逃げることになるのでしょうか。そうなると、おおよそ前半の3ハロンはスローに流れるのではないでしょうか。たとえダイワスカーレットが逃げなくても、お見合い状態が続けば、スローになる可能性は高いでしょう。
そう考えると、メイショウサムソンの勝ちパターンに持ち込める可能性が高いと思います。たとえ向う正面で各馬の動きが速くなったとしても、全体のペースはミドル以上にはなりません。馬群に包まれないように、どこかで外に出しておけば、自らの脚力でマクっていける態勢が整うはずです。
とまあ、最後にこんな夢を観ることが出来たら最高だなと思います。寺山修司はこう語りました。「競馬ファンは馬券を買わない。財布の底をはたいて自分を買っているのである」と。私も今日は自分を買いに、中山競馬場まで行ってきます。
ルドルフおやじさんとのやりとりはこれで一時お休みということになってしまいますが、頂いた手紙は「ガラスの競馬場」のアーカイブとして永遠に残り続けます。カテゴリーの「ルドルフおやじからの手紙」をクリックすると、いつでもルドルフおやじ節が現れます。つまり、ルドルフおやじさんの想いは、常に「ガラスの競馬場」にあるということです。これから苦しいこと、つらいこと、逃げ出したくなるようなこともあると思います。そんな時は、いつでも「ガラスの競馬場」に遊びにきてください。お待ちしております。
現在のランキング順位はこちら