■どのように馬場の重さ(軽さ)を把握するか?
それでは実際に、どのように馬場の重さ(軽さ)を把握すればよいのだろうか。
馬場の重さ(軽さ)を把握するために、最も簡単かつ有効な方法は、「芝の種類」と「芝の傷み具合」を時系列として読み解くということである。「芝の種類」によって異なる馬場の重さ(軽さ)が、開催が進むにつれての「芝の傷み具合」によって変化してくる、その変化から馬場の重さ(軽さ)を把握するという、ごくごく単純方法である。
最初の手順として、レースが行われる競馬場の芝の種類を把握することから始めなければならない。前述したとおり、新潟競馬場は「野芝100%の芝コース」、札幌、函館競馬場は「洋芝100%の芝コース」、東京、中山、阪神、京都、中京、福島、小倉競馬場は「野芝に洋芝をオーバーシードした芝コース」となる。しかし、たとえオーバーシードした芝コースでも、野芝の成長期(6月~9月)には洋芝を取っ払って、野芝100%に近い状態で行われることもあるので、JRAのホームページの「馬場情報」を逐一チェックしたい。
次に、レースが行われる競馬場の芝の「傷み具合」を把握したい。現在のレースが行われている競馬場の芝は、どういう時期で、どれぐらい使われて、どれだけ傷んでいるかをチェックするのだ。野芝の最盛期は7月~9月であって、それ以降は徐々に枯れて重くなっていく。そして、開催が続いたり、開催と開催の間にある芝の養生期間が短かったりすると、野芝の傷みが回復することなく次の開催が始まってしまう。また、運悪く、開催中に連続して雨の日が当たったりすると、芝の傷みは通常よりも早く進行する。そして、これは稀なケースだが、冷夏や暖冬の影響で翌年の野芝の根付きが悪かったり、良かったりすることもある。
馬場の重さ(軽さ)は、『極端に軽い』→『軽い』→『やや軽い』→『やや力の要る』→『力の要る』→『かなり力の要る』という6段階に分けてみた。もちろんこれらの中間に位置する重さ(軽さ)の馬場状態もあり得るが、実際にレースを予想するための材料としてはこの6段階ぐらいで十分である。
かつて、馬場の重さ(軽さ)の段階に数字を当てはめて、より厳密に把握しようと考えたこともあったが、上手くはいかなかった。やはり、馬場というものは、常に変化し続ける生き物のようなものであって、数字に置き換えてしまうと、現実の馬場の重さ(軽さ)の感覚とはズレてしまい、どうもシックリこないことが多い。そもそも、馬場の重さ(軽さ)を数字に置き換えるということ自体がナンセンスなのかもしれない。
前置きはこのあたりにして、野芝の最盛期である9月の開催を起点として、具体的に把握していきたい。
*「開催日割(PDF)」を片手にご覧いただけると分かりやすいだろう。
9月
★中山競馬場
この時期の開催は野芝100%の状態で行われる。4月以降の開催になるため、野芝の養生期間が長く、根がしっかりと張った極めて軽い馬場となる。
★阪神競馬場
7月まで競馬が行われていたため、野芝の養生期間はほとんどなく、全く根付いていない状態。傷んだ芝部分を張り替えただけなので、馬場が良いのも最初だけで、開催が進むにつれすぐに傷みが目立ち始め、やや力のいる馬場へと変化する。
10月
★東京競馬場
夏の間に十分根を張った、軽いオーバーシード芝。洋芝はまだ芽が出かけた程度で、ほぼ野芝100%の極めて軽い馬場である。
★京都競馬場
夏の新潟に匹敵する、極めて速い時計の出る芝。東京競馬場同様に、洋芝はまだ芽が出かけた程度で、ほぼ野芝100%の極めて軽い馬場である。
★福島競馬場
やや力の要る芝。夏の開催からの養生期間が短いため、開催が進むにつれて傷みが目立ち始める。
11月
★東京競馬場
やや力が要るオーバーシード芝。野芝はすでに成長が止まり、伸びた洋芝が表面を覆った状態となる。
★京都競馬場
軽いオーバーシード芝。野芝の成長は止まるが、状態が良いため、軽さは維持される。
12月
★中山競馬場
やや力の要るオーバーシード芝。芝の根付きが良いため、傷みはなかなか進まない。
★阪神競馬場
傷んで力の要るオーバーシード芝。開催の後半では、内側がかなり傷んで、走りにくい部分が出来てしまう。
★中京競馬場
軽いオーバーシード芝。養生期間が長く、秋最初の開催になるので、冬の時期に行われる競馬ではダントツに馬場の状態が良い。
1月
★中山競馬場
秋競馬で使われなかったCコースを使うため、やや軽いオーバーシード芝。
★京都競馬場
秋競馬で使われなかったCコースを使うため、非常に軽いオーバーシード芝。
★小倉競馬場
軽いオーバーシード芝から傷んだオーバーシード芝へと、1ヶ月の間に変化する。この時期の小倉には他場で減らされている芝のレースを肩代わりする役割があるため、レース数が多く、後半は傷みが目立ち始める。
2月
★東京競馬場
やや力の要るオーバーシード芝。Dコースを使用して、芝のレース数も少ないため、傷みは最小限に抑えられている。
★京都競馬場
Cコース開催2週目となるため、やや力の要るオーバーシード芝。
3月
★中山競馬場
やや力が要るオーバーシード芝。
★阪神競馬場
力が要るオーバーシード芝。
★中京競馬場
やや力の要るオーバーシード芝。
4月
★中山競馬場
力の要るオーバーシード芝。洋芝が伸びて、見た目ではなかなか分からないが、ベースの野芝は相当に傷んでいる。
★阪神競馬場
傷みも目立ち始めて、力の要るオーバーシード芝。
★福島競馬場
力の要る芝。昨年の11月から養生期間は長いが、野芝はまだ芽も出ていない段階で、次第に傷みが目立ち始める。
5月
★東京競馬場
やや力の要るオーバーシード芝。野芝はまだ芽が出かけた段階で、根は張っておらず、傷みやすい。ダービーまではなんとか持ちこたえても、それ以降はボロボロになることが多い。
★京都競馬場
やや軽いオーバーシード芝。1、2月は芝のレースが少なかった上に、Dコースに変更されることによって、春の競馬では最も速い馬場。
★新潟競馬場
昨年の夏以来となるため、野芝100%でやや軽い芝。ただし、野芝はまだ成長期にないため、傷みやすい状態の馬場。
6月
★阪神競馬場
力の要るオーバーシード芝。阪神競馬場は宝塚記念があるこの開催に備えて、2回開催終了後に芝を張り替える。そのため、宝塚記念時点の芝の状態は、洋芝100%に近い。
★函館競馬場
洋芝が密に生え揃って絶好の芝の状態。洋芝の性格上、重くて力の要る馬場。
★中京競馬場
傷んで力が要るオーバーシード芝。3月の開催から間がなく、かなり傷んだ状態の馬場。
★福島競馬場
傷んで力が要る芝。野芝が成長をし始めるものの、1回開催から期間が短いため、馬場の傷みは回復することなく進行していく。
7月
★新潟競馬場
野芝100%である上に、成長期であるため、極めて軽い馬場。
★小倉競馬場
ほとんど野芝100%に近い、軽い馬場。
★函館競馬場
かなり力の要る馬場。梅雨の影響で、開催に雨が当たることも多く、洋芝の傷みが目立ち始める。
8月
★新潟競馬場
まだ野芝が成長している時期であるため、馬場が悪くならず、極めて軽い馬場が維持される。
★小倉競馬場
新潟と同じく、まだ野芝が成長している時期であるため、馬場が悪くならず、軽い馬場が維持される。
★札幌競馬場
洋芝が密に生えた絶好の馬場。梅雨の影響を受けないため傷みづらいが、洋芝の性格上、力の要る馬場。
以上のように、芝の最盛期の状態を起点としてイメージしつつ、そこから開催が進むにつれて馬場が傷み、重くなって力を要する馬場になっていくという過程を、時系列で把握するということである。最盛期から時間の経過とともに傷んで枯れていくという、生物としての不可逆な1年の営みを利用するのである。もし開催中に連続して雨が降ったり、冷夏や暖冬などイレギュラーなことが起これば、その都度、上記の基準の重さをほんの少し調節すればよい。
これまで私は色々な方法を試してみたが、結局のところ、この方法以上に簡単かつ正確に馬場の重さ(軽さ)を把握することは出来なかった。たとえば、ある競馬ソフトの基準タイムを用いて馬場差を出す方法がある。しかし、そもそも競馬のレースは生き物であり、展開や馬場の内外、メンバーの力関係などがあるにもかかわらず、(たとえ補正したとしても)勝ちタイム等から馬場差を正確に出すのは普通に考えても無理がある。また、開催中の勝ち馬、もしくは2着に好走した馬の血統から馬場状態を読み解く方法は、サンプル数が少なすぎるため、独自のバイアスが掛かってしまうことが多い。
もちろんこれらもある程度は有効であっただが、小難しかったり時間が掛かったりする割には上の方法と同じ、もしくはそれ以下の結果しか出なかったのである。これらの方法の問題点は、すでに終わった事柄(タイム、好走馬の血統等)を材料とするため、全てが後追いになってしまうということである。また、馬場の重さ(軽さ)を把握するために馬場以外の要素を判断材料にしているため、その他の関係ない要素までが紛れ込んでしまうことも問題である。馬場のことは馬場に聞くのが一番なのである。だからこそ、誰にでもスグ出来て、しかも間違いが少ないのだ。
(第5回へ続く→)
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